
次に引っ越したのは4畳半、10000円、炊事場・トイレ共同、風呂は前の下宿と同じく「あち湯」の部屋だった。この部屋で私は初めてダニアレルギーを発症したが、まだ当時はそのような知識がなかったため、ダニに噛まれてかゆいのだと思い、今は亡き荒井注がCMをやっていた殺虫剤で畳を消毒したが少しもかゆみがおさまらないので不思議に思っていた。
この部屋は風通しが極端に悪かったので夏はいつも窓とドアを開けっ放しにしないと暑くて寝られなかった。ところが、ドアを開けると向かいの部屋の音が丸聞こえになる。向かいの部屋の住人には彼女がいて、夜な夜な通ってくるらしい。付き合い始めの新鮮な時期なのか、毎晩「夜の大運動会」が繰り広げられるため、応援団の歓声が聞こえてくる。それもかなり大きな声である。応援されると、こっちも走らねば、という気分になってくる。ドアを閉めれば暑くて寝られない、開ければ興奮して寝られない。この部屋の印象は「かゆい」と「眠れない」だった。