2014年01月
食道がんの手術は、食道の大部分を切り取り、胃を細長く持ち上げてつなぐ。肝臓移植を受けると胃と肝臓が癒着することが多く、手術は極めて難しい。また、移植後は免疫抑制剤を飲み続けているため、感染症への細心の注意が必要だという。
手術を受けたのは60歳代男性。2003年に食道がんが見つかったが、肝硬変があり手術は困難と判断され、放射線治療などを受けてきた。肝硬変の悪化か ら、08年に西日本の大学病院で生体肝臓移植手術を受けた。肝臓と胆管の縫い目がうまく閉じないなどの問題も起きた。13年、食道がんが再発。順天堂大に よると、複数の病院で手術は困難とされたが、患者の強い希望で13年12月に手術を実施した。手術は9時間9分かかったが、手術後は順調に回復し、約1か 月後に退院したという。
梶山教授は「肺と食道の癒着がひどく、時間がかかった。無事終わって良かった」と話す。
温泉法では、温泉施設には成分表と入浴を避けるべき症状(禁忌症)、入浴や飲用上の注意書きを掲示するよう定めている。
現在の掲示基準は、温泉療法で効果があるとされる症状(適応症)と合わせて1982年に作られたが、「医学的根拠に欠ける」という指摘があった。そこで環境省は日本温泉気候物理医学会に調査を委託するなどして内容を見直した。
同社によると、研究に参加した医療施設の営業担当社員18人のうち、8人が医師からデータを預かり、研究チームの事務局に届けていたという。研究計画では、データは医療機関がファクスで直接送付すると決めていた。
さらに、2013年2月~6月、コーヒーチェーン店のチケット(9千円分)や会食代(計2万5千円)を賞品として、研究への協力を社員に競わせるプログラ ムを実施したという。同社は「不適切な行動で、患者の命に関わる医薬品を開発・提供する会社としてあるまじき行為」とした。
混合診療の拡充で患者の治療の選択肢を増やす狙いがある。同会議は治療法の安全性の情報を患者に伝える仕組みなどを議論し、3月に提言する。
国は混合診療を原則禁止しており、患者が保険適用外の治療を受けると、診察や入院の費用も保険がきかず全額自己負担になる。
新制度では、保険適用外の抗がん剤や手術ロボットなどの治療について、医師と患者が合意すれば速やかに混合診療として認めるようにする。患者個々の病状に 応じて国の関連機関に申請する仕組みが想定され、治療法の安全性や有効性をチェックする仕組みも別に検討する。新制度に対し、厚生労働省は「患者を守ると いう視点を踏まえて対応する」としている。
厚生労働省は17日、生理痛の治療薬「ヤーズ配合錠」を使った女性3人が、血の塊ができる血栓症で死亡した、と発表した。
同省は 「薬との因果関係は否定できない」として、医療機関に対して、足の急な痛みや突然の息切れ、手足のまひが起きた場合は使用を中止し、救急医療機関を受診す るように使用者に伝えるよう通知した。製造販売元のバイエル薬品(大阪市)には、添付文書に死亡のリスクを伝える警告を加えるよう指示した。
発表によると、3人は10歳代~40歳代で、生理痛などで使い始めたが、肺動脈や足の静脈などの血栓症で2013年2~12月に死亡した。このうち、20歳代の女性は使用2日後に頭痛が起き、13日後に脳の血栓症で死亡した。
韓国では全羅北道のカモ農家で17日、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N8型)が検出されたのに続き、道内の別のカモ農家からも相次いで感染の疑 いのある事例が見つかり、周辺の貯水池で野生の鳥類が大量死しているのも見つかった。渡り鳥が南方に移動する時期とも重なり、拡散のおそれがあるという。
李桐弼(イドンピル)・農林畜産食品相は19日の会見で「全羅北道、南道はカモ農家の密集地域。全国への拡散を防ぐため緊急措置が避けられない」と説明し た。移動中止命令は家畜伝染病予防法に基づく措置で、命令に違反した場合、1年以下の懲役や500万ウォン(約49万円)以下の罰金が科せられるという。
国立感染症研究所などの研究チームは、鼻に吹き付ける新しいタイプのインフルエンザワクチンを開発し、重い症状を起こす恐れがある鳥インフルエンザ(H5N1)に有効であることを臨床研究で確認した。
既存の注射型ワクチンが感染後の重症化を防ぐのに対し、新ワクチンは感染そのものを防げる可能性がある。5年以内の実用化を目指している。
同研究所の長谷川秀樹部長らは、感染力をなくしたウイルスと、ウイルスを粘膜に付きやすくする薬剤を混ぜたワクチンを開発し、健康な人の鼻に吹き付ける研究を計画。H5N1のワクチンを20~70歳の32人に3回接種した。
東北大東北メディカル・メガバンク機構が昨夏、宮城県南部の公立小中学校の子ども約1万3千人を対象にアンケートし、32%から回答を得た。
その結果、仮設に住む子どもでは、アトピーの割合が32・3%、保健師らによるメンタルケアが必要な割合が25・8%に上り、仮設以外に住む子どもでの割合を大きく上回った。
