2008年09月

銀河戦 準決勝 森内九段vs三浦八段

棋譜は囲碁将棋チャンネルの銀河戦のページにて

三浦さんの工夫で話題の一局ですが、録画ミス等諸々あって、やっとこさ見ることが出来ました。
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図で△2三歩と受けたのが、解説の森下九段言われるところの「二十年ぶりくらいに見た手」。三浦さんは横歩取りの将棋でも、常に独自の研究をしていて、主流の△3三角ではなく△3三桂を用いたり、あるいは一時期は相横歩取りを多用していました。そして、ついに超レトロな定跡に挑戦。定説では先手良しとして長らく「消えた戦法」になっていた△2三歩です。
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この▲3二飛成は、私が本当に将棋を始めたころに読んだ定跡の基本書でなんとなく覚えがあります。正確な表現は覚えていませんが、「角を打たれて困ったようですが、こうして飛車金交換してしまうのが好判断で、後手の馬つくりを阻止してしまえば先手が良いのです。」とか何とか。無論初心者の私は、ははぁーと感心したものです。いやはや、懐かしい。
しかし、それは初心者レベルの話で、プロレベルでは、もっと突っこんだ研究が行われています。古くは花田長太郎や山田道美が、後手番を研究していたこともあるそうです。
図の▲1六歩が森ケイジ先生の新手で、これで先手良しが決定づけられたとのこと。一方、後手では当時室岡六段が詳細に研究していたと森下解説。
csa21手
△1四歩でなく△4四歩だと▲6五角に△3一飛と受ける一手で、飛車を自陣に打たされて後手不満と。△1四歩以下、定跡変化では、▲3五金(もし△3四角なら▲7七角で後手困る)△1六角!▲同香△1五歩と強襲する順があり、結構難しいらしい。
しかし、森内さんは感想戦で言うにこの変化は「記憶がおぼろげで」(笑)、▲3五金でなく▲6八玉。
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ここで、三浦さんは△2四歩としましたが、ハメ手のような変化の一例としては△4四銀として▲5六角△5五銀▲2三角成△4七角成で、取ると△2八飛で王手馬取り、というような派手な手順がひそんでいるそうです。知らないと指せない定跡で、これを早指しでぶつけられた森内さんも、やはり困ったのではないでしょうか。
以下猛烈な攻め合いになったのですが、最後は三浦さんがはっきり勝ちになりました。森内さんは、▲3四角成では▲1一馬とする方が良かったかと。あるいは△4八歩に▲5八金として、桂馬を持ち駒に残すほうがまだ良かったと言っていましたが、それでもやはり先手苦しそうということです。ちなみに、▲8一金には△4二飛とぶつけられて自信なしとのこと。
あと、森下九段が、米長氏の本で知ったというエピソードが面白かったです。
かつて木村義雄名人が、この戦形の先手を持って花田町太郎などを相手に勝ち続けた。しかし、木村が、途中でこうされると困る、こうやられたら自信がない、といつも言っていた。後手の棋士も、名人がそう言うんだからといって、後手でこの形を採用し続けたが、どうもいつまでたっても勝てない。ようやく、おかしいな、この形は実は後手が悪いのではないだろうかと気づいた。そうしたら、木村は、最初からこの形では先手で自信があったと言い放ったそうな。
昔の棋士はすごいです・・。

谷川浩司「谷川流寄せの法則(応用編)」(日本将棋連盟)

昨日の王座戦第二局は、終盤に木村さんの「幻の逆転手」、▲3一角があったそうです。それを発見したのが、他ならぬ谷川先生。3一に捨て駒することで逃げ道を封鎖する詰将棋のような手。羽生さんがもう一枚角を渡したために、玉が3二に逃げた時に▲2三角と打つと後手の玉の逃げ場がありません。こういった終盤での谷川さんの嗅覚健在を改めて証明する形になりました。両対局者とも全く気づいていなかったために、さらに羽生さんはその後もう一度角を二枚渡す寄せをしてしまいますが、木村さんもそれでもまた気づかず。当然控え室はすぐ気づいて大騒ぎになりそうなところを、谷川先生は(対局場に聞こえないように)「静かにするように」とすかさず注意されたそうで、そんなところまで「完璧谷川」ぶりでした。終局後、木村さんはこの手を指摘されると、手ぬぐいで目を覆い、しばらく顔をあげず、「聞かなきゃよかった。」と嘆いたそうです。

