静岡県磐田市御殿(ごてん)・二之宮(にのみや)の御殿・二之宮遺跡(ごてん・にのみやいせき)は、磐田駅南側の南北約500m、東西約1100mの範囲の平野部(標高約2m)に広がる市内最大規模の遺跡です。
北側は磐田原台地(いわたはらだいち)の南端で平坦面を形成する市街地化が進んだ中泉段丘(なかいずみだんきゅう)の南端部、南側は水田として利用される低湿地で東海道新幹線が東西に走っています。
弥生時代後期から古墳時代前期には、大規模な集落と水田がある市内最大のムラだったようです。
奈良時代から平安時代前期には、朝廷から任命(にんめい)・派遣(はけん)された遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)の国司(こくし、くにのつかさ)が、行政・警察・軍事などの仕事を行う遠江国府(とおとうみこくふ)が置かれていたと推定。
平安時代中期、海水準(海面)が上昇する「平安海進(へいあんかいしん)」によって、遠江国府は見付地区周辺に移転したと考えられています。
御殿・二之宮遺跡(御殿遺跡公園) 奈良時代(8世紀) 建物跡
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御殿・二之宮遺跡(御殿遺跡公園)の地図
静岡県磐田市中泉2270-17
アクセス
・東名高速道路 磐田ICの南
・JR東海道本線 磐田駅の南
・「ファミリーマート磐田駅南口店」の南
奈良・平安時代の地形
昔は、遺跡のすぐ南側の平野部に大之浦(おおのうら)と呼ばれる、水深の浅い入江状の潟湖(せきこ、ラグーン)がありました。
奈良時代末期(8世紀後半)頃に成立した和歌集『万葉集(まんようしゅう)』に、「大の浦の その長浜に 寄する波 寛(ゆた)けく君を 思ふこの頃」(大意 大の浦の長長とした水際に寄せる波のように 安らかにゆったりとした気持ちであなたを思うこの日頃です。)と詠まれた歌が収録されています。
これは、奈良時代に遠江国司(こくし)桜井王(さくらいおう)が都の天皇(在任期間から第45代 聖武天皇(しょうむてんのう)と考えられる)に奉(たてまつ)った(献上した)歌「九月(ながつき)の その初雁(はつかり)の 使にも思ふ 心は聞え来ぬかも」(大意 九月の初雁が渡って行く頃になりました。初雁の使いによって、天皇をお慕い申し上げている私の心を伝えてほしいものです。)に対する、天皇からの返歌(へんか)です。
大之浦につながる中小河川が舟を使った水運に利用され、遠江国府(とおとうみこくふ)への貢進物(こうしんもつ、こうしんぶつ)・遠江国分寺(とおとうみこくぶんじ)の建築資材などが集まりました。
遠江国分寺の瓦は、清ヶ谷古窯跡群(せいがやこようせきぐん)に含まれる静岡県掛川市(旧小笠郡大須賀町)山崎(やまざき)の竜天薬師堂古窯(りゅうでんやくしどうこよう)で焼かれたものです。
遠州灘(えんしゅうなだ)に注ぐ太田川(おおたがわ)・天竜川(てんりゅうがわ)の河道(かどう)の変更、干拓(かんたく)などにより大之浦は消滅。
昭和35年(1960年)の区画整理までは、多くの沼田(ぬまた)・池沼(ちしょう)・水路が存在。
磐田市二之宮の大池は、大之浦の名残りだとされています。
御殿・二之宮遺跡(ごてん・にのみやいせき)の範囲
磐田駅南側の南北約500m、東西約1100mの範囲の平野部(標高約2m)に広がる市内最大規模の遺跡です。
北側は磐田原台地(いわたはらだいち)の南端で平坦面を形成する市街地化が進んだ中泉段丘(なかいずみだんきゅう)の南端部、南側は水田として利用される低湿地で東海道新幹線が東西に走っています。
弥生時代後期から古墳時代前期には、大規模な集落と水田がある市内最大のムラだったようです。
奈良時代から平安時代前期には、朝廷から任命(にんめい)・派遣(はけん)された遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)の国司(こくし、くにのつかさ)が、行政・警察・軍事などの仕事を行う遠江国府(とおとうみこくふ)が置かれていたと推定。
