2010年05月

4タテをくらった挑戦者が主役だった不思議な名人戦ーー名人戦2010第四局 羽生名人vs三浦挑戦者

いきなりだが、私は羽生ヲタである。出来るものなら、名人位だけは未来永劫羽生さんに保持していてもらいたいくらいのことを思っている。
しかしながら、である。今回の名人戦では、三浦挑戦者の対局にかけるあまりに真摯過ぎる姿勢、テレビに映っていることなど完全に忘れ果てているような対局への極限的な集中ぶり、そしてコメント等から漏れ伝わって来る余りに正直で人を和ませずにはいられない純真で素直な発言が、観る人間をひきつけずにはいられなかった。途中からは挑戦者の勝ちを待ち望んでいる自分に自分で驚いた。
私だけではない、ネットでの反応を見ていると、普段は羽生を応援している人間までもが、三浦挑戦者に一つは勝たせてあげたいなどと言い出し、特に女性将棋ファン(将棋女子)はすっかり三浦挑戦者に夢中だったようである。我々男性将棋ファンよりは、恐らく人間(おとこ)の本質を見抜くことについては鋭敏かつ敏感な方々が言うんだから間違いない。某プロ棋士のブログによると、三浦挑戦者は「婚活中」ということで、そもそもそれが本当かどうかもよくは知らないのだけれども、恐らくご本人さえその気にさえなれば「No problem」なのである。本当に大きなお世話なのだが・・。
いきなり閑話休題。
本局でも、三浦挑戦者らしさが随所に出ていた。
今回は、横歩取りシリーズとも言われ、ここまできたら三浦挑戦者は意地でも横歩取りを採用してリベンジを目指すのではないかと周囲は観測し、またそれを期待する声も多かった。しかし、蓋を開けてみれば、あっさり違う形に。
事前のBSインタビューでも、横歩取りが続いたことについて、別に意地になっているわけでなく、特に先手では避けるのが難しいのだと率直に述べていた。三浦後手の第二局はとも角として、第一第三局については後手の羽生の誘導なので仕方ないという意味である。それでも、羽生が敢えて後手番で横歩を連採してきて、しかも負けてしまったのだから、普通ならば意地で本局でも横歩ということを考えてしまいそうなものである。しかし、三浦はそこはあっさりとかわして自分の自信のある研究をぶつけてきた。そして、結果は少なくともも後手が悪くなく、むしろ作戦勝ちではないかという成果をおさめたのである。この辺。あまり周囲の目を気にせずに、自分のやりたいことをきちんと実行する三浦の強さのようなものを感じた。
封じ手にしてもそうである。三浦が今回BS解説を担当した杉本と実地研究したことが散々話題になり、せっかく練習した封じ手を出来ないのが三浦の敗因ではないかと、口の悪い棋界雀のネタになってしまっていたが、本人は実はそんなにこだわりはなかったようである。本局も、羽生が当然手の封じ手にするところまで指した。もし、相手が駆け引きを重んじる棋士なら直前に▲4七銀を指して三浦を困らせるかもしれないが、羽生ならそんなことをしないという読みも三浦にはあったのではないだろうか。周囲は、三浦の封じ手練習を面白おかしく騒ぎ立てたが、意外に三浦本人はこだわりなく冷静に封じ手を考えていたのかもしれない。
