2017年02月18日

『西村雅彦の俳優入門』を読む

西村雅彦は俳優業のほかに別の顔がある。
「表現を学ぶ教室」というワークショップを主催し、全国各地で開催している。
西村がワークシッョプを始めたのは、孤立した老人たちをつないで、「楽しい人生を送る手伝いがしたい」との思いからだったという。
当初はシルバー世代を対象にしていたが、いまでは幼稚園から90歳まで、年齢も性別も職業も多様な人たちを対象にして、演技指導を行っている。
参加条件は「演技経験ゼロ」の人である。
シロートが12回ほど稽古を重ねて、大勢の観客の前で芝居を披露する。
無謀だがまったく問題はない。
舞台には不思議な力がある。
人を変える力がある。
人をつなぐ力がある。
俳優の基本は「伝える」ことだ。
セリフを観客に伝えるために必要なものは何か。
「声」である。
声を発してセリフをしっかり伝えるのが俳優の仕事である。
セリフにとって大切なのは、ひとつひとつの言葉だ。
言葉をできるだけはっきり発するためのポイントは3つある。
1.声をきたえる。
2.「言葉のアタマ」を強く言う。
3.「言葉のオシリ(語尾)」を伸ばさない。
そのために、「声をきたえる」練習、発声練習、呼吸の仕方、「言葉のアタマを強く言う」練習、「語尾をはっきり言う」練習などが必要だ。
本書にはそうした練習方法が具体的に記載されている。
さらに、セリフはキャッチボールだから、相手に伝えたらこんどは相手の言葉をしっかり「聞く」ことが大切だ。
伝えるということは言葉を渡すことで、渡した言葉に対して相手が返してきた言葉を受け取ることで「伝える」ことが完成する。
相手のセリフをしっかり聞いて、何を伝えたいか「気づき」が生まれる。
この「気づき」でつぎのセリフの言い方が変わってくる。
「聞く」ことは意外と難しい。
「聞く」には意識の集中が必要だ。
集中力を高めるにはある種の「儀式」が必要だ。
儀式は最低3つ持っていることが望ましい。
たとえば、緊張する、「あがる」場合どうするか。
呼吸の仕方を会得する。
”,ら吸う(2秒)
息を止める(4秒)
8から吐く(8秒)
といった方法などがある。
これで、「あがる」ことから解放されてラクになる。
本書にはDVDがついている。
「仝撞曚了妬 
発生の練習
セリフの練習
な垢力をつける
ジ斥佞離ャッチボール」
が分かりやすく指導されている。
西村のワークショップは、俳優だけでなく一般人にも参考になる。
言葉を相手に伝えることは、日常生活でも大切なことだ。
そのためには「発声練習」も必要だ。
さらに、「言葉のアタマを強く言う」「語尾をはっきり言う」ということを気をつけなければならない。
そして、「聞く」ことの大切さである。
相手の言葉をしっかり聞いて、何を伝えたいか受け止めて応答する。
緊張した時の呼吸法などの「儀式」も知っておいた方がいいだろう。
要するに、人とどうつながるか。
そのつながりをつくるのは言葉だ。
その言葉を伝えるノウハウはだれでも身につけておくべきことである。
  
