静岡県榛原郡川根本町(旧榛原郡中川根町)上長尾(はいばらぐん かわねほんちょう かみながお)の天王原墳丘墓(てんのうばらふんきゅうぼ)は、中世(院政期(11世紀後半)から戦国時代(16世紀後半)まで)の築造と考えられる墳丘墓です。
墳丘は南北に長い楕円形で、長軸7.5m、短軸5.8m、残存高さ1.2m(推定高さ約2m)の規模。
南北朝時代(14世紀前半)の後醍醐天皇(ごだいごてんのう)の首塚だという伝説があり、何度も発掘が行われています。
天王原墳丘墓
大井川中流域右岸の河岸段丘上(標高275m)の、明治時代初期まで鎮座していた八坂神社(天王社)跡地と考えられている場所に所在。
戦前までは女人禁制の聖域とされ、墳頂には梅の古木がありました。
南北朝時代の後醍醐天皇(ごだいごてんのう)の首塚だという伝説があり、何度も発掘が行われています。
＜大正8〜9年頃の発掘＞
村人達によって発掘されましたが、記録が残されていないため詳細不明。
出土品の可能性がある、古墳時代の土師器と平安時代末期〜鎌倉時代の須恵器片が伝わっています。
＜昭和2〜3年頃の発掘＞
梅島青年団が、2〜3日の発掘を実施。
墳丘南側から、1.82m四方、深さ3mを掘り下げました。
赤土の中から、短刀・鉄鏃4、5本・楕円形の鍔(つば)・柄(つか)・土器片などが出土。
短刀以外の遺物は、大半が所在不明となっています。
短刀は、室町時代(14〜16世紀)前後のものと推定され、残存長27.6cm、推定全長28.5cm。
＜昭和14〜15年頃の発掘＞
軍人会のメンバーが中心となり、約10日間の発掘を行いました。
人の背丈ほどの深さまで掘りましたが、見つかったのは円礫2個のみ。
＜昭和53年頃の発掘＞
戦後に茶園として開墾されており、茶樹の改植に伴い地元住民が発掘。
墳丘の中心を幅2m、長さ3m、深さ1mを掘りましたが、出土品は無し。
発掘を知った教育委員会が、中止させました。
＜平成元年8月1〜12日の発掘調査＞
はじめて行われた学術調査です。
墳丘裾からは、拳大の石が幅50〜90cmに敷き詰められているのが見つかり、古墳ではなく墳丘墓だと分かりました。
縄文時代中期の土器片、残存長約9.4cmの朱漆塗りの棒状製品(笄(こうがい)または塗り箸の先端？)、銅銭(私鋳銭)、古釘、べっ甲製と思われた楕円形の髪止め、ガラス製薬びんなどが出土。
髪止めは専門家の鑑定により、大正時代初期に流行したローマ型と呼ばれるセルロイド製のものだと判明。
大正時代に地山面まで掘り下げられており、主体部(埋葬施設)は検出できませんでした。
現在は、町有地となって保存されています。
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天王原墳丘墓の地図
静岡県榛原郡川根本町(旧榛原郡中川根町)上長尾(梅島)字天王原
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うめたか地区 遊歩道案内図
362号沿い「四季の里」西側の高台にある、梅高集会場の駐車場に案内図が建てられています。
天王原墳丘墓
表面に芝生を植えて、墳丘を保護してあります。
墳頂
五輪塔
案内板
参考文献
・『静岡県文化財地図�� ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『静岡県文化財地名表�� ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『天王原墳丘墓 平成元年度 発掘調査報告』静岡県榛原郡中川根町教育委員会 1990年3月
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