2007年11月

竜王戦第五局第二日 渡辺竜王vs佐藤二冠

竜王戦中継サイト

まあ、渡辺ファンとしての気持ちはともかくとして(笑)、今シリーズでは一番面白い将棋でした。
封じては△1二香!実は、昨日穴熊への組み替えのことちょっと書いたとき、この手を封じて予想にしようと思ったんですけど、ちょっと言うのが勇気いったんで書くのやめたんだよなあ(今更言うなよ。)
しかし、この手自体よりも、その後の△2二金としめる構想が非凡でした。現地にいた中原・青野両ベテランが素直に驚いていました。実際、この後さらに△4二銀としまった形がなかなか固くて、ずっと後手玉がとてつもなく遠いという状態が続いたので、やはり構想としては素晴らしかったんじゃないでしょうか。BS解説に登場した青野先生も、こういう感覚が現代的で新しいと指摘していました。青野流の「佐藤は新手、渡辺は新感覚」というのが、このシリーズのコピーで決まりだと思います。
△2二金まで
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その後、渡辺攻め、佐藤守りの構図がはっきりしました。どうにも後手の新型穴熊が固くて、とにかく攻めさえ続けばいいという感じだったのですが、佐藤流の受けが実に剛直でした。▲9六香とか、▲8六角とか、とにかく強気。昨日のBSを見て少し感じていましたが、どうも佐藤さんは完全に開き直って指していたようです。控え室は後手ノリの雰囲気だったようですが、実際はかなりギリギリの難しい攻防だったのではないでしょうか。小暮克洋さんが対局室に入って「佐藤さんの目がね、全然死んでないんですよ。むしろ渡辺さんの方が焦っている雰囲気でした。」と言っていたのが、実に正確無比な観察眼だったということでしょう。(私がなぜ小暮氏を絶賛するかの理由は、イヤらしいので略  笑。)
佐藤さんの剛直な受けのハイライトは▲8七玉でしょう。これをノータイムでビシッと指したそうです。一番危ない逃げ方ですが、△3七角成を許すととても勝てそうにないので決行した顔面受け。まあ、佐藤さんのこういう強さが出るのは、渡辺ファンとしてはあんまり嬉しくはないのですが(笑)、やはり竜王戦の大舞台なので、こういういいものを見させてもらったのは素直に喜んでおきます。
▲8七玉まで
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この辺もその後も、まだまだギリギリで難しかったのでしょうが、素人目にも、△5八飛で△8五飛と打って、上部脱出をとにかく阻んでおいたらどうかというのはあります。この辺は渡辺さんに誤算があったのでしょう。さすがにこの後は苦しそうです。
渡辺さんは、やはり将棋全体の組み立て、流れのつかみ方などで非凡なところが出たし、佐藤さんの方は剛直な指し回しと正確な読みが光って、両者のよいところが見られた将棋だと思います。第六局も楽しみです。
どうでもいいことですが、島井姫、▲5九香を当てて、会場の拍手喝采を浴びていました(笑)。

竜王戦第五局第一日 渡辺竜王vs佐藤二冠

棋譜等は竜王戦中継サイトで。
相矢倉に。二人とも正攻法で平常心で戦っているという印象を、まず受けます。こういう大舞台の大事な勝負で「普通」に戦法を選択するというのは、結構精神力がいるのではないでしょうか。名人戦での郷田さんを見ていて、そんなことを感じました。
佐藤さんが、また工夫した指し方を採用したとのこと。戦法は矢倉でも、必ず何か新しいことを試みてくれます。新手魂はやはり健在です。つい結果だけ見て、そういう大事なことを忘れがちになりますが。
午前中のBS放送中に、異常に手が進んでいました。佐藤さんが飛ばしたのが原因なのですが、そういうところに敏感に反応して、持ち時間や気合で遅れをとらないよう、細心に配慮するのが渡辺流だとも感じます。
なぜ一筋の歩を交換せずに、▲5九角なのか。残念ながら、BSでも棋譜解説でも、サッパリ分かりませんでした。
▲5九角まで
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明日、佐藤さんの狙いが判明するのか。それとも予定変更で渡辺さんの強烈な攻めを喰らってしまうのか。推測したいところですが、マッタク分かりません(笑)。ただ、どちらにしても、そう簡単に形勢が偏りそうな感じには見えないので、明日は存分に楽しめそうな気がします。
封じ手は、解説を聞いていると△4二銀以外ありえないように思ってしまいます。さすがに、竜王も今回は得意の穴熊に組み替えている余裕はなさそうですし。
封じ手図まで
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BSは、ビジュアル系の解説、聞き手コンビですか(笑)。山崎さんは、何回見てもいい「目」をしています。勝負師の目だと思います。こういうバカなことは、もうあまり書くまいと思いつつ、どうしても書いてしまうわけですが、ペコ姫、すこし見ない間に、ちょっと色っぽくなったんじゃないですか。
午前中に流れていた、伊藤アナを加えて、三人で蕎麦を手でこねてつくるシーン、個人的にはすごくツボで、ゲラゲラ笑ってみていました。絶対客には出せそうにもない蕎麦を、おいしそうに食していたし。基本的には平和な初日でした。

真部一男の絶局投了図

芹沢博文が逝った時、色川武大がいい追悼文を書いていた。色川というより、「麻雀放浪記」の阿佐田哲也といった方が通りがいいかもしれない。ついでに言うと、西原理絵子の「まあじゃんほうろうき」も、それに勝るとも劣らぬ名作だ。何が言いたいのか、自分でも分からないまま書きはじめている。
そう、真部はちょっと芹沢を連想させるところがあった。あんなにメチャクチャじゃない芹沢、小型の芹沢。
棋士らしからぬ教養を兼ね備え、将棋界に対して一家言を持つ。でも、そんなことが、いったいなんだっていうんだ。棋士はあくまで将棋指し、社会的視野の広さや、教養や、常識センスもなんだっていうんだ。結局は、将棋指しという存在からの逃避じゃないか。そんな憎まれ口を叩きたくなる。
でも、芹沢も真部も、人間的にはどうしても気にならずにはいられない存在だった。人をひきつけずにはいられない何かを持って生まれてきている。ハナがある。才能も、世間一般の凡人どもと比べたら、腐るほど持ち合わせている。なろうと思えば、多分たいていのことはこなせるだろう。芸術家、大学教授、何かの家元、真部の場合だったら、男に使う表現じゃないが、あの美貌(という表現が使いたくなる若き日のカッコよさだった)を生かした売れない役者。でも、二人とも将棋の名人にだけはどうしてもなれない。将棋界というのは、そういうどうしようもなく残酷な世界である。だから面白い。他が全部ダメだとしても、将棋さえ強ければ、あとはどうとでもなる。わかりやすすぎる世界。そういう猛獣の檻に、才人が放り込まれた悲劇。
私が青少年だったころ、真部や青野は、上昇気流に乗って破竹の勢いだった。真部は、なんと言ったって、あのかっこよさで、しかも理路整然。今では、棋士も随分スマートなイメージになったが、当時においては全く異色の存在だった。まぶしかった。でも、A級の壁にぶちあたる。理知理詰めだけでは、どうしようも出来ない世界。その後、真部はあきらめるのも早かった。
やはり真部同様まぶしい存在だった青野も、壁にぶちあたる。しかし、青野は全然諦めなかった。A級にだって歳とってから復帰したし、年取ってから強くなったと若手に認められた。多分今だって、全然諦めていないだろう。若手何するものぞという気概たるや凄まじく、闘志満々、衰えを知らない。加藤一二三にも一歩も引けをとらない。本来、棋士は青野のようであるべきなのだ。真部には、青野の執念がかけていた。執念を持ち続けるには、あまりに頭がよすぎ、あまりにスマートで、神経が細やか過ぎた。やはり、多分職業を間違えた人なのだ。
若い棋士や奨励会員たちが、真部に対して心のこもった追悼を、ウェブ上に書いている。大先輩に対する、素直な尊敬心が失われていない。マッタク、なんて奴らだ、本当にいい奴らだ。島朗の言うように、棋士はいまだに「純粋なるもの」のままである。しかし、私は彼らに対して、決して真部のようにはなるなよ、とこっそり思う。
昨日の夜、真部の訃報を聞いた。無論、私は、真部と縁もゆかりもないし、正直に言うが、近年の真部には、完全に興味も関心も失っていた。しかし、昔のことが急に色々思い出されて、自分の心が揺れ動くのをどうすることも出来なかった。人の死というのは不思議なものである。小林秀雄の言うように、急に形がはっきりしてくる。
次に揚げるのは、真部の絶局の投了図である。これは、正真正銘の投了図である。本当にこの場面で、真部は投げた。

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棋譜も人生も、汚してしまう前に去ったというような、おざなりな月並みは言わないでおくことにしよう。
こんな声が聞こえてこないだろうか?

