February 02, 2010

ゴールデンスランバー

1月31日 109シネマズ富谷で鑑賞

これは巻き込まれ型サスペンスの大逃亡劇であると同時に、仲間達との絆を描いた青春映画でもある。

少なくても2時間20分の上映時間が長く感じることはなかった。なので話しはよく出来ているのかもしれないが、私はどうも乗れない部分が多かった。

この映画では主人公が窮地に追い詰められるその黒幕というか、国家権力についてはほとんどなにも語られない。(原作は未読だが、多少は語られているのだろうか?)これは、ヒッチコック映画における「マクガフィン」の扱いであるという指摘があった。
なるほどと思った。しかし、それを言うならこの映画、メインテーマである学生時代を一緒に過ごした仲間達との「絆」などもすべて物語における「マクガフィン」すなわち「器」でしかないのではないかという疑念が否めないのである。

盲目的に仲間を信じるということは、もちろんあることだが、みんながみんなこの逃亡者の味方になり自らの危険も顧みず手助けする側に回ると言うのは不自然である。相手は国家権力であるなら、普通に考えればどう頑張っても逃げようもないのであり、それならば、仲間を思うがゆえに、警察の手先になって主人公を追いつめる側に回る人間とか。そういう人間はいなかったのだろうか。人間の行動としては、そっちのほうがより自然である。そして、そういう人間が一人でもいれば、物語はより重層的になるのではないだろうか?

行動を共にする通り魔殺人犯役(濱田岳)の描き方なども含めて、この作品の人間というのは、まるで書き割りの絵のようで、全然リアリティの感じられない平面的な人間ばかりである。
主人公の父親(伊東四朗)が、TVカメラに向かって演説をぶつシーンなども、異常な嘘っぽさである。もちろん、肉親である父親が主人公を信じるというシーンはあっても良い。しかし、人間は世間で生きているのであって、仮に息子の無罪を信じていても、犯罪者として警察に指名手配されている息子に対して、TVカメラに向かってこんな結婚式のスピーチみたいな呑気な演説をぶつわけがない。

本作は、人間の心理や行動を掘り下げて描こうという意志が希薄である。それはこの中村という監督が一つの作風として用いている手法であるかのようにとれなくもない。逃げている堺雅人も、あるいは元恋人役の竹内結子も、警察に追いつめられているという悲壮感は全く感じられない。ノンシャランで、行動すべてにある軽みを帯びている。それはうがってみれば、人間の心理的な複雑な葛藤などは、性善説に基づくエンターテインメントを円滑に進行させるための阻害にしかならないという意図にも取れる。

ヒッチコックは映画を撮るたびに脚本家やプロデューサーたちと、「マクガフィン」について論争になったという。もちろんエンターテインメントなのだからこれで良いという見方も出来るのだろうが、「友情というものは尊く、国家権力は個を押し潰す悪であり、人間とは自らの危険も顧みず正義を行うものだ」という単純な世界観が前提であり、「マクガフィン」になっている物語にはまったく共感することも買うこともできない。伊坂幸太郎の原作というのもそういうものなのだろうか?

ビートルズの「ゴールデン・スランバー」は斉藤和義によるカヴァー・ヴァージョンである。ビートルズの楽曲使用料はバカ高くて、ハリウッド製の「アイ・アム・サム」でもカヴァーしか使えなかったというのだから、これはやむを得ない措置である。しかし、斉藤ヴァージョンは聴くに堪えない。これは出さないほうが良かったのでは。
個人的にいつもふらふらしている地元がいっぱい画面に出てきたので、それは楽しかった。

shinkimu1125 at 05:25│Comments(4)TrackBack(9)clip!cinema 

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この記事へのコメント

1. Posted by ぷくちゃん   February 02, 2010 06:10
こんにちは。結構辛口ですね。(爆)

私は原作を読んでいるのですが、時系列をもっと複雑にしてあって、あと後継首相のその後(確か結局周りの者がみんな死んでいってしまう)のことも書かれ、面白く読みました。

さて映画。私は自分でも恐ろしくおセンチになっています。これは年のせいでしょうが、昔なら背筋が寒くなるような映画でも、結構感動してしまいます。この映画も同じ。出来はともあれ作り手の思いが感じられてよかったなあ、と。

>個人的にいつもふらふらしている地元がいっぱい画面に出てきたので、それは楽しかった。

これは思います。(爆)昔 ビーバップ・ハイスクールのロケを近所でやった時に見に行きました。ミポリン、かわいかったなあ。(←脱線)
2. Posted by しんいちろう   February 02, 2010 07:13
ぷくちゃん、こんにちは

一種のフェアリー・テイルとして、こういう話しもあっていいのかもしれないですが、どうも安易にハリウッド映画の悪いところを真似してるという気がしました。

でも、私も最近は、音楽でも映画でも、小難しい理屈よりも、プリミティブな直感を大事にするようになりましたよ。

映画同好会に、私もまぜてください。ぷくちゃんも機会があれば仙台にも遊びにきてくださいね。牛タンを食いながら死ぬほど飲みましょう。
3. Posted by リヨン侍(MAMAN書き)   February 03, 2010 00:12
はじめまして。

本作についてはほぼ同じ感想を持ちました。つまり、追いかける機構側も、逃亡を手伝う仲間たちも動機づけや説得力が希薄だなと感じています。

クライマックスの花火のシーン等を見ると一種ギャグの領域なので、これは青柳に仕掛けられた壮大なドッキリだと捉えると、警察だけでなく晴子も保土ヶ谷もキルオも全員が仕掛け人なのだと考えるといきなり不自然さが逆にしっくり来るようになります(笑)。

原作は未見ですが、何となく監督はそれを意図して作っているようにも感じるんですよね。
4. Posted by しんいちろう   February 04, 2010 07:42
リヨン侍さん、コメントありがとうございました。

ブログ拝読しました。どっきりカメラ説、なるほどと思いました。ほんと、あの花火にいたってはもはやギャグでしたね。
まあ、一種のファンタジー、マンガとしてみれば良いのかもしれません。リアリズムで考えると、最後の「よく出来ました」の判子とか、ええっ?って思いますもん。どう考えても、あんな目に遭わされて「よく出来ました」どころじゃないですよね。(整形オチは、「ブラックジャック」を思い出しました。)
まあ、個人的にはマンガとしてもそんなに良く出来たものとは思えませんでしたが。

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