名和高司氏の『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』をKindle Unlimitedで読了。

この本は時々Kindle Unlimitedで無料となっており、気になってはいたのだが、いかにもコンサル的な本で敬遠していた。

著者の本としてはそれよりも前に最近の流行りのテーマである「パーパス」に関する本を読んだ。

ーーーーーーーーーー
名和高司氏の『パーパス経営―30年先の視点から現在を捉える』読後感 : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/57980176.html
ーーーーーーーーーー

思った以上に幅広く現代経営学を取り入れながら、論理的に書かれていたため、著者の本をもっと読んでみたいと思い、本書を手に取ったもの。

一橋ビジネススクールのEMBAコースの基礎的な内容を網羅したもの。

そして、単に理論を並べるだけではなく、「コンサルを超える」という副題にもあるように、コンサルを意識した書き方になっている。

そのコンサルの中でも著者がコンサルを学んだマッキンゼーとシニアとして勤めたBCGという世界の2大戦略コンサルの特徴と絡めながら説明しているので、特にコンサルを目指すような若者には面白いと思う。

僕自身はもうおじさんなのでいまさらコンサルではないが、副題にもあるように「コンサルを超える」という視点で、彼らを使い倒すためにそのために必要なことを学ぶという視点でこの本を読んだ。

知識的なところでは、これまで読んだ本に書かれていることで知っていることも多いが、上にも書いた通り、コンサルが実際にどう使うかという視点で書かれているので、とても興味深く読むことができる。

そして、個人的に面白かったのは、大前研一氏についての章。

下記の本の中でも「エンペラー」として唯一出てくる日本人であるが、名和氏はその凄さを具体的に書いている。

ーーーーーーーーーー
ダフ・マクドナルド『マッキンゼー』読後感 : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/35974150.html
ーーーーーーーーーー

大前氏は自分でその凄さを示しているが、彼自身を評価する人はあまりおらず、この章は面白かった。


そして、第3部こそが本書のクライマックス。

まずは「コンサルを目指すあなたへ」。

最近は東大で最も人気がある職種とコンサル。

ーーーーーーーーーー
WEB特集 日本で唯一の成長産業?知られざる“コンサル業界”に迫った | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210611/k10013078681000.html
ーーーーーーーーーー

その条件とは、
ーーーーーーーーーー
・コンサルになるための条件は、「左脳(ロジカル・シンキング)」「右脳(パターン認識)」「原体験(知的好奇心)」の三つである 
・うわべだけ見て通り過ごさずに、好奇心を持って生きていることがコンサルに大事な条件である。るつぼ体験に代表される「原体験」をしておきたい 
・いいコンサルになるために、IQ・EQがあることは必要条件でしかない。JQを持っていることが加わってはじめてコンサルに求められる条件を満たすことができる
ーーーーーーーーーー
というもの。

果たして東大卒業生はこの能力が備わっているか。

むしろ難しいかもしれない。

そもそもコンサル自体は目的ではない。

あくまでもクライアントがいて、彼らをサポートする仕事。

その意識はとても重要である。


だからこそ、次のステージの「コンサルを変えたいあなたへ」とならねばならない。

ーーーーーーーーーー
・洞察力・共感力・人間力が自身の資質を磨くための大事な能力である 
・予定調和的に何かを計画したところで、結局面白いものは出てこない。本当に新しいことをしようと思ったら、セレンディピティ(予期せぬ出会いや偶然性)が必要 
・個人のスキルは、ケイパビリティをブラッシュアップしていくことで高められる。「インプット時間の規定」「インプットタスクの絞り込み」「プロダクティビティの向上」により、個人の成長限界を突破できる 
・反復や同質的な経験はポテンシャルの広がりを狭めてしまう。もう一度ゼロベースで新しいものにチャレンジする勇気を持つことで、新しい風景が開ける
ーーーーーーーーーー

しかし、本書はここで終わらないし、我々もそのさらに先を目指さないといけない。

それは、「社会課題を解決したいあなたへ」というように、単なる自己の成長だけではなく、社会の課題を解決してこそ。

ーーーーーーーーーー
・食料問題、貧困問題、医療問題といった社会課題に対して、コンサル技である問題解決は有効な解決手段となる 
・社会課題への関心は、マーケティングの世界でも高まっている。企業が解決すべき問題は、顧客課題から社会課題へとシフトしつつある
 ・社会課題に対し、公共事業やNPOでは収益を継続して生み続けることができない。持続的な解決をおこなうためには、CSV(社会価値を高めつつ、経済価値、すなわち自社の企業価値を高めようとすること)を実現することが不可欠 
・持続可能な社会の実現に向けて、人間の英知を結集していくこと、そしてそのような志を持った社会課題解決型の人材が求められている
ーーーーーーーーーー

