(熊さん)ご隠居、生きてますか。しばらく見ないけど、家にはいるんでしょ。
(ご隠居)どこへも行きゃしないさ、無駄な出歩きしないで、家でひっくり返ってるよ。
(熊)夏には強いって言ってたけど、今年はだめですか。
(隠)だめだね、基礎体力が落ちて、すっかり疲れやすくなった。駅の階段を上がるだけで息が切れて、手すりにつかまりたくなるなんて、以前には考えられなかったよ。低血圧、貧血なんだな。体重が50キロを切って、49キロのところで一進一退してる。何より食欲というものがなくなったのが痛いよ。病院で処方された「経腸栄養剤」というのを飲んで対抗してるわけさ。結核菌をやつける薬の副作用だから、経過を見ながら今後を考えることになってるけどね。
(熊)またご隠居らしい芯の強さが出てくるといいですね。
(隠)ところで、2020年の東京オリンピックというのは、ちょうどこの時期にやるんだよ。7月24日が開会式で、8月9日が閉会式だ。ちなみに、1964年の東京オリンピックは、10月10日から24日までだったんだ。今でもよく覚えているが、すばらしい天気の開会式で、そのあともスポーツの秋にふさわしい絶好の季節だった。新幹線が走り出したのも同じ年で、日本が世界から認められた誇らしい気分になったものだよ。ちょうど私はNHKの現場ディレクターをしていた時期で、通常番組が停止になるから時間的にも余裕があって良かった。かわいい盛りの子供たちを連れた家族旅行もできたし、楽しみながらテレビを見ていたものだよ。
(熊)そうか、NHKの職員は、オリンピック中はヒマになるんだ。
(隠)スポーツ担当は忙しいだろうが、全体としては放送局はヒマになるんだよ。それはどうでもいいんだが、問題は3年後のオリンピックだよ。誰よりも選手にとって苛酷な2週間になるだろうね。2013年に招致を決めたときには、「東京の夏はスポーツによい季節です」なんて無責任な演説をした人がいたが、そんな人は、あとのことなんか考えてなかったろう。これから実際に大会を運営する人たちは、頭の痛いことばかりだろうね。
(熊)マラソンは夜間レースにするとか、思い切った工夫をしたらどうですかね。
(隠)ああ、それもいいかも知れないね。私はどんな競技も金を払って見に行くつもりはないからいいけど、熱中症で選手がバタバタ倒れるような場面は見たくないと思うよ、本当に。