夏に死んで、秋によみがえる

2ヶ月もブログを書いてなかった。

猛暑の地に住んでいるわけではないのに、毎年夏になると調子を崩し、通常の生活を送れなくなる。
夏休みを利用して入院していたことが多かったから、夏イコール病と身体が記憶してしまったのか。お盆過ぎに押し寄せてくる「新学期が始まる不安」に心が持っていかれてしまうのか。夏は心臓のばくばくが収まってくれない。もう生徒としても、教師としても、学校なんか行かなくていいのに、どうして私は苦しくなってしまうんだろう。

今年の夏は特に調子が悪かった。
体に力が入らず、ぼうっとパソコンの画面を眺める日が続いた。原稿は一向に進まないのにツイッターだけは変わらず投稿できた。完全に選り好みしてるな、逃げてるだけだな、と自己嫌悪に陥っていたのだが、いつにも増して気力が持たないのは、持病の強めの薬が増えたことが原因だったらしい。
理由がわかり、夏も終わり、回復した。


P9106352

9月のはじめ、いつもの人たちとすすきのでご飯を食べた。
東京からもふたり遊びに来てくれた。朝方3時ごろまで飲んで、翌昼はカレーやパフェを食べた。
この人たちには、ずっと前から書くことを応援してもらっている。山奥に篭ってパソコンに向かっていると、どうしようもなくひとりだと実感する。家に夫はいるけれど原稿のことは話せない。これでいいんだろうかという迷いが積もってきたころに、いつもの人たちに会い、「この前のよかったよ」とか「あんなの気にするな」とか言ってもらい、へへっと笑って帰ってくる。心が大分軽くなっている。いつも施しを受けてばかりだ。たかさんと「お互い、いつ死んでもおかしくないから。これが最後かもしれないから」と握手して別れた。私の手は病気でどんどん変な形になっていっているが、まだ文字が打てるし、握手もできる。当分やっていける。

ようやく頭が動くようになったので、中途半端になってしまった東京でのできごとも書きたい。

東京の二夜

3月18日、阿佐ヶ谷ロフトAの『A4しんちゃん 爪切男・こだまのブログ本増刷記念イベント』に参加しました。

企画して下さったのはロフトAスタッフのタナカモエさん。以前から我々A4しんちゃん(同人誌を販売する際の、とりあえずのつもりでつけた団体名)の本やブログを読んで下さり、今回イベントのアイデアから「なし水」を使った特別メニューまで提案していただきました。

私は文学フリマでお客さんと1対1で話すのがやっと。それも話すというより店先で白い恋人をただ配るだけの駄菓子屋のおばさんそのもの。大勢の前で話すなんて無理に決まっているのですが、爪さんやたかさんが一緒に出てくれると聞き、「やりたいです」と即答しました。私もずいぶん変わりました。薄気味悪い姿を晒すのは本当に苦しく、人に話せるようなこともないのですが、こんな機会は二度とないと思うことはできるだけやっていこうと、直感のままに動くようになりました。昨年、長期入院したときに、このまま何もしないまま身体が不自由になって死ぬはいやだ、と思ったことが大きい。入院もしてみるものだ。

 

イベントの司会に冷凍食品さん、そしてぎりぎりまで嫌がっていた酉ガラさんにもお願いして登壇してもらいました。10年くらい前から投稿サイトで一方的にファンだった人たちと同じイベントに出ていることが不思議でした。これを書いている今、恐ろしさがじわじわ込み上げている。

 

 前列と、ものすごく近い。こんな近くで汚れた顔を見られるのはとても無理だと思った。 「私はいいので、みなさんでどうぞ、とか絶対駄目ですからね」と、たかさんに釘を刺されていた。まさに私の言いそうなやつ。何もかも見抜かれている。

 

信じられないことに会場は満席でした。披露された爪さんのお母さんのメールが、とんでもない破壊力だった。爆弾をいっぱい積み込んだ外国船のよう。爪さんに対しては常々、どうしてこういう感性になったのだろうと疑問に思っていたけれど、あの強烈なお母さんの子なら当然である。爪さんが普通に育たなかったルーツを知ることができて本当に得した気分だった。「ストレートパーマ組合」という謎の単語が忘れられない。大勢の前でも堂々としていて面白い冷凍さんや爪さんをただただ尊敬。酉ガラさんやたかさんのエピソードをもっと聞きたい人も多かったと思うのですが、私たちに気を遣って発言をずいぶんセーブして下さっていた。私は夫の普段の様子を話したはずだけれど、緊張であまり覚えていない。幸せな時間をどうもありがとうございました。

 

イベントの終わりにもお知らせしたのですが、同人誌『なし水』に収録した『夫のちんぽが入らない』というエッセイが扶桑社さんより書籍化されることになりました。会場から「わあ」という声をいただき、ちょっと声が詰まり、頭もまっしろになってしまい、うまく伝えられなかったのですが、本当に本当にがんばろう・・・と思いました。


 

ブログや同人誌を読んで下さっている人、古くからの知り合い、繋がりのあるライターさんや編集者さん、けつのあなカラーボーイの方々など多数いらして下さいました。『塩で揉む』の表紙を描いて下さった惣田紗希さんにも初めてお会いすることができて感動。遠いところを本当にありがとうございます。素敵な表紙は一生の宝物になりました。爪さんの妖しい表紙を手掛けた向浦宏和さんもお越し下さいました。Quick Japanの連載でお世話になっている続木編集長と小林さん、週刊SPA!の担当編集で書籍化に向けて日々温かい言葉をかけて下さる高石さん、陰でめちゃくちゃ動いて下さっている扶桑社販売部の宮崎さん。そして諸々のきっかけを与えて下さったまんしゅうきつこさん。日ごろお世話になっている方々にお会いできてとても嬉しかった。おみやげもたくさんありがとうございます。お客さんのひとり、熊本からかけつけて下さった、くろしまねこさんはその翌月に被災し、いま避難生活を送り大変な思いをされている。落ち着いた暮らしが一日も早く訪れるよう祈っています。あのとき、あのタイミングでなければ会えなかった方がたくさんいたのだろうなと思うと感慨深いです。

 

 
P3185342

担当編集の高石さんから素敵なお花をいただきました。
どうもありがとうございます。

 

 イベント前夜、爪さん、たかさん、のりしろ(乗代雄介)さんと共に、芸事成就のご利益があるという新宿の花園神社にお参りをした。何気ない思いつきで呼びかけた同人誌づくりの縁が2年経っても濃く続いていることに、胸がいっぱいになった。のりしろさんも執筆に追われているようです。ジャンルもレベルも違うけれど、ひたすら自分と向き合ってストイックに書いているのりしろさんを想像すると、よし私も、と思う。またみんなで何かできるといいです。それぞれの目指す場所へ行けますように。執筆に限らず、勇気をもって何かを始めようとしている人がまっすぐに思いを遂げますように、と祈らずにはいられない東京の二夜でした。

 

プロフィール

shiod