2005年12月23日

最近読んだ本〜グレッグ・イーガン『ディアスポラ』〜

ディアスポラ(グレッグ・イーガン・山岸 真訳、ハヤカワ文庫SF)

イーガン97年の作品。『宇宙消失』が創元、次の『順列都市』がハヤカワ、『万物理論』創元ときて『ディアスポラ』がハヤカワから、と、まるでソ連書記長ツルフサの法則のように出版社を交互に換えて出版されているイーガンの長編ですが、その最新作は、期待に違わぬ傑作っぷりを披露してくれました。
舞台は今から1000年後の未来。既に人格のソフトウェア化に成功していた人類は、巨大なコンピューターネットワーク上に『移入(introdus)』し、『ポリス』と呼ばれる都市で生活している一方、ごく少数の移入を拒んだ人間たちが、肉体人として物理世界で生きている、という、設定だけならわりとオーソドックスな世界です。
ですが、そこはイーガン。ネット上の人格の形成過程を、人体発生のメカニズムを模倣しながら延々と描写したり、のっけから読者を置いてけぼりにするのをためらわない姿勢はいつもどおりです。
ストーリーは中盤、大きな展開を見せます。中性子星の連星が太陽系近傍で突如合体。明らかに力学的にあり得ないその現象で発生した大量のガンマ線によって、地球はことごとく焼き尽くされ…というところから、ストーリーはイーガンの創作である『コヅチ理論』を軸として動き始めます。
ここからのアクロバティックな展開は、まさにSFの面目躍如といわんばかりです。たった一つの架空の理論から、数々の物理事象が沸騰する泡のように生み出されていく様は、ハードなベイリーといった感。
何を言ってもネタバレになりそうな本作。是非とも手に取って一読することをお勧めします。


(ちょっとネタバレ。あとがきで、本作とステープルドン『スターメイカー』との類似に触れた部分があり、はたと膝を打ちました。気づかなかった自分の鈍さが憎い。)

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