iPS細胞に染色体異常の治療という新たな臨床応用の可能性があることを示す成果で、13日の英科学誌ネイチャー電子版に論文が掲載された。
この染色体異常は、2本1組の染色体のうち1本の両端がくっついて環状に変形する「リング染色体」と呼ばれる。脳など様々な臓器に障害が生じ、精神遅滞や発育不良を起こす。
チームが、リング染色体で重い脳障害などがある患者3人の皮膚細胞からiPS細胞を作製したところ、作製されたiPS細胞でリング染色体が消失。正常な方 の染色体が2本になっていた。ただ、通常は父母から1本ずつもらう染色体が、片方の親から2本もらった状態になるため、完全な正常化とは言えないという。
県警生活安全企画課によると、昨年の自殺者は男性200人、女性97人。年齢別では80歳以上が58人(前年比6人増)と最も多く、65歳以上が133人で全体の約45%を占めた。
遺書や遺族への聞き取りでまとめた動機別(複数選択可)では、病気などの「健康問題」が151件で最多。事業の失敗や借金苦などの「経済・生活問題」37 件、「家庭問題」35件と続いた。職業別では、無職者199人(前年比16人減)、被雇用者67人(同1人減)、自営業者30人(同2人増)だった。
神経幹細胞は初めは主にニューロンを作る。だが、次第にニューロンの活動を支える「グ リア細胞」ばかり作るようになる。数も減り、大人では脳のごく一部でしか残っていない。チームは、マウスの神経幹細胞を使い、ニューロンを作り出す初期の 状態で必要なマイクロRNA(リボ核酸)という分子を特定。衰えてニューロンを作らなくなった神経幹細胞でこの分子を働かせると、ニューロンを作る状態に 戻った。
神経幹細胞はiPS細胞などで作れるが、そこからニューロンを効率的に作る手法がなく、認知症などの治療や薬づくりの壁になっ ていた。今回の仕組みはヒトでも同様に働いていると期待され、新たな手法の開発につながる可能性がある。岡野栄之・慶応大教授は「この分子を神経幹細胞が 残っている海馬などで働かせられれば、記憶回復なども見込めるかもしれない」と話す。米科学アカデミー紀要で発表する。
妊婦の採血で胎児の三つの染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前検査を県内で唯一実施している熊本大病院(熊本市中央区本荘)で、受け付け開始後約1か月間に12人が検査を受けたことが分かった。
熊本大病院の受け付け開始は昨年12月6日。病院によると、今月8日までに県内外の16人が検査を希望した。いずれも35歳以上の高齢妊娠だった。検査を 受けた12人のうち同日までに10人の結果が判明し、このうち1人が胎児に三つの病気のいずれかが疑われる「陽性」の判定だった。
検査を 担当する同病院の大場隆准教授によると、検査の希望者数は事前の予想の範囲内だった。ただ、他の病院で予約が取れなかったとして熊大に来た県外の女性がい たのが意外だったという。大場准教授は「検査自体は今後、定着していくだろう。カウンセリングで十分な情報を得た上で、受検するかどうか冷静に判断しても らいたい」と話している。
検査の対象となるのは妊娠10週目以上の35歳以上の妊婦らで、熊本大病院の費用は約20万円。妊婦の血液にわずかに含まれる胎児のDNAを調べ、妊婦の腹部に針を刺す羊水検査に比べて簡便で精度が高い。ただし、陽性だった場合は羊水検査を経た上で最終判断する。
新型出生前検査は昨年4月に始まった。実施施設の医師らで作る共同研究組織「NIPTコンソーシアム」の調査によると、9月末までに全国で約3500人が検査を受けた。11月下旬の時点で日本医学会に検査の認可を受けた医療機関は37ある。
治験を実施するのは、山下敏彦教授(整形外科)らのグループ。患者から数十ミリリットルの骨髄液を採取して、主に骨や脂肪などの細胞になる「間葉系幹細胞」を分離する。2週間かけて1万倍に増やし静脈に点滴する。
グループは、間葉系幹細胞が脊髄の傷ついた部分に自動的に集まり、損傷した組織内で神経系細胞に分化して組織を修復する作用があると説明している。発表によると、ラットの実験では、運動機能の回復が確認されたという。
新潟大医歯学総合病院は8日、妊娠中に早期の子宮頸(けい)がんが見つかった2人の女性の子宮から、胎児を残したまま子宮頸部を切り取る手術に成功した、と発表した。
2010年の大阪大病院以来の成功となり、担当した新大医学部の榎本隆之教授(57)は「新たな治療の選択肢となる可能性がある」と話している。
手術を受けたのは、いずれも30歳代のカナダ在住の日本人女性と大阪府の女性。カナダの女性は妊娠9週でがんが見つかり、15週の昨年11月27日に手術 を受けた。大阪の女性は妊娠15週でがんが発見され、17週の12月27日に手術を受けた。6日現在、いずれも女性と胎児の経過は順調で、37週目に帝王 切開で出産する予定。
