(熊さん)東京は、急に涼しくなりましたね。
(ご隠居)そうだね、先日までの炎天がウソのようだ。暑くて厳しい夏だったが、台風なんかが通り過ぎて、いっぺんに秋の気配だな。天気予報はずっと曇りと雨の連続で、お日さまマークは10日以上先でないと出てこない。次に晴れるときは、雲の様子も変った秋晴れになってるんじゃないのかな。春の梅雨の裏側の、秋雨の季節になったようだ。これが過ぎると、あとは早いよ。あわただしく秋が来て、紅葉が話題になったと思ったら、もうすぐに年末と冬の支度だよ。何となく夏が一年の真ん中のような気がするから、そうなるんだね。例年のことだけどさ。
(熊)夏に強いと言ってたご隠居も、今年の夏は、おとなしかったですね。あまり外出もせず、クーラー入れた部屋でゴロゴロしてた日が多かったような気がしますよ。体調もあまり良くなかったのかな。
(隠)ああ、なにしろ病院的には「経過観察中」の身の上だからね。「非結核マック症」の服薬治療が続いてるわけだよ。それに正直に言うと、この夏は、自分の基礎体力の低下を、いやというほど思い知らされたね。85歳の年齢じゃしょうがないんだろうが、階段の上りで無意識に手すりを掴むようになったり、駅の階段を上がるだけで息が切れそうになるのを感じたりするようになった。食が細くなったのも自覚したね。なにしろ飯の分量が食えなくなった。体重は、服を着たままで50キロがギリギリというところだな。寝る前の体操もサボることが多くなって、筋肉量が低下してるんだろう。週に一度のデイサービスのときに、いろんな器具で運動はしてるんだが、それだけじゃ足りないんだろうね。
(熊)年相応ってこともあるから、無理はしないで楽にしてればいいでしょうよ。現役並みにやろうたって、出来っこないんだから。
(隠)そりゃわかってるけどさ。年齢が何歳になろうが、世間のお荷物にはなりたくないじゃないか。支えられる人じゃなくて、支える側の人でいたいわけだよ。どんな意味であろうともさ。