静岡県島田市(旧榛原郡金谷町)金谷古横町(かなやふるよこちょう)の曹洞宗 金谷山 医王寺(きんこくさん いおうじ)は、平安時代前期の弘仁年間(810〜824年)にこの地を訪れた弘法大師(こうぼうだいし)作の薬師如来像(やくしにょらいぞう)を、お堂を建て安置したことが始まりと伝えられています。
江戸時代前期の元禄5年(1692年)、医王寺6世 観村和尚が現在の薬師堂を再建。
幕末の安政7年(1860年)、南画家 渡辺華山(わたなべ かざん)の弟子 永村茜山(ながむら せんざん)が薬師堂の天井画を描きました。
医王寺薬師堂と医王寺薬師堂天井画は、静岡県指定文化財です。
静岡県指定文化財 医王寺薬師堂
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曹洞宗 金谷山 医王寺の地図
静岡県島田市金谷古横町(かなやふるよこちょう)159-1
無料駐車場あり
アクセス
・新東名高速道路 島田金谷ICの南
無料駐車場
寺号標(じごうひょう)「金谷山 醫王寺(きんこくさん いおうじ)」
平成21年(2009年)12月建立。
本堂
曹洞宗 金谷山 医王寺(きんこくさん いおうじ)は、平安時代前期の弘仁年間(810〜824年)にこの地を訪れた弘法大師(こうぼうだいし)作の薬師如来像(やくしにょらいぞう)を、お堂を建て安置したことが始まりと伝えられています。
真言宗 金谷山 医王寺に発展しましたが、安土桃山時代の文禄元年(1592年)に火災で諸堂を焼失。
薬師如来像は、猛火の中から門前の耕田(こうでん、耕作を行う田地)に飛び出して焼失を免れました。
安土桃山時代の慶長元年(1596年)、曹洞宗 金龍山 洞善院(とうぜんいん)2世 祇徹(ぎてつ)和尚が医王寺の諸堂を再建、曹洞宗に改宗して洞善院の末寺としました。
江戸時代前期の貞享2年(1685年)、医王寺5世 泉順長老の代に再び火災に遭いましたが、薬師如来像は無事でした。
元禄5年(1692年)、医王寺6世 観村和尚が本堂・庫裡(くり)・現在の薬師堂を再建。
扁額(へんがく)
箒(ほうき)を持った小僧さんの像
釈迦(しゃか)の弟子で十六羅漢(じゅうろくらかん)の一人、周利槃特(チューラ・パンタカ)がモデル。
赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」のレレレのおじさんも、周利槃特がモデルだそうです。
平成11年(1999年)9月奉納。
燈籠(とうろう)
十三重塔(じゅうさんじゅうのとう)
静岡県指定文化財 医王寺薬師堂
江戸時代前期の元禄5年(1692年)、医王寺6世 観村和尚が本堂・庫裡(くり)・現在の薬師堂を再建。
薬師堂は桁行(けたゆき)3間(7.59m)、梁間(はりま)3間(7.59m)、宝形造(ほうぎょうづくり)の仏堂です。
元禄15年(1702年)、正面の階段の上に屋根がせり出した向拝(こうはい)を増築。
向拝の上部には、曲線に造られた海老虹梁(えびこうりょう)が架けられています。
柱の上部には組物(くみもの)が載(の)り、それらの間には蟇股(かえるまた、蛙股とも表記)と呼ばれる彫刻を設置。
昭和61年(1986年)12月5日、薬師堂が静岡県指定文化財となりました。
平成27〜28年度の全解体修理で、建立当初は茅葺屋根(かやぶきやね)だったことが判明。
修理前の瓦葺屋根(かわらぶきやね)から、茅葺屋根型金属板葺屋根(かやぶきやねがた きんぞくばんぶきやね)に変更。
海老虹梁(えびこうりょう)
奥が組物(くみもの)と蟇股(かえるまた、蛙股とも表記)です。
扁額(へんがく)「瑠璃壂(るりでん)」
修理前の瓦葺屋根(かわらぶきやね)の薬師堂
静岡県指定文化財 医王寺薬師堂天井画
幕末の安政7年(1860年)、南画家 渡辺華山(わたなべ かざん)の弟子で「華山十哲(かざんじってつ)」の一人に数えられる永村茜山(ながむら せんざん)が、 薬師堂の天井に天井画を描きました。
外陣(げじん)天井には、中央に306.0�僉�315.0�僂留昔郷�(うんりゅうず)、左右に琴(こと)・蓮華(れんげ)・琵琶(びわ)・笙(しょう)を持った157.5�僉�173.0�僂�4面の天女図(てんにょず)。
仏像が安置されている内陣(ないじん)の格天井(ごうてんじょう)には、55.8�僉�54.5�僂�50面の花卉図(かきず)が描かれています。
雲龍図には「歳在庚申仲春写 茜山永邨寛」と記されており、60年に1度の庚申(こうしん)の年である安政7年(1860年)に描いたことが分かります。
昭和58年(1983年)2月25日、静岡県指定文化財となりました。
南画家(なんがか) 永村茜山(ながむら せんざん)
江戸時代後期の文政3年(1820年)、幕府の祐筆(ゆうひつ)を務める長谷川善次郎(はせがわ ぜんじろう)の三男として江戸赤坂に誕生。
幼名は寿三郎、通称は普吉、名は寛、字は済猛、号は寿山、のちに茜山。
幼少より、南画家 渡辺華山(わたなべ かざん)が開く画塾に通いました。
文政13年11月6日(1830年12月20日)の華山の日記『全楽堂日録(ぜんらくどうにちろく)』に初めて登場し、この時の茜山は11歳。