平安時代中期、海水準(海面)が上昇する「平安海進(へいあんかいしん)」によって、遠江国府は見付地区周辺に移転したと考えられています。
鎌倉時代以降、付近一帯は二之宮荘と呼ばれる荘園(しょうえん)になりました。
御殿・二之宮遺跡(ごてん・にのみやいせき)の発掘調査
市内最大規模の遺跡で、これまでに100回以上の発掘調査を実施。
昭和37年(1962年)、東海道新幹線の建設に伴う水路取付け工事で、多量の土器が出土して遺跡が見つかりました。
昭和53年(1978年)10月〜昭和55年(1980年)3月、仿僧川(ぼうそうがわ)激甚災害特別緊急整備事業(仿僧川水系の小河川で東海道新幹線の南側を西から東へ流れる、久保川(くぼがわ、磐田久保川とも呼ばれる)の南岸(中瀬橋から西へ長さ約800m、幅約10m)を削って流路を拡張する河川改修工事)に伴う第1次調査を実施。
弥生時代後期から古墳時代前期の柱穴(ちゅうけつ)群・土坑(どこう、直径1m以上の穴)群・溝・灌漑(かんがい)機能をもつ施設と考えられる池状遺構、奈良時代から平安時代前期の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)2軒・柱穴群・土坑群・貝塚(かいづか)・井戸などの遺構を検出しました。
出土遺物は、旧石器時代のナイフ形石器1点、縄文時代の縄文土器の破片3点、弥生時代の石器(石包丁(いしぼうちょう)2点、磨製石鏃(ませいせきぞく)2点、打製石鏃(だせいせきぞく)、石斧(いしおの、せきふ)など)40点以上・木製品(木製農具など杭(くい)や小棒まで含めて約2,300点)、弥生時代中期の弥生土器、弥生時代後期の弥生土器(二宮式土器(にのみやしきどき)、菊川式土器(きくがわしきどき))、奈良・平安時代の墨書土器(ぼくしょどき)・木簡(もっかん)8点・絵馬(えま)1点などです。
昭和56年(1981年)2〜3月、農業用水路改修工事に伴う第2次調査を実施。
昭和58年(1983年)1〜2月、磐田市二之宮の市道側溝工事に伴う第3次調査で弥生土器が出土。
昭和61年(1986年)1〜2月・3月、磐田市中泉の遺跡範囲確認調査の第4次調査を実施。
平成元年(1989年)5〜10月、市立二宮保育園建設に伴う第5次調査で木製農具が出土。
平成4年(1992年)5月〜平成5年(1993年)5月、磐田市二之宮のスーパーマーケット「バロー磐田店」の建設に伴う第6次調査で、国府南側を流れていた自然流路(川)の跡を検出。
斎串(いぐし)・人形木製品(ひとがたもくせいひん)・馬形木製品(うまがたもくせいひん)・人面墨書土器(じんめんぼくしょどき)など、祭祀遺物(さいしいぶつ)が出土しました。
国府に穢(けが)れが持ち込まれないようにするため、祭祀を水辺で行っていたようです。
平成4年(1992年)7月〜平成5年(1993年)10月、磐田市中泉の磐田駅南口線整備事業に伴う第8次調査を実施。
建物群がL字型に配置された、奈良時代(8世紀)の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)8軒を検出。
奈良時代から平安時代前期の御殿・二之宮遺跡には、朝廷から任命(にんめい)・派遣(はけん)された遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)の国司(こくし、くにのつかさ)が、行政・警察・軍事などの仕事を行う遠江国府(とおとうみこくふ)が置かれていたと推定。
見つかった廂(ひさし)付きの大型建物(東西2間×南北7間)は、国司の館や迎賓館(げいひんかん)的な施設ではないかと考えられています。
身分の高い人物が使用した高級品である、奈良時代のニ彩陶器(にさいとうき) 碗(わん)が出土しました。
また、中泉御殿(なかいずみごてん) 二の丸(出丸)？の北側(御殿遺跡公園の南西)で、幅約10m・深さ約2mの堀跡を検出。