このどちらについても、三浦には周囲とは関係なく意外に冷静に自分の思うように出来る強さと(いい意味での)鈍感さがあって、それはむしろ三浦の長所・美点なのではないかと感じたりもした。
しかし、なんといっても三浦の最大の魅力はほとんど忘我状態に近い対局姿勢である。終盤、三浦が渾身の勝負手△2三角を放って猛烈な追い上げ、それでも羽生が厳密には残しているのではないかといわれていたが、羽生の対応にも問題があり、三浦が逆転したのではないかというところで、NHKのBSは10分間の生中継に突入した。
いきなり三浦が映る。いつもながらの驚異の極限の前傾姿勢で、左手を開いて頭を鷲づかみに抱えて必死に読み耽っている。手に隠れて表情はよく見えないが、なんとか見て取れる左目だけからも、頭脳がフル回転であることを雄弁に物語っている。まるで、間違って世界核戦争が発生してしまい、10分以内に重大な決断をしなければいけない大統領が「正解」を探して体裁など一切無視して必死に苦悩しながら考えているかのように。
その三浦の姿勢は中継中の10分間全く不動のままだった。悟りをこれから開こうとして瞑想中の仏陀のように。これだけでも、見た甲斐があったというものである。
その後も、三浦の手が異常なくらいブルブル震え、羽生顔負けだったようである。残念ながら、それを見ることは出来なかったが。恐らく、将棋の終盤映像というのはおそろしく商品価値が高いのではないだろうか。
深夜のBSでは終局場面も映った。三浦が中空をみつめて、何がが悪かったのかを考えている。荒い息遣いが映像越しにも伝わってくる。羽生は前傾姿勢で盤面に集中している。三浦が気を取り直したように盤面に手を伸ばす。驚いたことに三浦の手番だったのだ。そして、三浦はタオルを手に取り、顔に当てて名残惜しそうに盤面を見つめている。タオルを置いて、左手を額に当てて、名残惜しそうに盤面をみやる。そして、気を取り直したように姿勢を正して、三浦らしくはっきりと投了の意思表示をした。立会いの加藤一二三も感慨無量という表情で見つめている。指し手など全く知らなくても、三浦の気持ちがはっきりと伝わってくる映像だった。BS解説では、終始冷静な解説を続けてきた杉本が最後に「残念でした」とキッパリという。
三浦挑戦者は局後に、こののように語った。
力不足だったと思います。しかし力は出し尽くせたかと思います
さらに、担当記者に対して「すみませんでした」と言ったそうである。恐らく4局で終わってしまったことについてだろう。普通なら負けたショックでそんなことを言う状態ではない筈なのに。
現在二冠の久保利明も、当初タイトル戦では羽生にひどい目にあい続けた。次々に激戦の終盤を戦い、どれも名局といわれながら、結果は常に羽生がかっさらっていた。今回の三浦の戦いぶりは、ちょっとそれに近いものがある。決して、一方的にやられたのではなく、第二局以外は三浦にも勝つチャンスがあったが、羽生の終盤の底力が首の皮一枚上回っただけである。
三浦は、今回のシリーズを通じてファンに対して十分自分の将棋や人間をアピールできたはずである。あとは、久保のように、どれだけ何度潰されても、へこたれずに甦って来て羽生と戦い続けることが出来るかだけだろう。

