2011年02月

「豊島将之の定跡研究」感想



本のタイトル通り、関西の新鋭、豊島将之による最新流行形の定跡研究書である。
まず、関西の棋士があらゆる戦形全般にわたる定跡書を書いたのが画期的。従来は研究といえば関東で、関西は定跡にとらわれない力将棋というのが一般イメージだった。しかし、それももはや昔の話。関東の研究家の代表格の村山慈明が「関東の研究は関西の3年遅れている。」と発言したとか将棋世界で読んだ記憶がある。今や豊島、糸谷、菅井といった若手精鋭を数多く擁する関西が最新定跡の発信源になりつつあるのだ。そういう意味でも、この豊島の定跡研究書は注目される。
扱っている戦形は、ゴキゲン、一手損、△8五飛、通常角換わり。それらの後手側の流行の作戦に対して、先手側の立場で対策をひつに絞って叙述するという形式である。「指す将棋ファン」のためには、多様な後手の作戦に対して、先手としてどう対応すればよいかという立場で書かれている。豊島が序文で「だから後手で指したい人は専門の定跡書などを参照して欲しい」と断っているのが真面目で好感が持てる。
一方私のような「観る将棋ファン」が鑑賞の手引きにするためには、最新流行形の定跡を知ることが出来るので、問題なく楽しむことが出来る。
帯に「流行形の最先端をビシッと解説しています!!」という広告文句があってちょっと笑わされるのだけれども、基本的にはその言葉に偽りなしで、例えば角換わり、横歩取りなどはそれこそ詰む詰まない、勝ち負けのレベルまできちんと書いている。
各形をしぼって、なるべく先の部分まで優劣が判断できるのまで書くというスタンスである。同時に、定跡には当然様々な指し手の枝葉があるが、それらをなるべく捨てずに簡単でもどうなるかをよく書いているという印象。
本文部分は、定跡が淡々とした筆致ながら内容は濃密に書かれていて、若手プロの定跡研究ノートをのぞきこむような趣がある。なんとなく、それが豊島の個性にあっているような気もする。
豊島はオールラウンダーだけれども、この本の書き方を見ても本質的には細かいところまで精緻に気にする居飛車党だと思う。だから、角換わりや横歩取りといった深く研究可能な戦形ほど持ち味が出ていると思う。振り飛車党の研究は最後まで突き詰めるというより、うまく戦える形を探るというところがあって、居飛車の研究とは性質が異なるところもあるのだろう。但し、菅井などは恐ろしく深く研究していそうで、若手レベルになるほど居飛車と振り飛車の研究の性質に差がなくなるのかもしれない。
以下、各章の内容についてメモ書きしておくので、興味のある方は参考にされたい。

第1章 ゴキゲン中飛車
ゴキゲンに対して超速▲3七銀(▲4六銀)の解説。後手がまず美濃囲いにしてからの4二銀形3二金形3二銀形。美濃囲いにせずに後手が早めに△3二金とする形など。
最近はさらに△3二金形で飛車銀交換になり先手が自陣飛車を打つ形で、▲2四歩とする糸谷新手なども出ている。後手も久保が王将戦で、美濃囲いにする前に早めに△3二銀と指したりして似た形でも微妙に形を変えて、やはりゴキゲンは変化が広いという印象。

第2章 一手損角換わり
後手の一手損角換わりに対する先手早繰り銀を解説。先手▲7九玉形。▲2四歩交換形の後手△5五角と△2四同歩。さらに△2四同歩の場合の後手の△3六歩と最新の△4五銀形。
△4五銀形についてはポイントの将棋がテレビ棋戦で、銀河戦の▲丸山vs△佐藤康光、NHK杯の▲村山vs△糸谷がベースになった定跡が書かれている。なお、佐藤の一手損の本にもこの形が書かれているそうである。

