2010年09月

熊八ご隠居のテレビ将棋パトロール その四 

(今週のテレビ将棋についてネタバレで書いているのでご注意ください。)

ご隠居「今春に有吉先生と大内先生という名棋士が引退された。今週の週刊将棋ステーションは大内先生がゲストじゃった。やっぱり、昔の将棋指しに特有な強烈な個性のある先生だ。現代のスマートな棋士もいいけど、わしのような古いファンにとってはかつてのよき時代をちょっと懐古してしまうな。例の名人戦を逃した痛恨の▲7一角についても「永久に頭から離れない、私の歴史の一ぺージだから」とおっしゃっていた。あと、ハワイでタイトル戦をした際のエピソード。「対局場の部屋がハワイヒルトンで川端康成が日本文学を講演した際につくられたカワバタ・コテージだった。真夏の灼熱の太陽の中、羽織袴で対局して長考中に裏道へ出るとプールがあって、ビキニスタイルの美人が泳いでいて、こっちみて「さむらーーーい」とか言っているんですよ(笑)。」いや、なんかのどかな時代を感じさせる話でよかった。」
熊「司会の山田史生さんが大真面目な顔して「あんまり集中できなかったんじゃないですか」と言っていたのが妙におかしかった。」
ご隠居「今週は銀河戦の決勝があった。佐藤康光先生と丸山先生の対戦。佐藤先生は気合の和服だったな。
佐藤後手で、一手損角換わりに対して丸山の早繰り銀ですぐ▲2四歩と仕掛ける形。先日のNHK杯の村山vs糸谷と全く同じ進行。解説の久保さんが初めて見る形といっていたので、多分この銀河戦の方が先の収録だったんだな。後手の糸谷先生が△6五歩としたところで、佐藤先生は△1五角。ちょっとNHK杯の感想戦をビデオでみたら、村山先生が「ここで△1五角の前例がある。」といっていたのが多分この対局のことだ。村山先生もこの手に対しては何か対策があったのだろうが、糸谷先生が研究で変化したんじゃろう。本当に最新の定跡が猛烈な勢いで研究されれたているのを感じさせられたよ。
将棋はその△1五角が狭そうでいて、とにかく3七の地点に狙いをつけて攻めをつなごうという手。正確には成否は微妙だったようだが、うまく佐藤先生が攻めをつないで見事優勝された。
丸山先生は負けたんだが、途中じっと▲6六銀あがるとして玉の退路を広げつつ上の方に攻めながら開拓しようとする手に感心した。どうもプロ的にはそんなに驚く手でもなかったようだが、弱いアマチュアには指せない手だと思ったな。
佐藤先生も久しぶりの優勝だな。順位戦でも初戦敗れて目が覚めたのか連勝中だし、やっと復調気味かな。」
熊「感想戦でも、佐藤先生、ゴキゲンで、丸山先生がよくなる順まで几帳面に追及されてましたな。」
ご隠居「そうだな。でも、本当に△1五角以下の攻めがちょっとうすいという感じをもっていたのかもしれない。村山先生も、佐藤新手なら自信ありということだったのかなぁ?
今日のNHK杯は、近藤先生と勝又先生の対戦。お二人は奨励会の同期だそうで順位戦などの位置も同じ、ライバルだな。でも、仲もいいようで、勝又先生の「最新戦法の話」でも最近の将棋世界連載でも、ゴキゲン中飛車について近藤先生にインタビューをされていた。」
熊「近藤先生のゴキゲン愛と勝又先生の近藤先生に対する友情をちょっと感じさせるいいインタビューでやした。」
ご隠居「そうだな。戦型も予想通り先手近藤の中飛車。最近は初手▲5六歩とすると居飛車党でも相振りにするのも多いんじゃが勝又先生は堂々と居飛車だった。」
熊「勝又先生も教授と呼ばれてますが、指す時は結構ビシビシ来ますね。」
ご隠居「勝又先生は、我々将棋ファンにはデータに精通した教授として有名じゃが、指す時はそれとは正反対のイメージだな。その辺については解説の飯塚先生も言われていたが、最新型に精通しているわりには自分では指さずに独自の工夫を用いられることが多い、現代将棋の代名詞の穴熊も好きではない、理詰めに冷静に指すというよりは気合重視、銀河戦でもノータイムでビシビシ指される姿を目撃したし、終盤で力強い切れ味をみせる、また控え室に来て師匠の石田先生譲り?の猛烈なボヤキをされることもあるらしい。」
熊「そのギャップがいいという人もいる。」
ご隠居「もともと「教授」というのもファン相手の解説向きのキャラクターというところもあるからな。勝俣先生の教授の文章は、すごく理路整然として分かりやすいが、やっぱり根底にはアツい心をわしは感じてしまうよ。
将棋は勝又先生の会心局になった。ご本人は作戦負けにしたといわれていたが、近藤先生の動きに問題があったのをうまくとがめた。▲7二歩からと金つくりを狙ったが、飯塚先生の「こういう手では振り飛車は幸せになれないといわれる」が予言的中。それにしてもうまくとがめられた。△5七歩や△7七歩の叩きという歩の手筋を連発。最後の自玉の距離感をみきって一気に斬りこんで即詰みに討取った。プロでこんなにうまく決まるのも珍しいんじゃないかな。」
熊「感想戦では、仲のいい二人に戻っていましたな。」
ご隠居「今日はアマ名人戦の放送もあった。井上さんが赤畠さんを破って見事優勝された。」
八「いやぁぁ、豊川先生おもしろかったな。」
熊「なんだ、おまえいたのかよ。それにしたも豊川の兄いが大真面目な顔しているところにテロップで「"おやじギャグ"を交えた解説が特徴」って流れた時は自分の目を疑ったぜ。」
八「NHKの公認きましたよ。シャレが分かりすぎだろ、NHKさんは。」
熊「ゴキゲンの相穴熊はナウい形です、って。」
八「聞き手は「先生、そのナウいという表現が全然ナウくないです」と言ってもらいたいところだ。」
熊「準決勝まて進んだ岩手の高校生、中川クンと話したときにも、この手はホットケーキはできない(ほっとけない)といってた。
八「豊川先生も相手をみていわないと。中川クンがそんなのに反応するわけがなく、豊川先生の方がホットケーキされてたし。」
熊「先手と後手の歩を間違えて「いやぁ、ボクは二歩とかミスしちゃうんですよ。」と。」
八「藤井先生といい、将棋界では自虐ギャグが伝統なのかと。」
熊「聞き手の中村桃子さんにも「ここで桃子の第一感は?」と迫っていたな。」
八「でも、桃子さんはニコリともせず。それでもめげずに「桃子プロの第一感は?」「中村プロの第一感は?」とやっていた。桃子さんにウケなかったので、だんだん呼び方が丁寧になっていくところに、豊川先生の人の良さと気の弱さを感じたな、オレは。」
熊「加藤先生が「ワタシ、逆転負けが多いんです。」と高音で物真似サービスまで。」
八「声を高くまして早口にすれば誰でも出来るじゃねーのか。」
熊「最後はダジャレラッシュだったな。この手は「あじよしみちお先生」(味がいい)「残り時間が3分で、カップ麺ですね。」「詰めろのいとこ」(ほとんど多分詰めろ)「この角で先手はコマネチ」(こまった)「この製薬会社はきついですよ。」(制約があってきつい)・・」
八「おれはなぁ、先生のダジャレよりもね最初は豊川先生のギャグにつきあって笑っていた桃子さんが最後は方は全部無視していたのがおかしくて仕方なかったよ。」
ご隠居「ぐーぐーぐー」
熊、八「起きてください。まったく、ご隠居にもコマネチだぜ。」

