製薬業界から2012年度に国内の医師や医療機関に提供された資金の総額は4700億円を超えることがわかった。

 国の医療分野の研究開発予算1700億円の2・7倍に上る。

 医学研究の発展のためには産学連携が不可欠だが、高血圧治療薬「ディオバン」の研究データ改ざん問題では、背景に企業との不透明な関係が指摘された。専門家は「資金提供の透明化が必要」と指摘する。

 主要な製薬企業70社で作る日本製薬工業協会の指針に基づき、10月上旬までにホームページで初めて金額を自主公表した65社分を読売新聞社が集計した。

 公開された金額は、各社が大学などの研究機関や医師に支払った〈1〉共同研究などに使われる研究・開発費〈2〉寄付金などの学術研究助成費〈3〉講師謝礼や原稿料など〈4〉医師向けの講演会、説明会などの情報提供関連費〈5〉飲食や中元歳暮などの接遇費。

 項目別で最も多かったのは研究・開発費で計2438億円。その4分の3は、薬の承認を得るために行う治験などの臨床試験費(1840億円)だった。

  寄付金などの学術研究助成費は計532億円。うち、指定した研究者が自由に使える奨学寄付金は340億円、研究者を指定せずに大学などに提供する一般寄付 金は84億円だった。ディオバン問題では、臨床研究の事実上の見返りとして、販売元のノバルティスファーマから多額の奨学寄付金が支払われていた。