第3章 横歩取り8五飛
後手の横歩取り△8五飛に対して先手の新山崎流の対策を解説。後手の△7四歩形と△8六歩形の変化。
村山本でも出ていたが、やはり名人戦の羽生vs三浦の将棋が定跡として紹介されていて、この本では羽生のほとんど終盤の▲5三歩まで定跡になっているのが凄い。
さらに、△3五飛とする澤田新手についても解説している。羽生が将棋世界で紹介していたが、その後、羽生が後手で採用したが糸谷が研究勝ちした将棋も定跡として紹介されている。羽生は横歩取りを盛んに指したが、やはり定跡研究上で重要な役割を果たしているのだ。

第4章 横歩取り8五飛・△5二玉型
最近流行の松尾流△5二玉への対策を簡単に解説している。
ここでも竜王戦の羽生vs渡辺の将棋が定跡として紹介されている。

第5章 角換わり腰掛銀
いわゆる富岡流▲4四角成の各変化を、場合によってはそれこそ詰みに至るまで解説。一応、どれも先手がが勝ちか優勢とされている。今のところ富岡流の変化になると先手がいいとされていて、これが角交換の将棋の根幹のポイントで、後手の悩みの種になっている。それをそれこそ豊島が「ビシッと」解説してくれていて爽快だ。
それと、同型ではない後手の△7三桂保留の△3三銀型もとりあげている。
竜王戦第六局で別の形で渡辺新手が出たわけだが、形が対象外で省いたのか、さすがに本書には間に合わなかったのか。

最後に豊島の自戦譜が7局収録されている。









女流ネット最強戦 里見vs矢内、天河戦 石橋vs中井、銀河戦 広瀬vs糸谷、NHK杯 丸山vs三浦

大和証券杯ネット将棋公式ホームページ

先手里見で中飛車。後手の矢内は居飛車の意思表示。最近ゴキゲンを多用しているが、相手にゴキゲンをされた場合の対策も兼ねているのかもしれない。
後手の金銀四枚の銀冠穴熊に対して先手は片銀冠。玉の硬さだけだと大差だ。普通に見れば先手作戦負け。
矢内が千日手のゆさぶりをかけたが、里見は千日手にはせず。
どうするのかと思ったら里見が▲8四角から▲7四歩で手をつくりにいき、攻めるのでなく龍を自陣にひきつける「大山流」。
苦しそうながらも粘り強い振り飛車らしい指し方だ。龍をしっかりひきつけると後手の穴熊も駒が片寄りすぎているようにも見える。
矢内が玉頭から攻めかかる手もあったようだが、龍を4七に回られて攻めにくくなってしまったようである。
さらに強気にいったりしっかり受けたりの緩急自在な指しまわしで、いつの間にか優位に。なんとなくだが、攻め合わないで受けに回りがちな矢内の棋風を見透かしているようにも思えた。これも、大山流?
但し、普通に△6五銀と打っておけば居飛車も指せてまだ難しかったようである。
本譜は▲7七歩で後手の馬を働かなくさせ。後手のガチガチの穴熊にと金攻めを間に合わせてあっという間に穴熊崩壊。
うすい片銀冠が、ガチガチの銀冠穴熊を退治してしまった。振り飛車党ならこういった穴熊退治に憧れるだろう。
前回の上田戦といい、薄い玉形で芸術的に指して居飛車穴熊を負かした。玉の堅さ絶対主義の現代将棋の風潮に一石を投じた、といったら大袈裟か。
里見は大山将棋に憧れているそうだが、この穴熊退治の仕方はちよっと大山を連想させる。本当に里見は見ていてワクワクさせてくれるし、ゼニの取れる将棋を指してくれる棋士だ。

NTTル・パルク杯 第3期天河戦中継サイト

先手の中井の▲2六歩に対して後手の石橋は△7二飛。個人的には、こんなのをネット対局でされたらカッとなりそうだが、中井は大人の対応で飛車先の歩を交換したことに満足して引き飛車にして普通に組んでいた。ところで、この△7二飛を具体的にとがめようとしたら、どうすればいいのだろうか。引き飛車にしないで浮き飛車、あるいは突っ張って▲2五飛にしてみるとか。角道がつけないので引き角にするとか。私にはよく分からない。
中井が相掛かりの棒銀のような構えから右銀を細かく動かして玉に寄せ、石橋は横歩取り△8五飛の松尾流△5二玉で構えるという、ちょっと不思議なお互いわが道をいく展開に。
お互いに馬をつくりあったが、と金が出来た分石橋がポイントをかせいだのだろうか。さらに金桂交換になり駒得を重ねて先手玉に厳しく迫って優勢に。中井も必死の勝負手で迫ったが石橋が冷静にかわして勝ち。
変った石橋の序盤を中井がうまくとがめることが出来なかった感じである。具体的に中井のどこが問題だったのだろうか。駒組の構想からしてうまくなかったのだろうか。

