台風一過の晴天になった。風ではたいした被害もなく、木の葉が駐車場に散らばった程度だった。地下室の水漏れも拡大することなく、雨量も多くはなかったので、夜になっても心配はなかった。
 台風のあとは、どうしてこんなに良い天気になるのだろう。夏日が復活しそうな日差しである。洗濯物が、目いっぱいに干してある。吹き抜ける風が心地よい。
 このところ、気分は穏やかである。不満の種は、非常に少ない。私の家族の今と未来については、すべてが順調に回っている。その余のことは、どうでもよい外周に過ぎなくなった。あるべきものが、あるべきように納まればそれでよい。
 私の親友の釜石の実家には、ゴッドマザーと呼ぶべき実力者の母上がいた。その人のヒューマン・ドキュメンタリーを制作したとき、その人が残した遺言書の話を聞いたことがある。どんなことが書いてあるのかと、顧問の弁護士を含めてうやうやしく開封したところが、そこに書いてあったのは、「みんな仲良く」の一言だったというのだ。それを見た三姉妹は、その言葉の通りに、互いに譲り合って遺産分割の話し合いを進め、何の不平不満も残さなかったということだ。
 家族というものは、そうありたいと思う。今の暮らしの延長として未来があるのなら、あるいは遺言そのものが不要なのかもしれない。「あとはよろしく頼む」だけで、いいのではあるまいか。一応は用意した遺言書はあるのだが、本当は何も要らないのかもしれない。