2009年01月

ものぐさ将棋観戦日記 1/31(土) 王将戦、ボナンザ4(追記あり)

王将戦第二局は深浦完勝。序盤早々に出た△2五桂は、もはやゴキゲン中飛車ではおなじみの手筋ではある。しかし、こういう一見素人っぽい筋がタイトル戦でも依然として登場するというのも、現代将棋ならではということなのだろうか。
深浦は、この手に象徴されるように、相変わらず踏み込みが良い。去年の王位戦第七局の△3七角成もそうだったが、タイトル戦の大きい勝負では少しやりにくそうな手を決断よく選択し、またそれがうまくいくことが多いのだ。最新形の著書も書いているだけあって、やはり序盤の研究知識が深く、羽生もなかなか序盤作戦でよくさせてもらえていない。
第三局以降も、序盤からお互いの主張がぶつかり合う、厳しい勝負になりそうである。

Bonanza v4.0.3 が公開された。しかも、思考部ソースファイルまで公開している。保木さんは、やはりかなり独特な価値観の持ち主のようである。コンピューター将棋の世界では、第二次ボナンザショックとも言われている。将棋ソフト界のみならず、オープンソースのこととも関係してくる問題である。保木さんがどういう考え方をされているのか、聞いてみたいものだ。
詰将棋メモさんの関連リンクを読んでみたが、やはりコードのことなので、その道の方々の書いている記事が多く、文系素人の私にはよくわからない。いや、全然分からない。素朴な疑問をズラズラ並べてみよう。

ボナンザのソースを、ちょっとだけ変えて、新しいソフトだと主張することは許されるのか。コンピューター将棋選手権に出場できるのか。
どうも、道義的な問題は別にして、一応こうしてオープンにしてしまった以上は、可能?

改良を部分的に加えたとして、簡単に強くなるものなのか。どの程度の熟練知識のある人間が、成果を挙げる可能性があるのか。評価関数部分を、将棋のことをよく理解している人間がいじると、飛躍的に強くなったりするのだろうか。
これも、現にソースの全体が与えられている以上、部分的に局面評価の基準に関わる部分をうまく改良する人間が出で来る可能性もなくはないような気もするのだが、どうなのだろう。

コンピューター将棋選手権で、「ボナンザチルドレン」が台風の目になる可能性はあるのか。
ボナンザチルドレンが、ボナンザ親を破るのみならず、他の有力ソフトを蹴散らしたりするかもしれないと、コンピューター将棋の人たちに対して無責任にサディスティックな発言をしてみよう。まあ、多分そう簡単にはいかないような気もしますけれどね。

それにしても、保木さんはあっさりオープンにして、自由に使ってくださいという道を選んだ。例えば、有志を募ってボナンザ改良共同プロジェクトを始めるというやり方だってあったと思うんですけどね。

あと、根本的な初心者の疑問だけど、例えばボナンザ(他のソフトもそうだけど)のソースとして、特許をとるというようなことは不可能なのだろうか。どの部分を特許と主張できるかが性質上難しいのかな。

(追記)著作権関係で、Bonanza Version 4.0.3の READMEファイルを読んでみたら、著作権が保木さんに属する旨書かれた上で、「変更・転載は自由です。」とありました。.

里見香奈さんのこと

NHKの「ドキュメント挑戦」で「16歳の“稲妻”〜島根県 出雲市〜」という里見さんの番組があった。十分間と短時間だが。少し前に放送されたのだが、なぜ今更書く気になったかというと、えーっと、あのですね、モゴモゴ・・。察した方はご自分で調べてみてください。

プロ棋士多数出席のパーティで、当時八歳の里見さんが「どうすれば強くなるか」を聞いて回っている。きょとんとした感じが、なんともかわいらしい。なんと谷川先生や羽生さんと話している。すごい。そして女流の高橋和さんが、満面の笑みで里見さんと指きりゲンマンをしている。里見さんは、相変わらずきょとんとした様子。高橋さんは、里見さんに毎日詰将棋を解きなさいとアドバイスしたそうである。高橋さん自身、詰将棋作家としても有名だ。里見さんは、それ以来毎日十題以上、かならず詰将棋を解くようになったそうである。現在の里見さんのあの終盤力につながったというわけだ。

倉敷での対局にのぞむ様子をお父様が撮影している。明日の対局に当たって何かないかと聞かれ、にこやかに
「普通に楽しんでやる。」
対局当日、
「がんばってね」
「うん。」
「集中してね」
振り向いて「うん。」
ごく普通の親子だ、といいたいところだが、今時珍しいくらいの、ちょっと羨ましいような親子関係ではある。