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)

広瀬先手で▲7六歩△8四歩の出だし。糸谷の△8四歩は珍しいが広瀬相手で振り飛車を想定して引き角をやりたっかたということか。若い世代ほど合理的あるいはシビアにこだわりなく指し手を選ぶという印象。例えば、谷川あたりなら相手をみてというのはやらないところだろう。
その後駆け引きがあって、角交換で広瀬の中飛車に。広瀬が穴熊で糸谷が右辺の位をとって盛り上がり、広瀬は8筋に飛車を転換して仕掛けて飛車交換に。そのあたりで△6二桂と一見ただ受けるだけのような桂を平気で打っていたのがらしいと思った。ベテランには打ちにくそうな感じの手だが若い棋士はこういう手に抵抗がないような気がする。
糸谷の飛車打ちからの攻めの方が厳しそうだったが、広瀬が▲1六角や▲7七飛といった流石の工夫の勝負手を披露して迫力ある終盤に。
糸谷が穴熊に厳しく迫ってすぐ終わりそうに見えたが、ここもさすがに穴熊スペシャリストで▲6九飛の自陣飛車で粘って簡単には土俵をわらなかったが、糸谷が一度は受けに回って勝ちを決めて逃げ切った。
少し苦しめのところから、気がつきにくい勝負手を連発した広瀬の終盤力もさすがだったし、それに苦しめられながらもきちんと勝ちきった糸谷も強かった。さすがに二人とも終盤力が高くて、それを広瀬は王位戦でも証明していたが、糸谷も互角に渡り合っている感じだった。将来タイトル戦でこの組み合わせになっても全然不思議ではないだろう。と思わせる二人の強さだった。
感想戦によると、広瀬のひねった▲7七飛が問題で、▲5三と△同金▲5一飛△4二銀▲7一飛成として糸谷が穴熊を攻めきれるかどうか難しかったようである。感想戦でも二人ともさすがに手の見え方が違うと感じた。

NHK杯HP(棋譜閲覧可能)

丸山先手で横歩取りに。後手の三浦が△8四飛と引いて中住まいにする少し古い形に。解説の深浦によると、かつては後手から角交換して△3三桂から△2五歩として駒組みして一局という将棋だったが、三浦が角交換しなかったのが工夫ということである。現代風の形を決めない発想なのだろうか。研究家の三浦らしく入念に準備したのであろう意表の作戦を短い時間の将棋でぶつけてきた。
その場で対応しなければならない丸山も大変だったろうが、自然に3筋を伸ばすなど、無理なく対応していた。三浦が両方の桂馬を跳ねて飛車も5四に回って、先手が玉だけで守っている玉頭を狙っているあたりではいかにも先手が気持悪そうにも見えた。
しかし丸山も▲5六角と受けて3筋の桂頭を攻めるのをみせ、一方三浦も飛車を細かく何度も動かして桂頭のピンチをしのいでおさめた。この辺の攻防は、さすがにA級同士だけあって見応えがあった。
三浦から攻めに出たが、やはり丸山が的確に受けて決め手を与えない。三浦が事前に丸山相手だと攻めきるのが容易ではないといっていたのが正直な感想なのだなと感じる展開に。
さらに三浦が守りの金を繰り出して攻めに行ったが、その際の丸山のカウンターが厳しすぎて、先手がよくなったようである。以下、丸山らしく激辛で受けきると見せて、さいごは思い切って踏み込んできっちり勝ちきった。この将棋を見る限りでは、三浦の攻めを丸山が柔かく巧みにうけとめてしまって、二人の対戦成績でも丸山がリードしているのが何となく納得できてしまう内容だった。
三浦は終局直後に集中しすぎていたためか丸山が話しかけても言葉が出てこない。
「いやいやいや・・。うーん?いやいやいやいや・・。えーーーっと。えーーーっと?」
やはり加藤一二三の後継者は三浦弘行しかいない。