平成22年(2010年)5月〜平成23年(2011年)1月、鹿苑神社(ろくおんじんじゃ)南西の市道 天龍西貝塚幹線の工事に伴う発掘調査を実施。
弥生時代の建物跡、貝塚(かいづか)、食物を入れた貯蔵穴(ちょぞうあな)、中世の井戸などの遺構を検出。
出土遺物は、弥生土器、イノシシの骨、魚の骨を加工した釣り道具、奈良時代(8世紀)の土器に墨(すみ)で文字を書いた墨書土器(ぼくしょどき)などです。
＜中泉御殿(なかいずみごてん)＞
安土桃山時代の天正14年(1586年)、徳川家康が宿泊・休憩(きゅうけい)施設として、御殿・二之宮遺跡の範囲内の北西部分に中泉御殿(なかいずみごてん)の造営を開始し翌年完成。
徳川家康は、鷹狩り(たかがり)や「関ヶ原の戦い」「大坂の陣」の作戦会議などで、中泉御殿を21回訪問。
江戸時代前期の寛永16年(1639年)、3代将軍 徳川家光(とくがわ いえみつ)が徳川家別邸の修理を命じ、中泉御殿も改修が行われたと考えられています。
敷地は約1万坪(33,000��)で、北側に堀と土塁(どるい)が築かれ、北側以外は大池と湿地帯で囲まれていました。
寛文10年(1670年)、多額の維持費・修理費がかかるため、経費削減で中泉御殿を廃止。
翌年、中泉御殿の建物は解体・建材が売却されて各地へ移築。
＜中泉陣屋(なかいずみじんや)＞
安土桃山時代の天正18年(1590年)、御殿・二之宮遺跡の範囲内の磐田駅南口から御殿遺跡公園周辺の場所に、遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)の徳川家康の領地を支配する中泉代官の代官所として中泉陣屋を建設。
江戸時代には、中泉代官が遠江国の天領(てんりょう、幕府の直轄領(ちょっかつりょう))を支配しました。
御殿・二之宮遺跡(御殿遺跡公園) 第8次調査地点
平成4年(1992年)7月〜平成5年(1993年)10月、磐田市中泉の磐田駅南口線整備事業に伴う第8次調査を実施。
建物群がL字型に配置された、奈良時代(8世紀)の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)8軒を検出。
御殿遺跡公園には、掘立柱建物跡2軒が保存されています。
案内板
発掘調査
右が北です。
黄色の線で囲まれた御殿遺跡公園は、御殿・二之宮遺跡の一部で中泉陣屋(なかいずみじんや)の敷地だった場所です。
御殿・二之宮遺跡 第8次調査地点
上が北、右下が御殿遺跡公園。
平成4年(1992年)7月〜平成5年(1993年)10月、磐田市中泉の磐田駅南口線整備事業に伴う第8次調査を実施。
建物群がL字型に配置された、奈良時代(8世紀)の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)8軒を検出。
御殿遺跡公園には、掘立柱建物跡2軒が保存されています。
奈良時代(8世紀) 掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)
奈良時代から平安時代前期の御殿・二之宮遺跡には、朝廷から任命(にんめい)・派遣(はけん)された遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)の国司(こくし、くにのつかさ)が、行政・警察・軍事などの仕事を行う遠江国府(とおとうみこくふ)が置かれていたと推定。
第8次調査で、奈良時代の掘立柱建物跡8軒を検出。
建物群は、L字型に配置されていました。
奈良時代のニ彩陶器(にさいとうき) 碗(わん)が出土。
奈良時代(8世紀) 北側の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)
東西5間×南北3間の建物です。
奈良時代(8世紀) 南側の掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと)