榎本教授によると、初婚年齢の高齢化に伴い、30歳代の女性が妊娠を機に検査を受け、子宮頸がんが見つかる例が増え ている。妊娠中に早期の子宮頸がんが見つかった場合、通常は赤ちゃんを諦めて子宮を全摘出する。胎児を残したまま子宮頸部だけを切り取る手術は、世界でも これまで8例しか報告がなく、榎本教授が大阪大准教授だった10年に国内で初めて成功した。手術を受けた女性は無事に女児を出産した。
榎本教授は「女性が赤ちゃんを諦めることがなくなるように研究を進めていきたい」と話している。
薬事法は、医薬品や医療機器の効果について、うそや大げさな広告を禁止している。データの改ざんがあったとされる東京慈恵会医科大と京都府立医科大で実施した臨床研究の論文を使い、2011~12年に発行した広告が告発の対象。
厚労省は関係者の聞き取りなどにより、同社が不正を知りながら論文を広告に使った疑いが強いと判断した。ただ、強制力のない任意の行政調査では個人を特定できなかったため、捜査機関に真相解明を委ねる。
ディオバンは00年に発売され、5大学で効果を確かめる臨床研究が行われ、ノバルティス社の社員(当時)がデータ分析にかかわっていた。同社は「極めて重く受け止めている。当局に全面的に協力していく」などのコメントを出した。
病気にかかる危険性や生まれつきの才能を判定する「遺伝子検査ビジネス」が急増していることから、経済産業省は優良事業者の認定制度作りに乗り出す。
科学的根拠が疑問視される検査があるほか、検査を中国などの海外業者に委託するケースもあり、「究極の個人情報」が大量に海外流出する恐れが出ているためだ。月内にも厚生労働省がオブザーバー参加する研究会を設立し、ルール作りを始める。
遺伝子検査ビジネスには規制がなく、悪質な業者かどうか利用者が選別するのが難しい。経産省は月内にも省内に専門家らによる研究会を作り、2014年度中 に、サービスの指針を決める。具体的には、判定の根拠に信頼性の高い論文を使うことを求めるほか、検査を委託する場合は相手先を開示させることが盛り込ま れる見通し。厚労省から、医療や科学に関する専門的な意見を採り入れ、ルールを作る。
経産省は新たに作る指針を守っているかどうかを基準 に、15年度にも第三者機関が信頼できる業者を認定する制度の導入を目指す。利用者が判断しやすいように、優良な業者には認定マークを与えることなども検 討する方向だ。悪質な業者が横行するようなら、法律による罰則付きの規制も検討する考えだ。
田村憲久厚労相は7日の閣議後会見で「なるべく早く、しかるべき対応を判断したい」と述べ、告発を急ぐ意向を示した。
薬事法は、医薬品や医療機器の効果について、うそや大げさな広告を禁止している。厚労省は、同社が医師向け広告やパンフレットなどで、改ざんされたデータ に基づき「脳卒中を予防する効果もある」などとする論文を繰り返し活用したことが、誇大広告にあたる疑いがあると判断した。
北海道大病院(札幌市)は6日、記者会見を開き、関東地方で脳死と判定された成人男性から提供された心臓を入院中の20歳代の男性患者に移植する手術を行い、成功したことを明らかにした。
患者の容体は安定しているという。道内の心臓移植は、札幌医科大の和田寿郎(じゅろう)教授(当時)が1968年に国内で初めて行い、脳死判定が適切だったかどうか議論が噴出した「和田移植」以来、約46年ぶり。
発表によると、臓器提供者の男性は、頭部外傷で入院中に臓器移植法に基づく脳死と判定された。移植を受けた患者は道内在住。2006年に心臓の筋肉が伸びて血液の循環が悪化する拡張型心筋症と診断されて11年から人工心臓をつけた。
同法に基づく心臓移植は今回で186例目。「和田移植」後、手術が途絶えていた道内での移植再開について、受けとめ方を問われた北大病院の宝金(ほうき ん)清博院長は「特別という思いはない」としたが、「今回の手術は大変大きな一歩となる。待ち続ける患者にとっても朗報だ」と語った。北大病院には心臓の 移植を待っている患者が約10人いるという。
約46年前の「和田移植」は、海水浴場で溺れた大学生(当時21歳)を脳死と判定し、心臓を男性患者(同18歳)に移植した。世界初の心臓移植から約8か月後で、世界30例目となったが、患者は手術の82日後に死亡した。
脳死判定の妥当性をめぐって、和田氏は殺人容疑などで札幌地検に告発されたが、嫌疑不十分で不起訴となった。和田氏は2011年2月に亡くなった。
病院によると、感染した患者は60代3人、70代10人、80代7人、90代1人の男性15人、女性6人。うち20人が入院患者で、死亡した11人は62歳から92歳だった。感染者全員が心臓疾患や大腸がん、脳梗塞(こうそく)、糖尿病などを患っていた。
最初の感染患者は昨年1月、心不全で入院した高齢者で、たんから菌が検出された。その後も3カ月連続で毎月1、2人が感染し、6月に4人が感染した時点で、院内感染の疑いを強く認識したという。