というわけで、タイミングよく、谷川終盤本「谷川流寄せの法則(応用編)」の紹介が出来るわけです(笑)。
ただ、谷川さんの著作では「光速の終盤術」という名著かあるそうです。この書評を読んでも、いかにも高度で格調高い内容そうです。欲しくなって書店で探したのですが、見つけられませんでした。Amazonを見ると高値で取引されているので、現在は市場には出回っていないのでしょうか。
ということで、タイトルの本を購入。「谷川流寄せの法則(基礎編)」とセットになっている後編です。第一章では、わりと基本的な終盤の講義と易しめの問題で、終盤の基本を解説しています。
ただ、中心、というか私のお目当ては、谷川先生の実戦の終盤からの出題です。勿論、こういう問題集は徹底的に考えれば考えるほど実力がつくのは間違いないのですが、なんといっても谷川先生の実戦の読みを当てなければいけません(笑)。私自身はあまり無理に考えずに、谷川流の華麗な終盤術を楽しむという態度で読み進めました。
実戦例をいくつも続けて読んでいくと、思わず「すごいなあ」という呟きが口から漏れてしまいます。谷川終盤の基本的特徴について、改めて説明する必要はないでしょうが、とにかくいきなり相手玉に襲い掛かってバッサリ討ち取ってしまう爽快感は何事にも変えがたいものがあります。しかも、無理やりの力づくではなく、全てが綺麗な形のもとに芸術的手腕で遂行されるのです。
将棋の場合、必ずしも、相手の玉を一直線に討ち取る勝ち方だけではありません。完全に受け切ってしまったり、ジワジワ包囲網をひいて相手が守備する意欲をなくさせたり、究極的には入玉してしまうというやり方だってあります。むしろ、勝ち方として確実なのは、それらなのかもしれません。しかし、谷川美学の辞書には、そんな勝ち方は載っていません。
本書の解説を読んでいても、谷川さんの場合、常にどうすれば相手玉が詰みの形になるかを意識しています。どの形になれば詰むのか、どういう持ち駒になれば即詰みの順が生じるかを、早い段階から想定されているようです。その詰みの終着点から逆算して、そこに至る構図をどう描き出すかが、谷川流の終盤の考え方と言ってもいいのではないでしょうか。だから、あれだけ芸術的な美しい「絵」が描けるのでしょう。
例えば、出題例の中でも、受けを考える場合でも、受けを通じてどの駒が入れば相手玉が詰むかということも考えられています。谷川流では、単に受けつぶすのでなく、どう受けを相手玉の寄せにつなげるのかを考えているかのように。
一方、ひたすら玉を二手連続して早逃げする例も挙げられており、勿論そんな単純なものではありません。とにかく、その辺は本書を読んでいただくのが良いでしょう。
各出題で、相手棋士たちがひどい目に合わされているのですが、それが佐藤だったり森内だったり羽生だったりするのです。谷川さんの手にかかると、彼らも抵抗する余地なくバッサリ斬られてしまっています。爽快です。
こういう終盤力という点では、現在でも谷川さんは全プロの仲でも傑出した存在でしょう。それが、今ひとつ苦戦されているのは、将棋の指し方が多様化複雑化してきていて、なかなか谷川さんの望むような終盤の形にならないからなのかもしれません。とりあえず、順位戦では現在一敗なので、星を伸ばして、また羽生さんと名人戦で戦っていただきたいものです。少し気が早すぎますが。
ある問題で、結構広い相手玉を豊富な持ち駒にものを言わせて、一気に詰ませてしまうというのがありました。詰み手順自体は、それほど妙手があるわけではありませんが、変化が広すぎてアマチュアに読みきるのは大変です。でも、谷川さんはこのようにおっしゃるのです。
問題図でこの詰みを読み切るのは大変だが、持ち駒の数と5九の香の利きを見て、「これは詰み」という直感が働くだろう。
谷川先生、申し訳ありませんが私にはそんな直感全然働きません。いや、プロだって谷川先生クラスの「直感」が誰も働かないから、皆さんバサバサ斬られまくっているのですよ。

