花火でよかった

 さて、買いたいものは大方買った私達は、またホテルに帰って惰眠を貪る。
 何せチャガルチ市場から南浦洞まで荷物のぎっしり詰まったリュックを背負って徒歩で帰ってきたのだ。これで鉄砲を担いでいたら完全軍装の歩兵くらいの荷物である。
 肩凝りはもはや放散痛となって帽状腱膜を襲い、体重と荷重に耐えていた足はガクガクである。

 暫く意識を失ってから目覚めると、もう夕方である。

 昨日と同じように国際市場付近まで散策しながら食べ物屋を探そうかと思ったのだが、妻の足がもう限界だというのでホテルの近くの食堂を探すことにした。
 昨日入ったところも美味かったのだが、同じところに入っても面白くないので、新しい所を探すことにする。

 ところが新暦とはいえやはり韓国でも休日の正月である。普段より空いている店がぐっと少ない。

 牛が食いたかったので適当な店に入ったのだが、まあ可もなく不可もなしという感じで特に書きたいこともない。

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 最近韓国でもタレに漬けずに後付けの調味料で食べるのが流行のようだが、私はやはり古風にタレ漬けした「ヤンニョンカルビ」が好きである。 

 外食は早々に切り上げてホテルで二次会と洒落込む。

 まずはコンビニでつまみと酒を購入。
 韓国のコンビニつまみは相変わらず焼いていないか冷え冷えカチカチの魚の干物が多い。これは正直言って口に合わないので、つまみのところではなく冷蔵品のコーナーに向かう。

 あるある。日本には輸入禁止のポッサム(煮豚)やチョッパル(豚足)である。

 手を伸ばそうとしたときに気付いた。さっき牛を食ってきたのだ。しかも見かけによらず脂っぽかった。ここでさらに豚肉を食うのは健康上どうなのだろう。

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 肉はやめてチーカマにする。

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 チーズがあるのでチーズも買う(どこが健康上どうなのだろうじゃ)。 

 ホテルに帰って紅白歌合戦を観ながら妻と今年一年のことをしみじみと回顧する。私ももう50代後半だ。しみじみと解雇されないようにしなければ(©️いしいひさいち)。

 「日本人御用達」の「弁韓観光ホテル(仮名)」のTVではDHK(大本営放送協会)の番組が衛星で見られるから、大晦日にここで過ごせば紅白を観ながら年を越せるのだ。
 昼間図らずして蕎麦も食ったから、言うことなしの年越しである。

 紅白も終わり、「来る年行く年(仮名)」が始まった。急に眠気が襲ってくる。

 私は退屈なものの多い年末年始番組の中でもこれが最高に退屈なものだと思う。
 紅白の次番組なので視聴率は高いと思うが、視聴者の「うわの空率」という指標があったら断トツの一位なのではないだろうか。

 電気を消して寝入ったかどうかの時、突然の爆発音に飛び起きた。

 この音が何に一番似ていたかというと、20連発ロケットランチャーの発射音である。
 「シュンシュンシュンシュン、バババババババババ!」という奴だ。

 寝ぼけているから本音が出る。

 私はほんの一瞬だけだが北から飛んできたロケット弾ではないかと思った。
 妻は爆弾テロだと思ったらしい。
 この国は形式的にはまだ休戦状態なのだ。

 窓際に身を寄せて、音のした方を見上げる。

 爆発した火花が落ちてくる。
 緑と青と赤だ。良かったあ。花火である。
 これがオレンジが勝った黄色一色だったらヤバい。

 日本では新年に花火を上げたり爆竹を鳴らしたりする習慣がないので、あり得ない錯覚をしてしまったのだ。

 とんだお騒がせの2020新年であった。