東西2間×南北7間、廂(ひさし)付きの大型建物です。
国司(こくし、くにのつかさ)の館や、迎賓館(げいひんかん)的な施設ではないかと考えられています。
「防人(さきもり)の歌」歌碑
奈良時代末期(8世紀後半)頃に成立した和歌集『万葉集(まんようしゅう)』には、天平勝宝7年(755年)の防人(さきもり)たちの歌84首が収録されています。
防人は、壱岐・対馬・北九州の防衛のため、遠江国(とおとうみのくに、静岡県西部)以東の東国(とうごく)から派遣(はけん)された農民兵士です。
3年の任期で、守備と農耕に従事しました。
歌碑には、長下郡(ながのしもぐん、遠江国南端中央部)出身の防人2人の歌が刻まれています。
畏(かしこ)きや 命(みこと)被(かがぶ)り 明日(あす)ゆりや 草(かえ)が共(むた)寝(ね)む 妹(いむ)なしにして
国造丁(くにのみやつこよほろ) 長下郡(ながのしものこほり)の物部秋持(もののべ の あきもち)
大意 恐れ多い勅命(ちょくめい)を承(うけたまわ)って、門出する明日からは茅(かや)と共に寝ることであろうか。いとしい妻も無く独りで。
遠江国防人の長であった長下郡出身の物部秋持が、出立前夜に国府(こくふ)において、その使命感と残してゆく妻を思う率直な気持ちを方言で歌っています。
我(わ)が妻も 絵に描きとらむ 暇(いつま)もが 旅行(ゆ)く吾(あれ)は 見つつ偲(しの)はむ
長下郡(ながのしものこほり)の物部古麿(もののべ の こまろ)
大意 私の妻をせめて絵に描き写すだけの暇(ひま)があればよいのになあ。防人として長い旅路を行く私は、それを見ては妻を偲(しの)ぶであろうに。
長下郡出身の物部古麿は一般の防人で、唐突な指名のために、妻を残して慌(あわ)ただしく旅立たねばならぬ嘆(なげ)きを切々(せつせつ)と歌っています。
妻の肖像(しょうぞう)を携(たずさ)えたいという発想は、『万葉集』中に例のない独創的なものです。
「防人(さきもり)の歌」案内板
平成13年(2001年)3月、防人の歌顕彰会が歌碑を建立。
弥生時代 貝塚(かいづか)
中泉段丘(なかいずみだんきゅう)斜面で、6ヵ所ほどの貝塚(かいづか)を検出。
＜御殿・二之宮遺跡(ごてん・にのみやいせき)の出土品＞
弥生時代 ハイガイ、カキ、シジミ、魚のウロコと骨
中泉段丘(なかいずみだんきゅう)斜面で、6ヵ所ほどの貝塚(かいづか)を検出。
昔は、遺跡のすぐ南側の平野部に大之浦(おおのうら)と呼ばれる、水深の浅い入江状の潟湖(せきこ、ラグーン)がありました。
貝塚の主体は、80％以上を占めるヤマトシジミです。
ヤマトシジミは、淡水と海水が混ざる汽水域(きすいいき)に生息する2枚貝で、大之浦で採集されたものと考えられます。
弥生時代 有鉤銅釧(ゆうこうどうくしろ)
カギツメのある腕輪です。
弥生時代 太型蛤刃石斧(ふとがたはまぐりばせきふ)
木を伐採(ばっさい)するため使用した石斧。
弥生時代 扁平片刃石斧(へんぺいかたばせきふ)
木を加工するため使用した石斧。
弥生時代中期 弥生土器 壺(つぼ)
弥生時代は、早期(紀元前10〜紀元前5世紀)、前期(紀元前5〜紀元前2世紀)、中期(紀元前2〜紀元前1世紀)、後期(紀元前1〜紀元後3世紀)に区分されます。
第1次調査で、中瀬(久保川南岸の中央橋〜中瀬橋区間)��-2区で検出された、北から南へ流路をとる2段に掘り下げられた溝ND1(幅4m・深さ約0.7m・長さ約6.8m)の最下層から、弥生時代中期の弥生土器が出土。
弥生時代中期 弥生土器 壺(つぼ)
弥生時代中期 弥生土器 壺(つぼ)
弥生時代中期 弥生土器 甕(かめ)
弥生時代中期 台状土製品(だいじょうどせいひん)
弥生時代中期 弥生土器 甕(かめ)・台状土製品(だいじょうどせいひん)
弥生時代後期 弥生土器 壺(つぼ)
弥生時代は、早期(紀元前10〜紀元前5世紀)、前期(紀元前5〜紀元前2世紀)、中期(紀元前2〜紀元前1世紀)、後期(紀元前1〜紀元後3世紀)に区分されます。
弥生時代後期 弥生土器 台付甕(だいつきがめ)