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2017年02月12日

佐藤優『嫉妬と自己愛』を読む

「嫉妬」も「自己愛」もやっかいな感情だ。
それにどう対処するか。
佐藤が自分の体験と、小説の読み解き、そして識者との対話でその対処法を指南する。
本書の副題は「負の感情を制した者だけが生き残れる」だ。
佐藤は自分の体験として鈴木宗雄事件をあげている。
2000年、鈴木宗雄はモスクワでプーチンと会談した。
そして、森・プーチン会談の日程を取り付けた。
その報告を東郷和彦外務省欧亜局長が、中曽根康弘・橋本龍太郎・三塚博・中山太郎といった自民党の有力者に報告した。
すると4人とも憤然としたという。要するに政治家の嫉妬である。
なぜ4人が憤然としたか。
鈴木宗雄をライバルと認識したからだ。
鈴木政権の誕生を念頭に置いて、外務省が鈴木に賭けていると思い始めている。
その懸念は2001年、小泉政権の誕生で田中真紀子が外務大臣に就任したことで現実となった。
田中外相は外務省が鈴木に支配されていると考え、人事のパージを始め、外務省は大混乱に陥った。
結局、東京地検特捜部に鈴木が逮捕され、佐藤も逮捕された。
佐藤は鈴木が政治家としては例外的に「嫉妬心が希薄」で、そのために事件に巻き込まれたと考察している。
嫉妬が原因で起こる問題をいかにしておさえるかが組織強化のカギである。
ただし、嫉妬は組織を活性化させるエネルギーにもなる。
組織は「嫉妬のマネジメント」にもっと関心を向けるべきだ。
しかし、ここ10年で雰囲気がガラリと変わった。
政界からも企業からも嫉妬の感情が希薄化してきている。
そして嫉妬に代わって歪んだ「自己愛」が肥大化している。
それではなぜ、「嫉妬」のエネルギーが弱まり、歪んだ「自己愛」が増殖する時代となってきたか。
第1に新自由主義政策の浸透である。
新自由主義改革で格差が拡大した。
その結果、組織内の個人がバラバラになった。
みな自分の身を守ることで精一杯である。
上昇志向がおとろえ、競争のエネルギーであった嫉妬の感情も後退した。
嫉妬から自己保身=自己愛へとシフトしてきている。
第2に歪んだ自己愛が肥大化しているのは、フェイスブック・ツィッター・LINEといったSNSにある。
SNSの危険性はバーチャル空間をリアルと勘違いすることにある。
リアルな世界でうまく人間関係を結べない若者が、バーチャル空間で満足してしまう危険性である。
本書の斎藤環との対談がオモシロイ。
自己愛には「プライド」と「自信」の2つある。
プライドは見栄とかこだわり。
他方「自信」は「今の自分はイケてる」的感覚。
自信が極端に貧弱化し、プライドが肥大化すると引きこもりになる。
キーワードは「非リア」。
友だちが少ない、彼女・彼氏がいない…。
若者は悩み苦しみながら、他者との関係性を構築していかなければならないのだが、SNSがその状況を「緩和」する装置になっている。
SNSに浸っていると、他者との関係を築けなくても「承認されている」と思い込んで、歪んだ自己愛が温存されてしまう。
「マズローの欲求段階説」では、生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求→承認欲求→自己実現の欲求となる。
しかし、今の若者は自己実現したいと思わない。
自己実現にたる社会がどこにあるかといった意識だ。
それよりも仲間からの承認欲求、それもバーチャル世界での承認欲求が肥大化し、歪んだ自己愛が増殖している。
それに対してどうするか。
斎藤の答えはシンプルだ。
「よき他者との出会いの機会をたくさん作ることだ」という。
カギは他者との関係性にあるのだ。
佐藤は竹村健一から聞いた処世術についても書いている。
そのひとつに「人の悪口は言わないこと」というのがある。
竹村はこの姿勢を見事に貫いていたという。
これは簡単なようで実に難しい。しかし大事なことだ。
わたしの周りでも、人からの信望を失っていった人間は悪口を言うヤツだったからだ。 
最後に佐藤が「嫉妬に対処するための5カ条」「自己愛を制御するための5カ条」をあげている。
ネタバレになるので上げないが、一読を薦めたい。
  
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2017年02月07日

濃尾平野の地盤と春日井市の地震のゆれ=岐阜大杉戸真太教授講演会より

2月7日、春日井市内で岐阜大学副学長杉戸真太教授の「濃尾平野の地盤と地震」という講演があったのでききにいった。
以下講演から。
過去30年の統計によれば、人が「災害・事故・病気等に遭遇する確率は40%」である。
それに対して「災害・事故・病死等に遭遇しない確率は60%」である。
ところが、東南海地震の30年以内の発生確率は70%程度とされているから、こちらがはるかに確率的に高いことになる。
約2万年前、木曽川流域は陸ではなく海だった。
国土交通省中部地方整備局の地図によると、2万年前は名古屋市から岐阜市のあたりまでが海である。
長島・津島・一宮が、ぽっかりと島で海から突き出しているだけだ。
春日井市は海と陸の境である。
その後、約5千年前からたくさんの土砂が積もり、約3千年前には今のような地形ができたとされている。
したがって、土砂の堆積した濃尾平野の地盤はたいへん弱いということだ。
さらに、東日本と西日本のぶつかりあう所なので、地震多発地帯となっている。
活断層も南北にいくつも走っている。
そして、過去に何度も死者千人以上の大地震が頻発してきた。
濃尾平野の地盤の特徴は、軟弱な地盤のために遠方から地中深く伝わってきた地震動が、最後の地表層の軟弱さに応じて数倍も増幅する。
さらに、軟弱な砂地盤では液状化現象が拡大する。
その結果、被害がいっそう大きくなるとされている。
春日井市の地震のゆれは、次の通りとされる。
❐猿投=高浜断層地震
地表震度6・2 /基盤震度6・1
❐南海トラフ地震(和歌山沖震源)
地表震度5・8 /基盤震度5・7
❉市役所地点の表層基盤モデルを考慮して算出した数値。
各市域全体で0・3程度のばらつきがある。
なお、震度階と計測震度値との関係は次の通りである。
震度階7=震度65以上
震度階6強=震度6・0〜6・4
震度階6弱=震度5・5〜5・9
春日井市の地震のゆれの特徴は次の通りとされる。
❐内陸直下型地震(ex猿投・高浜断層地震)
‐絏柴阿卓越した強烈な地震動が突然襲来。
強いゆれはせいぜい20秒程度。
春日井市では震度6強以上。
け箴堂从劼砲呂れぐれも注意。
ザい余震が数日続く。
❐南海トラフ巨大地震
ゞいゆれの前に初期微動(主に上下動)が15〜20秒程度。
△修慮絛い横ゆれが2〜3分程度続く。
春日井市では震度6弱〜6強。
っ枠廚留嫋化による被害拡大。
ケ蠑媛从劼砲呂れぐれも注意。
Χい余震が1か月以上続く。
1995年の阪神淡路大震災では、要救助者が3・5万人。
そのうち、地域住民による救出が2・7万人で77%、自衛隊・消防隊による救助が7900人で23%であった。このことから教訓として、「自分たちの街は自分たちで守る。
自分のことは自分で守る」ことが1番大事だとされている。
地域減災力の強化には、まず「自助」、そして「共助」を高めることが大切だと言われる。
地域減災力の強化には、まず「自助」、そして「共助」を高めることが大切だと言われる。「自助・共助・公助の三位一体による地域減災力の向上」が地震災害に強い地域作りになると杉戸教授は話し、「地震災害に強い春日井市民に!」として次の6点を強調していた。
 ̄蠑媛从劼最悪の2次災害=地域の初期消化能力に大きく依存。
∈匈欧麓綸世鮴簑个妨逃さない=未耐震化住宅に倒壊被害が集中。
重い家具はしっかり固定=寝室には重い家具は絶対に置かない。
ぜ分たちの街は自分たちで守るしかない=自分のことは自分で守り、地域協働に積極参加。
ッ録免生時刻により被害形態は大きく異なる-=様々な被害パターンの対応策を考える。
Φ霏臙録未任篭いゆれが長く続く=長いゆれは粘りの少ない構造物を破壊し、液状化被害を著しく拡大させる。
  