熊八ご隠居のみた王座戦第二局 羽生王座vs藤井九段

八「もう、何にも話したかねぇな。」
熊「まぁ、そう言うなよ。とにかくラーメン屋の屋台から始めたのが、ついにタイトル戦でお披露目にまでなったんだからさ。」
ご隠居「そうだぞ。矢倉の革命、新藤井システムを短期間で先生がほとんど独力でつくりあげられて、それがタイトル挑戦にまでつながったんだからな。それだけでも実は大変なことなんだぞ。」
ご隠居の奥さん「そうよ、八。だいたい将棋だけが全てじゃないよ。八、おまえ、あの左官屋の娘のおキクはどうだい。ほら、ちょっとポワーンとしてかわいくて気立てが良くって。おまえの好きな熊倉さんにもちょっと似ていてさ。なんなら私が世話してやるよ。」
八「えーーーい、おれに優しい言葉をかけるなあああああああ。同情するなら勝ち星をくれ!」
熊「おめぇも古いな。安達祐実の「同情するなら金をくれ」なんて、もう今時の若い連中は知らねぇぜ。」
八「いちいちダジャレを説明すなああああああ。」
ご隠居「まぁ、それだけ元気なら大丈夫じゃろう。なんと言っても今回は藤井先生が先手での矢倉、早囲い含みの片矢倉、新・藤井システムが注目じゃった。羽生先生も、相振りにしたりせずに矢倉を受けてたったな。藤井矢倉に興味があったのかもしれんし、ある種のリスペクトなのかもしれん。もっとも、それは結果論で羽生先生の場合は本当になんでも指されるので相振りになっていてもそれはそれで納得じゃったんだが、オールラウンド・プレーヤーの羽生先生の強みじゃな。」
熊「勝又教授もツイッターで、「寅屋と脇屋の味付けを取り入れた鰻屋本舗オリジナルの駒組になりましたね。予想通りの駒組で、来月号の将棋世界で取り上げます。」といわれてましたな。」
ご隠居「そうだな。とらやといっても、「男はつらいよ」の団子屋じゃないぞ。田中寅彦先生がよく用いられていた片矢倉のことで。脇屋というのは本局でも先手の片矢倉をのぞくと部分的に似た形の矢倉脇システムのことじゃ。藤井流の矢倉は素人には理解が難しいところもあるんで勝又教授の講義が楽しみじゃな。
それと、今回はustream中継もあって楽しかった。もともと西尾先生が始められた企画で、現在も技術的な面など中心にされているようじゃな。それに野月先生がプロデューサー的な役割で参加されているようじゃ。今回はゲストで森下先生と千葉先生が参加されていた。録画で今でも全て見られるようじゃょ。その1その2その3。」
熊「森下先生、面白かったですねぇ。」
ご隠居「そうじゃな。特に、対局後の野月先生との対局後の総括感想戦は勉強になった。その3の7分くらいから始まるんで、これはおすすめじゃよ。森下先生といえば矢倉の森下で高名じゃが、それまでの筋金入りの矢倉党からみた藤井矢倉について相当率直に語られている。例えば、藤井矢倉は押したり引いたりでなく、振り飛車の藤井システムのように縦から攻める特徴があるとか、従来の矢倉のようにねじりあいで押したり引いたりするではなく激しく攻め込んでスカッと勝つ矢倉だとか、私のような体で覚えた矢倉でなく戦略としての矢倉だとか、片矢倉は正直言ってうすすぎて全く勝てるイメージがないとか、でも片矢倉で角の打ち込みをなくして攻め倒すのが藤井流だとか、問題視された▲6四角は矢倉党からみると違和感があってこここはとにかく▲4一銀と攻め合わなければならず藤井さんの矢倉の経験の少なさがでてしまったとか、その辺で感覚のズレを感じたとか・・。」
八「ちょっと待ってくださいよ。言いたい放題じゃないですか。ひでぇなぁ。」
ご隠居「いやいや、矢倉をすっと指してきたプロ棋士として率直な感想を述べられていただけだな。勿論、藤井さんの悪口とかいうのでは全然なく率直な矢倉の考え方を専門家として言われていただけなんで大変勉強になった。森下先生はああいう裏のない正直な素晴らしいお人柄なんで誰もこういうことを言っても悪く思わないじゃろう。森下先生にしてみれば、全然悪気などなくて単に正しいと思うことをそのまま言われていただけなんじゃろう。森下の言うところに正義ありじゃな。」
熊「森下先生をフォローされているんでしょうけど、最後のご隠居のお言葉も結構辛辣ですぜ。」
ご隠居「いや、わしにまで森下流がちょっと移ったかな。はっはっはっ。でも口の悪い人は「森下先生の辛口ラーメン批評がよかった」とか言っていたようじゃよ。
ところで、対局の感想では藤井先生は▲2四歩が敗着で▲6四馬とすべきと言われていたようじゃ。▲6四角の場面だと先手玉にもう火がついていてそんな攻防手では間に合わないと森下先生も言われていて、もっとはやく▲6四の急所に馬か角をきかせておまくというのは理にかなっているな。谷川先生も▲6四角をみて、ここでこう指すなら▲2四歩のところで▲6四馬としたかったと即座に指摘されていた。そして、やはりとにかく▲4一銀としたかったとも、森下先生と符号していて、やはり矢倉党の感覚はそういうものなのかもしれん。」
熊「なるほど。やっぱり指しなれた形の感覚ってあるんですねぇ。ところで、ustでも検討していましたが▲6四角で▲4一銀と攻めあったらどうだったんでしょう?」
ご隠居「素人のわしにそれは分からんな。あまり感想戦ではふれられなかったみたいなんで、やっぱり先手がそれでもちょっと苦しいのかもしれんがアヤはあったのかもしれないな。また専門誌で分かるところじゃろう。」
八「あっしもustを観ていたんですが、羽生先生の△3九銀が厳しくてこれで決まったかという雰囲気になったんですね。でも今回のustはすごい視聴者数で、盛り上げなければということで先生方も必死に手を探して▲8七玉としたらどうかという話になったんですね。」
熊「そうだな。あれを観ていておれも羽生先生もちょっとミスしたのかと思ったよ。」
八「それでも苦しいようですが、あっしもすこし気を取り直したんですね。そしたら野月先生が、森下先生に具体的に▲8七玉としたとしてどれくらいの形勢かと聞いたんですね。あっしもそれを知りたかった。どれくらい縮まったのかと。」
熊「森下先生の答がすごかったよな。野球に喩えると8-0くらいで羽生リードかと。」
八「ほんとずっこけたよ。それじゃ全然ダメじゃんか。」
熊「しかも回は8回くらいだと。満塁ホームランが2本くらい必要だと。相手は羽生先生だぜ、投げてるのが絶好調のダルビッシュで8回で満塁ホームランを二本打てと。」
八「ほんとにガックリきたぜ。もう絶対ダメってことじゃん。」
熊「羽生先生のことを少し心配したおれは大笑いさ。」
ご隠居「だから言っただろ。森下先生の言うところに正義ありなんじゃよ。間違いない。」

熊八ご隠居のテレビ将棋パトロール その参

(以下、今週のテレビ対局についてもネタバレで書いているのでご注意ください。)