里見さんは見事、倉敷藤花のタイトルを獲得する。里見さん自身もブログで勝利報告しているのだが、信じられないくらい自然でオフガードで素直だ。新鮮である。タイトル奪取の将棋については、プロ棋士の里見将棋評など紹介しつつ書いたので、よろしければご覧ください。

週刊将棋や将棋世界でも、里見さんの特集が組まれていた。
谷川九段 里見さんのいい部分は今もそうですが、デビュー当時から素直な感じがするところです。
全くその通りで、結局里見さんの魅力というのは、結局このことに尽きると思う。
師匠の森九段 不利な将棋をよく逆転しているけど、有利だと喜んじゃって。良くなったとき時に勝ちきれないのは私に似ているね。
なんともホノボノとした師弟である。二人とも終盤がメチャクチャ強いが、二人ともどこか人の良い甘いところがあって。
きらりっ娘仲間の室田女流初段 普段は面白いですよ。あまりおしゃべりではないけど、たまに辛口だったり。そういうところがかわいくて。
お父様 あれは外向きの顔で、本人はものすごくひょうきんな子です。
お母様 お笑い系とか、俳優さんでもちょっと変わった個性の人が好きなんですよ。それから柔道の石井さんとか。
そういう一面もあるそうだ。
姉弟子の島井女流初段 香奈ちゃんは純粋で、けがれのないところが将棋にも表れていると思います。笑顔がかわいくて守ってあげたい存在で、会った時は
なんだか照れくさくて、いまだにうまくしゃべれなくて。本当の妹のような感じです。
よくもここまでいってくれたという感じだが(笑)、言いたいことはとてもよく分かる。
こうして周りの証言を聞くと人柄が良く伝わってくる。この似顔絵も、そんな人柄をよくとらえていると思う。
(以上、全て週刊将棋の里見特集より。ただし、ご両親の言葉のみ、将棋世界の吉村達也氏の記事より。)

将棋界のアイドルというべき存在だが、谷川先生の言われるとおり、とても素直な感じで、こちらも素直に応援したくなる。しかし、本人はあまり浮ついたところがないし、目指すべきところも実にしっかりしている。「16歳の“稲妻”〜島根県 出雲市〜」でも、このように言っている。
「(女流の)タイトルをみんな獲って、男性棋戦で活躍したいです。」
頼もしいではないか。実際、周囲が本当に期待しているのは、男性棋士と互角に渡り合ってくれることなのである。

ものぐさ将棋観戦日記 1/26(月)-銀河戦 糸谷vs宮田敦、A級順位戦

落語に「長短」というのがある。ものすごく気が長い奴とものすごく短気な奴が登場して、その対比を楽しむという噺である。柳家小三治師匠などで聴くと絶品だ。
銀河戦の、宮田敦vs糸谷は、まさしく「長短」だった。宮田が序盤から慎重に一手一手考えて時間をどんどん消費していく。一方の糸谷は、宮田が指すとほとんどノータイム。宮田が考慮時間も使いきったときに、糸谷はまだもともととの持ち時間を3分しか使っていなかった。極端すぎる。
また、宮田が考慮に考慮を重ねた末に、一体どんな手を指すのかと思うと、それがごくごく平凡な普通の手なのだ。ちょっとした加藤一二三の再来である。
それに対して、糸谷は、まさに間髪いれずに応対。本当に「長短」の落語みたに、「ええぃ、じれってい」とばかりに。糸谷は江戸っ子じゃないけどね。
結果は糸谷快勝だったのだが、あまりに早く終局して、感想戦が終了しても、まだ9:03だった。いやはや。

A級順位戦は大変な混戦になった。よく言われるように誰が挑戦するかよりも、誰が陥落するかの方が興味をひいてしまう。私を含めた人間の悲しい性なのだが、まあそういう意味では理想的ではある。とはいえ本当にビッグネームガともしかするとという可能性もあり、応援している人間の身としてはたまらないだろう。
七回戦も面白い将棋が多かった。得にA級の場合、速報の棋譜解説も懇切丁寧なので、全てきちんと読むとある程度のことは分かる。とはいっても郷田vs森内戦など、解説を読んでいても形勢判断などがなかなか出来ない難しい将棋である。特に相居飛車は分かりにくいのが多い。そういう将棋を森内相手に勝ちきった郷田には、やはり地力を感じる。現時点では自力挑戦の目がある。
藤井Vs丸山は、ちょっとした角を打つタイミングで形勢が傾き、丸山はその辺の折衝で既に自信がなかったそうである。勿論漠然と私が見ているとまだまだ全然分からない局面なのだが。プロの将棋は厳しい。
鈴木vs深浦は、深浦側が居飛穴なのに、鈴木は敢えて強襲をかけさせて、強気に指していた。実際その大局観が優れていたらしい。パッと見、穴熊がそのまま残っていて、振り飛車は金一枚しか残っていなくて大丈夫かと思えるが、実ははっきり振り飛車が良いという場面に鈴木は局面を導いていた。素直にプロの読みや大局観はすごいと思う。

ものぐさ将棋観戦日記 1/21(水)―渡辺竜王まるごと90分、C1順位戦、元気ハツラツ?

