2010年11月30日

TPP参加は亡国の道だー今日の新聞批評(11月30日)

TPP(環太平洋経済連携協定)参加をめぐり政府・与党の意見も二分されている。
経産省は「成長の源泉である貿易が農業の犠牲になるのは国賊ものだ」と推進派。いっぽう、農水省は「TPP参加は問題外だ。農業が壊滅する」と反対派。
朝日新聞に山田正彦前農相のインタビューが掲載されている。以下、前農相の発言要旨。
「TPPが求める規制撤廃は保険・医薬品・労働などの幅広い分野だ。参加交渉に入れば米国はあらゆる分野に口を出してくるのは明らかだ。日米間ではすでに主要品目で関税率が引き下げられており、TPP参加の恩恵は限定的だ。むしろヒトの移動が自由化され、新興国から低賃金の労働者が大量に流入することで、国内で失業率悪化や賃金低迷が広がる恐れがある。」
TPP参加については農業団体を中心に全国的反対運動が起きている。全国農業協同組合中央会茂木会長は、「開国と農業再生は両立できない」という。941 町村加盟の全国町村長会は近くTPP反対を決議する。
読売新聞は「TPP参加で日本再生を」の連載開始。経済の衰退に直面する日本には「平成の開国」とその前提となる農業改革が待ったなしだとTPP参加をあおっている。以下、同新聞より。
日本の関税対象としてる農畜産物は1332品目。うち101品目が200%を超え、平均関税率は22.2%。米国の関税対象の農畜産物は1800品目で、平均関税率は5.2%。EUの関税対象の農畜産物は2200品目で、平均関税率は13.5%。
日本は高関税国だとされている。
同じく読売新聞社説「攻めの農政への体質転換を急げ」より。
「日本の農業は長い間、巨額の補助金や高関税という内外の手厚い保護によって守られ、すっかり足腰が弱くなってしまった。
政府は、その現実を直視し、今こそ生産性が高く国際競争力を持つ農業に生まれ変わるよう政策転換すべきだ。それがTPP参加の前提条件となろう。…
窮状を打開するには、まず意欲のある農家が経営感覚を発揮し、ビジネスとして成り立つ農業を展開できる環境を整えることだ。
農地を集約して大規模化を進め、生産コストを下げる。資材購入や販路拡大を容易にする流通改革で、農家と消費者の結びつきを強める。高品質を武器に輸出を目指す。たくましい農業の実現に向け、様々な方策があろう。…」
開国に向けて「強い農業」に転換せよとの主張だ。
だが、農業ジャーナリストの大野和興は、「日本の開国のために強い農業」をというメディアの合唱について次のように批判している(週刊金曜日11月26日号)。
「強い農業とはどうやら高品質の農産物を輸出して儲けろということのようだ。外国の金持ちに日本のおいしく見栄えのある農産物を食べてもらい、日本の大衆市場は海外農産物に明け渡し、代わりに自動車を売るという戦略なのだろうろ。1戸当たり年間何千万も稼ぐ農業は確かに存在する。…これらのブランド産地を支えているの多くの場合中国人研修生である。研修生は労働者ではないから、一人前の労賃を払う必要はない。パスポートを預かると称して取り上げ、働けるだけ働かす。こんな収奪の上に成り立つブランド農産物を「強い農業」といって持ち上げ、自由化戦略の中核にすえる。その見返りは田畑や里山の崩壊と農村経済の解体による衰退であろう。まっとうな社会や経済を作ろうとする政策意図はここからは見えてこない。」

大野がいうように、TPP参加は亡国の道である。


Posted by sho923utg at 16:31│Comments(0)TrackBack(0) 政治・社会 | 時代のアゴラ

この記事へのトラックバックURL