こんかいから断続的に世界の教員評価と「指導力不足教員」制度について報告する。最初にイギリスとフランスの教員評価・「指導力不足教員」制度につい4回にわたって連載する。日本のそれとの大きな違いにおどろくだろう。(月刊『むすぶ』ロシナンテ社09年11月号掲載)
最初にイギリスをとりあげる。イギリスの学校の最高決定機関は学校理事会で、学校予算・教育課程・教員給与・教員評価・校長や教員人事等広範な権限をもっている。
イギリスでは「1986年教育法」で教員評価の導入が規定され、「1991年教員評価規則」で教員評価が全面実施、さらに「2000年教員評価規則」で新たな教員評価制度が導入された。
学校理事会は教員評価の方針を決定して定期的に評価することが定められている。校長は学校理事会に対して毎年教員評価の運用状況、評価の効果、教員に必要な研修について報告する義務を負っている。
教員評価の目的は、(1)個人や集団レベルで教員の仕事を支援して改善すること、(2)効果的な授業やリーダーシップが発揮できるようにすることにある。
そして学校全体の改善計画の中で教師集団が教育目標について検討し合意するための枠組みを提供するものだとされている。
初等学校では校長が教員を評価する。中等学校では教科主任が教員を評価し、校長が教科主任を評価する。校長の評価は学校理事会が行う。
評価者と被評家者は年度始めに教育目標について話し合う。この目標には生徒の成績向上や教員自身の職能成長などがふくまれていて合意すれば文書化される。
年度中の評価は授業観察と簡単な聞き取りによって行われる。年度末には両者で一年間をふり返ってこんごの課題が確認される。
これらの評価結果は評価者と被評価者の話し合いによって確認され、評価書の内容について合意すれば両者が署名する。
被評価者は評価結果に納得がいかない場合、評価者が教科主任の場合は校長に申立て、評価者が校長の場合は学校理事会議長に申立てる。評価者は申立てがあってから10日以内に再検討し、再評価をするか再度話し合うか評価を変更しないか決定する。
こうした教員評価は雇用や待遇と直結しているわけではなく、教員の資質向上や学校の教育目標達成として行われている。
教員評価について教員がおおむね肯定的にとらえているのは、職能成長を目ざしたものであると同時に学校改善と結びついていることが明確なためである(参考文後出)。