4タテをくらった挑戦者が主役だった不思議な名人戦ーー名人戦2010第四局 羽生名人vs三浦挑戦者

いきなりだが、私は羽生ヲタである。出来るものなら、名人位だけは未来永劫羽生さんに保持していてもらいたいくらいのことを思っている。
しかしながら、である。今回の名人戦では、三浦挑戦者の対局にかけるあまりに真摯過ぎる姿勢、テレビに映っていることなど完全に忘れ果てているような対局への極限的な集中ぶり、そしてコメント等から漏れ伝わって来る余りに正直で人を和ませずにはいられない純真で素直な発言が、観る人間をひきつけずにはいられなかった。途中からは挑戦者の勝ちを待ち望んでいる自分に自分で驚いた。
私だけではない、ネットでの反応を見ていると、普段は羽生を応援している人間までもが、三浦挑戦者に一つは勝たせてあげたいなどと言い出し、特に女性将棋ファン(将棋女子)はすっかり三浦挑戦者に夢中だったようである。我々男性将棋ファンよりは、恐らく人間(おとこ)の本質を見抜くことについては鋭敏かつ敏感な方々が言うんだから間違いない。某プロ棋士のブログによると、三浦挑戦者は「婚活中」ということで、そもそもそれが本当かどうかもよくは知らないのだけれども、恐らくご本人さえその気にさえなれば「No problem」なのである。本当に大きなお世話なのだが・・。
いきなり閑話休題。
本局でも、三浦挑戦者らしさが随所に出ていた。
今回は、横歩取りシリーズとも言われ、ここまできたら三浦挑戦者は意地でも横歩取りを採用してリベンジを目指すのではないかと周囲は観測し、またそれを期待する声も多かった。しかし、蓋を開けてみれば、あっさり違う形に。
事前のBSインタビューでも、横歩取りが続いたことについて、別に意地になっているわけでなく、特に先手では避けるのが難しいのだと率直に述べていた。三浦後手の第二局はとも角として、第一第三局については後手の羽生の誘導なので仕方ないという意味である。それでも、羽生が敢えて後手番で横歩を連採してきて、しかも負けてしまったのだから、普通ならば意地で本局でも横歩ということを考えてしまいそうなものである。しかし、三浦はそこはあっさりとかわして自分の自信のある研究をぶつけてきた。そして、結果は少なくともも後手が悪くなく、むしろ作戦勝ちではないかという成果をおさめたのである。この辺。あまり周囲の目を気にせずに、自分のやりたいことをきちんと実行する三浦の強さのようなものを感じた。
封じ手にしてもそうである。三浦が今回BS解説を担当した杉本と実地研究したことが散々話題になり、せっかく練習した封じ手を出来ないのが三浦の敗因ではないかと、口の悪い棋界雀のネタになってしまっていたが、本人は実はそんなにこだわりはなかったようである。本局も、羽生が当然手の封じ手にするところまで指した。もし、相手が駆け引きを重んじる棋士なら直前に▲4七銀を指して三浦を困らせるかもしれないが、羽生ならそんなことをしないという読みも三浦にはあったのではないだろうか。周囲は、三浦の封じ手練習を面白おかしく騒ぎ立てたが、意外に三浦本人はこだわりなく冷静に封じ手を考えていたのかもしれない。
このどちらについても、三浦には周囲とは関係なく意外に冷静に自分の思うように出来る強さと(いい意味での)鈍感さがあって、それはむしろ三浦の長所・美点なのではないかと感じたりもした。
しかし、なんといっても三浦の最大の魅力はほとんど忘我状態に近い対局姿勢である。終盤、三浦が渾身の勝負手△2三角を放って猛烈な追い上げ、それでも羽生が厳密には残しているのではないかといわれていたが、羽生の対応にも問題があり、三浦が逆転したのではないかというところで、NHKのBSは10分間の生中継に突入した。
いきなり三浦が映る。いつもながらの驚異の極限の前傾姿勢で、左手を開いて頭を鷲づかみに抱えて必死に読み耽っている。手に隠れて表情はよく見えないが、なんとか見て取れる左目だけからも、頭脳がフル回転であることを雄弁に物語っている。まるで、間違って世界核戦争が発生してしまい、10分以内に重大な決断をしなければいけない大統領が「正解」を探して体裁など一切無視して必死に苦悩しながら考えているかのように。
その三浦の姿勢は中継中の10分間全く不動のままだった。悟りをこれから開こうとして瞑想中の仏陀のように。これだけでも、見た甲斐があったというものである。
その後も、三浦の手が異常なくらいブルブル震え、羽生顔負けだったようである。残念ながら、それを見ることは出来なかったが。恐らく、将棋の終盤映像というのはおそろしく商品価値が高いのではないだろうか。
深夜のBSでは終局場面も映った。三浦が中空をみつめて、何がが悪かったのかを考えている。荒い息遣いが映像越しにも伝わってくる。羽生は前傾姿勢で盤面に集中している。三浦が気を取り直したように盤面に手を伸ばす。驚いたことに三浦の手番だったのだ。そして、三浦はタオルを手に取り、顔に当てて名残惜しそうに盤面を見つめている。タオルを置いて、左手を額に当てて、名残惜しそうに盤面をみやる。そして、気を取り直したように姿勢を正して、三浦らしくはっきりと投了の意志を継げた。立会いの加藤一二三も感慨無量という表情で見つめている。指し手など全く知らなくても、三浦の気持ちがはっきりと伝わってくる映像だった。BS解説では、終始冷静な解説を続けてきた杉本が最後に「残念でした」とキッパリという。
三浦挑戦者は局後に、こののように語った。
力不足だったと思います。しかし力は出し尽くせたかと思います
さらに、担当記者に対して「すみませんでした」と言ったそうである。恐らく4局で終わってしまったことについてだろう。普通なら負けたショックでそんなことを言う状態ではない筈なのに。
現在二冠の久保利明も、当初タイトル戦では羽生にひどい目にあい続けた。次々に激戦の終盤を戦い、どれも名局といわれながら、結果は常に羽生がかっさらっていた。今回の三浦の戦いぶりは、ちょっとそれに近いものがある。決して、一方的にやられたのではなく、第二局以外は三浦にも勝つチャンスがあったが、羽生の終盤の底力が首の皮一枚上回っただけである。
三浦は、今回のシリーズを通じてファンに対して十分自分の将棋や人間をアピールできたはずである。あとは、久保のように、どれだけ何度潰されても、へこたれずに甦って来て羽生と戦い続けることが出来るかだけだろう。

