手術自体に不備があったケースのほか、手術前の検査や術後管理などに問題があったといい、同研究会は院内の体制が改善されるまで移植を中断するよう提言する。
同センターでは昨年11月の開院後、同12月~今年3月に生体肝移植を受けた患者4人が術後1か月以内に死亡。専門家の間で問題視する声が上がり、専門医団体の同研究会
が調査に乗り出していた。
調査の結果、〈1〉移植に適していたか〈2〉手術自体に問題がなかったか〈3〉術前・術後の検査や治療が適切か〈4〉臓器提供者(ドナー)が適していたか ――などについて評価。死亡した4人の移植いずれにも問題があり、うち3人は、問題がなければ死亡を回避できた可能性があるという。生存している患者1人 の移植でもドナーの評価に問題があった。
手術に問題があったのは、死亡したインドネシア人の生後10か月の男児。生体肝移植は、患者の肝臓を取り出して健康なドナーの肝臓の一部を移植するが、男児の手術では、移植する肝臓の血管と男児の血管をうまくつなげなかったという。
子どもの細い血管をつなぐ際に必要な手術用顕微鏡が同センターにはなく、しかも、血管の口径にドナーと大きく差があり、うまくつなげなかった。その結果、 血流が滞って肝不全となり、移植から約2週間後に死亡した。同研究会は、顕微鏡を使った適切な手術であれば「生存できた可能性が高い」とみている。
このほか、死亡した患者2人には、脂肪肝のドナーから移植するなど、手術前後の対応に問題があり、診療が適切なら「救命できた可能性がある」とされた。残る1人は進行した悪性腫瘍で膵臓や肝臓の一部を切除する大手術を受けて数日後に移植を受けた患者で、病状などから移植に適さず、ドナーからの臓器提供は「必要がなかった」という。