日本産科婦人科学会は13日、理事会を開き、体外受精させた受精卵のすべての染色体を調べ、異常のないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」の臨床研究の実施計画案を承認した。

 来年2月にシンポジウムを開き、一般の意見を聞いた上で、来年度にも臨床研究を始める。

 妊娠年齢が高くなり、不妊治療をしても出産に至らないケースが増えている。染色体の異常が原因の一つと考えられている。

  臨床研究は、受精卵を調べ、異常がないものだけを子宮に戻すことで、妊娠の可能性を高めたり、流産を減らしたりできるかどうか検証する。体外受精を3回以 上失敗したり、流産を2回以上経験したりした女性が対象。600人を着床前スクリーニングを行う群と行わない群に分け、妊娠率や流産率の差を調べる。

 受精卵の検査は「命の選別につながる」という批判も強い。学会はこれまで、重い遺伝病の可能性があったり、特定の染色体異常で流産を繰り返したりする場合に限り、一部の染色体を調べることを認めていた。この10年間で学会が認めたのは361例だけだった。

 記者会見した学会倫理委員会委員長の苛原いらはら稔・徳島大教授は「着床前スクリーニングが命の選別につながることを強く認識すべきだとの意見もあり、この意見を十分尊重しながらより詳細な計画を立てていきたい」と話した。