第20回世界コンピュータ将棋選手権

かつて、ロラン・バルトは引用だけで出来上がっている書物を書きたいとして、おかつそういう書物こそ理想の書物なのではないかと言った(かどうかいきなり記憶が曖昧で定かではない)。
コンピュータ将棋選手権についてまとめ記事を書こうと思ったのだが、リアルではちゃんと見ていない上に。詰め将棋メモさんの膨大かつ楽しいなリンクを辿っているうちに、すっかりやる気が失せた。下手なまとめ記事を書くよりも、それらの記事の中から面白い箇所を引用した方が良いのではないかという気がしてきたのだ。かつて、菊地成孔が伝説の「ティポグラフィカ」のアルバム"God says I can't dance" のライナーで書いたように「パクリとサンプリングに飽き飽きした」時代にふさわしく。
と言うのは、私がまとめ記事を書く根気を失った言い訳に過ぎない。以下にあげる記事で興味深いものを読まれたら、今回何が起きたか自然に分かるようになっているはずだ(ほんとかよ)。引用箇所は別に重要なものでははなく、私が勝手に面白いと思ったところであることに過ぎないも、あわせてお断りしておこう。
最後に、私がいたく気に入っている菊地のライナーの該当箇所を勝手に強引に完全に「引用」しておく。
パクリとサンプリングに飽き飽きした神がヘッドフォンを外しながら叫ぶ"これじゃ踊れないよ"
(変拍子の鬼、「ティポグラフィカ」)

ちなみに作者曰く「Bonanzaに3回に1回は勝てる」らしいです
稲庭将棋が強すぎてこまるw 毎日がEveryDay!

コンピュータ将棋界に颯爽と現れた「ボナンザ」と、そのライブラリを利用して強豪と化し増殖する「ボナンザチルドレン」の様子に当てはまる。
やがてループ界から現実界にも侵食を始めたリングウイルス。ボナンザチルドレン(とその他コンピュータ将棋)も、現実界に進出し、プロ棋士を凌駕していくことだろう。今後も脅威を増し、プロ将棋界の権威を失墜させ、破壊していくのだろうか。一方で、それに対抗する「ワクチン」は現れるのだろうか・・・。
少なくとも、「稲庭将棋」はワクチンにはなれなかったようだ。
floodgateとループ界 将棋の神様〜0と1の世界

▲GPS将棋−△ボンクラーズ戦では、中継で「300台のうち何台かは(無理攻めを)止めようとしなかったの?」という声も聞こえ、

東ハトつぶつぶコーンが美味しい日 センプレ・アタッコ仮設倉庫

それにしても今年のソフトは、ひょろりとした新人レスラーが筋肉をつけ始めたときのような迫力を持っている。その腕っぷしは、まだ小橋健太ほどの太さはないけれど、しかしはっきりとうなりをあげはじめた。たしかにとんちんかんなこともたまにやらかすが、これだけ体力があると、そのとんちんかんをとがめてから勝ちに導くのは容易なことではありません。
第20回コンピュータ将棋選手権 電子書籍、ヴォーカロイド、そしてコンピュータ将棋

発案者は伊藤果七段です。「飛車が自陣内を動く様子がくるくる回る風車を連想させ」*4ることから風車と名付けられましたが、この陣形、ご覧の通り隙がなくて受けには強い反面どこから攻めればいいのか分かりません。つまり「先手でも千日手歓迎」で、相手が動いてきたところでカウンターを狙うのがこの戦法の骨子なのです。
第20回世界コンピュータ将棋選手権に鬼将会登場 三軒茶屋 別館

私の理解では、ボナメソは4万局とかで全部サーチして結果を貯めておいて、最後に評価関数を更新するので分類としてはバッチ学習になりますだから8coreで一ヶ月かかったりする(深さが3とかなので)激指はなんと8深さで学習してるそうで、それができるのはオンライン学習だからと思います。その場ですぐ評価値を更新するオンライン学習だから、8深さなんて学習が可能になるわけです。(ただ、これをやるとノイズに弱くなるし、初めたときの棋譜の性質に引っ張られるので、 そう簡単にはうまく行かないはず。ボナメソがまとめて更新するので、ある意味、 平均化されて、ただしく神の方向を目指せるわけです)
2010-05-04 小宮日記