羽生と渡辺の物語が長い中断を経て今再び始まる

物語の発端はこうだ。
当時奨励会時代の渡辺は、低年齢なのにとてつもない勢いで勝ち続けていた。風貌がすこし似ていることから(本人がうれしかったかどうかは知らない)大山二世とも呼ばれていた。中原誠は、渡辺の活躍ぶりを知って目を輝かせていった。
「羽生さんは、この子に倒されるんだね。」

二人の対決は、最初はわり早く実現する。渡辺は、中学生でプロになりたての頃はすこし苦労したが、数年経つと頭角を現して、ものすごい勢いで勝ちだし、19歳の時に、王座戦で羽生に挑戦する。渡辺は、その若さに似合わないくらい、落ち着きはらって、イヤ、ふてぶてしいくらいの態度でタイトル戦に挑む。羽生を、あと一歩のところまで追い込むが、結局2勝3敗のスコアで惜敗する。
その際、最終局で羽生が勝ちを見つけた瞬間、指す手がブルブル震えた。渡辺は、羽生を初めて震えさせた男なのである。

王座戦では惜敗したが、竜王戦では20歳で森内に挑戦し、見事奪取する。当時流行の最盛期にあった後手△8五飛を駆使した。徹底的な最新研究と合理的な指し手の積み重ね。初日も、定跡部分はほとんど時間を使わずに指し、一日目でのっぴきならない局面に突入することもあった。また、対局態度も、19歳とは思えぬ、落ち着き、ふてぶてしさ、率直な発言。神経の細やかな森内からすれば、心が乱されることも多かったのではないかと思う。
下馬評では、まだ森内厚しだったのだが、フルセットでの奪取。
将棋界はニューヒーローの誕生に沸きたち、羽生世代と渡辺世代の戦争勃発かと喧伝された。いや、世代抗争というより、これから羽生と渡辺の戦いが始まるのだと。

ところが、物語は、ここからとてつもなく長い中断に入る。羽生は羽生で、特に森内に苦しめられ。一時はタイトルひとつにまで落ちこんでしまう。羽生は、渡辺世代との戦争以前に、羽生世代との過酷な競争で手一杯だった。
一方の渡辺、竜王戦でこそ、毎年とてつもない強さを見せつけて現在四連覇中。特に、絶好調期の佐藤を二年連続して退けたのは、渡辺の実力の証明となった。特に一回目の防衛戦は、名勝負の名に恥じない内容で、終盤の白熱したねじりあいは、将棋ファンを唸らせたものである。
ところが、竜王戦以外で、渡辺はなかなかタイトル挑戦すらままならない。それどころか、なかなか羽生と対戦することさえ出来なかった。
順位戦では確実にクラスを上げていき、早指し戦での優勝を積み重ねながら、世間が渡辺に期待するほどの活躍が出来ていなっかたのも事実である。

それにしても、あまりにも羽生と渡辺の対戦が少なすぎた。まるで、将棋の神様がファンに意地悪するように、そして「まだ早い」と、対戦を禁止しているかのように。一方、ファンのこの二人の対戦への渇望は加速度的に昂進するばかりだった。
だから、今年ネット棋戦でこの二人が対戦した際には、大変な注目と期待が集まったのである。ところが、将棋の神様は、ここでも徹底的に意地が悪い。なんと、羽生の時間切れという、誰もが予期せぬ結末を準備した。「まだダメだよ」、将棋の神様の高笑いが聞こえた。

しかし、将棋の神様は、ファンをじらすだけじらせておいて、しっかり最高の舞台を準備していた。神様なのはダテじゃない。お互いに永世竜王、しかも永遠に一人にしか与えられない「初代」の永世竜王をかけての戦いを。将棋の神様も、随分無茶をするものだ。「どうだい、これなら文句はないだろう」。将棋の神様が、イタズラっぽく微笑んでいる。