―――ワタシだってプロなんだから、最後までボロボロになるまで指さなきゃいけないことくらい知ってるさ。

―――でも、もともとあんまりそういうのが性に合わんのだよ。

―――わるいけど、失敬してお先にいかせてもらうよ。

真部一男八段の訃報

真部一男八段が、亡くなられたそうです。
私は、真部さんや青野さんが、若手のバリバリとしてA級で活躍されていた頃からの将棋ファンです。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

ご主人様王手ツッコミ、中井さんの名言等雑記

ご主人様王手です11/23(将棋ニュースプラス)では、もはや待望?となりつつある中川・遠山の上司と部下コントを配信。なんか、今回のは斬新な感じのつくりでした。中川氏の心中独白の一方で、遠山氏がご機嫌よくしゃべり続けるという構図、なかなか映画的です(オーバーだよ)。それにしても、中川先生、実にいい表情をされますなあ。昔の欽ちゃんだったら、欽ドコ(古っ)とかに引っぱりだしたいと思ったんじゃないかというくらい、いい味出しています。ちなみに、私も「KY」が分からなかったオジンです。検索かけちまったじゃねえかよ。と、毎回このコントに釣られて喰いついてブログに書いている私が一番どんなもんかというウワサはありますが、そういうことは一切気にしないことになっております。
遠山先生、こともなげにメイドたちに「いいとも!」を強要していましたが、なかなかああいうのを恥ずかしさを、かなぐり捨ててできるもんじゃありません。さすが梅田望夫さんが、「けものみち力」を絶賛するだけのことはあって、精神的タフネスを誇ります(笑)。
しかし、藤井さんに四間飛車を基礎から教わるって、贅沢すぎます。誰か、メイドさんたちに、どれだけありがたいことなのかを教えてあげてください。私が習いたいくらいだよ。しかし、振り飛車党のカリスマも、メイド達にあっては、ただのオジン扱いです。
まゆ「藤井さんは、中川さんと仲がいいと聞いたんですけど」
ふじい「ええ、まあ昔からお付き合いがあって」
とおやま「なんか、昔ネクタイを選んでもらったことがあるそうで」
めいど「えぇっーーーー」
まゆ「旅行にどこに行かれたんですか」
ふじい「まあ、温泉とか」

りさほ「二人でですか?♡」

ふじい「いやっ、みんなで」

ブログ書きはじめて以来、初めて二倍角文字を使ってみました。
メイドに、あらぬホモの疑いをかけられてしまっていた中川、藤井両巨頭は、本当にお気の毒でした。まあねえ。大人のオトコが、大人の男のネクタイを選んであげるって、そうあることじゃないですからねえ。話の流れで。妙なことになっていました・・。

週刊将棋のLPSA欄は、ファミリーカップの話題でした。植山、中井夫妻は、棋風が真逆で、詰ます順も夫婦で考えた手順が違って、大逆転負けを喰らったのですが、その後中井さんの極めつけのお言葉が飛び出したそうです。

「夫婦はしょせん他人なのよ。」

ブログ始めて以来の三倍角使ってみました。
けだし名言です。ファミリーカップは、既に多くの動画がアップされていますが、こういうのを聞くと、もっといいのが残っているんじゃないのと思ってしまうんですけどね。


囲碁将棋ジャーナル、今月の聞き手は船戸陽子さんでした。最近ソムリエの資格を取ったそうです。ブログでの印象とは違って?、クールで落ち着いた大人の聞き手ぶりでした。そういえば、すこし前の船戸陽子blogに、マイナビ前夜祭の時の写真が多数アップされていました。まあ、心配性なLPSAファンっていうのは、ああいうものを見せてもらうだけで、結構ホッとするもんなんです(笑)。
番組中で告知されていましたが、天童での竜王戦第五局の聞き手を、島井姫がつとめるそうです。さらに、囲碁将棋ジャーナルの12月の聞き手は、中井さんだそうです。LPSAファンは、もうNHK将棋班に、足を向けて寝ることが出来ません(笑)。

竜王戦第四局第二日 渡辺竜王vs佐藤二冠

棋譜等は、竜王戦中継サイトで。
渡辺完勝でした。渡辺竜王の方は、駒がどんどん玉のほうに寄っていって固くなる一方なのに、佐藤さんの方は、左右分断形になってしまいました。本当に、渡辺さんは、対局全体の流れをつかむのに巧みないくさ上手な棋士です。
佐藤さんも認めていたようですが、既に初日の時点で後手が作戦負けだったようです。でも、△5四角とすえられてみると、先手が右辺を攻めている間に、穴熊の玉頭にアヤをつけられたりすると、イヤな感じなんですけどね。▲7七金から▲8六歩として、相手の桂飛びを未然に防ぎながら、その後の決め手になった▲8七角の余地も作ってしまいました。この角出をこの時点で構想していたのならすごいと思いますが、トッププロというのは、そういうところまでイメージできるものなんでしょうかね。
▲8六歩まで
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先手が桂頭を攻めたのが厳しかったわけですが、その間佐藤さんは△8三銀から△7二金と銀冠にしていましたが、他に動く手段とかなかったんでしょうか。放送でもちょっと出ていた、△9二香から△9一飛の地下鉄飛車にするという、ちょっと素人っぽい発想にしても(私が言うなよ)、玉頭が薄いままでは、やりにくそうですし。結果的に、渡辺さんに攻められるがままになってしまったイメージがあって、ほかに手段がないなら、やっぱり作戦負けだったということなのでしょうか。
▲7五歩は、指されてみればナルホドですが、自信を持っていえますが、私は自力では絶対に指せません(笑)。間違いなく▲4四角です。ほんとにプロは盤面全体をよく見ていますよねえ。
▲7五歩まで
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終局が、夕方の放送に収まりました。佐藤さんが、次局の抱負を聞かれて、かなり長い間があいて答えられませんでしたが、勝負の現場の厳しい空気をひしひしと感じ取ることが出来ました。そして、しぼり出すように「闘志を燃やして」と言ったのが、とても印象的。
前局から流れが渡辺さんに傾きつつあるのはなんとなく感じていましたが、こういう形で流れが加速するとは思っていませんでした。まあ、渡辺ファンとしては、ここで決して油断してはいけない、とか言わなければいけないところなわけですが(笑)、竜王はそういう点については全くぬかりのない人物なので、そういう心配ははご本人に任せて、気楽に見させてもらおうと思います。
控え室は、豊川さんと藤井さんの、オヤジダジャレ大会・モノマネ大会の様相を呈していたようですが(笑)、そんなに周りに余裕を持って見させちゃいけませんよね。中倉彰子さんの聞き手ぶりも、そういう見方をするからかもしれませんが、自分のおかれた立場を考えて、プロ意識を持ってやっているように勝手に感じてしまいました。NHK杯の司会をやっているころから見てますが、まあすっかり立派に成長されて・・ハイ、ここ泣くところです(笑)。