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2017年01月27日

民主政治は生き残れるのか

「トランプ現象」などといって、トランプ米大統領就任で世界・日本はどう変わるかメディアは大騒ぎしている。 
まったく主体性がない発想だ。
トランプがどうだろうが、自国の政治戦略や外交戦略をしっかりとうち立てるべきなのだ。
いつまでも「日米安保は重要だ」などといっていては、多角化しつつある世界情勢に対応できない。
それよりも「トランプ現象」は、「民主政治は生き残れるのか」といったより根源的な問題なのだ。
第2次大戦後に先進国で進行した民主政治は、「中間層」の存在なくして考えられない。
「中間層」とは労働組合だったり、政党・党派だったり、市民運動や人権活動などの政治的活動主体全般をさす。
こうした政治と民衆を仲介する中間層の存在が、戦後の民主政治を支えてきたバックボーンであった。
この中間層が著しく衰退していることが民主政治の危機である。
『世界』2月号掲載のロベルト・ステファン・フォアとヤシァ・モンク論文「民主主義の脱定着へ向けた危険」は示唆的である。以下紹介しておく。
過去30年間、先進国における民主政治への信頼は大きく低下してきた。
それは投票率の低下や党員数の減少などに顕著に現れている。
その一方で有権者は「シングル・イッシュ―」のポピュリスト的政治家への支持を強めている。
有権者は民主主義の価値を疑い、民主主義に代わる政治体制として権威主義への支持を強めている。
世界価値観調査(2005〜15年)によると、アメリカでは「民主主義の国で暮らすことが必要不可欠」と答えた割合は、第2次大戦前生まれた人で72%、1980年代以降に生まれたミレニアル世代で30%である。
この傾向はヨーロッパも同様である。
さらに、「民主主義は悪い政治体制だ」と答えた者は、アメリカのミレニアム世代で24%、ヨーロッパの同世代で13%。
この20年で10%前後ふえている。
また、1990年代までは若年層は高齢層にくらべて、言論の自由を守ることを強く支持していた。
だが、今日では若年層において急進的政治への支持が高く、言論の自由への支持は下がっている。
アメリカでは「指導者を自由な選挙で選ぶことは重要でない」という人が、戦間期生まれで10%、ベビーブーム世代で14%、ミレニアム世代で26%。
アメリカほど顕著ではないがヨーロッパも同様の傾向がみられる。
1960年代以降、全ての民主主義国家で投票率が低下し、政党の党員数も減少している。
若年層の政治活動への参加も減少している。
他方、高齢層の政治への関心は横ばいで、政治的無関心の世代間格差が拡大している。
アメリカでは「政治に関心がある」が、1990年には16〜35歳53%、36歳以上の63%であった。
それが、2010年には若年層は41%に、高齢層は67%になった。
その結果、関心格差は26%となった。ヨーロッパでも政治に関心がある人は、36歳以上で52%と安定しているが、若年層では48%から38%へと減少している。
アメリカでは「軍よる統治がよい」と答えた人は、1995年には16人中1人だったが、現在では6人中1人となっている。
軍による統治が望ましいと考える人の割合はヨーロッパでも増加している。
政府の無能さは軍による支配を正当化すると考える人は、高齢層の53%が否定するが、若年層では36%にとどまった。
特に富裕層に軍の統治に賛同する傾向がみられる。
1990年代のアメリカでは軍による統治に賛同した高所得者は5%であった。
現在は16%となっている。
現在の若者富裕層の35%が軍の統治を支持している。
同様にヨーロッパの若者富裕層の17%が軍の統治を支持している(1995年は6%であった)。
アメリカでは「議会や選挙を顧みなくてよい強いリーダー望ましい」と考える市民は、1995年の24%から、2011年の32%へと増加している。
また、「政府ではなく専門家による決定が望ましい」とする市民も、36%から49%へと増加している。
つまり、反民主主義政治へ支持は、非正規雇用・中高年・貧困層だけではない。
若年層・富裕層・特権層にも広がっている。
1985年以降、1人当たりの国内総生産(GDP)が6000ドル以上あり、民主主義が定着した国での体制崩壊はない。
経済的に豊かで民主主義が定着した国では、体制崩壊はないとされてきた。
先進国では民主主義の脱定着に向けた動きがすでに進行している。
アメリカでは2016年の議会支持率は13%にすぎなかった。
ヨーロッパでは政治家への支持率は過去最低である。
市民が急速に政治への信頼を失い、それと呼応して極右のポピュリストが台頭してきている。
民主政治では自分たちの切迫したニーズを満たすことができないと先進国の民衆が思い始めている。
そして、民衆が民主主義に代わる統治体制に魅力を感じている。
過去に専門家は共産主義体制の崩壊を予測できなかった。
同じ轍を踏みたくないなら、専門家は民主主義の脱定着の進行を調査・研究し、その解決策を考える必要があると論者は述べている。
  
