日本国憲法をどう思うかと聞かれたら、私なら「今のままでいい」と答える。問題はむしろ、いろいろな面で憲法の理想が、今の日本では実現していないところにあると思っている。その意味で私は自分を「護憲派」だと思っている。
 その一方で、憲法を「みっともない」「なんとか変えたいと」思っている人たちもいて、「改憲の必要性」を論じている。そして、その改憲案については、おもに憲法9条と自衛隊の関係について、いろいろな案を出してきている。その結果として、世論調査が以前よりも複雑になってきていると伝えられる。つまり回答を求める選択肢が増えてきているのだ。
 以前は「憲法を変えるべきだと思いますか」という、単純な世論調査が多かった。そしてこの時代には、「変えなくてよい」が常に「変えるべき」よりも多数派だった。ところがここに「どちらとも言えない・わからない」という選択肢が加わって3択になってからは、「変えなくてよい」が過半数でなくなってきた。この3択の世論調査は、毎日新聞が最初だったと言われる。
 さらにここに「自衛権と自衛隊の存在を明記する」「第9条の2項(戦争の放棄)は維持する」「第9条2項を削除する」などの案を加えると、調査の選択肢はますます増えて複雑になってくる。そうなると、当初の「今のままでよい」が、全体の中では少数派の印象になってしまうのではないかと心配する識者が出てきているのに気がついた。
 世論調査は、たしかに便利な方法で参考にもなるのだが、質問の組み立て方によっては一定の方向への誘導が、ある程度可能になる。たとえば「日本周辺の国際情勢は緊張感が高まっていますが」といった枕詞をつけてから自衛権の問題を聞かれたら、「今のままでよい」という答えは減るのではなかろうか。
 これから国会では憲法論議も始まるだろう。衆参両院で憲法改定発議のできる3分の2を確保している政権与党は、改憲案の具体化を急いでいる。発議されても国民投票で過半数を与えなければいいと安心していては危うい。発議する側は全力をあげ、世論調査の何倍もの力を入れて、「世論」の形成を図ってくるに違いないからだ。