竜王戦第四局第一日 渡辺竜王vs佐藤二冠

棋譜等は、竜王戦中継サイトで。
後手の佐藤さんが、一手損角換わりダイレクト向い飛車。もう、そんなに驚きません(笑)。
△2二飛まで
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▲2四歩の仕掛けも、▲6五角も竜王は見送り。特に後者は、別に先手がはっきりよくなるというわけではないので、別に意地を張ってやる必要はないような気もします。
むしろ、渡辺さんは、本譜のように穴熊に組む基本方針だったのでしょうか。第二局のとき、先手の渡辺さんが手得を生かして伸び伸びと銀冠に組み、後手の佐藤さんが穴熊に組みました。あれについて、竜王は、組みあがってみると、後手の穴熊がすごく固く感じたとブログで言っていました。局面の判断基準について興味深い記事で、やはり、渡辺世代は玉の固さを、他の世代と比べて相対的に重要視するのかもしれません。竜王自身も、穴熊に組みかえるのがお家芸といわれていますし。そう考えると、本局の渡辺さんの手の進め方が、一番棋風に沿ったものともいえそうです。
佐藤さんも、▲9八香の時点で大長考して仕掛けを検討したようですが、結果的には見送りました。徹底的に読んだ結果に過ぎないのでしょうが、基本的に行けるときには踏み込む棋風のはずなので、つい佐藤さんの現在の調子と無理やり結び付けて、ちょっと慎重になっているのかな、というのは勝手で強引な深読みすぎますか。
現局面は、いかにも双方とも動き方が難しそうなのですが、棋譜解説での藤井さんによると、この後先手は▲6六歩から▲7八角という構想があるとのこと。なるほど。でも、後手はどういう構想を描くのがよいのでしょうか。封じ手、予想は難しくて全然分かりませんが、衛星放送で言われていた、△5五歩として、その後△5三銀から△5四銀と組み替えるというのが、ごく自然な感じがします。
封じ手局面まで
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すごく細かいことですが、NHK杯で解説の深浦さんが、駒を持つ時に、わしづかみにしないで、手を裏返しにして、親指と人差し指ではさんできれいに持つ、とある方がコメントで教えてくださいました。今日見ていたら、聞き手の中倉彰子さんも、そういう持ち方をしていました。あれは、深浦流を参考にしたのでしょうか、それとも、ああいう駒の持ち方の流儀の一派とか存在するのでしょうか(笑)。

NHK杯 木村八段vs橋本七段、銀河戦 菊地七段vs遠山四段、女流棋戦の解説

NHK杯、ハッシーが二回戦に登場。数年前に初登場した際は、そりゃもう大騒ぎで、ハッシー祭状態でした。懐かしいなあ。もう、二三年たったのか。でも、こう改めてみても、やっぱり絵になる男です。ファッションも、今回はいかにもハッシーっぽかったし(解説の深浦さんが、近くで見ると服がキラキラ光っていたといってました 笑)、対局中の表情とかしぐさが、いかにも勝負師という感じでねえ。それこそ、渡辺竜王の「頭脳勝負」での名言「プロ野球やサッカーを楽しむように将棋を楽しんで欲しい」というのに、うってつけのキャラクターです。
肝心の将棋の方も力強いです。角銀交換の純粋駒損になってしまいましたが、深浦王位も感心した△7五歩などの鋭い攻め筋で、一時は逆転模様に。でも、この将棋では木村さんの▲6七玉が一番印象的でした。
▲6七玉まで
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△6六香をくらうのが目に見えているのですが、▲5七玉に△6八香成と進んだときに、▲3五桂が、詰めろ逃れの詰めろになっている。こうして後から落ち着いて振り返ると、分かりやすいといえば、分かりやすいのですが、あのゴチャゴチャした訳分からない終盤で、しかも秒読みで、こういうコワい感じの手をきちんと指しきるのは、やっぱりA級棋士ということなのでしょう。
顔面受け的な玉上がりは、いかにも「木村流」です。木村さんも、なんかすごく生命力のある将棋を指しますよねえ。ちなみに、落語がお好きなそうで、なるほど、あの面白話術のルーツはそんなところにあったのかと、妙なところに感心してしまいました。深浦さんのサービス精神あふれる解説もよし。
最後の部分、木村玉に詰みがあるかどうかきわどい場面だったようなので、気になってソフトに調べさせてみましたが、やはり詰まないようです。

銀河戦は、梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく」で紹介されて、今が旬?の遠山四段が登場。(棋譜はこちらの銀河戦のページで。)しかし、本局ではベテランの菊地さんが、とてもいい将棋を指して圧倒しました。ついわれわれファンは、若い棋士にばかり眼が行きがちなわけですが、やっぱりベテランプロの底力もすごいなあと思いました。谷川先生の「構想力」に、70歳くらいのとうに引退した原田先生が、記録の奨励会三段の子を相手によく勝っていたという話が出てきましたが、鍛えの入った将棋の凄みのようなものを感じて、いいものを見させてもらいました。
ほとんど、遠山さんが形もつくれずに完封されそうな展開になったのですが、△1二桂がいい勝負手だったそうで、一気に勝負形になりました。
△1二桂まで
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△5九飛と打って、もしかして遠山さんが逆転したのでは、という時にみせた▲6八金寄が見事な受けでした。△9九角にも▲7八玉で耐えています。秒読みになっていた遠山さんは、その後の勝負手を逃がしてしまい、残念ながら対応できませんでした。こういうの見ると、ベテランプロをつい軽く見がちなファンは反省しないといけないと思いました。
▲6八金寄まで
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将棋と関係ないのですが、遠山先生の話が出で来る、梅田さんの「ウェブ時代をゆく」の刊行を記念して行われた丸善での講演会が、ネット上に、ほぼ完全収録で再現されています。

丸善での講演会の内容全部が公開されました My Life Between Silicon Valley and Japan

読んでみて、とても面白かったです。あまりウェブの話には興味ないなあ、という方も、十分楽しめる内容だと思います。また、実際「ウェブ時代をゆく」自体も、ウェブの専門書というより、ウェブを活用してどう生きるかという人生論的な側面も多分にあって、広い範囲の読者層を想定して書かれている本だと思います。

昨日の夜は、女流ネット最強戦での片上さんのネット解説ぶりを観戦。なかなか大変な将棋で、どういうやり方で解説するかが、結構難しそうでした。
思うんですけど、私などは女流の人たちより全然弱いので、もし解説ナシなら、かえって、ハラハラドキドキして、それなりに楽しめるかもしれません。ただ、男子プロから見れば、女流の将棋の未熟な点も当然はっきり見えてしまうわけで、それをそのまま全て言ってしまうと、見ている側も、やはり女流のレベルに問題があるのかなあと、自分のことを棚にあげて「男子プロ視点」に同化して思ってしまうわけです(笑)。その辺、敢えて全てを的確に指摘してしまわない一種のテクニックのようなものも、もしかしたら必要なのではないかと思いました。ちょっと、邪道のような気もするんですけどね。
これは、昨日に限らず、男子プロが女流の将棋を解説する場合に、いつも感じることなので。すごく単純化して言うと、自分より実力が劣る者が指している将棋について、傍から「真相」を暴露してしまうという感じになりがちです。現在は、まだ少し実力差があるので仕方ないわけですが、あまりはっきり「真相」を暴露してしまうと、見ていて興味がそがれるという側面があって、まあ難しいところなんだろうと思います。要は、女流のレベルがさらに上がって、男子プロが解説するのに四苦八苦ということになれば、一番良いわけなのですが。根本的には、女流が自力でレベルアップするしかありません。
女流にすごく理解があって、強くなってもらいたいと心底思っているらしい片上さんでも、その辺がむつかいしいのかなあ、と思ったのでこんなことを書いてみました。
今言ったのは、あくまで解説上のテクニックの問題であって、基本的には、男子プロは女流の将棋について遠慮会釈なく批評するのが、無論原則だとは思います。それに、妙に遠慮して解説などしたら、その男性プロが実力を疑われてしまうだろうしね(笑)。