弥生時代後期から古墳時代前期に作られた、煮炊き用の甕に脚台(きゃくだい)を付けた調理器具です。
古墳時代後期、住居の中には炉(ろ)にかわって竈(かまど)が普及して、調理器具は長胴甕(ちょうどうがめ)と甑(こしき)が登場しました。
弥生時代後期 オコゲが付着した弥生土器 甕(かめ)
弥生時代後期 弥生土器 高坏(たかつき)
第1次調査で、折戸(久保川南岸の仙水橋〜折戸橋区間)��-10y区から��-11e区にまたがって検出された土坑(どこう、直径1m以上の穴)OK171から壺2点と一緒に出土。
菊川式土器(きくがわしきどき)と呼ばれる弥生土器で、水平の折り返し口縁(おりかえしこうえん)が特徴の高坏です。
口唇部(こうしんぶ)の面に棒状の刻み目を廻(めぐ)らせ、脚部には櫛状工具(くしじょうこうぐ)による羽状の刺突文(しとつもん)が数段付けられています。
菊川式土器の年代は、弥生時代後期前半とする説、弥生時代後期後半とする説、弥生時代後期前半・後半に2分する説など諸説あります。
この高坏は、出土層位から弥生時代後期後半を中心とする弥生土器と推定。
弥生時代後期 ミニチュア土器
第1次調査で、壺形(つぼがた)・甕形(かめがた)・高坏形(たかつきがた)・鉢形(はちがた)など小型の手づくね土器90点が出土。
弥生時代後期 ミニチュア土器
弥生時代後期 有孔磨製石鏃(ゆうこうませいせきぞく)
第1次調査で、中瀬(久保川南岸の中央橋〜中瀬橋区間)��-4区の包含層から出土。
凹基無茎式(おうきむけいしき)の磨製石鏃で、基部に孔(あな)があけられています。
長さ4.2�僉�幅2.5�僉�基部の厚さ0.3��
弥生時代後期 石包丁(いしぼうちょう)
第1次調査で、中瀬(久保川南岸の中央橋〜中瀬橋区間)��-17区の地山直上面から出土。
歴史の教科書などには、弥生人が稲穂(いなほ)を摘(つ)み取る時に、石包丁と呼ばれる石器を使用したと書かれています。
しかし、静岡県内では石包丁が100点未満しか出土していません。
石を薄く叩(たた)き割った剥片石器(はくへんせっき)が、広く用いられていたようです。
背の長さ10.8�僉�幅5.3��
石包丁(いしぼうちょう)の使い方
出典 潮見浩 1988年『図解 技術の考古学』
弥生時代後期 一本鋤(いっぽんすき)、二又鍬(ふたまたくわ)
弥生時代後期 柄振(えぶり)
水田で使用された木製農具です。
弥生時代後期 一本鋤(いっぽんすき)
水田で使用された木製農具で、後ずさりしながら耕しました。
弥生時代後期 一本鋤(いっぽんすき)
水田で使用された木製農具で、後ずさりしながら耕しました。
弥生時代後期 二又鍬(ふたまたくわ)
水田で使用された木製農具で、前進しながら耕しました。
弥生時代後期 柄振(えぶり)
第1次調査で、杭(くい)や小棒まで含めて約2,300点の木器が出土。
柄振は、田植え前の水田で土を押しならして整える木製農具です。
古墳時代後期〜平安時代前期？ 石製紡錘車(せきせいぼうすいしゃ)
第1次調査で、中央(久保川南岸の折戸橋〜中央橋区間)��-4区の貝塚(かいづか)TS4付近から出土。
植物の繊維から作った糸を、回転させて撚(よ)りをかける道具です。
土製・石製以外にも、古墳時代後期(6世紀中頃)には鉄製紡錘車が登場しました。
底径3.4�僉⊂緻矛�2.3�僉�高さ1.5cm、孔径0.7��
文化財課企画展『大発見！いわたの考古学〜結構すごいぞ！発掘調査〜』のキャプションでは、弥生時代後期の紡錘車として紹介されていました。
発掘調査報告書『御殿・二之宮遺跡 発掘調査報告�機戮任蓮�古墳時代後期〜平安時代前期の遺物となっています。
紡錘車(ぼうすいしゃ)の使用イラスト
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)
「石西」「央」「夫」「豊毅(とよき)」「豊国(とよくに)長」
平成22年(2010年)5月〜平成23年(2011年)1月、鹿苑神社(ろくおんじんじゃ)南西の市道 天龍西貝塚幹線の工事に伴う発掘調査を実施。
