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 「60歳以上のシニア劇団」を名乗っている「かんじゅく座」の第12回公演、「みのりの畑」(中野駅南口・「ザ・ポケット」にて、27日まで2チームで交互に連続上演)を見てきました。作・演出の座長は、自ら演技者でもある(今回は出演なし)鯨エマさんです。今回の作品は、題名の通りに、農と食の問題に正面から取り組んだ力作でした。この作品のために、座員は稽古場の続き地を借りて、本気の農業体験をしたということです。
 劇のあらすじとしては、両親の不仲で夏休みの家に居づらくなった中学生の娘が、いなかの伯父伯母の家で暮らすことになり、そこでいろいろな出会いを経験して、本当の「食べ物のおいしさ」を知るという流れです。親しんでいたおばあちゃんが、いつの間にか認知症が進行していて、老人介護の問題が自然な形で登場してくるという展開も用意されていました。
 現代人の不安感は、たぶん人工物に取り囲まれて、自然との接点を、観光目的以外では、主体的対象として失っているところに根源があるのです。だからこそ、土に手を触れ、トマトを枝からもいで食べるという行為が、最上の解毒剤になるのでしょう。
 これは余談的なのですが、認知症のおばあさんを風呂に入れるのに、抵抗されて手こずる場面がありました。それが、昼の入浴ではだめだったのが、夜になったら、すんなり自分から入ると言うのです。おそらく長い人生経験を通して、お風呂は夜に入るものだったのでしょう。このあたりに、鯨エマさんの、介護者のプロとしての経験が生きているように思いました。
 高齢出産を成功させ、今は子育て現役真っ最中と思われる鯨エマさんの、これからの活動に、ますます期待したくなります。