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2017年01月20日

愚かな経済学者・浜田宏一の「罪と罰」

アベノミクスの理論的支柱とされた内閣官房参与の浜田宏一・イェール大学名誉教授の変節が話題となっている。
浜田は自分が旗振り役をしてきたデフレ脱却政策の失敗を認めたのだ。
『新潮45』2月号で評論家の中野剛史が、「暗愚なる経済学者、浜田宏一の罪と罰」という痛快な文章を書いているので紹介しておく。
浜田の理論はミルトン・フリードマンの「貨幣数量説」である。
貨幣数量説は「物価を左右するのは、貨幣供給量である」という理論で、「市場の通貨供給量をふやせばインフレを起こすことができる」とする考え方だ。
しかし、貨幣数量説はケインズによって「粗雑な理論」と批判されてきた。
「単なる制約要因のひとつにすぎない貨幣量を、主たる要因である支出よりも強調することは、最大の誤りである」(『ケインズ1930年代評論集』)。
浜田理論はケインズによって「最大の誤り」とされたものだった。
しかし、その浜田も今では金融政策だけではデフレ脱却は困難で、財政拡大政策が不可欠であると考えを変えたという。
金利がきわめて低い水準になると、金融緩和の効果がなくなるという「流動性のワナ」は、ケインズが指摘して以来、金融政策の常識であった。
したがって、2012年に白川日銀総裁は、「流動性のワナ」により金融の量的緩和政策には限界があると述べていた。
この白川発言を「日銀流理論」として痛烈に批判したのが浜田であった。
その結果、白川は5年の任期をまたず日銀総裁を辞職することになる。
そして、白川に代わって黒田が日銀総裁に就任し、2013年4月、2%というインフレ目標を掲げ、大規模な量的緩和政策を打ち出した。
すなわち、浜田理論の実験を開始した。
だが日銀が400兆円という巨額の量的金融緩和を行っても、依然としてデフレが続いている。
そこで浜田はやっと自分の考えの過ちを認めたのだ。
1980年代以降、主流派経済学者により「ケインズは死んだ」とさかんに言われた。
それが2008年のリーマン・ショックを契機として大きく変わり、ケインズの叡智が再び脚光を浴びるようになった。
スティグリッツやクルーグマン、サマーズら主流派経済学者らが、次々に金融政策の限界を強調し、財政拡大の必要性を力説するようになった。
このパラダイム・シフトの背景には次のような歴史的経過があった。
2000年代初頭、バーナンキFRB議長は日本が長期停滞に陥ったのは、日銀が金融緩和によってデフレから速やかに脱却しないからだと日銀を激しく批判した。
これは「金融政策万能論」といわれ、当時の主流派経済学の「世界に通用する」経済政策理論であった。
バーナンキ議長はリーマン・ショックに直面すると、大規模な金融緩和を断行したが、無残な失敗に終わった。この金融政策万能論の誤りがリーマン・ショックで白日の下にさらされ、ケインズを復活させたのだ。
問題は浜田が金融政策万能論に依拠し、白川日銀総裁を批判したのが2010年だということだ。
金融政策万能論が「世界に通用する」ように見えたのは2007年までである。
浜田はリーマン・ショックとその後のパラダイム・シフトについて何も学ばないままに、内閣官房参与に就任したことになる。
日銀は外部の圧力に屈する形で、2001年から2006年まで量的金融緩和政策を実施した。
だが、デフレを脱却することはできなかった。
要するに「金融政策」だけで経済を立て直すという実験は、日本でもアメリカでもすでに失敗の結果に終わっていたのだ。
それにもかかわらず、浜田は第2次安倍政権で量的金融緩和という時代錯誤の政策を主導した。
浜田は内閣官房参与になってからも変節を頻繁に繰り返してきた(消費税引き上げ問題等)。
中野は間違いを繰り返してきた人物の「罪と罰」を問題にし、
「権威の失墜がもたらす虚無感。これこそが、浜田氏の犯した最大の罪である」
と締めくくっている。
主流派経済学は「頭のいいバカな経済学」と言われてきた。
市場はコントロールできないというのが歴史の教えるところだが、市場をコントロールできるとウソぶいてきたのが主流派経済学である。
その「バカな経済学」が1980年代以降経済学の主流となってきた。
しかし、主流派の経済理論についてはまやかしであると多くの経済学者をはじめ各方面から批判されてきた。
だが、政府は耳を貸さなかった。
浜田のようなインチキ経済学者を登用した安倍政権こそ、その「罪と罰」を免れないだろう。
  
