映画を観に行った。

歳を取った小豚のチャールストンが、バンドメンバーと仲直りする話。そして世界中が彼達を待っていた。

不思議なお話だった。バンドの映画なのに、暴力も、セックスも、ドラッグやアルコールも(5パーセント以下)、ハイになってはしゃぐシーンも出て来なかった。

何かしらのためになる知識も、うっとりするような色彩や装飾も、味わい深い名言も出て来なかった。


その映画館は爆音で映画を流した。ただ、メンバー達は余り会話もしなかった。時折、チャールストンが飛ばすウィットに飛んだジョークが、静けさを際立てた。

そして静けさが、爆音を際立てた。

死ぬ事も無く、解決する事も無く、腹に溜め込んであった毒は、今ではチャールストンやキムチ豚の体中の血管を流れている様だった。帰るべき日常なんて、豚野郎にはあるはずも無かった。手品師なんてもっとそうだ。

そんな彼達を、世界中が待っていたので、俺は少し泣いた。幸せな話だった。