囲碁将棋チャンネルの「将棋まるごと90分」は渡辺竜王がゲスト。竜王戦について、相変わらず率直に話していた。
第七局を自戦解説したのだが、新たに得た情報としては羽生の▲6ニ金では▲6四角がまさったとされていたが、実は▲6ニ銀成としていれば分かりやすく先手勝勢だったそうである。感想戦でも二人とも気づかず、後日発見されたとの事。それと、羽生が▲2四飛としたのが敗着といわれていたが、実はその後△6四歩と王手したのに対して、実際は▲5五玉としたが、▲7五玉と逆に逃げていれば、先手玉は相当危ないながらも詰まず、まだまだ難解な戦いが続いていたそうである。改めて解説を聞いていても、あの終盤というのはたった81マスが無限の広がりを持つような不思議な場面だったのだと感じた。
質問コーナーでQ怖いものは
渡辺 虫が怖いです。ハエが一番怖い。対局室にいると、窓にぶつかってくる音がイヤで、控え室のカメラを見て「虫がいますよー」とアピールするんです。すると取りに来てくれるので。その間全然集中なんて出来ません。終盤に出てこられると困るのですが、今のところそういうことはないです。
もはや有名な話だが、ここまでとは。何か幼児体験とかあったのでしょうか。

昨日の順位船C1の棋譜を、自動再生でパラパラと全局並べてみた。結構時間がかかる。それだけでも、それなりに将棋の流れとか、どっちが勝ちそうとかある程度分かるものである。――すみません、今相当見栄張りました。
それにしても広瀬五段は相穴熊で負けたのを見たことがない。一直線に穴熊に完全に囲うというのでなく、その前になんだかんだやって常に相手玉との距離感を計りながら指しているというか、独特な感覚の持ち主である。この本をいつか読みたいと思っているのだが、手元には積読の将棋本がたくさん・・。

中田功七段の三間飛車相手に勝又六段は、主流の居飛穴でなく、急戦でいどんでいた。その心意気やよしだが、コーヤン流の捌きの餌食になってしまっていた。勝又にすれば、負けて悔いなしというところか、というわけはありませんよね。
塚田九段が、竜で桂を食いちぎった手が詰めろ竜取りで相手が即投了というのをやっていた。プロでも、こういうことがあるんですね。
小林健二、福崎、西川といったベテラン、中堅勢が若手のイキのいいところを負かしている。順位戦の厳しいところだし、面白いところでもある。

さて、王将戦で忘れてならないのがスポニチさんの写真である。今年も第一局勝者の羽生王将が「元気ハツラツ、オロナミンC!」をやらされている。
将棋ファンからすれば、あの羽生さんになんて事をやらすのだ、というところだろう。巨人軍の若手の選手たちですかと。
でも、考えてみれば将棋指しだって、スポーツ選手と変わらないところがあるのだから、そういうことをやってもいいのだ。例えば、オロナミンCのCMで、羽生、渡辺、谷川が、揃ってゴクゴク飲み干して、ニッコリ笑って「元気ハツラツ・・」を唱和するとか。どうっすか、大塚製薬さん。