弥生時代の建物跡、貝塚(かいづか)、食物を入れた貯蔵穴(ちょぞうあな)、中世の井戸などの遺構を検出。
出土遺物は、弥生土器、イノシシの骨、魚の骨を加工した釣り道具、奈良時代の土器に墨(すみ)で文字を書いた墨書土器などです。
墨書土器は、地名や役職名と思われる文字が須恵器に書かれています。
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「山」
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「敢五部(あへいそべ)」
人名もしくは集団だとされています。
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「若」
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「豊毅(とよき)」
「豊毅」は、遠江国豊田郡(とおとうみのくに とよだぐん)の軍団長だとされています。
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「豊毅(とよき)」
「豊毅」は、遠江国豊田郡(とおとうみのくに とよだぐん)の軍団長だとされています。
奈良時代(8世紀) 墨書土器(ぼくしょどき)「綾生(あやしょう、りょうせい)」
「綾生」は、国府職員の職名(高級織物を織る人)だとされています。
奈良時代(8世紀) ニ彩陶器(にさいとうき) 碗(わん)
第8次調査で出土。
中国の唐三彩(とうさんさい)を真似て作られた、身分の高い人物が使用した高級品です。
緑と黄色の釉薬(ゆうやく)が施(ほどこ)されています。
奈良時代(8世紀) 緑釉陶器(りょくゆうとうき)の破片
奈良時代(8世紀) 人面墨書土器(じんめんぼくしょどき)
第6次調査で、国府南側を流れていた自然流路(川)の跡を検出。
斎串(いぐし)・人形木製品(ひとがたもくせいひん)・馬形木製品(うまがたもくせいひん)・人面墨書土器など、祭祀遺物(さいしいぶつ)が出土しました。
国府に穢(けが)れが持ち込まれないようにするため、祭祀を水辺で行っていたようです。
人面墨書土器は、墨(すみ)で顔が描かれた奈良時代の土師器(はじき)の甕(かめ)。
この顔は疫病神(やくびょうがみ)とされており、疫病神を甕に封じ込めたと考えられます。
奈良時代(8世紀) 人面墨書土器(じんめんぼくしょどき)
奈良時代(8世紀) 帯金具(おびかなぐ) 巡方(じゅんぽう)
役人の腰帯(革製ベルト)に付けられていた青銅製の金具です。
奈良時代(8世紀) 貨銭(かせん)「万年通宝(まんねんつうほう、萬年通寶)」
奈良時代の天平宝字4年(760年)から、日本で鋳造(ちゅうぞう)された古銭。
皇朝十二銭(こうちょうじゅうにせん)と呼ばれる、律令期(奈良、平安時代)の銅銭(どうせん)12種類のうち2番目に発行されたものです。
奈良〜平安時代 木簡(もっかん)
第1次調査で木簡8点が出土し、2点は判読不能。
1〜4号木簡は、国名・郡名の記載が無く郷名のみで、奈良時代の天平12年(742年)の郷里制(ごうりせい、きょうりせい)廃止後の木簡と推定されます。
1号木簡 「大郷 小長谷部 宮▢」
第1次調査で、中央(久保川南岸の折戸橋〜中央橋区間)��-10C区から出土。
出土層位と遺物より、奈良時代後半・奈良時代末以前のものと推定。
税として送る荷物(貢進物(こうしんもつ、こうしんぶつ))に付けられていた荷札木簡(にふだもっかん)です。
遠江国磐田郡大郷(おおごう)は磐田市上大之郷(かみおおのごう)・下大之郷(しもおおのごう)周辺、小長谷部(おはつせべ)は人名。
縦168�弌�横32�弌�厚さ3��
2号木簡 「狭束郷 戸主 文委部麻▢」
第1次調査で、中瀬(久保川南岸の中央橋〜中瀬橋区間)��-12区の南東隅から出土。
同時に出土した土器から、奈良時代後半〜奈良時代末頃のものと推定。
