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2015年10月09日

死神の浮力、感想

ご無沙汰しております、タナカシリヤです。
久方ぶりですが読んだ本の感想をば。

伊坂幸太郎:死神の浮力

伊坂作品の中でも割と初期の短編集である『死神の精度』の主人公(?)、千葉をメインに据えた長編。
死神である千葉の目線から現代社会を皮肉っぽく描写する、異文化考察とでも言うべき皮肉り方は前作『精度』と同じく。
千葉が『担当』する人間山野辺とその妻の復讐劇、に同行する千葉、その数奇な七日間。

正直に言うと僕は『死神の精度』はそこまで好きじゃなかった。
同じ短編集で言ってもフィッシュストーリー、ラッシュライフやチルドレンに比べると、死神の存在がどうにもぎこちない『精度』は一段落ちる、と考えていた。
どう好意的に見ても死神という存在が舞台装置以上の働きをしているように見えなくて、如何にも物語っぽく感じていたのだ。
端的に言うと童話のように教訓めいたお話、だろうか。

勿論、『死神と藤田』の痛快さや『死神対老女』を読み終えた後の爽快感は印象に強く、名著には違いない。
ただまあ、数ある伊坂作品の一つ、という認識しかなかった。

そこで本著である。
『精度』の続編であると思い、手に取った当初はあまり気乗りがしなかった。
実際読み進める速度はあまり伸びず、最終章付近まではだらだらと読んでいたのだが、ラストのスパートは実に小気味良く、伊坂作品らしい伏線・小道具の回収を経て、爽快感の溢れるフィナーレを迎えた。
相変わらず、千葉他の死神は『便利』な存在で、物語を円滑に進めるためのご都合的な『神様』ではあった。
だが、長編を通じて千葉と付き合ってみると、物語の最終盤では、やれ千葉それゆけ千葉とヒーローを応援するかのように作品を楽しむことができた。これが長編の力だと僕は思う。

伊坂イズムとでも言うべき勧善懲悪に加えて、死神シリーズでは殊更に命の無常が語られる。
本作では親子、別れ、そして教え伝う事。

大切な過去を思い起こすことは、宝石箱をひっくり返すような事だと僕は思う。
目当てに辿り着くまでに、つい立ち止まってしまう様な綺麗な思い出が散乱して、良くも悪くも心が惑い揺れ動かされる。

千葉に担当される本作もう一人の主人公、山野辺。
彼の語りを通して、読者もまた自分の記憶をリフレインする事になる。
本編を初めから最終盤まで通して語られる山野辺の父の思い出、決して『良い父親』ではなかった彼が山野辺に何を残してくれたのか?
その尊さ。
酷薄な絶対悪と対比するかのように語られる、人間の美しさ、淡い光がとても心地よい。

誰かと腹を割って話したくなるような物語でした。



また読んでない本が山積みだというのに図書館で本を借りてしまいました。
絵を描いたり、感想を呟いたり、もっと頻繁にしたいですね。

ではまた。


shiriya_botamochi at 21:53│Comments(0)TrackBack(0) 読書感想 

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