ものぐさ将棋観戦日記 1/20(火)―NHK杯、朝日杯、LPSA、おにぎり

NHK杯の森内vs糸谷を昨晩録画で見た。やはり糸谷五段は個性的。
森内が初手を指し、読み上げがまだ▲7六歩といい終わらない間に指してしまった。考える前に猛烈な勢いで手が出てしまうタイプなのだ。
さらに森内が▲6六歩。珍しく振り飛車の可能性も見せて、どう見ても考えるところである。しかし、糸谷はまたしても間髪入れずに△3五歩。普段ほとんど指さないという相振りを決断。ある程度決めていたのかもしれないが、それにしても面白い。
将棋は、糸谷がかなり無理気味の攻めを敢行して、きっちり森内にとがめられてしまった。ただ、感想戦を聞くと、森内も解説の井上も気づいていない順が糸谷には見えてしまっていて、やむをえずのことだったと判明。実際の対局では森内の完璧な指し回しのみが印象に残ったが、感想戦では糸谷の手の見えようがすごかった。さすがの森内も、糸谷が変化手順を提示するめまぐるしいまでの速度にやや翻弄され気味だった。やはり才気煥発,魅力的な棋士である。
解説は糸谷が奨励会時代に幹事の井上八段だった。糸谷が取った駒を相手の駒台に叩きつけてしまって裁定で負けになった有名な事件についても話していた。当時、中学生だった糸谷は、完全に勝勢の将棋だったこともあって、ひどく泣いたそうである。そこで井上は糸谷を別室に呼び、「きつかったけれど、これが棋士になり、タイトルを取るようになったら伝説になるんや。」と慰めたそうである。すると、糸谷は泣きじゃくっていたのをパタリとやめて「そうですかねえ」とのたまうたそうな。かわいすぎます。井上さんも実に名幹事ぶりで、関西の雰囲気が良く伝わってくる逸話だった。実際、それ以降糸谷は泣いたりあわててヘマをすることが減り、順調に成長していったという。

朝日杯は久保がベスト進出を決めた。最近の充実振りは著しい。二局目の深浦戦も、いきなり竜を作らせて大丈夫なのだろうかという将棋を、盤上に二枚の角を打ち、何度も何度も移動させながらついには捌くことに成功して勝ちにつなげた。相変わらずアーティストな将棋である。そもそも、棋王戦で羽生を止めて七冠再びの夢を断ったのも久保である。タイトル戦では羽生だけにはどうしても歯が立たなかったが、佐藤との晩勝負は注目だ。佐藤も、特に一日制のタイトル戦ではとてつもない豪腕を発揮して強いことこの上ないので、楽しみである。


さて、LPSAからこんなニュースが。
第2回朝日杯決勝・準決勝大盤解説会(聞き手変更のお知らせ)一体何があったのでしょうね。LPSA側も、倉敷イベントの時とは違って特に公式コメントは出していないし、一般人の私には具体的事情が分からないので余計なことは書かないでおきます。また、敢えて何も言ってないところを見ると、事を荒立てたくないのかもしれませんが、一応関連記事としてこんなものこんなものがあったことだけ紹介しておきます。
船戸陽子さんはソムリエでもあり、こんな講座を開催されるとの事です。LPSAの1dayフランボラーズカップでは、決勝で中井さんとの素晴らしい終盤の激闘の将棋を制して見事優勝していました。但し、今日の天河戦では中井さん得意の押さえ込みにあってひどい目に合わされていました。いやはや、こういう展開になると中井さんの憎たらしいほど強いこと。きっちり1dayの借りを返していました。

今日も順位戦C1の熱戦が展開中。最近ちょっと順位戦を見ていなかったのですが、妻の小言によるとこんなことがあったと。片上さんのtwitterは読んでいたのですが、何言ってるんだろうと思っていましたが、そうですか、こういうことですか。
ちなみに順位戦速報のページを見てみたら
昼食 加藤 鍋焼きうどん・おにぎり
夕食 加藤 鍋焼きうどん・おにぎり2つ
ということだそうです。昼食のおにぎり「1つ」だと若干胃袋に余裕があるという読みの上での「2つ」だったということなのでしょうか。

ものぐさ将棋観戦日記 1/19(月)

男もすなる将棋日記というものを、女もしてみむとてするなり。
すみません、言ってみたかっただけです。だいたいオレ、男だし。
とにかく去年のあの竜王戦で燃え尽きてしまって、ブログ更新をさぼっていた。リハビリをかねて軽い日記スタイルで再開させていただこうかと。よろしければ、気楽におつきあいください。