本来であれば、東大卒業生の目指していた官僚や法曹界の目的は、まさに行政や司法として社会の課題を解決するための仕事であった。

しかし、今そういった職業にそのような使命を見出せなくなっているところがその問題だろう。

そこで彼らはどうするのか。

僕に言わせるとより下の次元に降りているのではないかと思えて仕方ない。

もちろん社会の課題を解決するには、いろんな方法がある。

頭の良さという能力を授かったものとして、コンサルという手段を提供するところで終わらずに、そこでいろんなことを学んで、大きな社会問題を解決するために、その能力を使ってもらいたいものだ。


僕自身も、まだまだ社会の課題を解決するために貢献できると信じている。

本書で学んだことも少しでも吸収して、そうなれればと思う。


ーーーーーーーーーー
コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法   名和高司 https://www.amazon.co.jp/dp/B07FD919GK/ref=cm_sw_r_tw_awdo_D9ZYNB8S0MG7CN74C7ZP @amazonJPより
FullSizeRender
ーーーーーーーーーー

2月から3月にかけて大きなシステム障害を立て続けに起こしたみずほ銀行が、再発防止について報告書を公表した。

ーーーーーーーーーー
株式会社みずほ銀行におけるシステム障害にかかる
原因究明・再発防止について
https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20210615_2release_jp.pdf
ーーーーーーーーーー

「一連の本システム障害に通じる原因として、
(1)危機 事象に対応する組織力の弱さ、
(2)IT システム統制力の弱さ、
(3)顧客目線の 弱さ、の 3 点が存在し、さらにその根底には
(4)それらが容易に改善されない 体質ないし企業風土
があるものと指摘しております」としている。

要は、システム自体の問題ではなく、それを運用する人、組織、さらには企業風土の問題だという。

そうは言われていたが、そこまで断じたことは潔しというべきか、また同じことを繰り返し言っていると見るべきか。

そのうえで再発防止策を出しているわけだが、これも総花的で何も目新しい具体的なことを言っていないように思える。


FullSizeRender

やはり一番の問題は、この内向きの組織風土をどうするかということなのだろう。

ーーーーーーーーーー
みずほATM障害、頭取の事態把握はネットニュース経由:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASP6H51ZCP6HULFA011.html
ーーーーーーーーーー

システム障害は当初、行内での影響評価のランク付けが「A2」と判定された。最も重い「S」、それに続く「A1」より下の位置づけ。経営への影響は及ばないとみて頭取への報告は必要とされなかった」ということで、頭取は「自らインターネットニュースを見ることにより13時30分に自行ATMに障害が発生している旨の情報を認識するに至った」というのはちょっと信じられない。

(この時点で)それまでに収集した情報を整理した上でより正確な判断、すなわち(頭取への連絡が必要な)A1以上の判定をすべきだった」というよりも、状況が想定よりも深刻になったら、判定を厳しくするなどして、必要なエスカレーションをすべきなのである。

これは重要度を測ることを誤っただけなのか、もしくは社内的に大きな問題を挙げたくないといあ思いでも働いたのかわからないが、顧客インパクトを無視した判定と言わざるを得ない。

その判定が甘かったからなのか、行員の動きも鈍かったようだ。

ーーーーーーーーーー
「緊急メール」に誰ひとり動かず みずほ銀障害、顧客軽視の風土浮き彫り:東京新聞 TOKYO Web https://www.tokyo-np.co.jp/article/110790
ーーーーーーーーーー

緊急メールの内容次第では動くはずもない。

やはり初動は極めて重要である。

これだけ重大な事故なので、当山処分も重い。

ーーーーーーーーーー
みずほ顧客軽視、過去の障害放置 社長ら11人減給処分: 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB159R40V10C21A6000000
ーーーーーーーーーー

みずほは社外取締役で構成される指名委員会を交え、4月以降も任期を延ばしていた藤原氏が月内にも退任する人事案を検討していた。総会の約1週間前には処分を含めた人事案を決める方向で調整を進めてきた。しかし同庁内には監督官庁が検査結果を示す前に、みずほが決めることに難色を示す向きもあった」、「金融庁内には「持ち株会社のトップが銀行トップより責任が軽いことはない」との声もある。金融庁からの事実上の「待った」を受け、みずほは人事案の公表を見送らざるを得なくなった」というが、個人的には金融庁は入り込みすぎだと思う。

