2006年02月21日

無理矢理更新曲〜最近読んだ本〜

修論やらmixiやらで、すっかり更新が滞ってしまいました。とりあえず最近読んだ本の感想を。



光の潮流〈上〉
光の潮流〈下〉
(グレゴリー・ベンフォード・山高 昭訳、ハヤカワ文庫SF)
 『大いなる天上の河』の続編となる、ナイジェル・ウォームズリーシリーズの第4作です。有機知性体の絶滅を図る機械生命(メカ)と人類との戦いを軸とした本シリーズですが、前作に比べるとメカの存在感は希薄。そのかわり人類と、もう一種の有機知性であるポッド種族とのファーストコンタクトがメインになってます。
 前作を読んだのが大分前だったので、色々忘れたところも多かったのですが、後輩に貸してしまっていていま手元にないため、どういう話だったか今イチ思い出せないままとりあえず読む。それでも、サイボーグザリガニみたいなポッド種族の描写や、宇宙ひもを使って惑星をくり抜いたり、植物性の生きたロータベータ(似たようなのが『悠久の銀河帝国』にもでてきます)が出てきたりと、いろいろ楽しませていただきました。兎に角惨めったらしい人類の描写のせいで陰気くさい空気を持つ本シリーズですが、基本は『バーサーカー』とかと同じ根っこに生えてる作品です。最終巻『輝く永遠への航海』がでてから大分たつ本シリーズ、残念ながら全て絶版になっちゃってますが、たまに古本屋でみかけることもあるかも知れません。

宇宙をかき乱すべきか?ダイソン自伝 (上)
宇宙をかき乱すべきか?ダイソン自伝 (下)
(F・ダイソン・鎮目恭夫訳、ちくま学芸文庫)
 コアなSFファンならずとも、『ダイソン球』というガジェットは聞いた事あると思います。そのダイソンの自伝。
 白衣を着て試験管を握りしめたアブナい科学者、というステレオタイプがあることを承知で、誤解を恐れずに言えば、このダイソン、正真正銘のマッド・サイエンティストです。
 著者が高名な物理学者であるのはよく知られているところで、ファインマン、オッペンハイマーといった錚々たる名前がぽんぽん出てきます。その横で、少年時代に天啓により得た(と主張する)『宇宙的合一』なる概念とか、下巻では実証科学というよりはむしろ夢想による目的論的生物進化とか人間原理とかを主張しはじめたりし始め、訳者にツッコミを入れられる始末。このバランス感覚の無さがマッド・サイエンティストたる由縁ですが、ほかにもオリオン計画などのくだりもマッドっぷりを炸裂させていて素敵。
そうしたなかで、息子のジョージ・ダイソンの話になると、文体が突如私小説的に豹変するのが面白いです。ジョージ・ダイソンについては、ケネス・ブラウワー『宇宙船とカヌー』(ちくま文庫)に詳しいので、合わせて読むことをお勧めします。

ペンと剣
(エドワード・W・サイード/デーヴィッド・バーサミアン、中野 真紀子訳、ちくま学芸文庫)
 パレスチナでハマスが政権を獲ったり、イランでウラン濃縮するしないともめたり、何かと熱い中東ですが、実はこの二つ、どちらもイスラエルがキーワードになってます。ハマスやイランに対する非難はいくらでも上がってきますが、何故かパレスチナ人を日夜殺しまくり、迫害し続けるイスラエルの犯罪行為については、あまり云々される事がありません。
 こうしたイスラエルに対する不当なまでの肩入れと、ひたすら無視され続けるパレスチナという現状に対し、常に非難の声をあげてきたのが、エドワード・サイードです。で、本書はそのサイードのインタビューを中心に構成されています。インタビュー記事である以上、まとまった情報は本書からは得にくいですが、そのかわり、オスロ合意に対する公然とした批判やファタハへの失望などのサイードのコメントは、口を塞がれたパレスチナから漏れてくる数少ない生の声でせう。自著『オリエンタリズム』に関した話などもあり、いままでサイードをよく知らなかったひと(僕も含め)には、ちょうどいいサイード入門書かと思います。『ポストコロニアリズム』(本橋 哲也、岩波新書)と合わせて読むと理解が進むかもしれません。
 


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