日韓の距離

    単に通過しただけを除けば、私達夫婦が過去釜山に行った回数は4回、うち船で行ったのが3回で、飛行機は1回である。
 前回は飛行機で行き、その利便性の高さとコストパフォーマンスの良さに感心した私は、今回も飛行機で行こうかなと思っていた。

 巷では日韓間の飛行機のチケットが投げ売りされているということだったのだが、探してみるとこれが意外にない。
 よく「追い詰められたLCC各社が500円のチケットを売りに出した」などとあるのだが、私に言わせればこれはLCCが昔からやっている「イベント運賃」という奴で、チケット代が500円といっても、税金やガソリン代が別になっているのでこれを払えば8000円超、更に手荷物を委託する運賃も別でこれが大体どこの航空会社も3500円はするからこれを足せばもう12000円くらいにはすぐなる。
 これに最近の我が日本国では「出国税」などという人頭税が加わってこれがまた1000円。仕事で行き来している人にとってはとんでもない話である。

 しかも、チケットの値段が「500円」ではなく「500円から」というのが曲者である。
 「500円」のやつは私達のような「使われ人」にとっては「こんなツアーどうやって行くんだ」というような、平日の夜遅くに出発して帰ってくるのは平日の早朝、などといういわゆる「弾丸ツアー」と呼ばれる条件のものなのである。

 だから、税金もサーチャージもコミコミで、というチケットが10000円、などといえば本当にお買い得だが、なかなかそんな美味い話は転がっていないのである。当然だ。相手も商売なのだから。

 ところが、そんな美味しい話が転がっていたのである。

 「笑ってトンへ号(仮名)」といえば、福岡と熊本を結ぶフェリーとして知る人ぞ知る存在だが、この船がやはりイベントとして年末年始片道2500円(税金・燃油料含)のチケットを発売したのである。私はこの船会社の会員であるから、こういうイベントの話は真っ先に知ることができるのである。

 しかも、フェリーといえば大体船中泊があって3泊4日と銘打っていても実際には船中泊1泊で実質2泊3日などということも珍しくないのだが、このチケットは昼福岡発夕方釜山着なのでその日の夜が現地で過ごせ、さらに帰りも1月1日に設定すればその日は臨時便で同じく昼釜山出発の夜福岡着なのでこれまた昼までは現地で過ごすことができるのだ。つまり、釜山港の近所にホテルを取れば12月29日7:00頃から1月1日10:00頃まで現地滞在である。これは半端な飛行機のツアーよりずっと条件が良い。

 迷わず購入。こうして年末年始は釜山で過ごすことに決定である。

 往路が2500円、復路は一番安いチケットはもう売り切れ。みんな目敏い。それでも6480円だからかなりの割安である。往復運賃が1人8980円。これは滞在時間を考えればもう限界と言って良いくらいの破格の安値である。

 玄界灘を行き来する船といえば波と船酔いの心配な人が多いと思うが、「笑ってトンへ号」は船体が大きいから1〜2メートルの波ならば揺れている感じはほぼ無い。ただし、3メートルを超えると変な感じの横揺れがして、これは汽車や車の揺れとは性質が違うから結構気色悪い。したがって自信のない人は酔い止めの薬を飲んでおくことをお勧めする。

 足が決まったら今度は宿である。

 前回泊まった「むにゃむにゃホテル(誰にも知られたくないので匿名)」はコスパ抜群なのだが、今回は発着が釜山港なので遠過ぎる。

 やはりここは「日本人御用達」の名声が高い「弁韓観光ホテル(仮名)」にするか。ここは少々古いホテルだが、スタッフ全員が日本語を喋れ、かつ親切である。釜山港から地下鉄で直通で4駅。荷物が多ければタクシーでも5000ウォン以内でかつ10分以内である。ここに決定。

 韓国の旅行サイト「オネスト」を通じて購入する。ここからだとウォン建で買える。年末年始料金なのに3泊2人400000ウォン。1人1泊67000ウォン。このとき交換レートが円に相当有利だったので、円で払った金は37496円で1人1泊6249円である。

 結局交通費と宿代で1人頭27728円。
 これに港湾施設使用料が日韓合わせて1人1000円、例の人頭税(出国税)が1人1000円。これに往復の地下鉄代を加えれば、食費とお土産代を除いた旅行代金は1人30000円也。

 福岡県民ならば旅行代金が安く済んだと大喜びなのだが熊本県民はそうはいかない。福岡までの旅費が掛かるのだ。

 高速料金が私の棲む町(むら?)最寄りの松橋インターから博多港のある築地インターまで2240円。往復4480円だがこれは2人で割れば2240円のままである。さらに3泊4日だと港の駐車場料金が4000円。1人頭だと2000円である。

 福岡県民の払わなくてもいいこの6480円を熊本県民は余分に払っているのである。勿論これにはガソリン代が加わる。今回私達は低燃費の「明くわ(仮名)」で移動したから多少やすくなったが、それでも2000円くらいはかかるのを覚悟しなければならない。つまり1人前1000円。

 これらを加えれば、安いといっても旅行代金は1人前33000円。

 この金額は熊本-ソウル間の航空路線が存在していた頃の格安ツアー料金を思わせる。あの当時は「何が格安だよ」と思っていたが、実は福岡から行くことを考えれば随分安く抑えてあったのだ。

 空港まで車で行って、無料で駐車して、重い荷物を車に積んだら愛しの我が家へ1時間半くらいで直行できた2019年6月以前が懐かしい。

 それにしても熊本-韓国間の路線の運休の早かったこと。もしかするとお互いの感情その他で無理を重ねていたのかもしれない。

 ここは前向きに福岡の出入り口を利用することにしよう。