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2017年01月15日

アメリカは民主主義の国か=トランプ当選の舞台裏

『世界』2017年2月号に、宮前ゆかり「トランプ政権 アメリカの略奪と搾取の系譜」が掲載されている。
宮前報告にはトランプ当選の舞台裏が描いてある。
これを読んで、アメリカは本当に民主国家なのか思った。
大統領選挙の最終的なデータ集計によると、クリントンが280万票の差をつけてトランプに勝利している。
選挙人制度は奴隷制で経済を維持していた南部州の不利を補うために導入された制度だ。
不公平な選挙人制度を廃止する動きは過去にもあったが、民主制の基盤である選挙制度の抜本的改革が必要である。
それ以上にトランプ勝利の背景には、全米各州で様々な有権者弾圧や投票妨害が悪化していることがある。
第1に、今回の大統領選挙では全米で投票所が868か所も減らされた。
投票所によっては、有権者は5時間以上も待たなければ投票できなかった所もある。
一般労働者は仕事を休んで5時間も投票に並ぶ余裕がないため、特に低所得者で投票できない人が大幅に増えた。
第2に、クロスチェックとよばれるもので、若年層・ヒスパニック・黒人・アジア系などの有権者を有権者名簿から削除する方法である。
これは民主党支持が高い激戦州などで行われた秘密の選挙工作で、ジャーナリストのグレッグ・バラストの調査により暴露された。
その仕組みは次のようなものだ。
米国国勢調査局のデータをもとにして、たとえばある地域でワシントンという名前なら89%は黒人、ヘルナンデスなら94%がヒスパニック、キムなら95%がアジア系などと統計的な分析がされている。
このようなありふれた名前を持つ人種の集団を特定し、これらの人々が複数の州で重複投票を行っているはずだという、根拠も証拠もない前提にもとづき、無断かつ秘密裏に有権者登録データベースから名前を次々と削除しているのだ。
そのため、投票場に行ったら自分の名前が登録されていなかったため投票できなかったとか、投票用紙が送られてこなかった、などの被害が続々と報告されている。
クロスチェックの被害者の数は膨大で、11月時点で約110万人の有色人種の有権者の名前が登録データベースから抹消されていたことが確認されている。
今後調査が進めば、その数はさらに大きくなる見込みだ。
第3に、選挙当日に開票マシンが壊れたことである。
オハイオ州などの重要に選挙区で、投票マシンのセキュリティが壊れて監査機能がオフになっていた。
この機能は投票画像を記録し、不正疑惑があった場合に投票を確認できるプログラムである。
その機能が無効になっていたため、証拠となる画像はすべて消されてしまっていた。
複数の州で、出口調査と当選結果にギャップがあるとか、投票数よりも得票数が多いなど、統計的に辻褄が合わないデータをめぐって複数の訴訟も起きている。
共和党が州務長官である激戦州で出口調査と投票数に大きなギャップがあり、激戦州で出口調査と投票数が合致したのは民主党が開票プロセスを管理しているバージニア州だけであることが報告されている。
ミシガン州でトランプ対クリントンの得票差は1万704票。
クロスチェックで消された有権者数は約45万人。
また、ミシガン州デトロイトでは、市内の票集計マシンのほとんど(87機)が選挙当日に「壊れていた」ことを州政府が認めた。
だから票の数え直しは出来ないとリカントの要求を拒否している。
また、ミシガン州では少なくとも270万票が様々に理由で数えられず破棄された。
たとえば、投票用紙の折り目が曲がっている。
郵便コードを書き忘れている。
署名が何となくおかしい。
塗りつぶさなければならないのに×印になっている。
といった些細な理由で無効票とされている。
全米人口の19・8%がクリントンに、19・5%がトランプに、2・2%が他の候補者に投票し、28・6%は何らかの事情(移民、囚人、投票権を剥奪された有権者、投票権のない永住者)で投票できず、29・9%が棄権した。全米の人口の約20%が選んだトランプ政権だが、米国は民主国家といえるのかとコロラド州在住の宮前は問うている。
  