どうも、コンピュータは端攻めを苦手としているらしい。端攻めは、何歩かを打って(捨てて)例えば桂馬と香車を交換する、なんていう攻めになるわけで、駒損−駒損の手をコンピュータの指標で「良い手」とするのは難しいとのこと。端攻めが苦手というと「穴熊に対して端は攻めないのか?」と熊倉先生が質問していたが勝又先生曰く、そのあたりが随分改良されてきたらしく2回戦▲GPS将棋対△激指戦で▲GPS将棋が指した9三歩など目覚しい進歩と評していた。
第20回世界コンピュータ将棋選手権の解説会に行ってきました いつも笑顔で

これは以前からBonanzaに対して言われていることで、Bonanzaは詰将棋ルーチンをあえて入れていないとのことですが、過去の対渡辺明竜王戦の終盤で痛恨の読み落としで敗れたのもこのあたりに問題があったと思われます。今大会でも最後の最後になってバタバタと敗戦へと転げ落ちていく場面が多々見られました。
第20回世界コンピュータ将棋選手権 最終日 Thinking every day, every night

大会終了後全ての棋譜を見て私が印象に残った事は、戦法について。前回大会と比べて振り飛車が減り、相居飛車のわりと新しい戦法が多く見られたように感じました。これはどこに原因があるのでしょう。また振り飛車の将棋は全体的に古い形(角道を止めるタイプ)が多く、プロで大流行の(角道を止めない)力戦振り飛車の将棋がすごく少なかったように思います。
コンピューター将棋選手権など 遠山雄亮のファニースペース


たとえると、300人分仕事ができる人が一人いるよりも300人の部下を使う上司は大変という感じで、故障の可能性が増えたり、リソースの取り合いが起こったり、分担した仕事が上層部の方針変更で無駄になったり等、性能が上がらない要因が色々あります。
世界コンピュータ将棋選手権報告 駒得少年の冒険


ただ、会場で、激指が激指っぽくなく、「決勝のソフトの指し手は皆同じに見える」といわれていた人がいて、なるほどなあと感心しましたYSSもかつてのYSSとは別人なのかもしれません。学習するということは、プログラマーが与えた人格がどんどん失われるのだろうと思います。これは、手動の辞書の人工無脳と、マルコフ連鎖の人工無脳にも言えることと思います。
bonanzaはなぜ凶暴なのか? 小宮日記

囲碁では、局面評価を諦めるという大胆な発想が注目されています。簡単に言うと、適当に着手した結果、後にその手が有利になるのか不利になるのかをシミュレーションして、着手の良し悪しを判断するのです。 これは、モンテカルロシミュレーションというやりかたです。*7 こうした戦略をとるAIを用いて、9路盤なら人間相手に十分な強さになっているそうです。
第20回世界コンピュータ将棋選手権  アブストラクトゲーム博物館

保木氏に「null move pruning」について質問した。大会2日目のネット中継で激指の鶴岡氏とパス手について何やら語っていたので、その確認。ボナンザの「null move pruning」は(ネットで調べて出てくる)普通の手法。「パスしてやったのに自分が良くなる」=「相手が悪手を指した」という考え方に基づいて悪そうな手をカットする。これに対して、激指やGPSの実現確率探索では(読みが深くなると)良さそうな手のみを生成する。この際に良さそうな手の一つとしてほどほどに良い、穏やかな手としてパス手を候補に入れる。「パス=最善手じゃないから」(後ろ向き)と、「パス=そんなに悪くない」(前向き)ではずいぶん考え方が違う気がするが。いずれにせよ将棋世界の連載で抱いた違和感は解消した。
第20回世界コンピュータ将棋選手権 主砲射撃指揮所

名人戦2010第三局 羽生名人vs三浦八段

渡辺vs羽生の竜王戦第四局の最終盤、渡辺が入玉含みで猛烈に粘るものの、やはり自玉がつかまってしまいそうで、渡辺はちょっと諦め気味だった。次の指し手を羽生がすぐに指したら投了も考えていた。その時、羽生がコップの水を一杯飲み干す。その間に渡辺はふと気付く、もしかすると自玉が打ち歩詰めの筋で逃れることが出来るのではないか。再びやる気を取り戻して懸命に読み出す。実際に打ち歩詰めの筋が出現して渡辺が奇跡的な逆転勝ち。三連敗四連勝して、竜王防衛、初代永世竜王の名誉も獲得する。
もしも、羽生がコップの水を飲んでいなかったとしたら・・。

