2004年から06年にかけてイラクに派遣されていた自衛隊について、「非戦闘地域」が前提だったのに、じつは戦闘が起きていたという記録が、今ごろになって出てきた。新聞でも大きく扱っているのだが、どうも怪しい。10年以上も前のことだから、どうでもいいと言うのではない。なぜいまのタイミングで突然に出てきたか、大事なことから人々の注意を外らすための煙幕ではないかと疑われるのだ。
 窮地に陥っていたのは安倍首相だった。国有地の払い下げ問題で「首相案件」なる特別扱いが行われたのではないかと、芳しからぬ情報が出てきて、支持率も低下していた。ところがイラク派遣の自衛隊が適切だったどうかは、小泉首相だった時代のことだから、国会で野党が取り上げても、追及は安倍首相には及ばない。これが大きな問題になればなるほど、逆に安倍首相は安泰になる。
 政権には腕利きの策士がいて、さまざまな策略を巡らせていることだろう。使える材料は、今の政界の中からだけでなく、過去から引き出してくることも出来るということだ。歴史的な資料の整理と保存も現政権の仕事の一部分だが、客観的な事実を記録した第一次資料は、あくまでも正確でなければならない。不都合な部分を過去にさかのぼって改ざんしたのでは、歴史の偽造になる。
 歴史は歴史として、あった事実だけを記録して、あとの評価は後世の人に任せればよい。今さら「イラク派遣」などに深入りせず、「モリ・カケ」「首相案件」という、現首相の資質を問う本題に立ち返るべきだと思う。