ーーーーーーーーーー
役員等の異動に関するお知らせ
https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20210615release_jp.pdf
ーーーーーーーーーー

確かにここにはホールディングスのトップや銀行頭取の移動はない。

報告書の別紙に下記のような処分が掲載されている。

FullSizeRender
確かに金融庁は銀行の人事に対する影響力を行使できる。

ーーーーーーーーーー
銀行法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=356AC0000000059
(免許の取消し等)
第二十七条 内閣総理大臣は、銀行が法令、定款若しくは法令に基づく内閣総理大臣の処分に違反したとき又は公益を害する行為をしたときは、当該銀行に対し、その業務の全部若しくは一部の停止若しくは取締役、執行役、会計参与、監査役若しくは会計監査人の解任を命じ、又は第四条第一項の免許を取り消すことができる。
ーーーーーーーーーー

したがって、本気で解任したければ、行政処分を出してクビにする前に銀行自身によってやめてもらっては困る時もあるのである。

果たして今回の金融庁の人事介入は何を想定してのことかはわからないが、決まっていた人事異動ではなく、CEOと頭取をクビにして、グループ会社に行くなどをさせたくないのだろうか。

本件はまだ業際処分も出ていないので、金融庁がそれに向けて何を準備しているのか、そして何が出てくるのか。

目が離せない。


過去の本件に関するブログ
ーーーーーーーーーー
みずほの対応状況の公表。今度こそ本当に対応できるのか : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/57888065.html

みずほシステム障害の責任の取り方は : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/57818925.html

みずほのシステム事故の原因は印紙税の節約のため? : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/57792411.html

みずほ、三度目の正直とはならず : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/57763142.html
ーーーーーーーーーー

法人の情報共有についてのメガバンクと大手証券会社の争いはひとまずはメガバンク側の勝利となった。

ーーーーーーーーーー
融資や株式一体で提案 「銀・証連携」金融庁が解禁案: 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB115PY0R10C21A6000000
ーーーーーーーーーー

野村などはあまり抵抗しなかったのだろうか。

ーーーーーーーーーー
金融庁のファイヤーウォール規制に関する議論は銀行と証券のエゴのぶつかり合いか : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/58068119.html
ーーーーーーーーーー

いつも思うのだが、こういう記事を掲載するときに、電子版では少なくとも役所のものなどは、元ネタのリンクくらい掲載するようになってくれないものかと思う。

報告書は下記の通り。

ーーーーーーーーーー
金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第11回)議事次第
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-system/siryou/20210614.html
ーーーーーーーーーー

FullSizeRender
これがどう法改正され、政省令に落とされ、自主規制に任されるのか。

野村や大和がおとなしかったのは、自主規制に落とすときに自分たちのいいようにしようと思ったからか。

ーーーーーーーーーー
日証協新会長に野村の森田氏選任: 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB146KN0U1A610C2000000
ーーーーーーーーーー

このように自主規制団体の日本証券業協会の会長は野村か大和。

ここを押さえているから、最後は厳しい自主規制で縛り付けるつもりだろうか。


ファイヤーウォール規制ばかりに目を取られがちだが、個人的には他にも興味深いものがある。

ファイヤーウォール規制の部分では、外務員の二重登録問題も緩和されそうなのはいい。

情報共有同意のデジタル対応も助かる。

ホームベースルールの廃止も実務的にはかなり役に立つ。


報告書の前半の成長資金の部分では、特定投資家制度の緩和が盛り込まれている。

ーーーーーーーーーー
プロ投資家 : のとみいの日記 http://blog.livedoor.jp/shinkozo/archives/24746562.html
ーーーーーーーーーー

このブログを書き始めた2013年に書いたもので、実際に規制緩和要望も出していた1年ルールにおいて他社経験も見ることができるようになりそうである。

また、特定投資家になるメリットを全く感じさせなかったが、プロ向けの投資商品も柔軟に対応できるようになりそうである。


まだまだざっくりした報告書であるが、具体的なことも書かれており、ぜひ早急に法律改正をし、政省令も一気に作ってもらいたい。


最良執行方針の報告書はまた今度じっくり読んでみたい。

↑このページのトップヘ