パラサイト


 韓国映画「パラサイト-半地下の家族-」が大人気である。

 かくいう私も見に行った。

 私の棲む県は韓国や中国に関するイベントが開かれることもまずないし、たまに映画などが上映されても期間が極短いので、最初に公開された1週間の日曜日に大急ぎで行ってきたのだ。

 感想は、といえば、私は心温まるヒューマンな作品が好きなので、かなり嫌な後口だった。

 正直同時期に見た「私のおじさん」というB級ドラマの方がすとんと肝に落ちた。 

 ただ、退屈はしなかった。「息をもつかせぬ」というか、「手に汗握る」というか。
 アカデミー賞にも吃驚したが。

 閑話休題(もともとわたしはひとびとからだいぜっさんされるものをすなおにほめられないたいぷなのだ)。

 この映画に出てきた「チャパグリ」という喰い物が旨そうだったので作ってみた。

 拉麺とチャジャン麺(炸醤麺の韓国バリエーション)のミックスに高級牛肉をトッピングした料理である。

「私たちが考えてることはもうとっくに誰かが考えてるよ」という妻のいつもの言葉通り、巷にはこの食べ物のレシピが満ち溢れていたので、作り方は簡単に見つけることができた。

 この喰い物は韓国料理が好きな人なら誰でも一度は食べたことのある2つのインスタント麺から出来ている。

 一つは「オソリ拉麺(仮名)」。これは韓国のインスタント拉麺としてはあまり辛くなく、「漢城湯麺(仮名)」と並んで日本人にも人気の拉麺である。私も韓国の袋のインスタント麺を買うときにはこの2つか「仁拉麺マイルド(仮名)」を買うのだが、ここのところは「仁」の5個セットの安いのを某通販サイトで見つけたのでちょっと遠ざかっていたところだった。

 もう一つは「娑婆ゲッティ(仮名)」。中華料理である炸醤麺の韓国バリエーションであるチャジャン麺のインスタント版で、これまた日本でも広く、かどうかは知らないが、知る人ぞ知る麺料理である。
 私は仁川で食べたチャジャン麺に魅せられてしまい、色々なタイプのものを現地に買い出しに行ったり通販で取り寄せたりしたのだが、これはそれらのものに比べると私の中ではかなり評価が低く、最近は店にあっても買わないものの一つになっていた。
 何だかソースがザラザラボソボソした感じがするのだ。


 「オソリ」は確かに美味いが、「娑婆」から「チャパグリ」の味を推測してみると、それほど美味いものとは考えにくかった。

 ところが、半信半疑で作ってみたところ、これが実に美味いのである。

 特に「チャジャン麺は甘ったるくて嫌い」と感じている諸氏には是非お勧めである。

 「半地下」の中では巷で「美人奥様」と呼ばれている金持ち夫人が家政婦に命じて作らせるのがこの料理である。

 私は実はこの「美人奥様」こそが韓国の「上級国民」への「パラサイト」ではないのか、と思われるのだ。

 家族ぐるみのパラサイトはどうしても無理があり、この映画でのパラサイト家族のそれもやはりなかなか〇〇になっていくのだが(たしか監督がネタバレ厳禁って言ってたよな)、一族郎党を切り離してのそれはどうにかなる。
 これは別にジェンダーな話をしたい訳ではなく、「上級国民」に生まれなかった男の出世というのはまさにこれだからだ。

 東亜の男には自分の生育環境(要は家庭)と自分の職業環境を切り離すことでしか出世できない人たちがいる。
 分かりやすく言えば、自分の個人的な生活は配偶者に任せるか捨ててしまい、職場に没頭する人たちである。

 私は彼らを責めているのでもなければ、まして妬んでいるわけでもない。

 「上級国民」が自分の生育環境を意識的にせよ無意識的にせよ最大限利用できるのに対して、彼らはそのおのがじしのみで闘わざるを得ないのだから。

 かといって彼らにエールを送れるほど私に余裕があるわけでもないので、「身体に気をつけろよ」としかいえない。これを「パラサイト」というにはあまりにも気の毒だ(言ってるやんけ)。

 同じように、「美人奥様」の「パラサイト」も実は儚いものだったことをこの映画のラストシーンは暗示している。

 閑話休題(たべもののはなしじゃなかったのか)。

 「チャパグリ」は韓国軍の兵士の中から生まれた食物だという。
 おそらく2人の兵士が炸醤麺を2つ食べたかったのに偶々それが1個しかなく、残りの1個は拉麺だったのだろう。2人とも炸醤麺を食べたければ、必然的にこうなる。
 完全なる「ジャンクフード」である。

 ジャンクフードと高級牛肉のコラボ、に「美人奥様」の置かれた立場がよく表れているように見えるが、これは監督に聞かなければ分からないことなのだろう。

 閑話休題(はやくりょうりのはなしをしろよ)。

[材料]
1.韓国ラーメン。映画の中では「オソリ拉麺」が使用されていたが、「仁拉麺マイルド」でもいいような気がする。
2.チャジャン麺。映画の中では「娑婆ゲッティ」が使用されていたが、自分で作ってみた実感では、その他のチャジャン麺でも代用できるような気がする。ただし、中華の元祖ものは合わないかもしれない。それと、最低限麺の太さと形状は合わせる必要があるだろう。
 そうしないと駅のホームの蕎麦屋(饂飩屋)でたまにあるような、蕎麦の中に饂飩が混じっている、または饂飩の中に蕎麦が混ざっているという、あの何ともいえない不快な食感に悩まされる可能性がある。
3.高級牛肉。最初に作った時には偶々娘の嫁ぎ先から高級和牛が送られてきていたのでそれを使ったが、幸せだった。ただ、その後米国産の牛肉で作ったものもそれなりに美味かったので、「高級」に拘らなくてもいいような気もする。
[製法]
1.韓国ラーメンとチャジャン麺の麺と付属の具を煮立った鍋に放り込んで茹でる。約4分。煮汁を大さじ4杯くらい取っておく。
2.牛肉は肥後の赤酒大匙1と清酒大匙1匙と塩胡椒少々に10分ほど漬けた後、胡麻油を引いたフライパンで焼き色が付くくらいに焼く。
3.湯切りした麺を牛肉の入ったフライパンに放り込む。上から煮汁とラーメンのスープ半量とチャジャン麺のソース全量をかけ、炒める。
4.全体がよく混ざったら出来上がり。

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 貴方の韓国拉麺およびチャジャン麺に関する印象を完全に壊す味である。

 是非一度お試しあれ。