俳優で国会議員も務めた中村敦夫が、『紙の爆弾』１１月号で「統一教会「口封じ」の手法」について語っているので、紹介しておこう。
私(中村)が統一教会の取材を始めたのは１９７０年代である。
映画を作りたいと考え、原理研究会に興味を持って取材を進めた。
調査を進めると、統一教会が宗教団体を装った新しい手口の職業的詐欺団体であることがわかった。だが、映画化のチャンスには結びつかなかった。
１９９３年、合同結婚式などで世間の注目を集めていた統一教会について、テレビ出演した時に「統一教会は姦通型の布教」など、統一教会について知っている限りのことを話した。
こうした説明が名誉棄損に当たるとして、統一教会は私を刑事告訴した。
だが、反社会的なことをしている連中に何の名誉があるのだと思った。
１９９０年代、メディアも統一教会問題をさかんに報道した。
それらに対して統一教会は、記者やジャーナリストに対して、無言電話や家族の尾行、おかしな物品を送り付けるといった「反撃」が行われていた。
裁判になればコストもかかる。
メディアは統一教会問題に対して次第に逃げ腰になっていった。
私は弁護士・研究者・ジャーナリストら「７人の侍」で統一教会に対して反撃に転じた。
全国弁連代表の山口定弁護士らが、次々に霊感商法を裁判にかけていった。
裁判は連戦連勝で、私への告訴も不起訴となった。
統一教会を取材して映画にできなかったので、『狙われた羊』という小説に書いた。
統一教会の取材を進めていくと、マインドコントロールを武器とした新たな手法が明らかになった。最初は正体を隠して集会に連れて行き、身体的拘束をして人間から考える力を奪う。
そうして献金を集める仕事などに従事させる。
こうした一連の作業を私は「不安産業」と呼んだ。
不安を抱える人々の心の隙間に入り込み、その不安を利用するのが不安産業であり、統一教会信者たちはそうした仕事に従事する奴隷労働者である。
壺を売るにしても本来なら最も経費が掛かるのが人件費だ。
統一教会はこれがゼロで、売り上げは丸ごと利益である。
統一教会はこうした「不安産業」の一大ジャンルを築き上げた。
統一教会は「原罪」をでっち上げて、献金や商品購入を迫る詐欺的商法である。
現在の報道でも、「信教の自由」に絡めて話す人が多いが、私に言わせればこれは宗教ではない。
そこに信教の自由を持ち込むことは、問題を正面から取り組むのを避けるために、あえてハードルを高めていることになる。(つづく)