しかし本来なら、渡辺が羽生に挑戦するというのが、本来のストーリーだったはずである。しかし、羽生のほうが待ちかねたように、逆に挑戦に名乗りを上げてきた。いや、竜王戦に限らず羽生はあの七冠当時の勢いを完全に取り戻している。
それにしても、羽生の竜王挑戦への道のりは、まさしく将棋の神様が周到に準備したとしか思えなかった。1組トーナメントでは初戦敗退し、陥落の危機さえあったが、かろうじて決勝トーナメントに進出。その予選決勝の相手の中原には、佐藤と森内をつぶさせておくという将棋の神様の念入りぶりだ。
さらに、決勝トーナメント。最終盤で深浦が▲4九銀としたら、丸山が▲8三金としていたら・・。もう今の騒ぎはなかった。神の見えざる手が働いたとしか思えない。
直近の、木村との竜王戦挑戦者決定戦三番勝負も壮絶だった。木村も、持ち前の強靭な受けと、抜群の持久力で羽生を楽にさせないが、羽生もハードスケジュールの最中、長手数のねちっこい勝負をまるで楽しんでいるかのようだった。挑戦の決まった第三局は明らかにプロ的には木村必勝と思える作戦負けの将棋を、正々堂々と力でねじ伏せてしまった。王位戦第六局も似たような感じの将棋で、とにかく力が桁違いという印象を与えた。羽生ファンの私でさえこう思った、「羽生さんって、こんなに強かったっけ。」

というわけで、渡辺にとっては、恐らく世評では厳しいと判断されるのではないかと思う。しかし、実は寝渡辺は、自分が不利だとか逆境だという時にこそ、もっとも力を発揮するタイプなのだ。先述の森内相手の竜王奪取の時だって、恐らく客観的にはあの時点では、まだ実力では森内が上だったろう。しかし、タイトル戦初挑戦とは思えない堂々とした人間力、△8五飛戦法を専門的に合理的に突き詰める能力で、大仕事を難なく成し遂げてしまったのである。
△ 8五飛スペシャリストだった渡辺だが、その後、将棋の作戦面の選択を一変させる。
現代将棋では、後手番の作戦が最重要課題である。ゴキゲンにせよ、一手損の角換わりにせよ、その力戦振り飛車にせよ、いわば変化球であり、そのことで後手でも主導権を握ろうとしている。羽生も、基本的には後手ではその線で戦っているし、現在はそういう棋士が大勢だ。
しかし、渡辺は、後手でも変化球を投げない。先手の作戦を真っ向から受けて立っている。後手矢倉でも、通常角換わりでも、先手の作戦を全て受け止めて戦うという方針である。ある意味、勝負だけに徹するならばば損な意味もある。しかし、渡辺は将棋世界のインタビューで、そのように相手の作戦を受けて戦うことが、自分の力を高めるために役立つという意味のことを言っていた。これはちょっとすごいと思う。
現代のプロ将棋は、とてつもなくシビアな世界である。そういう正攻法では、並みの棋士ではやっていけない。しかし、渡辺は竜王奪取後、しばらくそういう厳しい修行を自分に課し続けてきた。そのことを考えると、渡辺が現在のような活躍を続けているのは、むしろ評価するべきなのかもしれない。単純ら勝ちにだけ徹する作戦でなく、これだけトップの地位を保っているのだから。ここ数年の渡辺は、さらに本物の実力を涵養するための時期だったという考え方も出来ると思う。

恐らく、将棋の神様は、何もかもお見通しなのだ。渡辺に、羽生と本当に対戦できる力蓄えるまでの練習期間を与えてきたのだ。そして、渡辺が少し不利な時ほど真価を発揮するのさえ折り込み済みで、この竜王戦を選んだのだと思う。言うまでもなく、現在の羽生は最強最良の状態である。問題は、渡辺がどういう戦い方を出来るかにかかっている。
そして私は、渡辺はこういう時にこそ、最高のパフォーマンスが出来る棋士だと信じる一人である。どういう戦い方をするのかも楽しみだ。今まで通り、羽生さん相手でも、堂々と相手の作戦を受けるのもいいだろう。また、もしかしてもしかすると、最近見直されつつある△8五飛で、厳しい定跡勝負を挑むのもまたよし。