税として送る荷物(貢進物)に付けられていた荷札木簡で、下部が欠けています。
遠江国城飼郡狭束郷(とおとうみのくに きこうぐん さつかごう)は掛川市(旧小笠郡大東町(だいとうちょう))小貫(おぬき)の佐束(さづか)地区周辺、文委部麻▢(文委部は委文部(しとりべ)の誤記)は人名。
縦109�弌�横18�弌�厚さ3��
3号木簡 「豊国郷 戸主 小長谷部色万呂・戸小長」
第1次調査で、折戸(久保川南岸の仙水橋〜折戸橋区間)��-7x区から、3号木簡と4号木簡が十字型に重なった状態で出土。
出土層位から判断すれば、平安時代初期〜平安時代前期に属するものです。
しかし、この層中には下層の奈良時代後半の遺物が混在していました。
税として送る荷物(貢進物)に付けられていた荷札木簡で、上部・下部が欠けています。
遠江国磐田郡豊国郷(とよくにごう)は磐田市見付(みつけ)・中泉(なかいずみ)周辺、小長谷部色万呂(おはつせべ の しきまろ)は人名。
縦161�弌�横17�弌�厚さ3��
奈良〜平安時代 木簡(もっかん)
4号木簡 「久米郷 ▢▢▢▢」
第1次調査で、折戸(久保川南岸の仙水橋〜折戸橋区間)��-7x区から、3号木簡と4号木簡が十字型に重なった状態で出土。
出土層位から判断すれば、平安時代初期〜平安時代前期に属するものです。
しかし、この層中には下層の奈良時代後半の遺物が混在していました。
税として送る荷物(貢進物)に付けられていた荷札木簡(にふだもっかん)？
下部が欠けています。
久米郷(くめごう)は、磐田市内周辺の地名。
縦185�弌�13�弌�厚さ3��
5号木簡 「駅家人 大湯〔坐〕▢▢▢▢」
第1次調査で、折戸(久保川南岸の仙水橋〜折戸橋区間)��-7x区から出土。
出土層位から判断すれば、平安時代初期〜平安時代前期に属するものです。
しかし、この層中には下層の奈良時代後半の遺物が混在していました。
税として送る荷物(貢進物)に付けられていた荷札木簡(にふだもっかん)？
下部が欠けています。
駅家人は、古代日本の律令制で五畿七道(ごきしちどう、都のある畿内(きない)と日本全国の国府を結ぶ官道(かんどう))に整備された駅家(えきか、うまや)の役人？
大湯は人名です。
坐は、左の人が口になっている異体字(いたいじ)。
縦171�弌�横23�弌�厚さ3��
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
墨(すみ)で顔を描いた痕跡(こんせき)が白く残っている、人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
墨(すみ)で顔を描いた痕跡(こんせき)が白く残っている、人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 人形代(ひとかたしろ)
御殿・二之宮遺跡で出土した、最大の人形木製品(ひとがたもくせいひん)です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀) 斎串(いぐし)
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀)〜平安時代(12世紀) 鳥形木製品(とりがたもくせいひん)
右側が鳥の頭で、中央の四角い切り込みに羽を取り付けたようです。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
奈良時代(8世紀)〜平安時代(12世紀) 馬形木製品(うまがたもくせいひん)
右側が馬の頭です。
6月と12月の晦日(みそか、最終日)に罪穢(つみけがれ)を祓(はら)う「大祓(おおはらい)の儀式」で使用した、祭祀具(さいしぐ)だと考えられています。
中世〜近世 舟形木製品(ふながたもくせいひん)
日本の中世は、平安時代末期(11世紀後半)の院政期〜戦国時代(室町時代、16世紀後半)の期間。