天保9年(1838年)、華山の推挙により19歳で幕府代官 羽倉外記(はぐら げき、名は秘道(やすみち)、通称は外記(げき)あるいは用九(ようく)、号は簡堂(かんどう)、儒学者(じゅがくしゃ)の羽倉簡堂として有名)の伊豆七島巡視に随行(ずいこう)して、『伊豆七島図巻(いずしちとうずかん(ずまき))』を描いて幕府へ提出。
天保10年(1839年)、渡辺華山がモリソン号事件と江戸幕府の鎖国政策を批判したことによる言論弾圧事件「蛮社の獄(ばんしゃのごく)」で捕縛(ほばく)。
弟子の茜山は、江戸を脱出して諸国を漫遊。
弘化年間(1845〜1848年)、測量の知識がある茜山は、遠江国榛原郡金谷宿(とおとうみのくに はいばらぐん かなやしゅく)で大井川(おおいがわ)築堤工事の監督を引き受けました。
嘉永元年(1848年)、29歳で金谷宿の組頭(くみがしら) 永村金左衛門(ながむら きんざえもん)の養子になり娘の鈴子と結婚。
義父の没後、金左衛門を襲名して金谷宿の組頭を継ぎました。
安政7年(1860年)、41歳で隠居して、医王寺薬師堂の天井画を制作。
文久2年10月3日(1862年11月24日)、43歳で死去。
茜山の墓は、曹洞宗 金龍山 洞善院(とうぜんいん)の墓地にあります。
医王寺薬師堂 案内板
医王寺薬師堂天井画 案内板
屋根付外置香炉(やねつきそとおきこうろ)
昭和54年(1979年)薬師堂大修善記念で奉納。
燈籠(とうろう)
幕末の慶応2年12月8日(1867年1月13日)建立。
燈籠(とうろう)の銘(めい)
「慶應二年丙寅歳(けいおうにねんひのえとらどし) 十二月八日建之(じゅうにがつようかこれをたつ)」と刻まれています。
由緒書(ゆいしょがき)
蘇鉄(そてつ)
水盤(すいばん)
平成2年(1990年)2月吉日奉納。
手水鉢(ちょうずばち)とも呼ばれます。
水盤(すいばん)
手水鉢(ちょうずばち)とも呼ばれます。
水盤(すいばん)
江戸時代後期の天保15年(1844年)奉納。
手水鉢(ちょうずばち)とも呼ばれます。
水子供養地蔵尊(みずこくようじぞうそん)
昭和57年(1982年)建立。
水子地蔵(みずこじぞう)
無縁塚(むえんづか)
江戸時代以降に建立された、墓石を兼ねた石仏(せきぶつ)が集められています。
地蔵や観音像の刻まれた石仏は、舟形観音(ふながたかんのん)と呼ばれるものです。
舟形の光背(こうはい)と一体で彫られた仏像に、戒名(かいみょう)と命日(めいにち、死亡年月日)が刻まれています。
18歳頃までに亡くなられた子供を供養するため、建立される場合が多かったようです。
地蔵
石仏群
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
舟形の光背(こうはい)と一体で彫られた地蔵。
両手を合わせて合掌(がっしょう)する地蔵か、両手で宝珠(ほうじゅ)を持った「宝珠持ち地蔵菩薩」です。
右側の「早世(そうせい)」と左側の戒名(かいみょう)「智空童女(ちくうどうにょ)」から、18歳頃までに亡くなった女の子の墓石だと分かります。
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
舟形の光背(こうはい)と一体で彫られた地蔵。
両手を合わせて合掌(がっしょう)する地蔵か、両手で宝珠(ほうじゅ)を持った「宝珠持ち地蔵菩薩」です。
上部に「早世(そうせい)」と刻まれており、若くして亡くなられた方の墓石だが分かります。
命日は、天明年間(1781〜1789年)。
如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)
舟形の光背(こうはい)と一体で彫られた如意輪観音(にょいりんかんのん)です。
如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)
舟形の光背(こうはい)と一体で彫られた如意輪観音(にょいりんかんのん)です。
地蔵堂
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
右手に錫杖(しゃくじょう)・左手に宝珠(ほうじゅ)を持つ地蔵。
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
日限地蔵(ひぎりじぞう)
「何月何日までに、願い事がかないますように」と祈願すると叶うとされる地蔵。
弘法大師(こうぼうだいし)
弘法大師像(こうぼうだいしぞう)
右手に五鈷杵(ごこしょ)、左手に数珠(じゅず)を持っています。
地蔵
山門？
石橋
＜墓地＞
歴代住職の墓
平成12年(2000年)建立。
中央が医王寺の中興開山 大宣祇徹(だいせん ぎてつ)大和尚の墓。
安土桃山時代の慶長元年(1596年)、曹洞宗 金龍山 洞善院(とうぜんいん)2世 祇徹(ぎてつ)が医王寺の諸堂を再建、真言宗から曹洞宗に改宗して洞善院の末寺としました。
医王寺の中興開山 大宣祇徹(だいせん ぎてつ)大和尚の墓
石碑
石碑
平成10年(1998年)4月建立。
金谷出身で埼玉県川口市・櫻井鋳造所の創業者 櫻井巳四二氏の石碑。
裏山の墓地からの眺望(ちょうぼう)
冬場の快晴の日には、富士山山頂付近が見えます。
富士山
参考文献
・由緒書
・現地案内板
・『金谷町史 通史編 本編』金谷町史編さん委員会 2004年3月31日
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