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 昨日の夕方、西空の夕焼けがみごとだった。すぐに連想したのは、母が見送った最後の年末に、箱根の山荘の居間で綴っていた日記帳の言葉だった。それは私の知らない母の、祖父母や父母へ向けた感謝と愛の告白であり、大自然に託して「この世に生きたこと」への、尽きることのない喜びを述べたものだった。
 西方浄土に、今は亡き父母や、もろもろの会いたい人たちがいるのかどうか、私は知らない。私がこれまで考えてきた「思想」に従えば、それらはむしろ幻想だろうと思う。にもかかわらず、こういう夕焼けに対面すると、私でも心がさわぐのは、なぜだろう。
 こういう空を見ていると、私でも「あっちへ行って母に会ったら、何を話そうか、と思ってしまうのだ。
 ただし、私の妻は、まだ「あっち」にはいない。祭壇の骨壺の中にいて、今でも毎日、ほとんど一日中、私と会話している。