新薬より安価な後発医薬品(ジェネリック)の普及を促進するため、政府は来年度、日本に原薬や製剤などを輸出する海外製造所に派遣している査察員を、増員する方針を固めた。  ジェネリックの信頼性への懸念が普及への障壁になっているためで、研究者などから品質への疑問が出たジェネリックについて、厚生労働省が実施した品質確認検査の結果を、新たにまとめる。  薬の安全性の査察を行う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)の担当部門を、現在の約50人から1・5倍程度に増員する。査察員は海外の医薬品製造所に出向き、〈1〉製造過程や品質管理〈2〉社員の教育訓練――について、国内と同様の査察を実施する。  疑問が指摘されたジェネリックの品質確認検査の結果については、厚労省が「ブルーブック(仮称)」として冊子にまとめ、医療関係者らに配布する。  ジェネリックは特許の切れた新薬と同じ有効成分で作られ、価格は3~5割程度のものが多い。効果や安全性は、厚生労働相が新薬と同等と認定しているが、医師や利用者の間では不安が根強く、2014年の厚労省調査によると「積極的には処方しない」とした医師の約6割が「(効果や副作用を含む)品質に疑問がある」と答えた。  今年2月現在の普及率は、欧米各国よりも低い58・2%。中でも、「輸入品の安全性への問い合わせが多い」(厚労省)ことから、海外査察員の増員により不安解消を目指すことにした。同省は来年度予算の概算要求に、ジェネリック普及の関連費用として計9億1000万円を盛り込む。  政府は6月末、年40兆円を超す医療費削減の目玉として、ジェネリックの普及率を20年度末までに80%以上に高める目標を設定。達成されれば、年に1・3兆円削減できる計算だ。  厚労省ではこのほか、ジェネリック普及に向けた総合戦略を月内に策定する方針で、承認当初は新薬の6割(一部5割)に設定されている価格を、さらに引き下げられないか検討する。ジェネリックに市場を奪われる形になる新薬メーカーについても、薬価改定の度に安くなる新薬の価格を、特許期間の20~25年の間は下がりにくくする育成策を検討する。