将棋は基本的に実力勝負の世界である。運とかアヤの入り込む余地は限りなく小さい。しかしながら、人間同士の勝負なので時としてほんのちょっとしたことが勝敗にとてつもない影響を及ぼすことがある。まるでプロ野球で、ちょっとした打球の飛んだ位置や、些細なエラーが勝敗を分けて、結果的にあらゆる出来事が勝者に都合よく起こることがあるように。
今回の名人戦第三局もそうだった。

中盤、三浦に▲9五金という打ちにくい金を打つ妙手があった。・・ように見えた。渡辺竜王がすかさず指摘し、他の豪華解説陣も同意していた。羽生もずっと▲9五金を打たせる余地を残して指していたので、もしかすると軽視していたのかもしれない。三浦の逸機か。そうではなかった。三浦はその手に気付いていた。しかしながら、その後に、豪華控え室の誰も気付かなかった羽生側の妙手が見えてしまっていた。なので、▲9五金をも見送ってしまった。
もしも、三浦が余計な好手に気がついてしまわずに指すことができていたら・・。

羽生優勢とされた将棋だったが、三浦が猛烈な追い上げを見せた。と言うよりは、実は羽生が若干よいにしても、そんなに形勢は離れていなかったのではないか。控え室では、三浦の▲7七桂から▲4六香の評判がとても悪かった。しかし、本譜の進行を見ると、実は勝負のアヤを求めるなかなかの指し方だったのかもしれない。今回の控え室には渡辺竜王や深浦王位といった猛者たちが顔を揃えていた。しかも、全員将棋の筋に明るいタイプだ。彼らからすると、特に▲4六香は違和感があるのかもしれない。それは素人でも何となく分かる。しかし、三浦には形にこだわらずに徹底的に読みを掘り下げて自分の信じる手を指す強さがある。他のトッププロとは違う一種不器用なまでに突き詰める姿勢は、むしろ三浦の長所なのではないだろうか。

しかし、三浦が猛烈に追い上げたが、どうしても後一歩届かない。羽生玉が詰まない。三浦いつもの超前傾姿勢で、目を充血させながら大きく見開き、時に左上に空間にある三浦のマイ脳内将棋盤を猛烈に動かしながら必死に読み耽っても、どうしても足りない。
羽生が正しく△3三銀と合い駒していればジ・エンド。しかし、羽生も人の子、錯覚する。自玉を限りなく危うくする敗着となりかねかねなかった△3三角合い。控え室は騒然とする。一番驚いたのは三浦だろう。棋士の本能で羽生玉を詰まそうとする。しかし、詰まそうとせずに羽生の桂二枚を抜いて、詰めろ逃れの詰めろをかけていれば勝ちだった。もしも三浦が角合いを最初から読んでいたなら、もっと冷静に考えることが出来たかもしれない。しかし、思いも寄らないす羽生のミス。冷静にいろと言うのが酷である。
もしも、三浦が詰ましにいかずに、冷静に勝つ方法を考えていることができていれば・・。

再びもう三浦に勝ちはない。控え室が△7八と、と金を取る手が詰めろだと指摘する。難しい詰めろのかけ方だ。中継を見ていて私などはプロの読み筋の凄さに半ば笑ってしまった。しかしながら、三浦もその筋で負けだと読んでいた。ここでも三浦はちゃんと読めていたのだ。しかし、羽生が指したのは、一見普通で自然に見える玉の縛り方。しかし、またしてもこれが問題だった。三浦はここで投了したが、実はその銀を抜いて粘る筋があった。羽生良しにしても、まだまだ将棋は続いていた。双方持ち時間がほとんど残っていたので何らが起こっていてもおかしくはなかった。
終局場面がBSの深夜で流れだが、三浦は一分将棋で、59秒まで読まれて何かを指そうとしていたが、間に合わなかった感じで「負けました」と投了の意志を告げていた。
もし、三浦が正しい詰めろに気付かず、最初から羽生の△3三銀を本線で考えて対策を考えていることが出来たとしたら・・。

今回、三浦がきちんと読めていたのが全てマイナスに働いてしまったようである。なんと勝負の運命の神は意地悪なことをするのだろうか。

三浦のひたむきな姿勢は、我々ファンだけでなくプロ棋士たちの心も打っているようだ。
囲碁将棋ジャーナル解説の佐藤康光九段も羽生に12連敗した経験があるそうだ。
ひたすら貫くしかないでしょうね。自分の殻を破るために、ひたすら自分を信じてつき進んでほしいと思いますけれどね。
深夜のダイジェストの鈴木環那女流初段
対局姿勢からも感じ取れるように、本当に全力で全身で戦っているという感じがあります。

