25日にエッセイ集『ここは、おしまいの地』(太田出版)を出しました。前作『夫のちんぽが入らない』の出版前から『クイック・ジャパン』にて読み切り・連載として載せてもらっていたので、2作目といっても、ほぼ同時進行で2年間書き続けていた作品になります。こうして本を出せるのも前作や連載、そしてこのブログを読んで下さる方々のおかげです。本当にありがとうございます。

また、2014年から一緒に同人活動をしてきた爪切男さんのデビュー作『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)も同時に発売しました。「文学フリマ」で並んで売り子をしていた爪さんと、今度は書店の同じ棚に並べてもらっている。まさかこんな日が来るとは思ってなかった。同人誌を出せただけで充分幸せだったから、そのあとのことは全部夢なんじゃないかと思いながら過ごしている。

9784778316129_帯あり
カバー写真/こだま
ブックデザイン/鈴木成一デザイン室
公式サイト
http://www.ohtabooks.com/sp/oshimai/


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まるで集落の山並みのような目次。
2015年6月~2017年8月の全20話を大幅に加筆修正。


書店もCDショップも服屋もコンビニもない。電車も止まらない。ただヤンキーと熊がのびのびと暮らす。私はそんな山奥の集落で育った。「東京」はテレビや本の中にだけ存在する場所で、行ってみたいと思ったこともなかった。行く手段もわからなかった。憧れる気持ちすら抱けないほど、地理的にも心理的にも遠い場所だった。そんな閉ざされた地での暮らしは、集落の民ですら「おしまい」だと感じていたのだから、都会の人にはもっと奇異に映るかもしれない。

土地だけではない。家族、親戚、同級生、初めて交際したヤンキー、好きだった先生、奇病、いくつもの仕事。都会の出来事は黙っていても誰かがきっと書く。でも、私の「おしまい」の地の話は誰も書かない。そもそも誰も知らない。そのことに気付いてから故郷の話を綴るようになった。そして、少しだけ愛着を持てるようになった。

担当編集の続木順平さんから「手に取って、どこからでも気軽に楽しく読めるような本にしよう」と言われ、連載時よりも内容を絞った。文字数も1000弱~8000字と長短さまざま。


■担当編集さん
この2年で担当編集さんが2度代わった。退職や社内事情によるもので私が問題児なわけではないです、多分。交代のたびに悲しくて泣いたけど、いま思うと計3人の編集さんと関わることができたのは幸せだった。

「エッセイを書きませんか」とDMで声を掛けて下さったのは初代担当の小田部仁さん。編集者の方とやりとりすること自体初めてで、少し怖くなり、小田部さんのお名前で検索したら某番組に出演した動画があった。誕生日プレゼントをもらってすごく喜んでいる映像だった。その様子がとても誠実そうで、本当に良かった。この人は怖くない人だと思い、すぐ「書きます」と返信した。たぶん初めて言いますが『クイック・ジャパン』に寄稿しようと思った理由は「小田部さんが良い人そうだったから」です。その号に掲載されたのが『父、はじめてのおつかい』。好きなことを書いていいと言われて真っ先に父の顔が浮かんだ。

掲載誌が発売されると、昔からのネットの友達が自分のことのように祝福してくれた。本当に嬉しかった。私はこのことを家族や身の回りの人には言わず、ネットの人たちとだけ共有した。それはいまも変わらない。

二代目の担当さんは元編集長の藤井直樹さん。ももクロに全力を注いでいた藤井さんに「1万字を超える長い文章を読んでみたい」と言われ、そんなものは書いたことがなかったので大いに困った。もう何でも自分の思い出を詰め込んでやれと自棄になり、『集落に生まれて』という昭和初期の貧乏物語みたいなタイトルで提出。すると、藤井さんは文中にあった「おしまいの地」というフレーズを拾って「こっちのほうがいい」と言い、『ここは、おしまいの地』という題名を提案して下さった。貧乏そうなタイトルを捨てて正解だった。

そして三代目の続木さん。続木さんの編集長就任に伴って誌面がリニューアルし、私の「読み切り」が「連載」となった。2ヶ月に1度とはいえ、そこそこ長いエッセイを書いていくと、「体験」の貯金がどんどん減っていく。いずれ書きたいことが何もなくなってしまいそうで怖かった。そんなとき、とある方に「出し惜しみしないでどんどん書いていけ。どうにかなる」と励まされた。私は後先考えずに突っ走ることにした。この先も髪を振り乱して書いていこうと思っている。書籍の担当編集を務めるのはこれが初めてだとお聞きし(勘違いだったらすみません)、絶対いい本にしたいと思った。『クイック・ジャパン』の忙しすぎる編集作業で死んだ目をしていた続木さんを見てそう思った。

業務部の杉山さんは素敵な特設サイトを作って下さった。書店員さんの心のこもった感想が日々更新されている。何度か太田出版さんに伺ったことがあるのですが、みなさんとてもフレンドリーで、「いつも読んでますよ」と気軽に話しかけて下さる。こんなに応援してくれる人がいるんだ...と思うと次の連載も頑張れる。私は匿名で活動しているので「売れたい」とは思わないけど、本に関わって下さった方々にお世話になった分を返したいから、本は売りたい。作品は売れてほしい。


■装丁
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装丁は鈴木成一デザイン室の鈴木さんと岩田和美さんが手掛けて下さった。
鈴木さんは私の撮った10枚ほどの写真の中から「これがいい」と即決。「おしゃれにはしたくない。でもどこか気になるつくりにしたい」と言って下さった。実際の写真よりも全体の色味を落とし、絵画のような灰色の空の下、朽木が浮かび上がっている。白い題字が添え木と共に地面に打ち込まれている。この地で書いていけと背中を押してもらったような気持ちになった。


■推薦文
帯の推薦文はゴールデンボンバーの歌広場淳さん。お忙しい中、数編を収録した「プルーフ」ではなく、全編のゲラに目を通して下さったと聞きました。なんて律儀な方なのだろうと震えました。このブログも読んで下さっていたそうです。光栄です。侘しい草原を彩る画像と言葉。アンバランスさが素敵だなと思う。どうもありがとうございました。

書店用のPOPには竹原ピストルさんの力強い推薦文を掲載させていただきました。
https://twitter.com/mzsm_kuzuhaeki/status/956352974711762944
水嶋書房くずは駅店さん
https://twitter.com/tsutayahatagaya/status/956414422569725953
TSUTAYA幡ヶ谷店さん

この海辺の写真も、カバー写真候補としてデザイナーの鈴木さんにお渡ししていたものだった。10年くらい前、野狐禅の「カモメ」という歌が好きだとブログか何かに書いたことがあったのですが、竹原さんの沁み入る文章と共に偶然にもカモメの写真を使っていただき、ひとりでこっそり喜んだ。ツアーや紅白などでスケジュールがいっぱいな中、本当に感謝しています。

歌広場さん、竹原さん、とても素敵な推薦文をありがとうございました。贅沢だ。贅沢すぎる。