棋王戦第二局 久保棋王vs渡辺竜王

棋王戦中継サイト

後手の久保のゴキゲンに渡辺の▲5八金右急戦。
定跡手順から渡辺が従来▲6五香打のところで▲1三龍の新手。久保が対応をあやまったようで、渡辺がよくなり最後は大差で快勝。
昨日書評を書いた村山慈明の「ライバルに勝つ最新定跡」をカンニングしながら、渡辺新手の狙いを素人なりに推測してみる。
▲6五香打の場合の以下の手順例は、△6六馬▲同歩△5六香▲5七香△同香成▲同金△5六歩▲同金△6七銀▲2八歩△5六銀不成▲2七歩△6五銀。
長くなったが、要するに本局の手順と同じで5六に銀を不成りでいって先手が打った香車を銀でとって先手の攻めを緩和すると同時に、再び取った香車で攻めることが出来るというわけである。
ならば、最初から狙われる香車を6五に打たずに、いつかは活用したい▲1三龍を先にやっておくということではないだろうか。
勿論、それだけの単純な話ではないのだろうが、村山が本で書いている手順が、あまりに本譜と似ていたので、そんなこともあるのかなと思ったのである。
ところで、本譜の久保の△6六馬も渡辺の▲1三龍も久保の△7一玉の早逃げも(従来の定跡で、もうすこし早いタイミングで△7一玉とする菅井新手というのがある)、実はこのゴキゲン超急戦ではよくでてくる手であって、全く新たな筋ではなく、渡辺はそれらの組み合わせやタイミングを工夫して、新手として提出したということである。そういうセンス・頭のよさが、やはり渡辺のすごいところだと思う。
竜王戦の角換わり後手での新手といいい、渡辺はあたためていた新手を大切な将棋で用いて結果を出している。勿論、それだけではなくて総合力もあるわけだが、こういう作戦での緻密な戦略性も、渡辺の大きな武器になっていると思う。
久保は、渡辺の新手に対してわりと早く△6六馬を決断したようである。その後の展開を見ると研究が万全だったようにも見えないので、ここは午前中指さないくらい慎重に手を選択すべきだったのかもしれない。控え室が△2二銀を指摘し久保も第一声でその手について言及していたそうである。また、解説の小林裕の指摘していた△5五飛も掘り下げる価値があったのかもしれない。
これで、第一局は久保の石田流▲7六飛が炸裂し、第二局は渡辺の超急戦での研究勝ちとなり、お互いにやりあった格好になった。改めて三番勝負だが、やはり序盤の作戦から目を離すことが出来ない戦いが続きそうである。
まだ感想戦の内容はアップされてないが、さすがにポイントについて本当のことを二人ともいわないだろう、しかし、渡辺のことだから正直に重大情報を情報公開するのかな?もし、そうだったら後でこの記事に追記でも入れるかもしれません(笑)。

