2016年08月06日

NHKスペシャル「決断なき原爆投下」ートルーマン政権と軍の原爆投下をめぐる攻防ー

8月6日放映のNHKスペシャル「決断なき原爆投下」をみた。
広島・長崎への原爆投下はトルーマンの明確な決断なしに行われた。
トルーマンは原爆投下を後悔していたというドキュメントである。
1945年4月12日、ルーズベルト大統領が急死した。
副大統領だったトルーマンは戦争がどう進んでいるか知らずに大統領に就任し、マンハッタン計画を引きついだ。
4月25日、マンハッタン計画の責任者グローブス准将はトルーマンに原爆計画について報告した。
しかし、トルーマンは原爆計画の詳細を知ろうとはしなかった。
グローブスは大統領が原爆計画を承認したものと考えて計画を遂行する。
原爆投下計画では1発目を7月に準備。
2発目は8月1日ごろ準備。
さらに1945年暮れまでには17発の原爆をつくることが予定されていた。
米国防総省は目標検討委員会を設置し、原爆を日本のどこに落とすか、いつ投下するか検討している。
投下目標は17か所。
そのなかで広島・京都が最有力とされた。  
8月までに空襲を受けずに破壊されていない都市で、原爆の威力が最も発揮される都市が目標とされた。
検討委員会は広島が大きな効果をあげるとしたが、グローブスは京都をおした。
5月30日、スティムソン陸軍長官はグローブスと会談した。
スティムソンは京都に原爆を投下をすることには反対だった。
グローブスは京都に軍事施設があるとウソの報告をして何度かスティムソンを説得したが、スティムソンは首をタテにふらなかった。
スティムソンは大戦後、国際社会からアメリカがヒトラーをしのぐ汚名を着せられことを危惧していた。
7月16日、ニューメキシコ州で原爆実験に成功。
グローブスは日本が敗戦する前に何としても原爆を使用したかった。
原爆を使わなければ22億ドルもかけたマンハッタン計画に対し、議会できびしい追及を受けるのは必至だったからだ。
7月21日、軍は1発目の原爆投下を京都とした。
しかし、スティムソンは大戦後に日本との和解の目をつみ、日本が反米国家になるとしてトルーマンに京都を外すよう進言した。
トルーマンもスティムソンの意見に同感であった。
トルーマンは原爆投下は軍事施設に限ると考えていた。
市民をターゲットにすることは反対だった。
軍の報告書では広島は軍事都市とされ、市民の上に落とすことが意図的にかくされていた。
そのためトルーマンは広島に原爆を投下しても市民の犠牲はないと思いこんだ。
7月25日、軍は投下指令報告書を発した。
1発目は広島・小倉・新潟・長崎のどれか。
2発目以降は準備ができ次第投下せよというものだった。
しかし、トルーマンが承認した文書はのこされていない。
8月6日、午前1時45分、テニアン島を出発した原爆投下特殊部隊は、8時15分、広島に原爆投下。
相生橋を目標とした半径5キロメートの円は、原爆の威力を最大にするためであった。
広島に原爆投下された時、トルーマンはポツダム会談の帰路で大西洋の船の上だった。
彼はラジオ演説で原爆は軍事施設に投下したと強調した。
しかし、帰国してスティムソンに広島の被害の写真を見せられて、こんな破壊をした責任は私にあると語っている。
だが、軍の作戦は止まることなく、8月9日に長崎に2発目の原爆を投下。
8月10日、トルーマンは全閣僚を集め、これ以上原爆を投下することは中止すると命令をだした。
3発目の準備をしていたグローブスは、大統領命令で3発目を投下できなくなった。
初めて降した大統領命令だが、21万人以上の命を奪った後の遅すぎる決断であった。
トルーマンは長崎への原爆投下の後の演説で、原爆投下は戦争を早く終わらせ、多くのアメリカ兵を救うためだったとのべた。
市民に投下した責任を問われないために考えたつごうの良い理屈であった。
原爆は多くの命を救うために使ったという世論操作で、アメリカ国民の80%は原爆投下を支持した。
NHKスペシャル「決断無き原爆投下」は、原爆投下をめぐるトルーマン政権と軍の攻防を新たな資料をもとに作成したドキュメントである。
トルーマンが無能な大統領だったというより、軍産複合体の支配するアメリカで、大統領がいかに無力かを象徴しているドキュメントだ。
(米国の軍産複合体はマンハッタン計画からとされる)。
梅林宏道は「核兵器・法的禁止への分水嶺」(『世界』8月号)で核兵器の政策において大統領や国防長官・総司令官は無力だと書いている。
なぜなら「軍部の高官が征服を脱ぐと主要な軍事産業に入り、逆に主要な軍事産業の役員が国防総省の高官になる」。
これが「庇い合いや甘い取り引き、軍の要求の膨張、そして大量契約」が生まれる土壌となる。
核兵器が国家安全保障の名の下に、その周りに巨大な聖域が作られ、そこに「核の聖職者」が支配するアンタッチャブルなプロセスが存在しているからだと梅林は書いている。
本ブログ「ポツダム宣言─日本降伏を遅らせるためにアメリカが仕かけた4つのワナ」(7月7日)、「原爆神話=早期降伏説と人命救済説のウソ」(7月8日)、「広島・長崎への原爆投下の真実」(7月9日)、「日本降伏の真実─ソ連参戦か原爆投下か」(7月10日)も読んでいただきたい。



Posted by sho923utg at 23:46│Comments(0)TrackBack(0)

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