王将戦第一局は、羽生先勝。深浦先手で、普通の角換わりで相腰掛け銀に。後手の羽生が渡辺新手の順を採用。当時の谷川との対局時にブログで紹介していたのでよく覚えている。金が7四に吊り上げられてしまうので、それを逆用して攻めに使おうという考え方・コンセプトだそうである。竜王戦で死闘を繰り広げたばかりの渡辺の手を羽生が使ったわけだが、勿論羽生には変な感情的なこだわりなど一切ないということなのだろう。将棋には特許はなく、指された手が良い手ならば、誰もが自由に使ってさらに研究を深めていくというのが現代将棋のやり方である。梅田望夫氏の王座戦式典でのスピーチが将棋世界2月号に掲載されていたが、こういうことなのだろう。
現代将棋というのは、私が感じるところ、リアルの世界はおろかインターネットの世界のスピード感よりももっと速く動いている世界です。
どこかで誰かが何かを考えたり、発明したりすれば、瞬時にその情報は伝達され、研究される時代です。そして将棋の世界ではまさにそれが起こっている。
将棋は深浦新手の▲7ニ角が、あまりうまく行かず羽生が終始リードを奪い続けた将棋のようである。ただそんなに簡単ということではなかったそうだ。素人には△2四歩が勉強になった。△7七歩とへこましておいて、それで満足して受けつつ玉の懐を広げて、攻められますか有効な手がアナタないでしょうと。プロだなあと思う。絶対指せない。
終盤のあたりを生で見ていたのだが、深浦の粘りもすごくて、少なくとも私レベルの素人では、最後の最後までハラハラしどうしだった。
まして、竜王戦の最終局の印象がいまだ強烈なため、羽生がうまく着地してくれるか、ファンとしては勝手に心配して見守っていたのである。しかし、やはり羽生はしっかり勝ちきった。周囲の心配や憶測等をよそに、羽生はいつものように淡々と将棋を指しているだけなのかもしれない。とはいえ、やはり深浦の相手に楽をさせない指し方、粘りと根性はやはりすごい。今シリーズもやはり大変な戦いが繰り広げられるのだろう。

ネット女流最強戦、アマチュアの笠井さんが登場して室田さんに挑戦。後手室田さんの四間飛車に対して、先手の笠井さんが最近のプロでは珍しくなった急戦の▲4五歩早仕掛けを敢行。▲2四歩に対して△同角と応じてさらに飛車角交換になる定跡変化になったが、室田さんが良くある自陣飛車を打つのでなく、敵陣に飛車を打ち込む珍しい順に。
感想戦によると、室田さんはこの手を研究していたそうである。観戦しながら藤井猛「四間飛車の急所3」を参照していたのだが、よく見ると△2九飛と打ち込む手順も解説されていた。さらに、△4一飛と自陣飛車を打つ順も気になって調べたのだが、実に難解ないろいろな変化がある。先手が▲6八金型か▲6九金型かによっても違ってくる。居飛車、振り飛車どちらを持っても十分戦える形なのだと思った。現在プロでは急戦は下火だが、それはあくまで居飛車穴熊などの持久戦がより有効とされているからで、急戦自体まだまだ研究開拓しがいのある作戦なのではないかと改めて感じた。それにしても、藤井本の体系化力というのは、やっぱりすごいものがある。
将棋は終盤、笠井さんにはっきり勝ちがあったのだが、残念ながら逃して、室田さんが鮮やかな即詰みに斬って落とした。お見事。面白い将棋だった。

少し前の将棋についてもちょっと。NHK杯の鈴木vs行方。先手鈴木で意外な普通の四間飛車かつ古典的な急戦に。振り飛車が教科書通りに理想的にさばけた形に。プロでは珍しいくらい。が、行方も耐えがたきを耐え、鈴木も完封を狙って間違え、行方が食いつきに成功。大逆転勝ちだった。
「志士の世迷言」さんも紹介されていたが、感想戦がとても人間味があって面白かった。録画を既に消したので記憶で書くので言葉は正確でもないかもしれないが、鈴木が「急戦はちょっと苦手なんだよね」というと行方が「だから急戦にしたというところもある」と。ところがその急戦で行方がひどい分かれの変化を選んでしまったわけだが、鈴木が「これは結構有名な変化だと思うんだけど。」と笑いながら。結構好きなことをお互い言いあっていた。勿論友好的な雰囲気で。

正月のNHK・BSで好例の「大逆転将棋」。先手藤井で相振り飛車に。藤井が穴熊、佐藤が美濃で、藤井がやや強引な攻めを敢行。しかし、佐藤は落ち着き払って対応し、最後は完全な一手勝ちをおさめた。プロとしては大差の内容。佐藤強し。
藤井さんは、かなり強引な無理攻めがたたって、完全にいなされてしまい、ご本人としては不本意な内容だったのだろう。ただ、佐藤さんは本当にまるで盤面が見えているように「指していた」。プロなら、基本的には誰でも脳内将棋はたやすいはずだが、やはり脳内イメージ再生能力の強度には、かなり個人差があるのかもしれない。
来年は脳内将棋に羽生が登場するかもしれないそうである。ご本人は「検討します」とのこと。もし実現したら、これは見逃せないだろう。

簡単に短くするつもりが長くなってしまった。今年もくどい性格は変えられそうにない。
今年もよろしくお願いいたします。

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