一昨日のことなのだが、以前から気にかけていた金融上の小さな手続きで、信託銀行の駅前支店へ初めて行ってみた。関係する本人は妻なのだが、私が介添え人として同行した。用件は思ったよりも簡単に済んで、窓口の女性に笑顔で送り出されたのだが、問題はその後だった。家に帰りついたのが12時40分だったのは、時計を見て確かめたからよく覚えている。しかしその後で食事をした記憶がないのだ。
 娘が異変に気づいたのは夕食が終った後だった。彼女が念入りに点検して出した結論は、私たち二人のために用意しておいた昼用の食材が少しも減っておらず、食器も使った形跡がないので、外で何か食べてきたに違いないということだった。しかし私たちにはそんな覚えはない。もちろんポケットに食堂のレジ紙なども入っていない。強いて言えば、夕食がとてもおいしくて、完食できたということだけだった。
 つまりは、12時40分に帰宅したとき、私は「もう昼は済んだ」と思ってしまったに違いないのだ。それが妻にも伝染して、私に同調して空腹も感じないでいたらしいのが、深刻と言えば深刻なのかもしれない。
 改めて考えると、ちょうど昼飯時に銀行へ行ったというタイミングが悪かった。行員さんも、交代制で窓口業務についていたのだろう。私は抗結核薬を飲んでいる関係で食欲が落ちているから、栄養剤を処方されている身の上である。一回ごとの食事は大事にしないといけない。
 年齢の割にはしっかりしているつもりの私も、こんな失敗をするようになった。年をとると、いろいろと面白いことがある。
(追記)
 関連して思い出したことがある。NHKで番組を持っていたとき、一日中予定が立て込んで、都内のあちこちを走り回っていた。夕方になって一息ついたとき、猛然と腹が減っているのに気がついて考えたら、昼飯を取るのをすっかり忘れていたのだった。我ながらおかしかったのと同時に、充実も感じて爽快だった。