2009年02月10日

本山美彦×萱野稔人『金融危機の資本論』を読む

 スリリングな本だ。論旨を要約しておこう。
 第1に今回の金融危機は1929年の世界恐慌より深刻である。現在は2合目ぐらいだがこれからさらに事態は深刻化するだろう。
 第2に金融危機はアメリカ政府が意図的に創りだしたものだ。米国はマネーゲームにうつつをぬかしている間に、歴史の流れからおいてきぼりをくらった。現在アジアは世界の生産基地だ。これにインドが加わると巨大な世界になる。米国は生産・物流がアジアにシフトしたことに気がついた。このアジアの潮流に米国がのろうとした時じゃまになるのが一人歩きしだした金融である。それゆえアメリカ政府はこれをつぶしにかかった。だが時すでに遅く大きな危機となった。
 第3にこんごのアジア世界のポイントは北朝鮮問題だ。北朝鮮が崩壊した時だれがそのリスクを引き受けるか。日・中・韓・ロなどの集団安全保障体制が必要になる。そうなると日米安保も見直されなければならない。同盟は理念からではなく恐怖によって成立する。ユーロができたのはソ連崩壊で東欧圏・東ドイツに対処するためであった。同じことが東アジア出も起きる可能性がある。そうなれば中・ロは米国排除に動くだろう。日本も今のうちにアジアにシフトしておかないと米国の二の舞となる。
 第4にこんごの世界はロシアが大きな役割をもつだろう。ロシアはすでに天然ガスによる世界覇権をめざしている。それだけでなく、ルーブルの基軸通貨化、通貨取引所・石油取引所の設立構想、天然ガスOPEC構想などをぶちあげているからだ。
 第5に権力とはルールを作るものをいう。米国が侮れないのはこの世界的ルールをつくり、なおかつそれに必要なイデオロギーを創出し、それを世界に強制してきた点だ。マネーゲームのつぎはアメリカ政府は環境にシフトするだろう。特にCO2の排出権取引がターゲットにされるだろう。排出権の価格設定や量には巨額の利権が動くからだ。
 第6にナショナリズムの大切さだ。ナショナリズムとは国家は国民のためのもので国民こそ国家の主体だというものだ。こうしたナショナリズムは民衆が国家を通じて資本主義をコントロールする上で必要なものだ。特にローカルな生活を守るためには経済ナショナリズムは不可欠だ。日本経済が貿易依存型だというのは真っ赤なウソである。日本のGDPに占める輸出の割合は8%で世界最小。本来日本は内需中心の国なのだ。地域の自立をいかに確立するか。国際資本に荒らされない地域経済の枠組みを作る必要がある。そこに民衆の知恵が求められている。
 第7に資本主義は国家から自立して運動していると考えられてきた。だが資本主義と国家は対立するものではない。さらに資本主義が国家の土台なのではなく、国家が資本主義の土台なのだ。国家と資本主義の原理は違う。国家は徴税と強制力を原理とするが、資本主義は利益を原理とする。しかし、資本主義の活動には国家の制度設計や強制力が必要不可欠なのだ。
 第9に今回の金融危機は資本主義の崩壊ではなく、資本主義の自浄作用である。米国の原始的・略奪的資本主義から、北欧型の社民的資本主義・福祉型資本主義への転換期として捉えるべきだ。




Posted by sho923utg at 18:16│Comments(0)TrackBack(0)政治・社会 | 時代のアゴラ

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