銃があれば完全軍装の兵隊

 船の旅の何がいいかというと、やはり荷物が少々多くても大丈夫というところだろう。

 私達のような「下級国民」が韓国行きの飛行機に乗る場合、当然のようにLCC(格安航空)ということになる。LCCは無料受託できる手荷物の重量が少ない。中には手荷物を預けるのは有料というチケットもある。「福岡-ソウル間が500円!」などというチケットは例外なくこれである。 

 また、手荷物検査がやり過ぎではないかというくらい厳重である。自分でも把握していなかったようなちょっとした液体、ちょっとした突起物でも目ざとく見つけられ、「所有放棄(没収)」ということになる。飲み物食べ物もロビーで買ったもの以外は没収である。
 目薬・歯磨き粉・レンズ磨き・千枚通し(なんでそんな物があるのか自分でも驚きだったが)・釣竿など、様々な物を無念の思いで「放棄箱(本当にそんな名前なのか知らないが)に入れたものである。

 その点船は良い。勿論手荷物検査はあるが、「液体類持ち込み不可」というような類の意味不明な規制はない。食べ物・飲み物も持ち込みOKである。

 今回は冬の旅でかついつもより1泊多いため、衣類を沢山持って行く必要があった。
 それと、今回は免税範囲ぎりぎりまでマッコリを買ってこようと決めていた。韓国からわざわざ買ってくる価値があるのは「生」のものである。日本で売っているものとは味が全く違う。ただ、生マッコリを持ってくるためには、保冷剤とともに保冷材に包むという厳重な冷蔵措置を講じる必要がある。免税範囲は1人3本であるから計6本、つまり保冷剤も同じ数要るということで、これが1つ1Kgの重さがあるから計6kgである。マッコリが1本800gはするから6本で4.2kg。合計10.2kgである。飛行機だったら一般的な無料受託量は15kgだから、荷物の2/3以上が「マッコリ様御一行」で占められてしまうことになる。

 と、ここまで書いて、以前全く同じ文章を書いたことがあるのに気が付いた。失礼しました。ただし、当時は無料受託量が18kgだったような。だんだん世知辛くなってくるものだ。

 あれやこれやと必要なものを詰めているうちに、私の荷物も妻の荷物も持ち上げられないほど重くなってしまった。
 フェリーに乗り込むには階段を使わなければならない。エレベーターもあるにはあるが、1つだけなので相当の時間待っていなければならない。

 私達はマッコリを何本買ってくるかで何度か論争を繰り広げたが、最終的には私の「6本」説が勝った。妻もまた生マッコリが大好きで、しかも「あの味」は日本では出せないという意見の持ち主なので論争は初めから妻の圧倒的不利なのだ。帰りは私がリュックにマッコリを入れて持ってくる、ということで一件落着。

 さて、持っていく荷物は多いし、船は荷物の重量制限がないのでいつもより買い物量が多くなることが予想される。この場合はどこかを減らさないと現地での移動にも支障をきたす。

 私の心は決まっていた。カメラ関係を減らそう。

 私は普段散歩に行くときでもショルダーバッグのなかに一眼2個、標準レンズ2本、望遠レンズ2本、広角レンズ1本、超望遠レンズ1本、魚眼レンズ1本を入れて持ち歩いている。
 と書くと、巨大なバッグを肩に掛けて気息奄々で歩いている姿を想像する人もいるかもしれないが、私はそんな本格的なカメラ好きではない。
 まず私の1眼は「ペンテコステオバQ(仮名)」という普通の1眼レフの1/3くらいの大きさの「ナノ1眼(発売当初の謳い文句)」という奴で、2つ持っていても重量・体積とも普通の1眼レフ1個にも及ばない。したがってこれの標準ズーム・望遠ズームも普通のレンズよりずっと小さい。

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 標準ズームレンズがこんな感じである。焦点距離が最大で15mmだから如何に小さなレンズか分かろうというものだ。
 ただし私は普段はこのレンズを使わない。

