私は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を剥奪するような、ずぶずぶの百姓しかいない集落で生まれ育ったため、音楽や映画の話をするのがとても苦手です。百姓の子が背伸びをしているようで気恥ずかしくなるのです。普段なに聴いてるの?と聞かれると俯いてしまいます。

 

けれど今回だけは言いたい。

ceroの『Orphans』という新曲がとてもとても素晴らしいです。

 

磯部涼さんによるインタビュー

http://www.kakubarhythm.com/special/orphans/

 

 

5月に爪切男さん、たかさん、のりしろさん、私の4人で『なし水』という同人誌を出した。私は『夫のちんぽが入らない』という、20年に及ぶ夫との不能の日々を書いた。えげつないタイトルだけど、ここに私の人生が集約されている。こんなタイトルだけど、真面目な顔で書いた。

 

親や近所の人に「子供は作らないのか」と聞かれるたびに私たちはぎゅっと固まり、精神的な結びつきだけが強くなっていった。私を無理やり病院へ連れて行こうとする母に何度ぶちまけてやろうと思ったかわからない。私と夫は性的なことを介さない二人きりの兄妹のように暮らしている。今はそれが自然な在り方だったのではないかと思っている。この形に辿り着くよう、見えないものに導かれていたのかもしれない。そんな私の話を読んで下さったceroの高城晶平さんから、「私たちが本当は血の繋がった兄妹で、間違いを起こさないように神様が細工したとしか思えないのです」という私の一文に心を動かされるものがあり、『バカ姉弟(仮)』という曲を作っている(おぼろげな記憶で書いています。思い込みが含まれていたら修正します)というような心躍る返信をいただいた。そして、この冬、『バカ姉弟(仮)』が『Orphans』というシングルとなって世に出た。

 

前奏から心を持っていかれる。切ない感情が呼び起こされる。終日(ひねもす)で始まる詩的で幻想的な情景、クラスメイトとの逃避行。歌詞の世界観、旋律、歌声、すべてにぶるぶるっと震えてしまった。インタビューの中で「夫のちんぽ~」にインスパイアされて、とあるけれど、私の作品など存在しなくとも『バカ姉弟(仮)』は名曲として多くの人から絶賛されていたに違いない。拙い私の作品をインタビューの中で取り上げてくださったことに恐縮するとともに、心から感謝致します。私は高城さんの御手で薄暗いところから掬いあげられました。

 

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TVブロス年末年始特大号、磯部涼さんの記事より。ページを開いた瞬間、失神しそうになった。同人誌の入稿が迫っているのに誰ひとりタイトル案を出さないことにブチ切れたたかさんが「全員死ねっ」と自棄になって付けた『なし水』がこんな形で多くの人の目に触れたことが可笑しすぎて、周りの目も気にせず本屋で声を上げて笑ってしまった。

  

1stシングル『Yellow Magus』