熊「最近、渡辺竜王をよくテレビで見かけやすね。週刊将棋ステーション、囲碁将棋ジャーナル、銀河戦解説・・。」
ご隠居「そうだな。竜王戦の挑戦者が決まったし、10月から始まるし、今が丁度いい時期なんじゃろうな。ステーションでは王座戦を解説していたが、いつもながら明晰な見事な解説じゃ。羽生王座が▲2三歩から▲1五歩とじっと端歩を伸ばしたのが、真似できない指し方だと。手を渡したのが羽生王座らしいと。先手にも狙いがないが、後手に有効手がないでしょうと。序盤のポイントがちょっと分かりにくかったが「羽生の手渡し」という観点でよく理解できたな。」
熊「どの番組でも当然羽生先生との竜王戦のことを聞かれていやすが、冷静に受け流してますな。」
ご隠居「そうだな。特に特別に準備することはないと。まだ先なんで実際そうなのかもしれんし、あまり余計なことを言わないようにしているところもあるのかもしれん。」
八「でも、ジャーナルに出た時、羽生さんが挑戦を決めたインタビューが流れて、スタジオにカメラが戻って竜王を映したときに、なんてゆーか、すごく食い入るような真剣な表情で見ていたんで、ちょっと驚きやした。」
ご隠居「おぉ、八にしてはいいところに気づいたな。わしも、なんだか見てはいけないものを見てしまった様な気がしたよ。淡々と冷静に振舞っているけど、当然内心は違うはずで、それがちょっと垣間見えてしまったような。とにかく竜王戦が楽しみじゃな。」
熊「竜王戦の挑決を解説してして、例の第一局の羽生さんの△3六歩について竜王が「先ほど熊倉さんが{驚きの攻め筋}といっていましたけどね。」、熊倉「あっ、ええ、ハイ、ハハは・・。」というやり取りもなんか面白かった。」
ご隠居「そうだな、渡辺竜王にすれば羽生名人の名手を自分ににそう言わすのかとか、それを熊倉さんも多分即座に理解して笑うとか、なかなか高度な漫才じゃったな。竜王も、ああいうのをサラッというのがやるところだな。」
八「クマシノかわいいなぁ。」
ご隠居のおかみさん「ほんとに熊倉さんはいいコだね。八、おもえもああいういいコを見つけてはやく身をかためるんだよ。」
八「あっ、おかみさん。今日はお優しいんですね。」
おかみさん「まぁ、無理だろうけどね。」
八「ひでぇなぁ。」
おかみさん「ふふっ。まぁ。ゆっくりしておいき」。
熊「あぁ、行っちゃったよ。おかみさんも、黙っていりゃあ、いーーーい女なんだけどなぁ。志ん生風にいうとさ。」
八「なぁ、熟女の色気ムンムンでな。」
ご隠居「こら、わしの女房にお前たちもよくシャアシャアと。まぁ、よく言われるんじゃが。」
熊「ご隠居もまんざらでもねぇんだな。よっ、この幸せ者。エロおやじっ!」
ご隠居「ばかっ。調子にのるな。さて銀河戦の羽生vs中田功。後手中田先生ののお得意のこーやん流三間飛車に羽生先生の居飛車穴熊。両方の金をそのまま動かさずに速攻をかけた羽生先生の構想が巧みで、うまく勝ちきった。守りを省いて攻めたのじゃが、中田先生は独特の穴熊対策があって、端攻めをからめて角の筋で攻めるのが得意なんじゃな。羽生先生の指し方は原理的にも理にかなっていたんじゃが、どちらかというと受身一方になるのを嫌う中田先生の棋風も考慮していたような気もする。羽生先生がそういうことをどのくらい考えて指されているかは分からんが、どうも結果的にはちゃんと相手に応じた指し方をしているような気がしてならん。いや、わしのような素人がえらそうに言うむことではないんじゃが。」
八「ぐーぐー」
ご隠居「こらっ、寝るのはまだはやすぎるぞ。さて、銀河戦の橋本vs中村。後手橋本で通常角換わり。後手の橋本先生が6筋の位を取って6四に角を据える形になったが、中村先生が6筋から積極的に動き、さらに飛車も6筋に転換する強気な指し方。いや、最近の若手にはむしろ珍しい強気な攻め将棋で面白いな。最後まで強気に攻めあって斬りあいに勝った。ベスト4まで進んだのは本当にたいしたもんじゃ。」
熊「ぐー。」
ご隠居「こらっ、わしが真面目に将棋の話をするとお前たちは寝るのかよ。さて、NHK杯の谷川vs豊島。」
熊「あっ、あっしもそれは見ました。豊島クンが事前インタビューで「お互い終盤が得意」とか言ってましたな。あっしは、あれをみて腹がたって仕方なかった。光速の寄せの谷川先生に対して「お互い得意とは何事かと。そのセリフは10年はえぃぜと。」
ご隠居「わしにとっても谷川先生は神様みたいなものだから、オマエの気持ちもわからんではない。しかし、勿論豊島先生も悪気があって言っているわけじゃない。ただ、無意識にいい意味で鈍感なところはあるのかもしれんな。大物若手らしくていいじゃないか。あと、初めて戦った時に谷川先生に勝ったのもやっぱり大きいんじゃろうな。ベテランからすると、やっぱり最初に叩いておかんといかんのだろう。さて、将棋は後手豊島で△8五飛で豊島先生が普通は△1五角のところで△5五角と新構想を出した。以下、猛烈な攻め合いになったんじゃが、谷川先生もさすがの対応で難しい将棋になった。が、最後△7七銀をとったために谷川玉が受けなしになってしまったな。」
熊「あっしもご隠居と同じで谷川信者なんで、あのあたりは見ていてつらかったです。」
ご隠居「確かにそうだな。でも谷川先生でもああいうことがあるのが将棋じゃ。豊島先生のきれ味をほめるべきじゃろうな。谷川先生もA級順位戦では好調じゃ。また谷川vs羽生を期待したいな。」
熊、八「異議なしー。」
ご隠居「さて、銀河戦の準決勝、羽生vs丸山。後手の丸山先生がなんと四間飛車穴熊。順位戦の森内戦でも採用されていたが、やっぱり珍しいな。」
熊「王位戦で広瀬さんが採用して注目されやしたが、あれって広瀬さんだからうまくいくともいわれてましたよね。」
御隠居「そうだな。振り飛車穴熊は、居飛車が相穴熊にすると、居飛車がやや有利というのがプロの定説じゃったんだが、広瀬先生が経験値をいかした戦い方で勝ったとも言われていた。しかし、あの作戦家の深浦先生をもってしても結局振り飛車穴熊に対する決定版のようなものは提示できなかった。丸山先生が採用されたのは注目すべきだな。丸山先生はいち早く△8五飛を採用して勝ちまくり、なおかつそれを捨てるのも早かった先生だだ。研究も深くてその辺には敏感なんだな。もしかすると今後振り飛車穴熊の将棋が増えるかもしれん。」
八「丸山先生も凄いですな、いいところをすかさずさらって行って、その通った後にはペナンペン草も生えない、みたいな。」
ご隠居「オマエも口が悪いな。いや、丸山先生は本当に勝負に徹しているプロフェッショナルで、激辛とかよくいわれるがわしは本当に尊敬しておる。さて、将棋じゃが、羽生先生は銀冠を採用して機敏に仕掛けて居飛車ペースに思えたのだが、丸山先生も我慢してと金をつくった。むずかしい戦いじゃったが、結局穴熊の堅さがいきて、羽生ら先生に苦労が多かった将棋のような気がする。振り飛車穴熊は本当に今後プロの重要テーマになるのかもしれないと感じさせる重要な一局じゃった。」
熊「あっしは羽生先生のファンなんですが、丸山先生らは結構大きなところでやられてますよね。おっかない先生だ。」
ご隠居「さて、もう1つの準決勝、佐藤康光vs中村太。後手中村で相矢倉もに。中村先生が△3二銀型から、やはり積極的に動いた。しかし佐藤先生も冷静に対応して先手が良さそうになったが、終盤強気にいきすぎたのか、先手玉も相当危なくなった。最後は先手玉が詰むや詰まざるかのハラハラする局面になったが詰まずに佐藤勝ち。感想戦がなかったが、局後の佐藤先生のインタビューによると、最後先手玉に詰みがあったらしい。中村先生にすれば大魚を逃した感じじゃが、今回は遺憾なく実力を発揮して十分ファンにアピールしたな。将棋も猛烈な攻め将棋で面白いしな。
さて、今日放映の糸谷vs村山。後手糸谷で一手損角換わりになった。」
熊「いやー、すごい勢いですすみましたな。両者完全ノータイム、まるで読み上げの藤田さんが指してを言ったら即指さなければいけないというルールのように。」
ご隠居「ふっふっ。そうだな。糸谷先生はいつものことじゃが、村山先生も意地があったのじゃろうな。先手早繰り銀の定跡だが、どうも糸谷先生がうまくやったような気もするな。村山先生といえば「序盤は村山にきけ」という通り定跡の大家なのだが、それに負けてない糸谷先生もさすがじゃ。現在の関西若手の研究レベルの高さを感じず似はぃられなかった。そういえば、棋王戦でも、羽生先生相手に、名人戦でもでで将棋世界でも紹介された「澤田新手」を羽生先生が採用したのを糸谷先生が研究で粉砕して圧勝したのもあった。」
熊「ちくしょー。」
ご隠居「糸谷先生は早見えで力も滅法強いが研究の深さも相当なものじゃ。関西の共同研究がすごいんじゃろうな。もう関東にも多分全然負けていない。さて、将棋は糸谷ペースにみえたが、最後際どくなって村山先生も有望に見える局面もあったが、結局糸谷先生が勝たれた。」
熊「感想戦も面白かったですね。最後の方、糸谷が普通に△4九飛と打っていれば厳しかったようだが、△3五飛とハットする手を指したためにかえって難しくなったと。」
八「あぁ。糸谷「△3五飛を発見してしまって。」村山「いや、すごい痛い手を指されたのかと思って。」糸谷「ボクもこれ、結構いい手を指したかと思っていたんですけど。全然そうじゃなかった。」」
熊「糸谷も、自分で「いい手かと思った」というのが面白いね。普通なら「いや悪い手でした」、とか言いそうなものなのに自分でも否定しないんかと。全然ニコリともしないてで、そんなことを言うんで笑ってしまったよ。テレビ番組なら編集してその言葉だけ何度もリピート再生するところだよ。」
八「ドッキリのブーブークッションにひっかかった場面みたいにな。」
熊「そうそう。糸谷先生は、全然笑わそうなとて思ってないのに、そのまま面白いところがあるんだよ。」
ご隠居「わしもそういう話だと、オマエたちには歯がたたんな。とにかく、今年も糸谷先生は将棋もパフォーマンスも楽しみじゃ。」