LPSA 日レス杯決勝 中井女流六段vs石橋女流王位

棋譜等はこちら
女流王位戦と違って、実に気楽ーーくに楽しく観戦できました(笑)。そういえば、中継に使われていた、最近たまに見かける柿木さんのkifu for java3.0は、優れものです。考慮残り時間が一目瞭然で、対局者の静止画更新配信までしてくれる、これが今後主流になっていくのでしょう。
後手の石橋さんが普通な四間飛車、先手の中井さんがすこし手順の変わった棒銀。定跡形に進むのかと思いきや、いきなり石橋さんが△4五歩。
△4五歩まで
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「定跡にとらわれない(渡辺竜王)」といわれている石橋さんですが、すこし、そういうのも意識しているのでしょうか(笑)。「女流の佐藤康光」になりつつあります。
しかし、中井さんの対応、押さえ込みが実に見事でした。印象的だったのは、▲5九香。
▲5九香まで
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なぜか、大盤解説会でもないのに、現場で解説していた先崎さんの名批評をお聞きください。
「これはひねくれた手ですねえ(笑)。ひねくれたいい手です。優勢なのだから、もっと素直に指してもよさそうなのですが、さすが海千山千というか(笑)。」
さすがの石橋さんも「マイッタ」というところでしょう。LPSA内のトーナメントで、中井さんが、こういうシビアな指し回しで若手に何もさせないで冷たく勝つのを何度見たことでしょう(笑)。
中井さんは、清水さんと嫌というほどタイトル戦を戦ってきました。私は、両方とも昔から好きなので、どちらが勝っても基本的には不満はありません。しかし、中井さんの将棋の方が、いかにもブロっぽい感じがして(あくまでも、弱いアマの勝手な根拠なき感覚批評です)、どちらかというと中井寄りでした。ただ、勝負の面では、清水さんに痛い目に合わされることが多かったわけです。実力的には完全に互角なのに、なんとなく、中井さんには、人のよさとか優しさのようなものが垣間見えて、少々歯がゆい思いをしていたのも事実です。
しかし、本局に限って言うと、全然人もよくないし、優しくもありませんでした(笑)。勢いに乗る石橋さんに、「まだまだ、これくらいで自分の将棋に満足してはいけないよ」と、熱いお灸をすえて、無言の説教と激励をする形になって、とてもよかったと思います。
しかしながら、LPSA内の若手にばかり厳しい将棋を指していないで、そろそろ対外試合で憎たらしいほど強い将棋を指してくださいよ、中井さん(笑)。

今週の中倉姉妹のPDGには、島井姫がゲストで登場。すこし前のことですが、某有名動画サイトにて、NHKの将棋講座でナースのコスプレ姿を披露しているのがアップされていたようです。ワタシは見てませんよ(笑)。

そうそう、そういえば、今日の囲碁将棋ジャーナルで知ったのですが、竜王戦第四局の放送で、聞き手を中倉彰子さんがつとめるそうですよ。NHKさん、エライ!!!皆さんも、この点については、ことあるごとにNHKの将棋班をほめてあげるように(笑)。

竜王戦第三局 渡辺竜王vs佐藤二冠

将棋まるごと90分、ゲストは矢内女流名人でした。女流王位戦第五曲を解説。とても分かりやすいよい解説でした。女性の解説というのも、なかなかよいものです。矢内さんが力説していたのは、清水さんが▲5四歩と取り込ませてしまったのが、やはり大きすぎたということでした。他にも、本局の場合、清水さんの方の指し手に、こうすればどうか、というのが多かったわけですが、こうしてもやっぱり苦しい、やはりこうすれば良かったのではないかと、かなり疑問を解決してくれました。
「別の団体」ということについて、山田さんが結構聞いていましたが、軽く受け流されてしまっていました(笑)。全体に、とても公平な解説ぶりで、石橋さんのよいところもきちんとほめていて、見ていて、非常に気持ちよかったです。

BS中継は、せっかく、解説森内俊之、聞き手山田久美なのに、相撲中継のせいで時間が短くて残念でした。戎棋夷説07/11/12によると、週刊文春に森内名人(取材・構成小暮克洋) の記事が載っているそうです。
それにしても、森内名人の謙譲な人柄っていうのは。夕方の中継で、ゲストに村山新人王が登場しましたが、森内さんは、立てて立てて手を聞くわ、渡辺竜王との親交についてインタビューまでするわ、森内名人、人好すぎ(笑)。
さて、佐藤さんが誰も予想しなかったひねり飛車を採用。最近は、ひねり飛車側の勝率が悪くて「消えた戦法」になっているそうです。森先生がひねり飛車を駆使して勝ちまくっていたのが、ついこないだのような気がするんですけどね。あのころは、もし先手必勝法があるとしたら、ひねり飛車ではないか、とまで言われていた記憶もあります。それが、竜王がプロになったころには、もうかなり消えつつあったなんていわれると、こっちは歳なんだなあと感じずに入られませんよ(笑)。
で、なぜ、佐藤さんが、なぜひねり飛車を採用したかなのですが、結局よく分かりませんでした。初日も普通に進んで、二日目に何かあるのかと思っていたのですが、結局、渡辺さんのほうから動いて「佐藤新手」は見られませんでした。別に何か先手から動く順があるというのでなくて、意外に後手から有効な対策が実はないということなのでしょうか。もし、そうだとしても、積極的に手を作って佐藤さんらしい選択とはいえませんし。謎が残りました。
封じ手まで
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仕掛け以降は、しばらく佐藤さんがよくて、その後竜王が逆転したそうなのですが、正直言って、この辺は私レベルでは自力で判断するのが難しくて、今ひとつよく分からない将棋でした。そもそも、なぜ佐藤さんがよくなったのか、渡辺さんの何が問題だったのかも、よく分かりません。もし、仕掛けに問題があったのだということならば、ひねり飛車は有効な戦術だったということなのでしょうか。
感想戦のコメントが加わった棋譜解説を今見たのですが、渡辺竜王は、かなり後の方まで悪いと思っていたそうで、検討陣とは違う感じ方をしていたようです。△2八角成とぶった切ったのが印象的でしたが、あれもはっきり局面をよくする手だったというわけではないことのようです。その後の、佐藤さんの▲6五桂が問題だったとのことなのですが。
△2八角成まで
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一方、似たように佐藤さんが▲7六飛とぶった切ったのは、はっきり暴発だったそうです。渡辺さんの角切りも、佐藤さんの飛車切りも、ボナンザ風とか言われていました。便利な言葉が出来たものです(笑)。
最後、第二局のこともあるから最後までわからない、とか言われていましたが、普通に考えて、トッププロがああいうことをしたら、それを繰り返すことはまずありえないんじゃないでしょうか。その辺、私はプロへの信用が厚いです。少なくとも、渡辺さんが、今シリーズで、ああいうことを繰り返すのは、確率的にまずありえないでしょう。←まあ、渡辺ファンなもので。
BS中継を見ていると、なんとなくの印象なのですが、いつもの、ちょっと憎々しいくらいの(笑)自信満々な渡辺明が戻ってきたように感じました。これも、渡辺ファンとしては心強いところではあります。佐藤さんは、順位戦が信じられないことになっていて、お世辞にも調子がいいとはいえないわけですが、今回のように不調といわれている(いわれていた)同士の対戦では、恐らく精神力の勝負という側面もあるのに違いありません。
タイトル戦の最中は、そういったことについて、本人たちは正直に言うはずもありませんが、終わった後にでも、どういう心境で指していたのかも知りたいところではあります。

谷川浩司「構想力」(角川oneテーマ21)

谷川先生については、最近朝日新聞夕刊に載った「大人のアメカジ」姿が、どうしても脳裏にこびりついて離れません。これからは、ファッションの面でも、神吉さんと、はりあっていかれるおつもりなのでしょうか。などと、何で私は余計なことを書かずにはいられないのでしょうか。地雷を踏みたがる私の性格が心底憎いです(笑)。