将棋の神様がこう言っているのだけは間違いない。
「とにかく、この勝負だけは見逃しちゃダメだぜ」と。

銀河戦決勝トーナメント 島九段vs櫛田六段

棋譜は囲碁将棋チャンネルの銀河戦のページにて

櫛田さんは、予選では伊藤、戸辺、山本という若手を全て完勝で三連破したものの中座さんに惜敗し、決勝進出は微妙と思われましたが、大きい連勝者も出ず、決勝へ。
なんと言っても、若き日のNHK杯での優勝が有名ですが、また今度は時を経ての銀河戦での優勝も期待したいところです。というのは、ちょっと気が早すぎますが。決勝トーナメント一回戦の相手は島九段。NHK杯の決勝で負かした因縁の相手でもあります。
解説は、居飛車矢倉党の藤井さんだったので、櫛田さんの四間飛車をちゃんと解説できるのか、とても心配でした。・・、というのは悪い冗談です。
戦形は、先手の島が居飛車穴熊、後手の櫛田が四間飛車△4四銀型という予想通りの形に。櫛田さんが△8三玉と一手待ったところ。
櫛田島aaaaa08Sep0446手

島さんが、序盤早めに端歩を突き合う工夫をしてから▲2六角と展開する定跡形に。居飛車の飛車が4筋や7筋に移動した瞬間に、△4四角とぶつけるのですが、端歩を突きあっている関係で、後手が何か待たなければなりません。また、本譜の展開でも、△8五桂と跳ねてきたときに、いきなり端に成り捨てることも出来ません。この辺は、島さんも櫛田さんがやることが分かりきっているので、十分対策を練ってきたのでしょう。
図の△8三玉は違和感がありますが、当然ながらこの辺までは櫛田さんは経験があったようです。但し、島さんがいきなり▲2四歩と仕掛けて行ったのは、「あまりやってくる人はいない」と感想戦で言っていました。
以下、島さんが7筋から迫り、櫛田さんも強気に応じてこの図。
櫛田島bbbbb08Sep0467手

後手玉も相当気持ち悪いのですが、放っておいても▲6三桂成△同玉で意外に後続が難しいとのこと。本譜は当然△8七桂と打っていきましたが、桂も渡さずにじっと△3六と金と引くか、あるいは△7九桂成としてからと金を引いておいた方が良かったそうです。
でも、普通桂打ちますよね。それよりも、その後△6二金と逃げたのが、玉を孤立化させて問題でした。島さんが8九の桂馬まで攻撃に参加させ、櫛田玉が完全に露出した状態に。
櫛田島ccccc08Sep0480手

腕に自慢の方は、ここからどう簡明に寄せればよいかを考えてみてください。といっても、私自身が全然ちゃんと寄せられないわけですが。本譜も、島さんが寄せそこなうのですが、感想戦で色々つついても、こうすれば明快というのは解説の藤井さんを加えても、すぐには出てきませんでした。
一応さかのぼって▲6五桂でなく、▲7六金△6七角▲6五金△7三玉▲7四桂△8一銀▲6四銀△7二玉▲6二桂成△同金▲5三銀成とやれば、先手玉も危ないが詰まず勝ちだといっていました。但し、サラッと並べていただけなので、正確には分かりませんし、こわい勝ち方です。
他にも色々調べていたのですが、不安定極まりない後手玉が、なかなか簡単には捕まりません。明らかに、ここでは先手の島さんに勝ちがあるはずなので、なかなか明快な勝ち手順を見つけられず、島さんもすこしだけアツくなっていました。
本譜は、島さんが少しもたついて、開き王手を狙ったところに△7八歩と、とんできて、はっきり逆転したようです。
櫛田島ddddd08Sep0488手
▲同飛しかありませんが△6九角と打って、開き王手をしてきても飛車を抜くことができます。以下、豊富な持ち駒を使って一気に島玉を即詰みに討ち取って、櫛田さんが逆転勝ち。櫛田さんとしては、分かれは必ずしも満足とはいえない展開でしたが、中終盤のしぶとさや力も見せつけました。この後も楽しみです。