熊八ご隠居のテレビ将棋パトロール その弐

(お断り いちいちネタを入れていると全く話が進まないことが昨日良く分かったので今日はごく普通にテレビ将棋の感想を書かせていただきます。)


ご隠居「銀河戦も決勝トーナメントが始まっているな。契約していなくても囲碁将棋チャンネルさんのホームページで棋譜が見られるのがありがたいところじゃ。まず、藤井vs中田功・・。」
八「ふじいせんせー。」
熊「藤井先生のこと愛しすぎだろ。」
ご隠居「お二人とも基本的には振り飛車党で相振りになった。相振りはつかみどころがないが工夫なく指していると作戦負けするんだな。お二人は専門家だけあって、単純に囲うのでなく模様の取り方がプロらしい将棋じゃった。特に後手の中田先生が玉を囲うのを後回しにしたのに藤井先生が強く自分の玉頭から反発したんだが、その後藤井先生に誤算があって中田さんが一気に寄せきって勝った。」
熊「藤井先生、感想戦で自分の玉頭から動いていったのを「なんかカリカリして。もうベテランなんだから。」とお得意の自虐をされてたな。面白れー先生だよ。」
八「ふじいせんせー。」
ご隠居「丸山vs神吉、神吉先生は実力派若手など連破しての決勝トーナメント進出。三間飛車から角を5一に引いて7三に転換する「神吉システム」が猛威を振るっておったな。」
熊「ただの面白い先生じゃないんですね。」
ご隠居「昔から早指しには定評があるし、最近でも強い若手も参加している10秒将棋トーナメントでも優勝したようじゃよ。服装もど派手で毎回カラーを変えて眼鏡の色まで全身統一させてコーディネート。まるで、一人5レンジャーじゃな。」
熊「よっ、ご隠居オヤジギャグ!」
八「よっ、さすが。(小声で)つまんねーぞ!」
ご隠居「こらこら、聞こえているぞ。相手が丸山先生なんで、さすがに序盤を徹底研究されて厳しいかと思ったのだが、途中までは神吉ペース。はっきりよくなる順もぁったらしい。惜しくも終盤間違えて丸山がA級の貫禄をみせた。でも、神吉さんの実力を見せた将棋じゃった。さて、NHK杯の藤井vs山崎」
八「ふじいせんせー。」
熊「うるせーな。」
ご隠居「後手の藤井先生が藤井システムを採用した。つい先日の順位戦の谷川戦でも採用されていて、少しずつまた指されようとしているようだな。後手藤井システムに対しては居飛車穴熊とか右銀急戦が多いんじゃが、なんせ山崎先生は人真似が嫌いで普通の指し方をしない。銀冠から穴熊にしたが、後手も銀冠にしっかり組んで、この展開なら不満はないんじゃなかったのかな。もしかすると、藤井先生も山崎先生が普通の対策でこないことを見越しての藤井システムだったのかもしれん。その後の藤井先生の指し方はいかにも手馴れた振り飛車で優勢に。藤井システムだけじゃなく、普通の振り飛車でも先生はさすがに年季が入っているな。山崎先生も猛烈に粘ったが、確実に寄せきって、藤井先生快勝じゃった。」
八「ふじいせんせー。」
熊「はいはい。」
ご隠居「銀河戦、羽生vs山崎。一回戦屈指好カードじゃ。後手山崎の一手損角換わり。終始山崎先生がうまく指していて勝ちそうだったんだが、終盤羽生名人にも粘りのある玉寄りの早逃げが出て難しくなって、結局羽生勝ち。何が起こったのか見ていてもよく分からなかったのじゃが、将棋ステーションで山崎先生が、感想戦でも良く分からなかったが、あとで自分でよく調べてやっと勝ちを発見してガックリしたそうじゃ。それだけ難解なお二人らしいすごい終盤じゃった。」
熊「えっ、えっと、山崎先生もさっ、さすがで。」
八「おっ、男前だし。」
ご隠居「大丈夫じゃよ。うちの奴は今日はおらん。」
熊「なーんだ。」
八「まったくあのババア。」
ご隠居「だから一応わしの女房じゃって。まあいいや。銀河戦、深浦vs中村。凄いメンバーの中、新鋭の中村四段が注目じゃな。後手中村で通常角換わり。中村先生が工夫して3二銀型から後手ながら積極的に攻めて出た。攻めがつながきわどそうじゃったんだが、若さにまかせて攻めきってしまった。最近の若手は年齢似合わず老獪なのも多いんじゃが、中村先生は若手らしく力強く攻め込む将棋でなかなか面白いな。」
熊「風貌もなんだか、歌舞伎役者の御曹子みたいでがすな。将棋女子にもなかなか人気が高いらしいですぜ。」
ご隠居「NHK杯、森内vs鈴木。後手鈴木でゴキゲンに。NHK杯の羽生vs丸山などでよくでた課題の形に。普通どこから自陣飛車を打つかというところで、森内先生が▲1八飛とする研究。以下ほぼ一直線の激しい変化になったが、森内先生の攻めが厳しくて研究が決まった形になった。森内先生らしい深い事前の準備だったな。現代将棋のこわいところじゃ。鈴木先生は、お得意の腕力を出せないままに終わった。
続いて銀河戦森内vs丸山。後手森内で一手損角換わり。先手丸山の早繰り銀の定跡形に。二人とも研究が深いんですごい勢いで進んだ。難しいところもあったようじゃが丸山の研究が上回っていたようで、うまく勝ちきった。森内先生もさっきの将棋は研究で勝ち、今度は研究で負けたという感じじゃな。
続いて銀河戦、佐藤vs行方。後手の佐藤先生が坂田流向かい飛車。お互い手詰まり状態になったが、行方先生が思いきりよく仕掛けた。先手も穴熊で堅そうじゃったのだが、佐藤先生の端攻めが猛烈に厳しくて一気に寄せきってしまった、感想戦がなかったのでよく分からんが行方先生としては不本意なところのある終盤だったような気もするな。
NHK杯、堀口一vs窪田。窪田先生が意表の居飛車ながら実にうまく指されていたのだが、堀口先生も自分の玉頭から動く勝負手。これがなかなかのもので態勢を入れ替えて最後は冷静に入玉を確定させて勝ち。堀口先生の苦しいながらの勝負術がプロらしくて参考になったな。」
熊、八「グーグーグーグー」
ご隠居「こら、起きろっ。今日はもうおしまいじゃっ。」

熊八ご隠居のテレビ将棋パトロール(仮題)