さて、谷川先生の新著「構想力」。本文中にも、何度か出てくるのですが、将棋の世界においても、強くなるための「高速道路」が整備され、徹底的な序盤研究の情報の共有、簡単に検索可能な棋譜のデータベース、いつどこでも可能なネット対局が可能になっています。しかし、プロが本当に強くなるためには、「高速道路の出口の渋滞」を脱出しなければいけない、そのために必要なのが「構想力」なのだ、というのが、根本にある谷川さんの、問題意識、コンセプトなのだと、自分なりに解釈してみました。
なかなか若手に対しても手厳しいことを言われていて、「自分の力で考える力が弱い」「いわゆる本筋から離れる勇気がない」「分かりきったところをノータイムで飛ばす棋士は怖くない」といった、言葉がポンポン飛び出して来ます。根本に「研究将棋」に対する物足りなさと御自分の力で「芸術」として将棋を指している自負を感じます。
これは実際その通りで、本当にトップの人間は、単純な研究将棋や合理性の追求だけではない要素を必ず持っているようです。例えば、渡辺竜王なども、当初はデジタルの申し子のようなイメージがあって(あるいは、周りが勝手に作り上げていた)が、実は修行時代に谷川全集を、実際に将棋盤に並べて、一手一手意味を深く考えることで強くなったそうです。
谷川先生の言われることは、実にもっともだと思うのですが、私などは天邪鬼なので、徹底的に研究の合理性を追求し、時間も研究範囲では使わず、というやり方をラジカルに推進する棋士がいても面白いんじゃないだろうかと思います。現在、急速度で将棋における合理化が進んでいるとは言っても、まだまだ、旧来の慣習や思考にとらわれている部分も多いのではないでしょうか。あくまで個人的希望に過ぎませんが、周りの顰蹙を買ってでも、極端なくらいのドライな合理性を追求する棋士がいてもいいんじゃないかと思います。
通読して感じるのは、谷川さんは、やはり円満な常識人、語弊があるかもしれませんが、穏健な保守主義者だという感じがします。こういう人になら、将来の将棋界を安心して任せると思う一方で、こういうところが、棋士の谷川さんに対して、ファンが勝手に今ひとつ物足りなさを感じる部分でもあります。きわめてエラそうな言い方で申し訳ありませんが、率直に感じていることとして。勿論、そういうところが、谷川さんの魅力でもあり、谷川さんらしさでもあり、谷川さんの個性と言ってしまえばそれまでなのですが。
とにかく、将棋においても、やはり年齢とともに衰えていくというのが常識なわけです。しかし、本書を読んでいて、谷川先生の精神はとても若々しさを維持されているし、「対局における集中力はむしろ高まっているくらいだ」という心強い言葉もありました。とりあえず、タイトル獲得の最年長記録の更新を、一ファンとしては切望せずにはいられません。

他にも、70近くなった原田先生が、奨励会三段の子と指してよく勝っていたなど、興味深いエピソードも多くあり、やはり将棋ファン必読の一冊といえるでしょう。ということで、将棋ファンは大変ですが、この際ちくま新書から出た二冊とあわせて、三冊まとめ買いしちゃいましょう(笑)。

最後に問題。形勢判断についてて述べた部分で「棋士の中には徹底的な楽観主義でタイトルを獲った人もある」という記述がありました。
さて、誰のことでしょう。私の中には、ある一人の人物の尊いお顔がすぐ浮かんだのですが・・・。

渡辺明「頭脳勝負」と梅田望夫「ウェブ時代をゆく」にでてくる遠山雄亮の話

二冊同時に、ちくま新書から出た新刊。
まず、梅田さんの方を読んで驚きました。遠山先生が大々的に取り上げられています。今頃「ファニースペース」は大変なことになっているんじゃないでしょうか(笑)。
第三章「高速道路」と「けものみち」に登場。「高速道路」というのは、羽生さんが得意の比喩能力を発揮して言った、ウェブにより整備された誰もがその気になれば、ある分野のことを集中的に効率よく学習することが出来る仕組みのこと。将棋で言うと将棋倶楽部24が代表例です。遠山四段が、ブログでその申し子として里見香奈女流を紹介したことを、梅田氏が本書で取り上げています。
一方「けものみち」とは、いったん高速道路を降りて、自分の力だけで道を切り開いていくこと。その「けものみち力」の持ち主として、遠山四段が紹介されています。はっきり言って、遠山先生、絶賛されています(笑)。
具体的内容は、本を手に取っていただくとして、将棋に関して、私自身が感じることを付け加えておいてみましょうか。遠山四段の将棋というのは、まず時代の最先端を行く序盤研究、それと、それとは相反する徹底的な粘り越しの中終盤といわれているようです。前者については、「高速道路」に常にアンテナを張り巡らせて敏感(梅田氏の言う「進取の気性に富む」)な遠山さんの特徴が出ていて、一番有名なのは、ゴキゲン中飛車での、△7二金の「遠山新手」でしょう。勝又プロフェッサーの「最新戦法の話」でも、巻末のインタビューで、羽生さんが一番印象的な新手をこれに挙げていたくらいです。
それでいながら、中終盤は実に粘り強いというのも、「けものみち」には不可欠な精神的タフネスを持ち合わせている証拠といえるでしょう。
また、「けものみち」をいくために必要な、人間性(梅田氏の言う「明るさ、素直さ、人に好かれる性格」の例。前期の銀河戦の再放送で遠山四段の将棋を見たのですが、その時解説がハッシーこと橋本七段で「遠山四段は、とにかく奨励会時代から、この世界では珍しい明るいタイプで、皆と打ちとける人気者だった。奨励会を年齢制限ギリギリで抜けた際に、本人が泣いたが、それより印象的だったのは、大先輩が喜んで一緒になって泣いたことだ」と言ってました。さらに、最近のファニースペースで書かれていた、師匠の加瀬さんとの自戦記も、実に彼の人間性がよくでた、ちょっとばっかり胸打たれてしまうものでしたし。
ということで、将棋ファンは「頭脳勝負」と一緒に梅田さんの本も買うのが必須ね(笑)。

さてと、渡辺竜王の「頭脳勝負」の方について。
この本については、私みたいなスレッカラシの将棋ファンよりも、将棋を知らない一般の人間がどう読んだのかがすごく気になります。かなり分かり易い啓蒙書だと思うのですが、どういう受け取られ方をされているのでしょう。
将棋の様々な、基本的な時事ニュースについても取り上げているのですが、ちょっと書き方がムツカシイだろうなという話題についても、渡辺さんらしく、さりげなく客観的にうまく扱っていて、そういうところにもセンスを感じてしまいました。
従来の将棋ファンとして、印象的なのは、将棋の勝負におけるメンタルな面についてもかなり踏み込んで述べていることです。少し前に、女流の問題と関連して、片上五段が、持ち時間が長い将棋での、一局全体を通じての目に見えないところでの対戦相手とのせめぎあいについて書いていたことがありましたが、さらに踏み込んで詳しく書いています。また、こういうところが、「将棋をプロ野球や作家のように楽しむ」ポイントにも、なるのかもしれません。
白眉は、最後の去年の竜王戦第三局と、今年の棋聖戦第四局の自戦記。これについては、編集者から「なるべく将棋の符号を使わないで書いて」という注文があったそうです。それだけに、対局中の心理に焦点が当たった、とても興味深い読み物に仕上がっています。特に、棋聖戦の方については、よく負けた将棋についてここまで心のうちを正直に書いたものだなあ、と感じます。
こういう心理面について書くというのは、今後自戦記の可能性を広げるのではないでしょうか。将棋世界12月号での、深浦王位の自戦記も、かなり心のうちを正直に記したもので、ある方が、ご自身羽生ファンであるにもかかわらず、読んで感動せずにはいられなかったそうです。
私自身、そういうギリギリの勝負における勝負師の心の内には、ものすごく興味があるもので、今後こういうものが、どんどん増えていって欲しいと思いました。
それと、各所にブログでおなじみの、「渡辺ユーモア」もちりばめられていて楽しめます。個人的には、和服について書いたあたりでの、紅白の小林幸子と美川憲一のくだりがツボでした(笑)。
ハイ、こちらも勿論将棋ファン必読です(笑)。

ボナンザvs勝負脳(保木邦仁・渡辺明共著)について 最近のブログ記事を読んでもう一度

この本については既に一度書いた。最近有名ブロガーが言及して話題になっていて、それに対する多種多様な反応もあるようなので、もう一度話を蒸し返してみる。

404 Blog Not Found 電脳がいつかは人脳に勝つ理由 - 書評 - ボナンザVS勝負脳

コンピュータ将棋協会blog ボナンザVS勝負脳: 404 Machine Learning Not Found

前者を簡単に要約すると、ボナンザの学習機能は、いわば「ボナンザに胃腸を与えた」ことであり、プロ棋士の棋譜を学習すればするほどボナンザは強くなるだろう。したがって人間が努力すればするほどボナンザは進化していくだろう。ボナンザを強くするのは人間の力なのだから、人間は悲しむ必要はない。飛行機や自動車が、人間より早く走れたり飛べたりできるのを悲しむ必要がないように。それに、究極的に「将棋を指したくなる」根本の欲求は、人間にしか持ちえない。といったことである。
後者は、専門的立場から、機械学習(学習機能)は、別にボナンザが初めてではない。ただ、その能力が従来のものと比べて相対的に優れているだけだ。さらに、学習能力自体に、現時点では限界があり、プロの棋譜を多数与えたからといって、それだけ比例して強くなるわけではない。「消化能力」に問題がある。しかし、人間とコンピューターの共存について、建設的な未来を構築する糸口にしなるかもしれない。といったところである。

