名古屋城を建てた人は誰

 名古屋に行ってきた。
 名古屋といえば東京・大阪に次いで日本で3番目に大きな街である。 

 それにしても私にとっては印象が極端に薄い街である。

 何か知っていることがあったっけ。

 味噌煮込み饂飩。味噌カツ。味噌手羽先。味噌ばっかりかい。八丁味噌というらしい。食べたことはない。
 名古屋城。熱田神宮。行ったことはない。
 中日ドラゴンズ。名古屋金鯱軍。これは私が「昔の野球ファン」だからなのだが、応援したことはない。

 もう尽きた。

 通過したことは何度もある。
 東京に行くとき、鉄道を使う場合は常に通過点だった。
 一度地下街で食事をしたことがある。もう40年近く前だが。
 だが、名古屋を目的として旅行や移動をしたことはない。

 急に私の棲む三角町を思い出した。この街に住む前は、三角もまた私にとっては単なる通過点であり、目的地ではなかった。
 比べるのは気の毒か。
 わが三角町は人口1000人足らずの小さな街だが、名古屋は市だけで230万人の人口を誇る大都市なのだ。

 そんな名古屋を目的地として旅行をする。
 人生初の出来事である。

 2016年、韓国仁川を訪れた私はこう書いている。


私は仁川の街を巡っているうちに日本の名古屋を思い出していた。
 名古屋市は日本第3の巨大都市である。
 古い歴史を持ち、旧帝大や歴史のある私大があって文化的にも高いレベルを誇る。博物館や美術館の類にも事欠かない。
 食べ物も美味しい。海の幸山の幸満載の料理がお手軽な値段で食べられる。私は正直名古屋人自慢の味噌はあまり好きではないが。
 金の鯱をいただく城もあり、散策にも持って来いである。
 何でも手に入り、何でも見ることができ、何でも食べられる。自己完結できる。

 にもかかわらず、私たち九州人は本州に旅行をするとき、熱烈に名古屋を目指すことはあまりない。コアなファンは別だが。
 何かビジネスや文化的なものが目的ならばまず東京であり、次は大阪、そして歴史や文化が目的ならば京都、あるいは萩や金沢などの地方都市である。
 異国情緒を味わいたかったり、完全に日常を超越したければ北海道や東北に行く。

 近いうちに名古屋に行ってみよう。私の頭の中にある仮説が正しいかどうか、ヒントがもらえるはずだ。


 あれから3年、遂にその機会が訪れたのだ。

 目的は学会で発表すること。
 一部会社にお金を出してもらうので出張旅行である。

 国内のそれなりに遠いところに行くのは久しぶりだ。
 今までは都会に行くたびに私の中の常識が壊される体験が多々あった。

 たとえば3年前の仁川旅行で持っていた私の名古屋イメージは正しいのか。
 最近は熊本でも俄かにキャッシュレス決済が普及しているようだが、都会ではどうなのか。

 いろいろな好奇心を抱きつつ、私の名古屋旅行はもう直前になったのだった。