IMGP6413

 普段私が使っているのはこういうレンズである。標準で焦点距離が13mmしかない。通常の一眼レフの標準レンズが55mmくらいあることを考えれば如何に小さなレンズか分かろうというものだ。
 これはDマウントレンズといって1960年代くらいまで動画を撮影するのに使われていた8mmカメラに装着するために作られた。「シネレンズ」と呼ばれる。私はこのDマウントレンズの蒐集では我が国で100本の指に入る大家なのである(蒐集家の推定数100人だけどね)。
 ちなみに上の写真は「世界最小Dマウント」の呼び声高い「日光る13mmF1.9(仮名)」である。

 Dマウントはガタイが小さいから、標準ズームのほかに望遠・標準・広角の3種を持ち歩いても知れているのである。

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 ただし超望遠である135mmはDマウントがないので、これも昔の「ほのぼのライカ(仮名)」に付けられていたLマウントという規格の、今のレンズより一回り小さなレンズを使用している。
 写真は「木星11号(仮名)」というアルミの削り出しで作った露西亜レンズで、同時代の国産レンズよりずっと軽量なので、旅行などに持っていくのに最適である。この焦点距離で手ブレせずに撮れるというのは奇跡に近い。超望遠はいつもの通りこれで行こう。

 ただし、今回は上述のように荷物が多くなりそうなので、このコンパクトなセットをさらに縮小することにした。

 まず標準ズームと望遠ズーム。
 この2つは動物が急に目の前に現れたときにそれを撮影するために持っているものだ。「動物が急に目の前に現れる」という記述から私が如何に田舎に住んでいるか分かろうというものだ。
 この2つは旅行の際には動く車の中から素早く撮影するのに重宝する。「オバQ」はローリングシャッターなので車窓に電信柱があったりするとぐにゃりと曲がって写ってしまう。これを防ぐためにはレンズシャッターが必要となるのである。
 しかし今回は車での移動は基本的にしないつもりなので、思い切ってこの2つは外すことにした。

 また、故障した時のためと「急に動物」に備えて持っている予備の「オバQ」も持って行かない。故障した時はスマホというテがある。これはカメラマニアを自認する私としては潔しとしないところではあるのだが、すこしでも携行品を減らすためだ。

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 では、残りの標準・望遠・広角はどうするか。私には最初から腹案があった。「歩こう3兄弟(仮名)」である。
 これは古い8mmカメラごと昼飯1回分くらいの値段で買ったら3個ともついてきて撮影可能だったものだ。ややピントが甘いが、ゴミの写り込みなどもなく綺麗に撮影できる。

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 「ブルムベアー」こと「歩こう13mmF1.9(仮名)」が今回の旅行で常使いにする標準レンズとなる。「ブルムベアー」が何であるかはあまりに幼稚な話で恥ずかしいので自分で調べていただきたい。

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 望遠は「歩こう38mmF1.9(仮名)」である。銘玉の誉れ高い「頭脳君」こと「頭脳38mmF1.9」ほどのシャープな映りはないが、それなりの美しい画面を作ってくれる。

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 さらに広角は「歩こう6.5mmF1.9」。4.5以上に絞ると「ケラレ」(画面の四隅が丸く黒く映ること)があるが、それより明るいと殆どない。

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 それとこのレンズである。
 全東亜にニックネームを募集したこのレンズは未だに名前がない。1つたりと返信がなかったからだ。

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 玉ボケが出る稀有なこのレンズは無名のままでこの旅行に加わるのであった。

 これで随分カメラ関係が軽くなった。

 結果からいえば、「嗚呼、ズームがあったらなあ」という場面もなかったわけではないが、そこまで困らなかった、というのが正直なところである。

 何故か。

 スマホがあったからである。最近のスマホのレンズの進歩は素晴らしい。

 だったらもうカメラはいらないんじゃ、という疑問を抱きつつ、釜山行きの朝を迎えたのだった。