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2017年01月14日

『世界』1月号特集「トランプのアメリカと向き合う」=西谷修・吉田徹・春名幹男論文に学ぶ(1月14日)

月刊誌『世界』2017年1月号特集「トランプのアメリカと向き合う」を興味深く読んだ。
西谷修はトランプの差別発言・女性蔑視・ポピュリズム・下品さは、特別オドロクべきことではないとする。
なぜなら日本でも石原・橋下・安倍な先達がいるからだ。
クリントンは守旧派だ。
グローバル秩序による経済成長と、グローバルな軍事コントロールによる世界の安定。
これしか世界の進むべき道はないと考えている。
対するトランプは改革派だ。
「アメリカン・ファースト」は米国の利益を第1に考えるということだ。
グローバル経済と軍事管理の放棄、モンロー主義への回帰である。
20世紀のアメリカ文明は世界を牽引してきた。
大量生産による豊かに生活様式は、国内外の人々を強くひきつけて、世界の物質文明の頂点に輝いた。
だが、アメリカはもはや「文明の鑑・世界の規範」ではありえない。
トランプ大統領の誕生はアメリカが、「世界国家」の自負を捨てて、引きこもるということだ。
対米依存の日本では「日米同盟」が強調され、アメリカが君臨する世界秩序以外想像できない。
アメリカ的秩序に依存しないで自分の国はどうすべきか、本格的に考えなければならない時代が来ていると西谷は論じている。
吉田徹はトランプを大統領にしたのはグローバリズムの敗者=没落する中間層」だったとしている。
第2次戦後の経済成長と政府による再分配政策は中間層を拡大した。
大戦後の中間層の拡大で、人類史上まれにみる安定と平等を可能にした。
豊かさと民主主義の両輪で、戦後政治は安定してきた。
しかし、1980年代以降の新自由主義政策で、国家は公的部門から退場し、ヒト・モノ・カネの自由移動でグローバリズムの敗者が増加する。
その結果、戦後和解してきた資本主義と民主主義の相克が強まる。
トランプ当選は両者の相克の長いプロセスの結果にすぎない。
戦後の政治と経済を支えてきた基本的な枠組みが崩壊し、民主主義の空洞化が進んでいる。
先進国の政治は左右の対立ではなく、グローバリズムに対して開こうとするリベラリズムと、共同体を守るため社会を閉じようとする反リベラリズムという2つの社会が対立している。
国家はグローバリズムを統御する主体ではなく、これに掉さすことで課税権と金融市場のコントロール権を自ら手放してしまった。
その結果、自らの選択によって民主的な政府・統治が可能だとする政治的信頼も損なわれ、民主主義の空洞化が進んでいる。
中間層によって民主主義が支えられてきたのなら、中間層の没落は民主主義の後退を意味すると吉田は論じている。
春名幹男は「アメリカ人は9・11の記憶と同様、11・9を記憶するだろう」という。
11・9はトランプ勝利の日だ。
トランプ政権をイスラム国は歓迎し、「理想的な敵」「完璧な敵」とみている。
1990年代以降、米ロ関係は悪化し「新冷戦」と呼べる事態が招来している。
その主要な原因は過去3期の米大統領の戦略思考の欠如にあった。
プーチンのクリミア併合などの強硬策の背景には、NATOの東方拡大がある。
冷戦後、東欧諸国12か国がNATOへ新たに加盟し全部で28か国となった。
ロシアは国境にNATO加盟国が隣接する現実を恐れている。
米ロはウクライナ問題で対立してきた。
ウクライナは東西間の「架け橋」とすべきだった。
米政府は歴史をふまえ知恵を働かせ、賢明な解決策を探る外交戦略に欠けていた。
しかしトランプ勝利は事態を見直す好機である。
トランプ勝利でネオリベラリズムの時代が終わり、ネオナショニリズムの時代が始まった。
米国が核抑止力を行使する相手国・組織は、ロシア・中国・北朝鮮・イラン・シリア、そしてイスラム過激派テロ組織である。
トランプ政権で最も懸念されるのは、ISの対米攻撃に「核で反撃」(トランプ発言)することだと春名は論じている。

