(熊さん)仮想通貨っていうやつで、580億円が消えちまったって騒ぎになってるけど、ありゃいったん何なんですか。
(ご隠居)わしも少し調べてみたが、よくわからん。公的な金融機関が管理していない「私的な通貨のようなもので、当事者間同士でのみネットで決済できる」ものらしい。早い話が子供のころに遊んだ「銀行屋さんごっこ」で、小さい紙で「お金」を作って、兄弟の間で鉛筆だのメンコだのを売ったり買ったりしたのと似てるんじゃないかな。子供の遊びなら実害もないが、これを大人が金儲けに使おうとしたんで話が複雑になった。仮想通貨自体が値上がりしたり、国際取引に税金も手数料も取られないから便利だなんてこともあって、手を出した人たちがいたらしい。
(熊)要するに本物の「お金」じゃないものを、「お金」のように使うってことですね。
(隠)それが、たとえば金属の「金」だとか、実際に価値のあるものなら、いわゆる「相場」の実体があるんだが、もともと架空の価値だから、いったん信用が崩れたら、あとには紙切れも残らないわけだよ。そんな危ないものに、いい大人が何で手を出すのかわからんが、うまく売り抜けて儲けようなんて考える人も出て来るんだろうね。うまい話に乗せられて、財産を危険にさらす人ってのは、昔も今も、いっぱいいるってことだな。それより深い専門的なことは、わしにはわからんし、興味もないよ。でもね、儲け話に乗せられる人の気持ちは、少しわからんでもないな。
(熊)そりゃ、どんなことですか。
(隠)私は子供時代を除いては、宝くじというものを買ったことがない。一組全部を買い占めたら、配当金は使った金の半分にもならないんだよ。落ち着いて考えたら、基本的に損だとすぐわかる。だけど、宝くじにでも当らなけりゃ、まとまった金は手に入れる方法がないと思ってる人が多いから、宝くじは売れるんだね。でもね、一等に当ったおかげで幸せな人生を築いたという事例は少ないんだそうだ。不相応な金は、人生を狂わせるんだね。
(熊)ふーん、そんなものですか。
(隠)だからさ、頭が固いと言われるかもしれないが、私は確実な方法で自分の身を守ることを考えてきたよ。それも、通貨が安定している平和が続いているからだと思っている。戦争は絶対に、やっちゃいけないよ。どえらい金をかけて人を殺して物を破壊するんだ。通貨の価値だって、仮想通貨以上に消し飛んでしまうことになる。戦争はだめだよ。