村山慈明「ライバルに勝つ最新定跡」感想



2010年9月30日初版。半年くらい前の最新定跡本なので、いまさら感想を書くのも何だが自分の読書記録メモも兼ねているので、興味のある方は参考にされてください。
最近は将棋本をゆっくり読む余裕もなかったのだが、「中原誠名局集」が出版されたことを知り、これは買っておかねばと思って将棋本コーナーに立ち寄ったら「豊島将之の定跡研究」を見つけて一緒に買ってしまった。そして、同じ定跡本の本書が積読になっていたことを思い出して、まずこちらから先に読んだという訳である。さっと読むことも出来るのだが、私は根がマジメなので、定跡本だと構えてじっくり読もうとして遅々として進まないことが多いのだ、羽生善治の「変わりゆく現代将棋」も同じ状態だ。思い切ってサクサク読んでしまおうかな。
さて、本書は序盤研究に定評のある村山が流行形にしぼってプロの最新定跡を解説した本である。プロの表面棋譜だけでなく、奨励会の情報も手広く収集したようである。内容は大変濃密である。渡辺竜王も、この本の出版当時に自分でも参考になると述べていたので、内容の質は間違いないだろう。
但し、ほぼ半年前の本で、現在は最新定跡の変化が迅速かつ著しいので、すでにさらに最新型がどんどん出でる。とはいえ、特に実際に指すために学びたい人は、かつての形や未解決の形も当然知っておく必要があるし、現在の最新型との関連も密接な定跡がほとんどである。また、私のようにプロ将棋鑑賞の手引きが目的でも、各形の進化の過程などをまとめて体系的に確認できるので勉強になった。
レベルは高め。この本の背景には、プロの膨大な棋譜や研究会の成果が当然あって、そのエキスの変化を凝縮して述べているのだから仕方ない。たとえば、久保が羽生から王将を奪った将棋で、終盤に三連続限定合い駒があってその手順も述べられているが、私はあれを中継で見ていたから理解できるが、何も知らずに手順だけいわれるときついだろう。本当に理解するにはかなり高い棋力が必要だろうが、(私のように)勿論ポイントだけを押さえて読む読み方も可能なはずである。
以下、現在との比較も簡単に含めて内容紹介。

第一章 後手番ゴキゲン中飛車
流行の超速▲3七銀に、後手が△3二金型で対応する変化を解説している。
現在もこの形はよくみる。但し、最近は久保が△3二銀型を試すなど、ゴキゲンの新たな対策も出ている。また、後手が△5六歩を交換して先手が゛▲5五歩と捕獲して、飛車銀交換から後手が△5五角と出てくる変化。先手がどこに自陣飛車を打つかという課題局面だが、最近銀河戦で糸谷が遠山相手に、▲2四歩と▲3五歩を入れてから▲5五歩として△5五角の瞬間に2四に飛車を走って5筋に転換する指し方をしていた。見た限りではかなり有効で決定版に近いくらいの印象を受けたが、どうなのだろう。

第二章 ゴキゲン中飛車超急戦
▲5八金右超急戦の最前線を解説。遠山流の△6六馬、菅井新手の△7一玉まで、最新型が説明されている。

第三章 先手番ゴキゲン中飛車
角交換型の△6四銀でゴキゲンの5筋の歩交換を拒否する形を解説。先手がすぐに▲7五銀で後手が深浦流の△2四角と反撃する形など。つい最近の銀河戦でも先手で菅井がこの形を採用していたので、最新でも課題局面のようである。

第四章 先手番石田流
後手がストレートに△8五歩まで伸ばしてきた場合に、▲7四歩△同歩▲5八玉とする稲葉流に絞って解説している。この形を詳述しているのは貴重なのかもしれない。
この後の最新型では△8五歩に▲7六飛とする過激な菅井新手を久保がタイトル戦でも採用して話題になっている。

第五章 横歩取り△8五飛対新山崎流
文字通り新山崎流の解説。名人戦の羽生と三浦の将棋についても、その変化を元に定跡として解説されている。

第六章 横歩取り△8五飛対▲5八玉
やはり最新の横歩取りでも頻出の▲5八玉型の解説。
その後の最新の横歩取りでは、後手が△5二玉とする松尾流が多く見られるようになっている。

第七章 同型角換わり腰掛銀
同型の仕掛けから▲3四歩から▲1一角と打ち、一度▲4九飛と逃げる形と、この形の最重要課題の▲4四角成の富岡流の解説。
その後の最新型では、渡辺が羽生相手に王将リーグで新手を出している。順位戦でも郷田相手に早い段階で大胆な新手をだした。渡辺は竜王戦では同型ではないマイナーな形に活路を求め、第六局では作戦が奏功して竜王防衛に成功した。

第八章 一手損角換わり対早繰り銀
一手損で一番多いと思われる先手早繰り銀対後手腰掛け銀の解説。先手が銀交換して飛車をひいたところに△3六歩とする変化などを解説している。
しかし、この後新しい変化が出てNHK杯の▲村山vs△糸谷で、いきなり△4五銀として▲3八金△3三桂▲7七銀△3六歩とした。その後も双方の研究手順ぽかったが、糸谷がどうも研究で上回っていた感じで勝ち。序盤研究家の村山にはショックだったろう。
ちなみに、△4五銀とする手は佐藤康光も考えていて、銀河戦で丸山相手に公式戦では多分初めて指して自身の一手損の本にも書いたが、本と違う変化と結論になって困ったというエピソードもあった。