  
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2017年01月13日

佐藤優×エマニュエル・トッド『トランプは世界をどう変えるか?』を読む

トランプ勝利を早くから予言していたのは、アメリカ国内でもマイケル・ムーア監督や、作家のトマス・フランクなどわずかしかいなかった。
ムーアやフランクは「没落する中間層」や「民衆の政治不信」を的確にキャッチしていたから、トランプ勝利を予言できたともいえる。
佐藤優×トッド『トランプは世界をどう変えるか?』の佐藤の文章によると、日本で2016年5月段階でトランプ勝利を予言していたのは評論家の副島隆彦である。 
副島は過去にもリーマン・ショック等を予言しているが、「トランプが大統領になる」という予想を次のような事実にもとづいて判断している。
第1にトランプがキッシンジャーに会ったことだ。
キッシンジャーはアメリカの国家政策を左右できるパワーエリートのひとりだ。
キッシンジャーとの会談はアメリカの最高権力者たちが、トランプが大統領になってもよいという積極的メッセージを発信したとみてよい。
ではなぜクリントンではないのか。
クリントンに大統領をやらせたら、
「戦争を始めるのではないか。クリントンの取り巻きが戦争好きだ。これではアメリカも世界も持たない」
と最高権力者たちが判断した。
第2にトランプが下層白人の心をつかんだことだ。
トランプの暴言発言の中で副島が注目したのは、2016年2月のネバダ州のトランプ演説、「私は低学歴の人たちが好きだ」という発言だ。
低学歴ゆえに低所得層のアメリカ下層国民の気持ちをつかんだことが重要なのだ。
副島はこの2つの事実からトランプ大統領誕生を予言した。
副島は「陰謀論者」とも言われるが、この予言はスゴイ。
トッドは大統領選の最中に公表されたブルッキングス研究所の調査に注目し、トランプ大統領の当選を予言している。
同研究所の調査によれば、過去15年間、45歳から54歳までの白人の死亡率が10%増えている。
原因は自殺やアル中・過剰薬物摂取などによるとされている。
この調査結果をふまえ、トッドは次のように述べている。
米国の有権者の中で、白人は4分の3を占めている。
アメリカの白人下層国民は格差の拡大や不平等をもたらしたものは、自由貿易と移民だと理解している。
そして、自由貿易と移民を問題にする候補所が選ばれた。
つまり、当然のことが起きたのである。
選挙中に真実を口にしていたのはトランプである。
「米国はうまくいっていない」「米国はもはや世界から尊敬されていない」…。
要するにアメリカは選挙で現実に立ちもどったのだ。この現実から出発するしかないとトッドはのべている。
佐藤は「FBIとメール問題」に注目している。
「メール問題」というのはクリントンが国務長官在任中、私的なメールを経由して公務のメールを送受信していたことである。
そもそも公務で私用メールを使うことは国務省の規則に違反している。
国務長官は外交を担当する重要閣僚だから、軍事・内政などに深く関与している。
クリントンが送受信したメールは約3万通。
ロシア・中国などがセキュリティの低いクリントンの私用メールをハッキングすることはきわめて容易だ。
それゆえ、米国の極秘文書がこれらの国に流出した可能性がある。
2016年7月、コミーFBI長官はメールについて「捜査の結果、訴追には値しない」と捜査終結宣言をした。
ところが10月に新たなメールが見つかったとして捜査を再開した。
そして大統領選当日の前日、捜査終結宣言をした。
佐藤この点を次のように分析している。
クリントンが大統領に就任すれば私用メール問題にふれることはできなくなる。
だから就任前に捜査しようとした。ところが、想定外の捜査妨害が入った。それにFBIは恐怖した。
クリントンが大統領に当選すると、FBIの人員も予算も削減されて、組織を弱体化させられてしまう。
だから、クリントンの大統領当選を阻止しようと「全面戦争」に突入した。
そして、クリントンに最もダメージをあたえるタイミングで捜査終結宣言をした。
結果的にトランプを大統領に当選させた最大の立役者はFBIであった。
クリントン自身が敗因を「コミーFBI長官にある」と非難している。
つまり、トランプを当選させたのはFBIの功績であったと佐藤は分析している。
佐藤はトランプ大統領以後のアメリカを見極めるための、3つのポイントをあげている。
“鷁霪=孤立主義への回帰。
■藤贈匹寮治化による自由と抑圧のせめぎあい。
9馥發療┐気しが始まる危険な兆候(マッカーシズムの再来)。
,賄然としてもは佐藤の慧眼である。
マッカーシズムは「不安の時代」を背景に誕生した。
マッカーシズムが席巻した背景には、白人の社会的地位の相対的な低下に対する不安感があったと指摘されているからだ。
  
