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ぱっくりザラザラのスイカは美味い

 私と妻は好物があまり一致しない。

 というよりも、私に好きな食べ物が多すぎて、一般的な女性である妻がそれについていけない、 というのが真相かもしれない。

 たとえば私はチーズならば大抵のものが好きだが、妻はプロセスチーズ以外のものは「臭ーい!」と言って食べない。 

 海胆もそうで、私は天草は通詞島産のアカウニの塩ウニからどこの産かわからないようなアルコール漬けの海胆までなんでも好きだが、妻は天草産の生ウニしか食べない。 

 こんな私たちが「あれ、美味いよね!」と声を揃える食べ物がある。
 いや、今となっては「あれ、美味かったよね!」かもしれない。

 それはスイカである。

 「別に珍しくねーだろ。」とほとんどの人が思ったに違いない。
 熊本県は常にトップ5に入る西瓜の名産地なのだから。 

 だが、私たちが好きなのは、タダの西瓜ではない。もちろんタダで食べられたら好きだが、そういう問題ではない(我ながらくだらん)。

 私たちが好きなのは、パックリ割れた、ザラザラの西瓜なのだ。 

 私たちはどの西瓜を買うか選ぶとき、これをポンポンと叩いてみる。
 もちろん音を聞くためだ。
 美味しい西瓜はいい音がする。そうだ。っていうのだが、あなたは「いい西瓜の音」って本当にわかりますか。

 私はさっぱり分からない。妻もさっぱり分からないそうだ。
 実は私はこの「いい西瓜の音」こそ、日本人の中に「知ったかぶり度」の最も高いものではないかと疑っている。

 叩いて分からなくても、最近の西瓜にはまずハズレはない。
 生産者の方や八百屋さんが懇切丁寧に厳選したみっちり実の詰まった西瓜しか店頭には並んでいないからだ。

 ところが、私たち夫婦が子供の頃はまだ「糖度がどう」とか、「密度がどう」などという科学的なことがわかっていなかったから、たまにハズレがあった。

 生産地では特に県外の市場に出せない様な物も売っていた。
 安い西瓜ほどそうだったが、私たちの買うのは当然のことながら安い西瓜である。
 しかも叩いても音が分からないのに知ったかぶりをして買うわけだから、ハズレ率は結構なものになる。

 最悪のハズレは薄いピンク色で糖度の低い、筋だらけの西瓜である。これは平らげてしまうのに結構苦痛だったが、盛夏にはこうしたものにはまず当たらなかった。

 盛夏に多かったのは、包丁を入れようとぐっと力を入れた瞬間に「バリバリっ!」と割れてしまう、熟れ過ぎた西瓜だった。
 これは中に大きな空洞が開いており、空洞にはザラザラした感触の極小の粒粒が無数に入っていて、キラキラ輝いていた。

 他の家族は、「あーあ、割れてザラザラの出とる」と言ってこれを嫌った。
 ザラザラが出るとこれに糖度を取られるのか、 実があまり甘くないし、ザラザラの感触が水菓(誤字にアラズ)らしくなくて興醒めだったらしい。

 ところがなぜか私はこれが好きだった。 

 格別「美味い」と思ったわけではないが、ほかにはちょっとない変わった味覚と感触が好きだったのだろう。

 こんなものが好きな人間は私だけかと思っていた。

 しかもその後果物や野菜の保存技術が発達してこの「パックリザラザラ」のスイカにお目にかかることはなくなっていたから、妻と結婚してからもそれを話題にすることはなかった。

 ところが、つい最近、たまたま「パックリザラザラ」について話題になり、夫婦2人とも好きであることが判明したのだ。

 変わり者というのはいるものだ。

 孔子は「徳は孤ならず、必ず隣有り(現代語訳:「信念を持った人は絶対に一人ではない」)」といったが、本当だ(たかが西瓜で大袈裟な)。 

 来年は我が家の猫の額ほどの畑に西瓜を植えて、わざと熟れさせすぎてあの「パックリザラザラ」を2人で食べよう。