囲碁将棋チャンネル 村山 聖 没後10年特別番組「まっすぐに生きて」

新藤兼人に『ある映画監督の生涯 - 溝口健二の記録 』というフィルムがある。とにかく関係者の証言を徹底的に収集して構成したものなのだが、この村山特番も基本的にはそれと同じつくり方だった。
当然、村山の大変な人生を再確認せずにいられなかったわけだが、それ以外に関係者が生前の村山のことを嬉々として語るのが印象的だった。村山はかなりオモロイ人だったようである。十年もたつと彼の人生の悲劇的面も勿論だが、そういう村山の楽しい面を、より懐かしく思い出すものなのかもしれない。
そういう証言にしぼって、いくつか紹介してみよう。
先崎学 自分が村山に最初に連勝したら「キミは強いなー、強いなー」と言われた。次にひとつ負けたら「意外とたいしたことないね、先崎クンはたいしたことないね」と言われて笑ってしまった。
中野隆義 麻雀で自分が浮くと帰ろうし、引き止められると「ボク、今日は病院に行って注射を打たなければいけないんです。」とウソの言い訳をした。
浦野真彦 麻雀をしようというと、「お金があったかどうか」といって、財布を持たないのでポケットを方々探ったら次々に札が出てきて、十何万円持っていた。
田村康介 午前二時三時に麻雀で呼び出され、村山は国士無双をあがると「オレ、もう帰るわ」といった。
滝誠一郎 A級なのにあまりにダサい格好をしているので、見かねて無理やり派手なアロハシャツを買わせたら、そればかり着て連盟に現れ、村山はそういう人なんだということになった。
鹿野圭生 ネクタイを輪っかのまま控え室に置きっぱなしにで、「だれの」と聞いたら「分かるでしょ」と言われた。
池和記 薬師丸ひろ子のファンで「薬師丸先生」と呼んでいた。
橋本崇載 村山が既にプロになっているときに、橋本が奨励会時代に指してもらって、全然手加減してもらえず何連敗もして、やっとの思いで一勝したら、村山に「クソー」と言われた。
鹿野圭生 負けず嫌いで、普通のゲームでも負けるとすごく悔しがり、必ず「オレには将棋しかないんじゃー」と言った。あまりに本気で言うので、みんな笑ってしまった。
鈴木大介 皆でカラオケに行き、当然A級の村山が払うのかと思ったら、イザ支払いのときになって、村山が走って逃げた。(:結局ちゃんと払ったらしい。) 
瀬川昌司 カラオケで、瀬川が歌っている途中で、何度も村山に消された。瀬川も腹を立てて、村山が歌っている途中で消した。小学生のように、お互いに消しあった。
森下卓 順位戦で負かしたら、村山がゴロンと後ろに倒れて「今日はアナタに遊ばれたー」と言った。

村山の代表局といえば、丸山とのB1順位戦である。A級陥落後に、病を抱えながら深夜まで及ぶ激闘を戦い抜いた伝説の一局である。村山が大優勢の将棋を、丸山が粘り抜き、最後は村山が逆転負けしてしまう。森信雄門下の増田裕司が、万一のために控え室で見守っていたが「丸山が鬼のように見えた」そうである。
その丸山忠久もインタビューに応じている。普段、あまり多くを語らないタイプなのだが、この番組では、誰よりも村山将棋について具体的にしっかり語っている。
村山さんは本当に天才だったという印象があります。普通の人とは将棋のつくり方が違っていました。自分が考えに考えていって妙手を指すと、必ずそれ以上の妙手がかえってきました。逆に自分の調子が悪かったりウッカリをすると、それを警戒して変化したりして、勝ったりすることが出来ました。そういうタイプの人を私はあまり知りませんでした。
この丸山証言を、私は新藤映画における田中絹代の証言同様に、最高のハイライトとして聞いた。
コメントを承認制にさせていただいています。反映まで時間がかかりますが、お気軽にどうぞ。
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