名人戦2010第三局第一日 羽生名人vs三浦八段

またしても横歩取りである。
ちなみに、私の予想はこうだった。
羽生名人は、タイトル戦でも少し余裕が出ると実験的な戦型を試すことが多いし、同じ戦形を続けるのを避けるところもある。また、その場にいる人間にちなんだ形を指すケースもままある。ということで、今回は「変わりゆく現代将棋」の書籍化(私はいち早く入手したものの、言うまでもなくそのまま積読状態だ。内容が想像以上に相当ハードボイルドである。)を記念して矢倉ではないか。しかもBS解説が渡辺竜王なのだから、急戦矢倉でいくのではないか。
しかし、ここにはそもそも重大な読み抜けがあることに、読者諸賢ならばすぐに気付かれることだろう。二手目△8四歩とやったからといって矢倉になるとは限らない。先手が普通の角換わりを目指す可能性もある。3手目以降△2六歩△8四歩と進めれば、横歩取りにまた戻すことも一応可能ではあるが。しかし、そんなことを考えるならば、最初から二手目△3四歩だろう。
こう書いていて思うのは、矢倉というのは後手が△8四歩として先手に主導権を移譲した上で、さらに先手が同意しないと成り立たない形だということだ。二手目△3四歩だと、逆に後手が作戦の選択で主導権を握ることが可能である。矢倉は将棋の純文学と言われてきたが、現代的な感覚からすると、かなり堂々としすぎた、それこそ「古典的」な戦い方なのかもしれない。二手目△8四歩の最後の砦ともいうべき渡辺竜王まで、最近は△3四歩が増えているらしい。
もし、羽生善治が「変わりゆく現代将棋」を今書くとしたら、矢倉の序盤の指し方についてではなく、そもそも二手目を△8四歩とするか△3四歩とするべきかだけで、延々と講座を書き続けるのではないか。というのは、勿論私の妄想に過ぎない。

三浦八段のまBSインタビューが相変わらず正直である。
ただ、二日制が、想像以上に疲労するものだなぁと思いまして。
(若い時のタイトル戦と比べて)もしかしたら、疲労感が若い時と比べてあるのかなぁと。
朝日新聞の村上記者によると、三浦八段は一週間ほど疲れがぬけなかったし、第一局では初日から疲れたと言っていたそうである。
(三浦さんは)すごく考えているんだなぁと。一日目から疲れるというのは普通ないですからね。三浦さんは、見ていても分かるんですけれど、すごく読むんですよね。確かにあれだけ読んでいたら、疲れるだろうなというくらい読んでいますよね。(渡辺竜王)
二日制のタイトル戦の場合、普通の棋士ならば、初日は息抜きもしつつペースを作っていくのだろう。渡辺竜王辺りは、その辺りの達人のような気がする。しかしながら、三浦流は初日から全開モード、全力投球なのだろう。当然二日間も懇々と読み続ければ疲れてしまうに決まっている。この辺、やはり一切手抜きなしで考える必要のないところから大長考を繰り返す加藤一二三先生と通ずるところがあるのかもしれない。
BSで木村八段が「封じ手の練習なんてするわけないですよ」と笑っていた封じ手を、またしても三浦八段はできず。▲3五歩を封じ手にするという方法もあったようである。渡辺竜王は、ここで封じ手にしておくのが普通ではないかとも指摘していた。どうも、三浦八段は、封じ手の練習は几帳面にしても、封じ手の駆け引きなどはあまりしないような気がする。むしろ、正直に指せるところまで指しておくというやり方ではないだろうか。結果的に、羽生名人に封じ手がまわっている。封じ手の駆け引きに意識的な渡辺竜王と、もしも三浦八段が戦ったら、羽生vs三浦以上に対照的で面白いかもしれない。
三浦八段は、前夜祭でのたった50秒のスピーチでしっかり二度笑いを取ることに成功している。この辺りも、加藤一二三先生に肉薄しつつあるのかもしれない。



そして竜王が「あれだけ読んでいたら」という姿を捕捉した動画。人間が頭脳をフル回転して考える姿がこれほど美しいとは。

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