別に、コンピューター将棋の専門家でなくても、後者の考え方が正確なのは、ある程度興味を持っている人間ならば知っているわけだが、前者のブログも、さすがに、問題を本質的に考えずにはいられない、思考を挑発する見事な書き方をされているのも事実である。
秀逸な比喩で「胃腸を与えた」とされていることについて。そう、ボナンザの評価関数は、多数のプロの棋譜という食物を食べて強くなっているのだ。但し、現時点では、基本的な「消化」の方針は、人間である保木氏が設定している。これが限界の原因になっているわけだ。だから、そもそもどう「消化」するかの「頭脳」も、コンピューターに作らせて見たらどうかという、単純な発想がわく。「頭」自体を作り出すのは、現在の人工知能でも、一番難しい課題であるのは言を待たない。しかし、少なくとも将棋について、最低限の情報というのは、駒の動かし方等の「将棋のルール」だけなのだ。他の芸術などのより人間的な行為とは、明らかに別種である。だから、少なくとも、理論的には、ルールだけをコンピューターに提供して、後はプロの棋譜だけ与えて、どうすれば勝てるのかの判断基準自体をコンピューターに考えさせることも、不可能ではないと思う。まあ、こういう素人考えは「あのねえ、言うのは簡単だけどねえ」と言われそうなところではあるが。駒の価値の優劣から、コンピューター自身に考えさせるという壮大な実験を、誰かやってくれないものだろうか。
次に「胃腸の消化能力」について。渡辺竜王は、現時点のボナンザについて、実際に勝負が僅差になった以上の差があると感じるという。それは、プロでなくても。ある程度将棋を指すものならば理解できることだ。例えば、私は既にボナンザにほとんど勝てないが、指し手を見て「明らかにそれはダメでしょ」という手をボナンザはよく指す。人間の発想にないというレベルではなく、誰でも分かる明らかな緩手、悪手という意味で。それは「消化」能力にあたる「評価関数」自体が、現時点では、残念ながらまだまだ未熟なためである。恐らくプロから見たら「お粗末」というレベルだと思う。これは、一番目の話とも関連するが、いわゆる「基本方針」にあたる部分を、保木さんのように、それほど将棋自体を具体的によく知っているわけではない人間が設定しているためなのかもしれない。すごく大雑把に言うとだが。
だから、今後さらにコンピューターが飛躍的に強くなるためには、二つの道がある。ひとつは、前述した極力人間が関わる部分を根本から減らして、全てコンピューターに考えさせるようにするという方法。
二つ目は、「評価関数」の設定に当たって、プロの将棋指しの考え方を、出来うるかぎり言語化して、プログラムに反映する方法。但し、この場合問題になるのは、プロの将棋指し自体が、はっきり意識化・言語化して将棋を指しているわけではないということだ。それまでの、慣習とか感覚とかを元に、無意識に指している部分のほうが、恐らく圧倒的に大きい。だから、プロ棋士がコンピューターに協力しようとしても、現時点ではやりたくても出来ないだろうと思う。棋士が無意識に考えていることを、コンピューターの言語に「通訳・翻訳」する必要があるのだ。最近始められた、棋士の脳の働きを研究しようというプロジェクトに、少し期待したいが、それ自体も、どちらかというと脳の部分機能の研究であって、真正面から、棋士の思考を言語化しようとするものではないようだ。
で、コンピューターは、人間より将棋が強くなるのか。私は、多分なるだろうという考え方である。但し、私が一番恐れるのは、本当にコンピューターが将棋の本質を理解しない時点で、その圧倒的なハードの処理能力の力技だけで、人間を追い抜いてしまわないだろうかということだ。そうなったら、単なる悲惨な話に終わる。だから、渡辺竜王のように、プロ棋士には頑張りぬいてもらわないと困るのだ。プロが、本当に、これなら負けても恥ずかしくないという将棋をコンピューターが指せるようになるまで。
最後に蛇足で、「飛行機や自動車の存在を人間が悲しむ必要はない」という話について。飛行機や自動車について、誰もこのことに異存はないだろう。また、将棋を人間に勝つまでならば、まだなんとか許せるかもしれない。しかし、人間以上に、高度に「ものを考えたり」するようになったら、人間は耐えられるだろうか。
この問題については、実はコンピュータよりも、「人間」という存在がそもそもどういうものなのかという問いと直面せざるをえない。コンピューターが、出来ることをラジカルに全て推し進めていった上で、「人間」に残されるものは何か。これは、決して科学では解明できない問題だろう。哲学、思想、宗教に属する問題である。そして、現在一番欠けているのは、こういった問題を人間が徹底的に回避していることである。私が言いたいのは、保守的な思想や宗教に戻れなどというようなことではない。むしろ、コンピューターには、できる全てのことを徹底的に推し進めて欲しいと思う。そのことで、人間が自惚れて「人間的」だと思っている幻想のベールがはがされると思うので。
それでも、私は「人間」には何かが残ると考えている徹底的なオプチミストである。

NHK杯 深浦王位vs中村四段

実はこの形、私がボナンザ相手の自戦記を書いたときにたまたまなった形に近くて(私は振り飛車党)、そのテーマ図(下記)についてミニ研究などしたので、ちょっとしたシッタカブリ権威?なんです。
テーマ図
a

なので、「中村さん▲1五歩突け、突け」と思っていたら、実際は▲4八玉でした。
▲4八玉まで
b

▲1五歩と突いた場合は、居飛車が△4五歩か、△8六歩を入れてから△4五歩と開戦するかが相場だそうです。振り飛車側からすると、いったん△8六歩を入れられるほうがイヤで、▲同歩の一手の次の△4五歩に対して、▲同桂と応じるか、4筋を放棄して▲8八飛と回って、8筋を逆襲するかの二通りがあります。後者の場合は、中村さんのように前もって▲4八玉としておくと、後手が△4六歩と取り込んできた当たりをモロに受けるので論外ですが、前者の同:桂なら、事前に居玉を避けているのが大きくて、十分戦えるということなのでしょう。
しかし、勿論先に▲4八玉とあがると、居飛車もこの筋で開戦してくれず、本譜のように堂々と居飛穴に囲おうとされてしまいます。その場合は、▲1五歩をつめてないために、攻めの威力が半減してしまう。さらに、▲4八玉型のために、相手からの反撃の響きもきつくなる。本当に藤井システムというのは、一手の違いが致命傷になる緻密な戦法ですよね。だいたい、そもそもどの定跡書でも、先手藤井システムと後手藤井システムが、別の章立てになっているのですもの。本気で細かく定跡を覚える気がある人じゃないと、絶対に指せません。(で、私はとうの昔に放棄。)
とはいえ、見ている分には、やっぱりとっても面白い戦法です。中村さんは、研究熱心でならす四間飛車のスペシャリストですから、当然この辺は十二分に承知のはず。▲5六銀型を選択したのも、▲4八玉を試してみたかったからに違いありません。但し、本局は全然うまくいきませんでした。深浦さんも、負けずと研究家ですから、この将棋に関しては研究負けだと言わざるをえないでしょう。
シロウトには、▲4八玉が成立するのかどうかは、この一局だけでは全く判断不能です。ただ、その後▲6五歩と継ぎ歩攻めにでたのは、弱いアマが見てもちょっと違和感があって、これで間に合うのかなあ、とパッと見で思ってしまいます。しかし、恐らくこの辺あたりまでも実は苦心の研究だったのかもしれません。とにかく、深浦さんの対応が的確すぎたということでしょう。▲6五歩で、▲4五歩と自然に攻めるとどうなるのかという、素朴な疑問は残るし、きっとこの局面も、実際には本譜の展開ほどの開きはないはずだと、振り飛車党としては信じたいです。藤井総裁の意見を聞いてみたいと思う局面ですよね。
▲6五歩まで
c

