
もうずいぶん昔の漫画だが、『男どアホウ甲子園』という漫画があった。
野球漫画の第一人者水島新司がまだ『ドカベン』を描く前に連載が始まった漫画である。
この漫画は原作者が別にいるだけに、水島氏の一連の野球漫画とは趣を異にしている。
まず、主人公が「剛球一直線」の藤村甲子園という男。これはまあよくある設定なのだが、脇役が面白い。片目片腕の「丹下」や、もっとベタな松葉杖をついた「松葉」。女である「美少女」。聾学校だったり性別が違うだけで出場機会を奪ってしまう現実の高野連と違って、この漫画の中の高野連はむちゃくちゃ柔軟で、彼らが普通に試合出場している。
でも、一番笑ったのが「剛球仮面」である。剛球仮面は、実は藤村のライバルである池畑三四郎の変装で、その名の通り帽子(なぜかヘルメット)と一体となった仮面をかぶって顔を隠しているのだが、プロレスじゃあるまいし、素顔を隠しての出場を高野連はよく許したものだ。しかもご丁寧なことに変名もOKらしく、池畑がバッターボックスに立つときには、「9番、ピッチャー、仮面君」というアナウンスまで流れるのだ。このアナウンス、今でも脳裏によみがえってくる。「9番、ピッチャー、仮面君」。