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2017年01月06日

宇宙をめぐる大冒険=村山斉教授の解説

1月6日に放映されたNHKの「宇宙をめぐる大冒険」をみた。
東大の物理学者・村山斉教授がナビゲーターをつとめた「宇宙の始まりと終わり」を解説した番組である。
138億年前、宇宙は原子より小さなものから始まったとされる。
ガモフがとなえた「ビッグ・バン」である。
宇宙の膨張の証拠は1990年代末に確認された。
138億年かかってとどいたビング・バンの証拠である電波が観測されたのだ。
宇宙に星や銀河がなぜできたか。
そのナゾをとくカギが正体不明のダークマターである。
わたしたちの周りにもたくさんある。
だが、見ることもさわることも感じることもできない物質である。
このダークマターが重力で周りのものを引き寄せる。
宇宙にある水素やヘリウムをひきよせ、まとめる力をもつ。
その結果、星が生まれ銀河が誕生したとされる。
かつて宇宙は収縮すると考えられていた。
しかし、現在の観測では宇宙は急速に膨張している。宇
宙の膨張を加速している物質が、ダークエネルギーというこれまたナゾのエネルギーである。
このダークエネルギーは重力とは反対の力をもつ。
そして、宇宙が大きくなればなるほど、どこからともなく現れてふえていくというのだ。
それでは宇宙の結末はどうなるのか。
現在、2つの未来が考えられている。
ひとつは「ビッグフリーズ」。
ダークエネルギーが現状のままだと、宇宙はやがてすべてが凍りついて、永遠の闇となってしまうというものだ。
もうひとつは「ビッグリップ」。
ダークエネルギーがさらに強くなっていくと、銀河も星もバラバラになって、宇宙は素粒子にもどってしまうというものだ。
現在では宇宙はひとつではなく、無数にあると考えられている。
そのひとつひとつはまったく違う宇宙である。
そして、ほとんどの宇宙はダークエネルギーが大きいため、星も銀河も生まれない。
だが、わが宇宙はダークマターとダークエネルギーの絶妙なバランスで誕生した。
ダークエネルギーがものすごく小さいため、宇宙がゆっくりと膨張し、そのために星や銀河誕生したというのである。
村山教授の説明はとても分かりやすかった。
だが、いくら考えても宇宙とは不思議でよく分からない存在である。
  
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2017年01月05日

中島義道『〈ふつう〉から遠くはなれて』を読む

永く生きづらさを抱えて生きてきた。
障害児であった幼少年時のトラウマからだろう。
だから、同じように生きづらさと格闘して生きてきた中島に共感する。
中島は「書くことで生きのびてきた」といい、「ふつうでないままに、一生懸命生きてきた」という。
以下中島語録から。
❐組織の中で人間嫌いが許されるのは次の場合である。
〇纏ができること。
勤勉であること。
誠実であること。
組織の中で仕事ができることが必須の条件であり、最大の武器である。
そして、勤勉でなければならない。
かつ誠実であることだ。
以上の3条件をも守っていれば、どんな組織でもめったに排斥されることはない。
❐生きることは苦しいことだ。
もし「人生とは何か」を真剣に問うなら、自分の苦しかった体験を何度も反芻し「味わう」ほかない。
イヤなことは細大もらさず覚えておいて、それをあらゆる角度から吟味・点検する。
すると、その後の人生において降りかかる数々の苦しみにも比較的容易に耐えられる。
❐欠点を見すえることは人間を鍛えてくれる。
欠点こそがかけがえのない「その人」をつくっている。
そして、欠点の反対側に長所があるのではなく、欠点とはそのまま長所になりうるものだ。
だから、欠点を欠点として知っていることだ。
悩むことは素晴らしいことだ。
❐世間の善良な市民たちに怯えることなく、彼らにへつらうことなく、しかも彼らから完全に独立し、彼らを助けてもあげられる。
つまり、自分のままで彼らと共生していけるたくましい男・女にならなければならない。
他人との真摯な闘争を避けては、固有の生命の輝きは生まれない。
固有の「生きる力」は生まれない。
人は生きなければならない。
つまり、闘争しなければならないんだ。
❐自分に対する正面切っての批判や非難は無視してはならない。
むしろ称賛や同感はなるべく無視してもかまわない。
それは、半分は社交辞令だからであり、あとの半分は自己幻想を満たしてくれるだけで、自分をいささかも鍛えてくれないから、なるべく無視するのがよい。
しかし、批判はそこに感情的な恨みや憎しみがあっても貴重なものだ。
そこには必ず何らかの真実が隠されている。
だから、それを大切にしなければならない。
❐大多数の者から嫌われながら、みずからの信念を貫く生き方は颯爽としていて潔い生き方だ。
いかなる敵も現れない地の果てに城を築いて立てこもるより、さまざまな敵に程よく囲まれている城の中で生活するほうが、面白みがあり、緊張感があり、充実感がある。
職場でもあなたを嫌う人がいたほうがいい。
そこからあなたは他人との関係の仕方を学ぶことができる。
他人から嫌われることに対する抵抗力をつける技術を学ぶことができる。
❐社会とは理不尽のひとことにつきる。
合理的にことが進まない。
武合理が罷り通る。
ずるく立ち回る人が報われる。
誠実な人が没落してゆく。
えせ作品がファンを呼び寄せ、真価のある作品が無視される。
と言っても完全に反対でもない。
誠実な人が報われ、狡猾な人が没落することもある。
理不尽だからこそそこにさまざまなドラマを、人間の深さを見ることができる。
目が鍛えられ、思考が鍛えられ、精神が鍛えられ、からだが鍛えられる。
 
  
Posted by sho923utg at 19:15Comments(0)TrackBack(0)