日本の近世は、安土桃山時代(織豊時代)・江戸時代〜1867年の大政奉還(たいせいほうかん)あるいは1869年の東京遷都(せんと)までの期間。
マツの木で作られた、祭祀具(さいしぐ)です。
中世〜近世 下駄(げた)
第1次調査で、角形・小判形などの下駄が3点以上出土。
前後の歯を1枚の板から削り出し、鼻緒孔(はなおあな)は前に1ヵ所・後ろに2ヵ所。
ヒノキやスギなど比較的手に入りやすく、加工しやすい木で作られています。
中世〜近世 下駄(げた)
ヒノキやスギなど比較的手に入りやすく、加工しやすい木で作られています。
中世〜近世 漆椀(うるしわん)
ブナ・トチノキなどの広葉樹をくりぬいて作った椀に、漆を塗った高級品です。
中世〜近世 漆椀(うるしわん)
ブナ・トチノキなどの広葉樹をくりぬいて作った椀に、漆を塗った高級品です。
中世〜近世 漆椀(うるしわん)
ブナ・トチノキなどの広葉樹をくりぬいて作った椀に、漆を塗った高級品です。
中世〜近世 漆椀(うるしわん)
ブナ・トチノキなどの広葉樹をくりぬいて作った椀に、漆を塗った高級品です。
近世 硯(すずり)
日本の近世は、安土桃山時代(織豊時代)・江戸時代〜1867年の大政奉還(たいせいほうかん)あるいは1869年の東京遷都(せんと)までの期間。
参考文献
・『静岡県史 資料編1 考古一』静岡県 1990年3月20日
・『静岡県史 資料編2 考古二』静岡県 1990年3月20日
・『図説 磐田市史』磐田市史編さん委員会 1995年11月1日
・『磐田万葉歌碑めぐり』磐田市立中央図書館 2014年9月13日
・『静岡県文化財地図�� ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『静岡県文化財地名表�� ―焼津市以西―』静岡県教育委員会 1989年3月1日
・『磐田市史 資料編1 考古・古代・中世』磐田市史編さん委員会 1992年3月31日
・『御殿・二之宮遺跡 発掘調査報告�機拈轍�県磐田市教育委員会 1981年3月31日
・『新いわた 文化財だより 第72号』磐田市教育委員会文化財課 2011年3月1日
・『いわた 文化財だより 第109号』磐田市教育委員会文化財課 2014年4月1日
・『いわた ふるさと散歩 南部編 磐田文化財マップ』磐田市教育委員会文化財課 2003年11月25日
・『静岡県埋蔵文化財調査研究所調査報告 第65集 遠江国分寺跡の調査 ―平成6年度県立磐田南高等学校埋蔵文化財調査―』財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所 1995年3月31日
・『御殿・二之宮遺跡発掘調査報告書 集合住宅建設・駐車場造成に伴う第96〜98次発掘調査』磐田市教育委員会 2008年3月21日
・文化財課企画展『人形〜人形に見る歴史と文化〜』展示 磐田市教育委員会文化財課 2010年1月30日〜2月14日
・文化財課企画展『大発見！いわたの考古学〜結構すごいぞ！発掘調査〜』展示 磐田市教育委員会文化財課 2016年7月23日〜8月28日
・文化財課企画展 『千年の時 再び 〜遠江国分寺の謎にせまる〜』展示 磐田市教育委員会文化財課 2017年7月29日〜8月27日
・文化財課企画展『弥生時代へGO! 〜2000年前のイワタ〜』展示 磐田市教育委員会文化財課 2020年8月1〜30日
・文化財課企画展『文化財課のお仕事展 −調査から保存活用まで−』展示 磐田市教育委員会文化財課 2021年7月31日〜8月29日
・文化財課企画展『磐田の城と戦国大名 ―今川から徳川へ― 』展示 磐田市教育委員会文化財課 2024年7月27日〜8月25日
・磐田市埋蔵文化財センター 常設展示
・御殿遺跡公園 案内板 磐田市教育委員会文化財課 2016年8月
・「防人の歌」歌碑 案内板 防人の歌顕彰会 2001年3月
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