熊「あー、ここんとこタイトル戦がなくてつまんねぇなぁ。ご隠居、何か面白い話でもありませんか。」
ご隠居「うん、そういえば最近テレビ将棋の話をしていなかったな。大分前のことになったが、木村八段が将棋ステーションに出た時は面白かったな。メンタル面でのコントロールについて聞かれて「心が弱そうに見えるでしょ。メンタル面が強くなることが私の課題ですね。」とかおっしゃっていたな。」
八「泣かせるじゃねぇか。王位戦のこととか考えると。それをシャレにして言うなんて、ますますカズキが好きになったぜ。うぅぅぅぅぅぅ。」
熊「バカだなぁ。泣くこたぁないじゃねぇか。あぁ、鼻水たらして不細工なツラがますます見れなくなって・・。なにか拭くものはないかな、ああちょうどここに布切れが。ほらっ。」
八「すまねぇな。助かるぜ、これでよく拭いて、ってアレなんか妙な臭いがするぜ・・。」
ご隠居「こら、それはうちの三毛猫が粗相をした時に拭くのに使っている雑巾だ。」
八「あっ、キタねぇ。ああ気持ちわりぃ。」
ご隠居「あと森内九段とのA級順位戦が持将棋模様の死闘になったんだが、それについて「そしたら、途中で森内さんが指を折り出したんですね。両手使って。これで勝てないなぁと思いましたね。」と言っていたのも面白かったな。」
熊「ああ、長いこと対局して疲れるので指の運動でがすね。さすがに一流プロは違うわ。」
ご隠居「バカっ、そうじゃない。持将棋になると駒の数が重要になってくるんだ。それで駒数で圧倒的に優勢だった森内先生が、それをアピールして投了を木村先生に促したともとれるんだな。」
八「森内って奴は、ひどいやつですねぇ。」
ご隠居「いやいや、別にそういうつもりじゃないんだろう。森内先生はそんな嫌なところなど全くない先生だけど、もう必死だ。ついそういう行動が出てしまったんだろう。そういうギリギリの人間の姿が出るところがプロの将棋の面白いところでな。さらに、それをシャレにしてしまう木村先生が、なんとも粋でわしは感心したな。」
八「うぅぅぅぅぅぅぅぅ。」
熊「おい、また泣いているのかよ。ほら、これで拭けよ。」
八「ありがとよ、ってこれは三毛猫の、いいかげんにしろっ。」
ご隠居「あと、ステーションでは山崎七段が出演した回もなかなか面白かったな。関西の山崎先生のプライベートに密着したロケがあって、あれは女性の王子ファンにはたまらなかったことじゃろう。」
熊「山崎ってそんなにかっこいいですかね?」
八「なぁ、おれもそう思うぜ。将棋の世界にいるからチヤホヤされているだけじゃねぇのか。」
ご隠居「珍しく意気投合したな。」
ご隠居のおかみさん「なんだい、おまえさんたち。黙っていればいい気になりやがって。山崎七段は本当にステキだよ。あたしもファンなんだ。おまえたちは、不細工なんで山崎先生に嫉妬していやがるんだろう。いい年してみっともないったらありゃしないよ。そんなことだから、オマエさんがたがいつまでたってもダメなんだ。ああ、お茶なんか出しに来て損した損した。オマエなんかにゃ、これで十分さ。」
熊「あっ、おかみさん、なにをするんですか。それはさっきの三毛猫の雑巾・・。やめてください、そんな顔をゴシゴシと。凄い力で。」
ご隠居のおかみさん「ふんっ。」
八「あぁ、行っちゃったよ。すごいババアだねぇ。あれは。」
ご隠居「わしの女房じゃ。」
熊「ああ、ひでえなぁ、なんですかご隠居までニヤニヤ笑って。」
ご隠居「それで山崎七段のロケなんだが、関西将棋会館の対局場を紹介してたんだが、昔のお城をイメージしてつくられているんだな。最上位の「御上段の間」と、下の部屋の間にはっきりした段差があるんだな。まるで将軍の部屋だけ一段高くて、続きに家臣の部屋があるみたいでな。それだけ、「御上段の間」で指せるのが価値のあることだと意識するのだろうな。なかなか観ることのできないところなんで、あれは貴重じゃったよ。」
熊「私も、見ましたが。後輩の西川四段のお宅に勝手に訪問もしていましたな。なんでも山崎七段の部屋は散らばっていて取材が出来ないそうで。」
八「おまえ、よく山崎さんの悪口言うな。また、あのババア呼ぶぞ。」
熊「それだけはカンベンしてくれ。」
ご隠居「一応。わしの女房なんだがな。あれを見ていても分かるが、関西の棋士たちは皆仲がよくてアットホームな雰囲気のようだな。現在は関西の若手のレベルが高くて研究も昔とは違って関東にも負けてないどころか進んでいるところもあるのじゃが、ああいう良い雰囲気も原因なんじゃろうな。そして山崎七段が若大将的にみなをたばねているのじゃろう。」
熊「最後に、山崎七段と西川四段が詰将棋解き対決をしていやしたが、二人とも解けないまま終わったのも面白かったですな。オチをつけていて関西流で。」
ご隠居「そうだな。今日はNHK杯や銀河戦もまとめて話すつもりだったが、すっかり長くなった。またにしておこう。」
熊八「全てご隠居のおかみさんのせいてす。」

羽生と藤井の王座戦第一局とは関係ないかもしれない噺

えーっ、毎度馬鹿馬鹿しい噺でご機嫌を伺おうかと。ゴキゲン中飛車とは何ら関係ないわけですが。
それにしても暑いですなぁ。なんなんでしょうな。地球温暖化っていうんですか、9月になってもこう暑くっちゃかないません、それに加えてうちのかかぁも暑苦しくて。余計なことを申し上げました。それはいつものことでございます。
さて、いつもならば「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」と、秋らしくなって始まる王座戦でございますが、今年は暑い最中ではじまったわけですが、横丁には毎度おなじみの将棋の下手の横好きがおりまして・・・。

熊「おい、八っあん。みたかい。ヨシハル先生とタケシ先生の将棋。」
八「おらぁ、あんまりその話はしたくねぇな。」
熊「今回はタケシ兄ぃの蕎麦が話題だけど、なんだよ本家の鰻の方はどうなっているんだい?道楽にうつつをぬかして本家がおろそかになっちゃ仕方ねぇじゃないか。」
八「いきなり喧嘩を打ってるのかよ。ふざけんなよ。鰻で苦労しているのはタケシ先生だけじゃねぇってのは、おめえも先刻承知だろう。システムをタケシ先生はほとんど一人でつくりあげたのに、おめぇの大好きなヨシハル先生の一派がよってたかって分析して新しい料理をつくったから困っているんじゃねぇか。まして、後手だろ。鰻システムは緻密極まりない料理だから一手の違いが致命的で、今のところ誰も有効な料理法をみつけていねぇ。だから、タケシ先生も今回の角換わり鰻とかゴキゲン鰻とか色々試して苦労しているのさ。」
熊「そうだった。それにしても角換わり鰻は、お互い角を持ち合うから動き方が難しいよな。おれたちヘボには分かりくいところもある。今回は、二人の主張がいきなりぶつかったけど、結局ヨシハル先生がなんとなくよさそうになった。どこがポイントだったんだろう。」
八「おい、それをオレにいわせるのかよ。確かに何がよかったのかわかりにくかったけど、今日のぢゃーなるに出ていたアキヒト王位によると、じっと▲1六歩と端歩を伸ばしておいたのがヨシハル名人らしかったらしいぜ。」
熊「そうだな。でもちょっとおれたちヘボにはよく分からねぇ。将棋瓦版を待つ、だな。にしても聞き手のクマシノは間違って王位を五段とよんで、すみませんウフフフフと、面白イコだね。あれは。」
八「かわいいよなぁ。クマシノ。」
熊「オマエには高嶺の花だな。」
八「おめぇもな。しかし、終盤は結構きわどいとおもったんだけどな。△8五桂打ったあたりとか」
熊「それよ。おれもあの時はそれがいい手と思ったがあれが敗着っていうから驚くじゃねぇか。アキラ竜王がネット瓦版でそういってたぜ。あそこで先手は後手に金を渡すと先手に詰みが生じる。だからいい迫り方だと思ったけどヨシハル先生の対応が巧みだった。あそこで例えば▲8六銀とすぐ逃げると△6六桂がある。▲同歩だと△2三角が王手飛車だし、だからといって玉が逃げると5八の金をポロッと取られる。それを見越してヨシハル先生はまず▲6八金寄とした。玉頭を厚くすると共に今の両取りの筋をあらかじめ避けたんだな。そしてさらに▲8六銀の催促。それでも△6六桂はこわい。以下取ると王手飛車なんで▲8八玉△5八桂成▲同金上△7九角と迫られて先手もこえー、こえー。でも寄らないらしいんだな。かといって次に8五の桂を先手に取られると後手玉は桂馬に滅法弱い形だ。だから、晩飯休憩後のヨシハル名人の▲6八金寄から▲8六銀が絶妙で勝負は決まったってわけさ。」
八「あー腹立つ。なんでオマエみたいなヘボにヨシハル先生の将棋を講釈されなきゃいけねぇんだ。黙って最後まで聞いていたおいらを褒めてやりてぇぜ。しかし、おめぇもヘボのわりにはわりにはよく読んでやがるな。」
熊「面目ねぇ。実はカンニングなんだ。ほら、ご隠居のGPSジイサンが暇をもてあまして読み筋を披露しているだろう。凄く勉強になるぜ。」
八「暇をもてあまして、は余計だろう。どれだけオレたちは世話になっていると思うんだよ。」
熊「ちげぇねぇ。それにしても最後のタケシ先生の△7七桂打・・。」
八「みなまでいうなよ。おめぇがいいそうなことは分かっているぜ。一瞬ヨシハル対コウジの名手△7七桂かと思ったら全然違ったとか、気の抜けたファンタとかいいてぇんだろう、どうせ。」
熊「そんなこと、思っちゃいねぇぜ。だいたい、おめえらタケシ先生ファンはなんだかんだぃって実はファンタとか楽しんでいるから始末におえねぇぜ。」
八「否定はしねぇ。」
熊「しねぇんかい!」
八「今日のぢゃーなるでもアキヒト王位が△9八馬としておけば、先手も金取りが残って大変だったつていってたぜ。やっぱり、苦しいんだろうけど、どうなっていたんだろうな。」
熊「まぁ、王座戦のヨシハル先生に勝とうっていうのが最初から間違っているんだよ。」
八「心底ムカついたぜ、そのセリフ。オレもヨシハル先生のことは尊敬してやまないんだけど、てめぇみたいな驕り高ぶったヨシハルファンがむつかくんだよ。」
熊「なにを!じゃあ、勝負するか。てめぇの鰻なんんざ、本物の鰻じゃないどころか即席でもなくまがいものさ。どぜうでもつかっているんじゃねえのか?」
八「なにをっ!そういうてめえこそ、ヨシハル先生の魔術を騙っていするが、おまえのなんざ詐術さ。」
熊「うるせえ、こうなったら勝負だ、勝負だ。」
八「いいともよ。」