この中村四段、数年前の銀河戦で快進撃したのですが、その時は、居飛穴に対しては、▲6六銀戦法一本で、堂々と囲わせた上で打ち負かしていました。その時の銀河戦で、櫛田さんも、やっぱり▲6六銀型で勝ちまくっていて、この戦法も相当有力だなあと思ったものです。今は、どうなってるのでしょうか。
本局は、中村さんのいいところが、全くでないまま終わってしまって、とても残念でした。とにかく、振り飛車党としては、中村さんは期待の星なので、是非頑張っていただきたいと思います。妹さんも、カワイイしね(こんなオチかよ)。

女流王位戦第五局 石橋女流四段が女流王位を奪取

棋譜は女流王位戦のページで

先手の石橋さんが、5筋突き型角筋止めず向かい飛車(でいいのかなあ)に。竜王戦第二局の後手番の佐藤さんと、すこし似ています。何かヒントがあったのでしょうか。
清水さんが右銀を早めに進出したために、早々に局面が動きました。石橋さんは馬を作りましたが、清水さんの△3三角打ちからの攻め筋が厳しくて、一目、弱いアマでも振り飛車をあんまり持ちたくない気がします。しかし、▲5五歩が好手だったそうです。
▲5五歩まで
a

この手については、渡辺明ブログで具体的に解説されていましたよね。あの竜王が見ても、一見どうかと思うが、実は良い手というのだからたいしたものです。「定跡にとらわれない」と表現されていますが、「常識」と言い換えても良いのでしょうか。とにかく、石橋さんの将棋は、自由奔放で見ていて面白いです。
それだけに、今シリーズでもありましたが、つんのめったりすることもありますが。とにかく、見ているものをハラハラどきどきさせてくれて、ファンにとっては心臓に良くない将棋です(笑)。「魅せる将棋」といえるでしょう。
その後の▲7七歩も、棋譜解説では「これでは苦しそう」といわれていましたが、その後▲6七金と力強くあがってみると、案外後手に有効な手段がないようです。やはり、この辺も、「パッと見の感覚」にとらわれずに、しっかり読みをいれて自分の感性を信じて指す石橋流が出ていたのかもしれません。
とはいっても、このあたりは石橋さんが好手順連発でしのいでいても、なんとなくまだ後手のほうに主導権があるようにも見えるのですが、どうだったのでしょう。
石橋さんが、後手が8筋のと金攻めで飛車をとりに来るのを相手にせずに、▲7五歩と突き出して勝負に出たのが、抜群に大局観が良くて、これではっきり良くしたようです。
▲7五歩まで
b

後手は飛車をとりきって攻めに回るまでに手数がかかり、自玉は美濃で固い一方、後手玉は壁銀で薄く、これでも振り飛車が十分戦えるということなのでしょう。結果的に考えると、振り飛車のコンセプトに忠実な指し回しといえそうですが、これだけの大一番で、冷静で的確な判断を続けた石橋さんの底力は、ファンでなくても認めてくれるところでしょう。
その後は、はっきり石橋さんが良くなったのですが、全然あせりませんでした。▲9二馬のあたりでも、もう自分など、早く勝って欲しくてたまらないので、▲5五馬とひいて攻めてほしいところですが、本手順のように、落ち着いて7五の銀を取ってしまうのが、分かりやすいのですね。でも、これもなかなか実戦では、出来ないのではないでしょうか。
▲9二馬まで
d

この後は清水さんが受けのために△8四桂と打つようでは、さすがに苦しすぎるのでしょうが、このあたりから、私はもう落ち着きを完全に失いつつありました(笑)。とにかく、観戦している方でも、投了するまでは決して油断しないようにしようと固く心に決めて見続けていました。ファンはファンで、これでも大変なんです(笑)。
石橋さんの▲3一金で局面の進行が止まり、対局室の映像も変わらなくなりました。いったい何度リロードしたことでしょう(笑)。そして、手順再生画面が、初手に戻り、最終手に局面を飛ばすと、赤い字で「石橋女流四段の勝ち」と。ライブでテレビ映像を見ているのとは、また違った感動がありました(笑)。

今回のシリーズは、総じて両者の気合が入りすぎて、やや指し手が空回りしがちだったといわれています。石橋さんについては、LPSAへタイトルをという悲願があるので、そういうところもあったでしょう。でも、清水さんについてはどうでしょうか。昨日も紹介しましたが、事前のコメントを見ても実に立派で、あまり団体の対抗というようなことは念頭になく、あるとすれば、今回は注目度が高かったので、女流としてよい棋譜を残さなければという意気込みが強すぎただけではないでしょうか。
つい、部外者は団体対抗ということを考えがちですが、色々な写真を見ていると、やっぱりこの二人は師弟なんだなあという感じがしました。私は強度の偏ったLPSAファンですが、この二人の戦いについては、あまりそういうことは気にならずに冷静に見ることが出来ました。個人的に石橋さんにタイトルを取らせてあげたいなあというだけで。

とにかく、今後女流にも、さらに注目度が高まるのではないかと思うので、望みは大きく、石橋さんにも、清水さんにも、本当に男子プロと互角に渡り合えるようになってもらいたいなあ、などと思いました。

石橋新女流王位誕生、将棋世界12月号

石橋新女流王位誕生誕生。心からおめでとうございます。
現時点ではLPSAのHPでの、終局後の石橋さんの硬い表情しか伝わってきていません。かえって、気持ちがよく伝わってきます。
今はもう感無量で何も書けません(笑)。
一方の清水さん。対局内容自体は、ご本人にとって不本意なものが多かったのかもしれません。しかし、シリーズ開幕前の抱負の立派さといい、ネット中継で見ることが出来た対局姿の凛々しさといい、やはり素晴らしい棋士だという印象を強く持ちました。棋士としての格の高さのようなものを感じます。改めてファンになりました。倉敷藤花の方では、是非頑張っていただきたいと思います。

将棋世界12月号の、王座戦第三局の記事で、本ブログを扱ってくださいました。
片上先生のブログでも、ちょっとふれてくださっていたので、それを通じて観戦記者の方の目にふれることになったのでしょうか?
とにかく、これ以上光栄なことはありません。こういうことを言うと嫌味かもしれませんが、本当に取り上げていただくような価値のあるブログなのか、というのが本心です。
小暮克洋様、将棋世界様、本当にありがとうございました。一将棋ファンとして、一生の記念になりました。

検索で見に来られる方もいらっしゃるかもしれないので、関連記事へのリンクを、改めてはっておきます。

王座戦第三局 ▲4七銀の変化
週刊将棋を読んで 再度王座戦第三局▲4七銀をめぐって
昨日の記事について言い訳
王座戦第三局 羽生王座vs久保八段

(これらの記事は、まとめて「王座戦」のカテゴリーで見ることも出来ます。)

1dayファミリーカップ他 LPSAもろもろ

梅田望夫さんが、渡辺竜王の新著のオビ宣伝を担当したことについて記事を書いているのですが、紹介されている竜王の話、いいですよねえ。そうなんですよ、野球やサッカーを観戦するのと同じように将棋を楽しむっていうのはアリだと思うんですよ。いくら弱いアマでも、自分のことなど棚に上げて、プロの指し手について、ああだこうだ自由に言ってもいいと思うのですよね。この辺のことは、こうして将棋ブログを書いていて常に悩むところで、やっぱりプロ将棋については、失礼のないようにこれでも相当遠慮して書いているんです。まあ、あくまで「これでも」なんですが。ということで、今日のファミリーカップ、思いっきり自由な感じで書いちゃいますか(笑)。
優勝は松尾ペアでした。まあ、後から言うのもなんですが、一応予想が当たりました。普通に考えて、男子プロが入っているペアが、やっぱり有利ですよね。その中でも、一番仲のよさそうな松尾夫婦が有利じゃないかと。いや、こういう書き方すると、他のペアーに対してさし障りがありますか。そうじゃなくってですねーー、夫婦漫才的な仲の良さでない、普通に仲のよさそうな松尾夫婦が、やっぱりいいんじゃないかと。いやいや、これじゃ、ますます他のペアーに対して失礼ですか。どんどん深みにはまりそうなので、この辺でやめます。特に、中井さん。普段の代表の重責から解き放たれて、あまりにオシドリ夫婦ぶりを発揮して楽しんでしまったのが敗因なのでは・・。
って、いうのは全部冗談なわけですが。どう見ても、こういう書き方するというのは、竜王の真意とも梅田氏の趣旨とも全然違うことだけは間違いないです(笑)。

