著者は、紀伊国屋文左衛門本舗というサイトを運営し、
和歌山県の名産品をインターネットで全国に販売している。

インターネット販売と共に、
地方の企業の経営コンサルティングなども行っている。

その著者より、
「初めて本を出しました」というご案内をいただいたので即購入。
「インターネットを通じた地方の活性化」という著者の理念に共感したためであり、
決して以前おいしいみかんをくれたという理由(だけ)ではない。

 読んだ感想を簡単に述べてしまうと、
「非常に大きなよいところと、実に些細な悪いところがある本」というところである。
 先に些細な悪いところから述べると、
誤字脱字が多い。
せっかくのよい内容なのに、
些細な間違いで印象を悪くしてはもったいない。

増刷時に直せるよう著者に教えてあげようと思い、
数えていたのだが間違いは結構あった。
実にもったいない。

誤字脱字はすべて編集者の責任である。
編集者は何をしていたんだ! という話だ。

 よいところに入る。
1.まったくといっていいほど「著者の自慢話」がない。
著者の運営するサイトは、
インターネットの物品販売において1位を記録するなど非常に好調な売り上げを記録しているのだが、
そのことを著者はまったくといっていいほど書いていない。
それどころか、
紀伊国屋文左衛門本舗の名前もほとんど本文中に出てこない。

「要はあんたの自慢話のまとめか?」と言いたくなるような本もある中で、
あくまでも中身で勝負しようという姿勢が非常によい。

2.内容が秀逸
この本では、
場所が不便で人もいない地方の会社でも、
インターネットを使って全国を相手に商売を行う方法を書いている。

その内容は、
一言であらわせば「よくぞここまで書いてくれた!」というものである。

どの内容も、
核心を突いていて、
生半可な覚悟では全国展開など到底うまく行かないと説いている。
いくつか紹介しよう。

「危機的な状況におかれても、
言い訳することなく商売に対し真正面から向き合い、
新たな仕組みや、新たなツールを取り込みながら、
本気になって取り組めば、
良い結果を出すことができるのです。

ピンチに面したときこそが、最大のチャンスです」(P.47)

「インターネットショップをやるのなら、
『この商品を全国の方に知っていただきたい!』といった
『熱い想い』が必要なのです」(P.102より抜粋)など。

また、ほとんど費用が発生せず、
ほかの投資に比べ簡単に行えるインターネット事業の始め方にも、
著者の考えは厳しい。

著者は、
多くの会社が「ほかもやってるし、うちもやってみるか」的なノリでインターネット事業を開始し、
一番パソコンに詳しい社員に任せ、
半年くらいやってみて、
うまく行かなかったら撤退するといった安直な考えを
「パソコンに詳しい社員だからといってネット事業に詳しいはずもないし、
そんないい加減な気持ちで始めた店など、
半年でなくなって当然だ」と批判している。

その店のメイン商品よりも、
インターネットで販売するには別の商品のほうが向いていることもある。
たとえば福井県にある日本料理屋は、
本業の傍ら作っている鯖寿司をインターネットで販売したところ、
鯖寿司の売り上げが店のそれを上回ったという。

インターネット事業を行うための具体的な方法が詳しく書かれていて、
繰り返しになるが「よくぞここまで書いてくれた!」と思う。

 ついでに、
自身の事業についてまったく自慢も宣伝もしていない著者に代わり、
著者の会社のユーザーでもある私が宣伝をしておこう。

 著者のお店から、
私は主にみかんを買っているが、
この店のみかんは本当にうまい。

サイトを見てもらえれば、
扱うみかんも厳選していて、
高品質なみかんをつくる農家のものしか扱っていないことがよくわかる。

 また、「わけありみかん」というものも販売している。
これは、傷がついたりして通常の売り物にならないものである。

傷はついているが、
味はまったく問題ない。
それを、家庭用として格安で販売している。

農家は捨てるものをお金に換えられて、
消費者は安くておいしいものを買えて、
共によい関係が築ける。

こういった商品は、
地方に拠点を置いてインターネット販売を行っているからこそ扱うことができる。

余談だが、
私が以前「わけありデコポン」を買ったとき、
「デコのないデコポン」が送られてきた。
傷や汚れは一切ついていなくても、
特徴的なデコがなければデコポンとしては失格なのだ。
ちょっと面白かった。

 書評も宣伝もバッチリした。
あとは、
この本を読んで多くの地方にある会社が売り上げを伸ばしていくこと、
紀伊国屋文左衛門本舗がさらなる発展を遂げること、
私が安くて新鮮でおいしいものが買えることを願う。