というわけで、その後は熊さん八さんの無制限デスマッチが続いたそうでございます。時間の無駄というのは、まさしくこういうのうをいうのでございましょう。

おあとがよろしいようで・・。

羽生と藤井の王座戦第一局とは関係ないかもしれない噺

えーっ、毎度馬鹿馬鹿しい噺でご機嫌を伺おうかと。ゴキゲン中飛車とは何ら関係ないわけですが。
それにしても暑いですなぁ。なんなんでしょうな。地球温暖化っていうんですか、9月になってもこう暑くっちゃかないません、それに加えてうちのかかぁも暑苦しくて。余計なことを申し上げました。それはいつものことでございます。
さて、いつもならば「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」と、秋らしくなって始まる王座戦でございますが、今年は暑い最中ではじまったわけですが、横丁には毎度おなじみの将棋の下手の横好きがおりまして・・・。

熊「おい、八っあん。みたかい。ヨシハル先生とタケシ先生の将棋。」
八「おらぁ、あんまりその話はしたくねぇな。」
熊「今回はタケシ兄ぃの蕎麦が話題だけど、なんだよ本家の鰻の方はどうなっているんだい?道楽にうつつをぬかして本家がおろそかになっちゃ仕方ねぇじゃないか。」
八「いきなり喧嘩を打ってるのかよ。ふざけんなよ。鰻で苦労しているのはタケシ先生だけじゃねぇってのは、おめえも先刻承知だろう。システムをタケシ先生はほとんど一人でつくりあげたのに、おめぇの大好きなヨシハル先生の一派がよってたかって分析して新しい料理をつくったから困っているんじゃねぇか。まして、後手だろ。鰻システムは緻密極まりない料理だから一手の違いが致命的で、今のところ誰も有効な料理法をみつけていねぇ。だから、タケシ先生も今回の角換わり鰻とかゴキゲン鰻とか色々試して苦労しているのさ。」
熊「そうだった。それにしても角換わり鰻は、お互い角を持ち合うから動き方が難しいよな。おれたちヘボには分かりくいところもある。今回は、二人の主張がいきなりぶつかったけど、結局ヨシハル先生がなんとなくよさそうになった。どこがポイントだったんだろう。」
八「おい、それをオレにいわせるのかよ。確かに何がよかったのかわかりにくかったけど、今日のぢゃーなるに出ていたアキヒト王位によると、じっと▲1六歩と端歩を伸ばしておいたのがヨシハル名人らしかったらしいぜ。」
熊「そうだな。でもちょっとおれたちヘボにはよく分からねぇ。将棋瓦版を待つ、だな。にしても聞き手のクマシノは間違って王位を五段とよんで、すみませんウフフフフと、面白イコだね。あれは。」
八「かわいいよなぁ。クマシノ。」
熊「オマエには高嶺の花だな。」
八「おめぇもな。しかし、終盤は結構きわどいとおもったんだけどな。△8五桂打ったあたりとか」
熊「それよ。おれもあの時はそれがいい手と思ったがあれが敗着っていうから驚くじゃねぇか。アキラ竜王がネット瓦版でそういってたぜ。あそこで先手は後手に金を渡すと先手に詰みが生じる。だからいい迫り方だと思ったけどヨシハル先生の対応が巧みだった。あそこで例えば▲8六銀とすぐ逃げると△6六桂がある。▲同歩だと△2三角が王手飛車だし、だからといって玉が逃げると5八の金をポロッと取られる。それを見越してヨシハル先生はまず▲6八金寄とした。玉頭を厚くすると共に今の両取りの筋をあらかじめ避けたんだな。そしてさらに▲8六銀の催促。それでも△6六桂はこわい。以下取ると王手飛車なんで▲8八玉△5八桂成▲同金上△7九角と迫られて先手もこえー、こえー。でも寄らないらしいんだな。かといって次に8五の桂を先手に取られると後手玉は桂馬に滅法弱い形だ。だから、晩飯休憩後のヨシハル名人の▲6八金寄から▲8六銀が絶妙で勝負は決まったってわけさ。」
八「あー腹立つ。なんでオマエみたいなヘボにヨシハル先生の将棋を講釈されなきゃいけねぇんだ。黙って最後まで聞いていたおいらを褒めてやりてぇぜ。しかし、おめぇもヘボのわりにはわりにはよく読んでやがるな。」
熊「面目ねぇ。実はカンニングなんだ。ほら、ご隠居のGPSジイサンが暇をもてあまして読み筋を披露しているだろう。凄く勉強になるぜ。」
八「暇をもてあまして、は余計だろう。どれだけオレたちは世話になっていると思うんだよ。」
熊「ちげぇねぇ。それにしても最後のタケシ先生の△7七桂打・・。」
八「みなまでいうなよ。おめぇがいいそうなことは分かっているぜ。一瞬ヨシハル対コウジの名手△7七桂かと思ったら全然違ったとか、気の抜けたファンタとかいいてぇんだろう、どうせ。」
熊「そんなこと、思っちゃいねぇぜ。だいたい、おめえらタケシ先生ファンはなんだかんだぃって実はファンタとか楽しんでいるから始末におえねぇぜ。」
八「否定はしねぇ。」
熊「しねぇんかい!」
八「今日のぢゃーなるでもアキヒト王位が△9八馬としておけば、先手も金取りが残って大変だったつていってたぜ。やっぱり、苦しいんだろうけど、どうなっていたんだろうな。」
熊「まぁ、王座戦のヨシハル先生に勝とうっていうのが最初から間違っているんだよ。」
八「心底ムカついたぜ、そのセリフ。オレもヨシハル先生のことは尊敬してやまないんだけど、てめぇみたいな驕り高ぶったヨシハルファンがむつかくんだよ。」
熊「なにを!じゃあ、勝負するか。てめぇの鰻なんんざ、本物の鰻じゃないどころか即席でもなくまがいものさ。どぜうでもつかっているんじゃねえのか?」
八「なにをっ!そういうてめえこそ、ヨシハル先生の魔術を騙っていするが、おまえのなんざ詐術さ。」
熊「うるせえ、こうなったら勝負だ、勝負だ。」
八「いいともよ。」


というわけで、その後は熊さん八さんの無制限デスマッチが続いたそうでございます。時間の無駄というのは、まさしくこういうのうをいうのでございましょう。

おあとがよろしいようで・・。

「鰻職人タケシの冒険」関連?将棋人物・用語集

一昨日書いた記事は、正直申し上げて、あまり読者の方々に分からせようとするのではなく、何よりも自分自身が楽しんで書いてしまったというところがあります。分かる人が分かればいいやと。それでも、ブログ読者の方々強者も多く、私などより詳しい人も結構いそうなので、面白がっていただけた方もたくさんいらっしゃったようです。でも、冷静に考えると、やはりある程度詳しい将棋ファンじゃないと分からない部分もあるし、まして将棋ファン以外の方が読んだら意味不明でしょう。
というわけで、あの「小説」と関連することについて必要最小限の人物・用語集を書いておくことにしました。勿論、あの小説?は荒唐無稽なフィクションなのですが、当然将棋の人物や出来ごとと関連させてあります。いちいち該当箇所は示しませんが、一応小説に関連する順に書いていきます。なお、最小限の解説で、かつあくまで素人の我流の説明で不十分なところもあるでしょうから、興味をもたれた方はウィキペディアを見るなり検索するなりされるようお願い致します。

