ペラ機の旅は日本地図の上

 今回の出張の交通手段は熊本-名古屋間の航空機である。
 最近は熊本空港を利用するといっても国際線ばかりだったが、何せ専ら乗っていた熊本-ソウル線が今回の騒動で運休してしまったので、とんと熊本空港からフライトすることもなかったのだ(年に1回くらいしか乗らないくせに偉そうに)。
 国内線は本当に久しぶりである。

 空港に着いて手続きを済ませ、ロビーから滑走路を見た瞬間、私にはある疑問が湧いた。
 「熊本-名古屋間の路線を利用する客ってそんなに多いのだろうか?」

 1機が目に入った。

 「たぶんこの飛行機なんだろうな…」
 諦めにも似た気持ちに襲われた。
 ペラ機に乗るのは久しぶりである。

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 実は飛行機マニアの私は瞬間的にそれに相応しい名称を想起したのであまり詳しくない人には分からないと思うが、「ペラ機」というのはプロペラが推進力の飛行機である。
 上の写真は私の搭乗した飛行機であるが、ご覧のように6枚羽のプロペラを有している。
 現在旅客機に使われているプロペラ機の多くは専門的には「ターボプロップ」というエンジン形式である。

 おそらくこの飛行機を見た多くの人は「ああ、これはゼロ戦とかB29のような昔の飛行機と同じタイプのエンジンを積んだ時代遅れの飛行機なんだろうな」と思うと思うのだが、実は違うのである。

 ターボプロップは私たちが「ジェット機だ」と思って見る飛行機と同じジェットエンジンの一種なのである。
 この話を書き始めてまたいつものように何時までも出発できない紀行になってしまうのに気付いたのでこの話はこれくらいにするが、ターボプロップはいわゆる「ジェット機」では筒の中に付いている回転する羽根が外側に付いているジェットエンジンであって、ピストンエンジンの駆動で羽根を回すいわゆるプロペラ機(専門的にはレシプロ機という)とは明らかに違う。
 その証拠に、レシプロ機は亜音速に近い800km/hに達するためにはエンジンに物凄い負荷がかかる。昔の飛行機で音速近くを飛行するする人は振動と騒音で大変だったに違いない。
 しかし、ターポプロップ機は800km/hで飛行しても乗客にほとんど騒音と振動を感じさせないのだ。
 これは羽根の回転を推進力に変える効率がレシプロ機よりずっといいことを示唆している。

 閑話休題(しったかぶりはこれくらいにして)。

 いわゆるジェット機のあの気持ちのよい上昇加速と雲上の神秘性を味わえないことを知った私は正直少しだけ落胆したのだが、「もしかすると」という期待も湧いてきた。

 今日は嘘のような快晴。
 ペラ機は1万mよりはかなり低い中低空、つまり雲の下を飛ぶ。とすると…

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 やはりそうだ。
 離陸してすぐに分かったが、眼下には我が麗しの大八洲が一点の曇りもなく広がっている。

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 郷土熊本のホコリ、じゃなかった誇り、大阿蘇もご覧の通り。
 「下界はほとんど日本地図」状態なのである。


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 たとえば細長い半島の続くこの風景は、

四国地図
 間違いなくこの部分である。

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 美しい国だ。

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 四国を横断すると、

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 大阪を遠くに見ながら紀和半島を横切る。

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 険しい山々である。

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 あ、海が見えた。

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 アナウンスが着陸を告げる。

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 着いたぞ名古屋。
 
 何だか日本地図の上を飛んでいるような旅だった。
 ペラ機もまた楽し。
 妻と一緒だったらどちらが窓際に座るかで暗闘があったに違いない。
 それにしても簡単に機体先端の方の座席が取れたので景色が翼やプロペラに邪魔されずに済んだ。

 幸先の良い学会発表である。