いつになく風の強い横須賀。 
太陽はすでに夏の表情を見せ始めている。 

そう、今年もあの人の言葉を聞くためにここ久里浜に来た。 
今年はたくさん話してくれるのだろうか。 

ー実行委員長ご無沙汰しています。 

こちらこそ。一年ぶりですね。 

ーいよいよ今年もカンファの季節ですね。 

まあ、そういえばそうですが。 

ー今年はいつになく取り組みが早いようで。 

取りかかりは早かったんですがー 

ー何かあったんですか 

いやいや。今年はなかなかいろんなことが決まらなくて。 

ーほう、いよいよ内部分裂ですか。 

そんなことではないですよ(笑)。しかし、考えてみると、これまでだって 
一回も統合されたことはないですからね。 

ー確かに。 

何回もご参加いただいた方にはよくおわかりかと思いますが、いわゆる一般通例上の研修会というものの形からはすべて遠いですからね、信州カンファは。最近歳のせいか昔話が多くなりましたがー 

ーはい、はい。 

考えてみると、最初の数回は打ち合わせ0でやってましたからね。 

ーその話を聞くたびに、いつも驚かされます。 

しかし、今回の打合会ほど、何も決まらなかった打ち合わせもありませんでした。テーマ、大喜利、テーマデザイン・・・何にも決まらなくて。昼から集まっておしゃれなカフェでお茶をし、夜は素敵なイタリアンで会食。だいたいこういうおしゃれな店を選ぶのは矢島先生ですが、しかし、何も決まらない(笑)。ほっこり9人が集まって、どんだけ仲良しなんだっ! 

ーそれじゃ困りましたね。 

はい。しかし、実はここでの何も決まらない時間こそが大事で。 

ーほう。 

その後のメールのやりとりでテーマ、大喜利等が決まりました。 

ーそれはよかったです。 

しかし、今回初めて大きく揉めたのがー 

ー何です? 

付録のデザインー 

ーほう。 

具体的に、付録がなんなのか、デザイン云々は当日までのお楽しみなので言えませんが、このデザイン決定に至るまでの経緯はキューバ危機並みの展開で。 

ーそこまで! 

最終的には実行委員長と本田先生との、これまで一度もなかった電話会談ー 

ーケネディとフルシチョフ! 

今回のデザインがそれで復活しました。 

ーこの本筋とは全く関係ない部分での盛り上がりも信州カンファ独自ですね。 

それは褒め言葉として受け止めたいと思います。 
確かに、本筋とはまるで違うんですがー 

ーはい。 

そもそも、本筋と脇道は違うものなんでしょうかね。 

ーといいますと? 

特別支援教育に限らず、公私、中央、地方と研修会なんかもどんどん行われていますが、その中身のクオリティは高くなってますよね。 

ーそれはそうでしょうね。 

目的、ねらい、ターゲットの明確化ー 

ー当たり前ですよね。しかし。 

しかし、何です? 

ー信州カンファは真逆・・・ 

確かに。 

ー正直なところ、初期から見てもどんどんと奔放度が上がってませんかね。 

そういわれればそうですね。各講座のタイトル見てもそう。特別支援のニオイのしないこと、しないこと・・・ 

ー世はICTだ、IOTだって騒いでますよ。信州カンファに来ると、そういった最新知識を学べるっ!なんて形にした方が人が集まると思いますよ。 

確かにそうかもしれませんね。我々の会は「ローカルで弱小で」ってネットでも馬鹿にされていますかから。最近もある人からも、「杉浦さん達のやってる、あれ、なんて言いましたっけ、信州なんたらって会」ってな言われよう。10年近くやってるのにね(笑)。たくさん人を集めて、最新のことをというのは確かに研修会運営の方向性の一つであることは確かでしょう。しかし、果たしてそうなんでしょうかね。 

ーといいますと。 

具体的で、目的的な研修会がどんどん増えている。場合によっては、それが資格、ライセンスみたいなものにつながることもある。確かに素晴らしい。しかし、その割に支援の改善をリアルに感じることはあまりないような。 

ーふうむ。 

新しい知識、情報、技術。これらが発展することは素晴らしい。じゃあ、それを研修でっていうけれど、その学び方自体がすでに古いし、社会の変化について行けていないようにも感じます。嘘でも流れに乗ってこうとすれば、速く、多くとなる。 

ーううむ。 

もともと持ってないものも付け焼き刃で繕うことになる。私的な会に限定して言えば、もともと有志で始めたはずなのに、内容を補填するために外から人を呼んでこざるを得なくなる。人は集まるでしょうが、それって本当に話したいこと、やりたいことができるのかと。ある意味ではー 

ー何ですか? 

小さく、弱くってことが大事なんじゃないかと思い始めたんですね。そのきっかけになったのがー 

ーまさか・・・ 

そう、落語なんです。 

ー初回から迷走・・・ 

〈つづく〉