藤井猛(フジイ タケシ)九段 その1
プロ・アマ問わず振り飛車党のカリスマにしてアイドル。四間飛車に「藤井システム」をもたらし、振り飛車のみならず将棋の考え方に根本的な革命を起こす。従来の振り飛車は、受身に相手の動きを利用して捌くものだった。しかし、藤井は相手の居飛車穴熊に対抗するために、居玉のままいきなり相手に襲い掛かる藤井システムを発明して勝ちまくり、竜王位も獲得する。当初はその過激な発想に誰もなかなかついていけなかったが、いまや四間飛車の常識、スタンダードとなっている。

大山康晴(オオヤマ ヤスハル)十五世名人
将棋界の歴史を代表する巨人にして名人。振り飛車の名人でもあり、藤井九段も大山将棋を深く研究して甚大な影響を受けている。羽生名人も、近年「読まなくても局面の急所に手か向かう」大山の大局観に言及することが多い。

「ファミレスの鰻に負けるわけにはいかない」
藤井九段の四間飛車に対するこだわりを示す発言。鰻屋本舗のこのページを参照されたい。

藤井猛(フジイ タケシ)九段 その2
藤井九段は、ダンディでおしゃれかつお茶目でで女性ファンにも人気が高い。例えば将棋連盟主催のイベント「将棋日和」のこの写真集をご覧いただきたい。また、ボソボソとした語り口ながら自虐も含んだ独特なユーモアの話術でも人気が高く、仲間内では同業棋士の絶妙な物真似を披露することもあるとか。

行方尚史(ナメカタ ヒサシ)八段
藤井九段と親交があるとされる。ロックとお酒を愛してやまない個性派棋士でエピソードには事欠かない。もう昔のことで時効だと思うのだが、若気の至り?で「羽生さんを倒していい女を抱きたい」と発言して話題になったことも。最近もJT杯で羽生名人と対戦した際、前日に地酒がおいしくて飲みすぎてしまい二日酔いで対局を迎えたがちゃんと勝ったという強者である。但し、将棋に対する姿勢はあくまで真摯で真面目である。よくは知らないが、愛するお酒を飲みつつ今も将棋の事をアツく語っているのだろう?なお。行方八段についてのみ記事と関係ないことまで調子に乗って書いているのは、あくまで筆者の個人的趣味による。

加藤一二三(カトウ ヒフミ)九段
早熟でかつて「神武以来の天才」と呼ばれ、現在まで息長く全力で将棋を指し続けるベテラン棋士。堂々たる体躯と甲高い声の早口のハイテンションな解説など、唯一無比な個性で現在もファンの間では絶大な人気を誇る。これは私見だけれども棋界の長嶋茂雄である。愛猫家としても高名。語りつくせぬ氏のエピソードについては各人検索されたい。

羽生善治(ハブ ヨシハル)名人
説明の必要はないだろう。棋界の第一人者。オールラウンド・プレーヤーとして知られ、居飛車、振り飛車等あらゆる戦法を指しこなす。藤井システムについても、それを打ち破る側も指せば、自分で藤井システムを採用して指すことも多かった。藤井九段も、「私以外だと、羽生さんが一番藤井システムをうまく指すかもしれない」という意味のこと発言していたのをテレビ棋戦の解説で目撃したことがある。

藤井と羽生の竜王戦対決。
第13期と第14期の二年連続してこのカードだった。第13期は藤井竜王がフルセットの死闘の末に防衛。藤井の評価をより高めた名シリーズだった。第14期は羽生が雪辱して竜王位を奪取した。

藤井のファンタ(ファンタジスタ)
どう説明するが困惑したのが、検索したら何とyahoo知恵袋で質問している人がいて笑ってしまった。その回答を参照されたい。なかなかの名回答である。

藤井の「ラーメン屋の屋台」
振り飛車党の藤井が先手で居飛車の矢倉を指し始めたことについて、やはり鰻屋本舗でのご本人の証言を参照されたい。藤井九段らしいユーモアにあふれた名文である。

久保利明(クボ トシアキ)王将・棋王
藤井と共に振り飛車党を代表する存在。現在は、石田流とゴキゲン中飛車の使い手として有名だが、実は藤井システムの達人でもある。三間飛車での実験的な藤井システムに似た指し方を披露したこともある。

酷評三羽烏
かつて渡辺明(ワタナベ アキラ)竜王、村山慈明(ムラヤマ ヤスアキ)五段、戸部誠(トベ マコト)六段が、若い頃に遠慮会釈なく同業プロの将棋を酷評することからこういわれた。渡辺竜王のブログや、その前の日記で自分たちでも認めていた表現である。

矢倉早囲い
矢倉で、自分の玉を囲う際に慎重に金をあがる手を省力して、早く玉を囲おうとする指し方。普通より一手早く玉を囲える代わりに、相手から急戦で攻め込まれる危険もある。そのためあまり指されなかったが、藤井九段が指し始めることで見直され現在流行の気配もある。新・藤井システムと呼ばれることもあり、今回の王座戦でも注目される戦形。