A級に石橋、中倉宏美両氏がアベック昇級。ひとこと日記や、positive girlsごきげんDEブログで、かなりストレートな形で喜びが表現されていて、読んでいて和んでしまいます。今のところA級B級あわせて、LPSA勢は6人いるわけですが、人数比を考えるとそんなに悪い数字ではないでしょう。特に、中倉宏美、島井あたりには、もっと活躍して欲しいと思います。勿論、他のメンバーにも。

週刊将棋に、マイナビの予選について大庭美夏さんが書いていました。両巨頭を除いてLPSA勢は結果が出せなかったわけですが、負けたメンバーは「ごめんなさい・・」「すみませんでした・・」と、皆肩を落として帰ってきたそうです。ちょっとプレッシャーがかかりすぎたんでしょうか、まあ、私のようなファンも、実は出来れば5枠をなどという、強欲な願いを持っていたりしましたからねえ。写真に、呆然とする中倉宏美嬢が写っていて、悪いけど笑ってしまいそうになりました(笑)。A級昇級といい、相当素直な性格のようで、PDGなどを聞いていても、とにかくあの姉妹は人柄抜群だという感じがします。

詰め将棋日めくりカレンダー。こういうのが、今までなかったのが不思議だというコロンブスの卵的な企画。かなり売れているそうです。また、詰め将棋界の人々が興味を持ったらしく、有名詰め将棋作家の作品もたくさん入っているとのことです。
LPSAオンラインショップで入手可能。私はネットで買い物するのにかなり抵抗があるオジンなのですが、若い片上五段もそうだということを書いていたのが意外でした。で、渋谷東急ハンズででも買おうかとも思ったのですが、やっぱり面倒くさかったので、オンラインショップで注文。驚くほど簡単に手続きが終わりました。私の記念すべき、初のネットでの買い物になりました(笑)。

LPSAファン倶楽部の会報、Café Minervaが届きました。LPSAの場合、いかにも手づくり感があるのがいいところなのですが、今回の会報は、なんかプロが作ったんじゃないかというような洗練されたスタイルのものでした。カレンダーといい、これといい、デザインに藤田さんがかかわっているようなのですが、かなりその分野での能力のある人のようです。

銀河戦  櫛田六段vss戸辺四段

最近は、ハードディスク録画という便利なものが出来ました。でも、つい録画しっぱなしで、見ないままどんどんたまっていきがちというのが難点ではあります。今日は、銀河戦を、随分まとめてみました。
今日取り上げる将棋の、櫛田さんのひそかなファンです。何年か前の銀河戦でも、連勝していたのですが、居飛車穴熊相手の△4四銀戦法の芸術的な指し回しにいたく感心したものです。特に△5三銀とバックする柔らかい手に。といっても、すぐに単に基本手順なのだと知りましたが。
本格居飛車正統派という言葉がありますが、櫛田さんは本格振り飛車正統派という表現が当てはまるような気がします。ただ、相振りは指さず、相手が振り飛車党のときは対抗形を選択します。どちらを持っても、対抗形を知悉し、絶対の自信を持つ職人なのでしょう。
若き日のNHK杯での優勝が有名ですが、今回解説の植山さんの言うところから推測するにも将棋以外のことにも興味が行く「人間的」なタイプらしかったのですが、今は将棋一本ということで、成績も抜群。もともと仲間内では、強さや才能では一目置かれていた存在らしく、その独特な個性とあいまって、すごく気になる棋士の一人です。
初戦の伊藤四段戦も、▲3一角の一発で新鋭をしとめてしまいました。こういう豪快さと、緻密な指し回しの同居が魅力です。
▲3一角まで
a

さて、戸辺四段戦は、先手の戸辺さんが石田流、後手の櫛田さんが居飛車で相穴熊に。櫛田さんは、本来は、相穴熊を好まないようです。よく分かりませんが、力勝負の相穴熊よりも、もっと精緻な指し回しが出きる戦形を好むということなのでしょうか。多分、やっぱり対抗形「正統派」なのです。
戸辺さんがいきなり▲6五桂と跳ねたのが機敏。▲7三桂成からの攻めが防ぎにくく、どうなっても、この桂が威張る形になるようです。
▲6五桂まで
a

しかし、その後しばらくして、櫛田さんが△3三角と辛抱したのが好手だそうで、戸辺さんが龍を引いて6筋の歩をきって銀桂交換に持ち込んだのために、△6七歩の垂らしが生じてしまいました。感想戦によると、まだ、と金つくりを防いで辛抱すれば、振り飛車も戦えたそうですが、△6七歩を見落としたショックで、そのままと金を作らせてしまったために、はっきり悪くなったそうです。
△6七歩まで
b

以下、櫛田さんが的確な指し回しで、二度目のと金つくりをするという、穴熊戦の基本に忠実に、最後は飛車切りから寄せきり。この図を見ていただければ分かるとおり、後手の穴熊はまったく手付かずの圧勝になりました。
投了図
c

ということで、新鋭棋士を、二戦とも吹っ飛ばしてしまいました。本局も、序盤では苦しくなりそうな場面を、最良の手順でしのいで、相手がミスをしたら、しっかりつけ込んで、どんどん優勢を着実に拡大する戦いぶり、強いなあと思います。
また、感想戦での櫛田さんがよい。次々に、具体的手順を示して、「これはどうするんだろう」と、盤上の真理の追究に余念がありません。相手が若手でも、変にエラぶったりせず、相手が良い手を指摘すれば素直に納得し、そうでなければ堂々と自分の考えを主張する。いかにも将棋が好きなんだなあという感じがします。
ということで、ちょっと気が早いのですが、「クッシ−」の決勝トーナメント出場を切望。

銀河戦の棋譜は、囲碁将棋チャンネルのHPにて無料で閲覧可能です。

竜王戦第二局第二日

今BS中継の録画を見終えたところです。
すごく内容の濃い将棋でした、実際の手数より長い200手超の棋譜を見たような感覚を覚えてしまいます。局勢が二転三転した難しい将棋だったようです。
まず、封じ手の▲5八金が波乱の始まり。手を作りにくそうな後手になぜ馬を作らせたのがちょっと不思議なところではあります。
▲5八金まで
a

しかし、そのあとの渡辺竜王の指し回しが巧みで、桂馬を交換して、その後▲5一馬と入った場面では、完封ペース?そのすこし前あたりの棋譜解説で、鈴木八段が、後手の馬付きの穴熊を「固くない」といい、それに谷川先生が同意していたのには、ビックリしました。そういうのがプロの感覚なんですねえ。
ところが△3五歩を▲同歩ととったために、振り飛車にうまく形をほぐされて、一気に佐藤ペースに?まあ、私のような弱いアマでも良くあることですが、将棋の場合は完封できそうでも、ひとつ間違っただけで、一気にダメになることがありますよねえ。
△3五歩まで
b

ところが、ところが、渡辺竜王の勝負師的な反撃が見事。夕方のBS中継でも、ビックリするくらいの早指しで決断よく攻め込んでいました。解説の谷川先生と鈴木先生の予想が全然当たらず。実際、他にも色々選択肢があるのかもしれませんが、決断のよさが光って、実際はっきり優勢になったようです。ここら辺、すこし悪くしたときに、勝負に持ち込む渡辺さんの本能的嗅覚、資質のようなものを感じて、本局では一番印象的でした。
ただ、将棋は最後まで分かりません。魔が射したような▲6九金。普通に▲6一馬と攻めても、普通に▲6八銀と受けても、どうだったのかなどと、弱い私のようなシロウトが言っても仕方ないところです。つくづく将棋の終盤というのは厳しい場所です。
▲6九金まで
c

最後の部分だけ残念でしたが、大河ドラマのような一局で、それこそ調べだしたらキリがなさそういうコクのある一局だと感じました。
まあ、渡辺ファンとしては、早いうちにこういうのがでてよかったのだと、某姉妹のようにpositiveに考えておきます(笑)。
うーーん、今回もとことんもつれるシリーズになるような気が。楽しみというか、見ていて疲れそうというか・・(笑)。
コメントを承認制にさせていただいています。反映まで時間がかかりますが、お気軽にどうぞ。
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