藤井九段が羽生王座に挑戦
やはり、鰻屋本舗でのご本人のユーモアがあり、なおかつ隠れた闘志が感じられる名文を参照されたい。



いよいよ、明日王座戦が開幕する。

鰻職人タケシの冒険

お江戸の町で、鰻屋タケシといやぁ、そりゃあ誰一人知らぬ者はいないのさ。タケシのつくる鰻重は天下一品、完璧で非の打ち所がなし。詳しいことは知らねえが、なんでもタレに革新的な技を用いて、それまで誰にも出せなかった味をだすことに成功したそうな。最初の頃はあまりに革新的な味だったので、邪道だとかこんなの鰻じゃねぇとかうるさい食通どもが騒いだけれど、結局そんな連中も一度食べた味が忘れられずに、タケシの鰻屋に通いつめる羽目になったそうな。今じゃ、もうタケシの鰻が常識、定番さ。
でも、タケシは単なる革新家じゃない。タケシが名家の道楽息子だった頃、先代のヤスハル師匠のつくる鰻に惚れこんで通いつめ、好きが昂じて頼み込んで弟子入りしたというわけさ。だから、タケシは徹底的に伝統芸を身につけているんで、気が向くと昔ながらの伝統の鰻を出すこともあるのさ。これがまた絶品。
最近はタケシの鰻を真似する店もすっかり増えた。でも、タケシはそれを苦々しく思っていて「オレはちゃんと修行をつんだ本物の鰻屋で、その辺のポッポ出の即席鰻屋には負けられねぇ」が口癖だとか。
こいつは余計な話だが、タケシはシャレ者ということでも有名さ。鰻をつくる際の職人服も決まっているけど、普段の着物姿もそりゃあイナセなもんさ。よく下町の飲み屋で、タケシは寿司職人のヒサシと一杯やっているんだけど、二人ともなかなかの男前なんで、町娘たちの騒ぎようといったら、ああ喧しいったらありゃしねぇ。
でも、タケシはカッコいい見かけに似合わず結構ふざけた野郎でさ、ヒサシと好きなおなごのことを語り合ったり、同業の中華の大人ヒフミ先生のに物真似をしたりして、呵呵大笑さ。結構面白い男なんだよ。おっといけねぇこれだけじゃ二人に失礼だ、この二人はそうはいってもとことん料理人根性なんで、笑って飲んでいても最後は結局料理がどうあるべきかを熱く語り合うのがオチなんだってさ。
そんな有名なタケシだったんで、世の将軍様の御耳にも入って、タケシの鰻を召し上がられることもあった。将軍様もいたくお気に入りで、何度もご所望されたとか。それが気に入らないのが将軍のお取り巻きたちだ。当然、将軍さまご専用の料理番たちがいて、その総料理長といえば、これまた誰一人知らぬ人なきヨシハル。なんでもヨシハルはものにこだわらない大物で、タケシの鰻も十分認めていて「あっ、あれは本当においしいです。」と素直に認めていたんだが、こういう場合取り巻きたちが余計なお節介をやくのが世の常さ。ヨシハルという存在がありながら、たかが下町のむ鰻屋の分際でけしからん。ここは白黒はっきりさせるために、ヨシハルとタケシの料理対決を行うべきだと騒ぎ立てた。将軍様も面白がって同意したのでさぁ大変。二人の料理対決がとり行われる次第となった。
というわけで、司会には別のタケシ。実況にはケンジ、審査員にはハットリ先生などを迎えて「料理の鉄人」はにぎにきぐしく行われることとなった。細かいところは一切省くが、戦前の予想を覆して鰻屋タケシが勝っちゃった。ヨシハルが潔く「あっ、負けました」といった瞬間には、お江戸の庶民はみんなお喜びさ。なんでもヨシハルが秘伝の和食を封印して、なんと鰻料理で真っ向勝負に出たのが敗因だったとか。タケシも「オレ以外で、あんなに鰻をうまくつくれる人間がいるとは思わなかった」と率直にヨシハルをちゃんと認めたんだとか。
戦った二人はアッサリしたもんだったんだけど、うるさい取り巻きたちが騒ぎ立てて再戦もおこなわれた。今度は、ヨシハルも秘伝の和食で勝負してきて、それでも大激戦になったがなんとか今度はヨシハルが勝った。でも、タケシの実力はもう誰もが認めるところとなって、もう誰もとやかく言う者はいなくなったんだと。
というわけで、タケシもその後はしばらく平和に暮らしていた。でも、この頃からかなぁ。タケシはいかにも冷静沈着な外見なんだけど実は結構江戸っ子気質でカッとなりやすい。鰻をつくっている最中におかみさんに色々話しかけられて時々仕上げをしくじることが増えて来た。でも、その頃はご贔屓も多かったんで、まぁしょうがねーや、ということになっていたそうだ。えーっと、ご贔屓が多い、ファンが多い、ファンタ・・・・バンザーーーイ、こん平でーーーす。
もしかすると、タケシもちょっと鰻に飽きていたのかもしれない。ある時タケシは酔っ払って屋台の蕎麦を食べたそうな、それが信じられないくらいうまかったたらしい。そこから波乱の新しい物語がはじまるのさ。
「なぁ、オレ、蕎麦をつくりたくなった。屋台を引いて始めたいんだけど。」
「えっ、オマエさん気は確かかい、この鰻屋はどうするつもりなんだい。」
以下愁嘆場は略すが、タケシも一度決めたら頑固である。幸い鰻屋には、腕もよくイナセな男前のトシアキという弟子の職人がいたので、店は彼に任せるということでおかみさんもシブシブ納得した。こうしてタケシの蕎麦職人修行が始まった。
天下のタケシといえども、文字通り一からの再出発さ。そりゃあ、最初の頃は大変だったらしい。噂を聞きつけた若手料理人のアキラ、ヤスアキ、マコトが冷やかしに来て、酷評して去っていたこともあるそうな。タケシも悔し涙に暮れたと暮れないとか。
でも、もともとタケシも天才職人だ。あっという間にコツをつかむとともに、蕎麦でも今までにはなっかたような味を出すことに成功してお江戸の町の噂になる。なんでも、天麩羅の具を早く加工するのが工夫とか。早く加工、早く囲う、早囲い・・・バンザーーーイ、こん平でーーーす。
というわげで、蕎麦職人としても名を上げたタケシ。となると、平安な世に退屈しきっている者たちが放っておく訳がない。また、タケシとヨシハルで勝負してみたらどうだろう。そして将軍様も乗り気でトントン拍子で話は決まって二人が再戦することになったのさ。
お江戸の衆は蜂の巣をつついたように上を下にの大騒ぎ。タケシは、蕎麦で勝負するのか、いやそうとみせかけて鰻の新構想か、一方、さらに円熟の境地のヨシハルはどうするんだろう。
・・・という話で今、お江戸の町は持ちきりなのさ。

(注 本文は完全にフィクションであり、登場人物が現実の人物に似ているとしても、それは完全に単なる偶然にすぎない。)



羽生善治王座に藤井猛九段が挑戦する第58期王座戦は東京千代田区では9/9(木)に開幕する。

参考文献 鰻屋本舗(将棋) - 藤井猛九段公認応援サイト 第58期王座戦五番勝負特設ページ
ものぐさ将棋観戦ブログ「鰻職人タケシの冒険」関連?将棋人物・用語集

深浦との死闘を制して広瀬新王位誕生ー千日手続きの激闘

私のような羽生ファンにとって、正直言って深浦さんは当初敵役だった。王位戦で二年連続のフルセットで羽生を倒した。しかも、深浦の場合、かなり闘争心が正直に表に出るタイプだ。羽生ファンとしては、どうしても負けて欲しくない相手だったのである。
しかし、王位戦やその後の羽生戦を含めた深浦の戦いぶりを追って行くにつれて、まず何よりその将棋の質の高さ、厳しさ、プロフェッショナルな取り組みに感心させられる。将棋の内容自体で、否応もなく説き伏せられ、深浦の実力を納得せざるをえなかったのだ。
さらに、現在の将棋界のトッブには世俗離れしたタイプが多くてそれもある種の良さなのだが、深浦はとても人間的なタイプである。すこし正直すぎるところもある深浦の人間味にも、ある種新鮮な魅力をいつの間にか感じ始めていた。
簡単に言うと、段々深浦のことが棋士としても人間としても好きになってきたのだ。
今回の王位戦では、いつもの通りカメラの静止画像の中継があった。そこに映し出される深浦は、常に真剣そのもので集中しきっていて、まさしく将棋に「喰らいつく」ような姿勢を終始一貫徹底していた。そして、最終盤になると、集中のあまりに表情が赤鬼のように紅潮し、終局後もそれがしばらくおさまらない。素晴らしいプロの対局姿であった。

最後の二局は周知の通り、素晴らしい死闘になった。両方とも千日手になり、なおかつ千日手指し直しは二局も掛け値なしの名局になった。特に最終局は、広瀬の穴熊全く手付かずの状態から、深浦が決して折れない心で猛追して、ギリギリのところまで追い上げた。最後は深浦玉が「桂頭の玉寄せにくし」の連続でどうしても寄らない奇跡のような玉形になった。ついに、深浦が追い抜いて勝ちになったとも思った。深浦玉は入玉含み、広瀬の攻め駒、持ち駒には飛車角香車桂馬しかない。金気が全くない。押さえがきかない。普通ならもう深浦玉を捕まえるのはもう無理だ。ところが、まるでつくった詰め将棋のように広瀬は深浦玉を網の目の中に収めてみせた。全くそれに気づいてなかった私は愕然とする。深浦も広瀬の最後の方の▲5三角をうっかりしていたそうた。その角が7五に成り返って馬になると深浦玉はどうしても逃げきれない。まさしく名局だった。
第五局も第六局もあまりに内容が濃密すぎて、まだよく分からない部分が多すぎる。まさしく「専門誌の解説を待つ」しかない、今回は将棋世界誌の責任がとてつもなく重い。

それにしても広瀬の終盤力は本当に見事だった。どんなに賞賛しても賞賛し足りない。やはり、終盤力だけで言うと深浦さえも首の皮一枚う上回っていたという印象である。
静止カメラに映し出される姿も深浦とは対照的だった。どんなに難しい局面でも、苦しそうなところでも、どことなく飄々としている。広瀬の周りにだけは、常に涼しげな風が吹いているようにも見えた。余計なことを考えずに、とにかく読みに没頭できるのが広瀬の強さなのだろう。かなり心臓が強いタイプだという気もする。
かしながら、そんな広瀬でもやはり二日目の夕食は少なめにしていたようである。大変なプレッシャーの中、若くて経験も浅いのに激闘を戦いぬいた広瀬の精神力も凄まじいというべきだろう。
振り飛車穴熊を武器に勝ち取った王位だけれども、やはりその魅力は何と言っても底知れぬ終盤力だろう。これからもも、いまだに終盤力では他を寄せつけない羽生世代との激闘が本当に楽しみである。

それにしても、今回の深浦といい、木村といい、三浦といい、なんでこんなに敗者たちが皆魅力的なのだろうか。現在の将棋界のトップには、本当に素晴らしい奴らが揃っている。我々が過ごしている俗世間のことを考えると、ほとんど奇跡と言っても差し支えないだろう。
当たり前のように見てしまっているが、現在のプロ将棋を観戦出来ている我々ファンは、最高に幸せ者なのだ。
コメントを承認制にさせていただいています。反映まで時間がかかりますが、お気軽にどうぞ。
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