銀河戦 真田vs金井

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)

金井先手で相矢倉。先手▲4六銀▲3七桂戦法に、後手真田の△8五歩型から、先手が穴熊にして後手が△6四角と牽制するという数年前にはよく指された形。今のゴキゲン超速▲3七銀とおなじくらい流行したが、今や後手が矢倉にするのが珍しい、そもそも二手目△8四歩に決断がいるという時代になってしまった。本当にここ数年で将棋の戦法の根幹が様変わりした感じで、我々ファンは今を見ておかないとプロ将棋が訳わからなくなってしまうだろう。別の言い方をすると野次馬「観る」ファンとしては楽しい時代である。
金井が矢倉らしく飛車を見捨てて猛攻したが、真田が入玉含みで受けて、途中からは完全に真田玉がつかまらなくなってしまった。飛車を見捨てずに、じっと▲2九飛と逃げておけば、後手も指し方が難しく先手もやれたという感想だった。また、一度飛車を逃げたために△3八飛と打たれたのもまずかった。飛車を打てて真田は手ごたえを感じたそうである。さらに▲6四歩がぬるく、まだしも▲5六桂と厳しくせまるべきだったとのことである。
最後は真田らしく入玉もせずに意地悪もせずにサッパリ決めて勝ち。
解説の櫛田が、金井は礼儀正しくて謙虚で今時の若手には珍しいタイプだと言っていた。納得。
斎田によると、企画で金井は中村太地と「王子対決」なる将棋をやったそうである。これについても櫛田が「なんで二人が王子様なんですか?よくわからないですね。そうですかね。」とごくごく正直な感想を述べていたのであった。

NHK杯 羽生vs佐藤康、女流ネット最強戦 甲斐vs中井、銀河戦 脇vs大平

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後手の甲斐のゴキゲンに先手中井の超速▲3七銀。空前の大流行と言いたくなる(笑)。
後手が3筋から動いて戦いに。少し中井が良さそうながら、難しそうな局面からさすがにお互いに筋のはずさない手で均衡を保ってレベルが高いと感じた。
中井が、▲5五成銀から▲4五成銀と受けに回ったのが巧みで優勢になったように見えた。だが、その後も受けに回るのでなく、桂香を拾って攻めあい、甲斐もと金攻めで迫り、中井も少しあせらされる感じに。但し、甲斐は攻めが細くて悪いと感じていたそうである。
中井は受けに金を使ってもらってよくなったと感じたそうである。その後も中井が攻め続けて最後もきわどそうだったが後手玉を見事に詰まして一手勝ち。
最後解説の西尾が△8二玉で詰まないのではと聞いたら、二人から即座に詰み筋の答が返ってきたのがおかしかった。女流もしっかりしていてレベルが高いということを、西尾さんが身を持って証明してくれる形になりました(笑)。
中井は三連覇に王手。

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脇先手で相矢倉。後手の大平が、本家の脇システムを受けて立った。勿論私は脇システムの定跡など知らない(自慢することじゃありません。)ものすぐい勢いで進んだが、感想戦によると△4六馬に▲3七銀としたのが新手で、そこまで前例があったそうである。だからほとんど止まらなかったのか。
脇の攻めを大平が角と金銀の二枚換えをして入玉含みで受ける展開に。入玉を阻止するのが難しそうで大平が良さそうに見えた。大駒三枚持っている脇は相入玉を目指す方法もあったと思うが、大平玉を必死に捕まえに行った。この辺は棋風なのだろう。結局大平が完全に入玉して脇投了。

NHK杯HP(棋譜閲覧可能)

すごい将棋だったので、記事のトリに持ってきました。
後手佐藤のゴキゲンで、相穴熊に。解説の加藤一二三先生が「対局前に羽生さんは最初から緊迫感のある将棋になればといっていましたが、そうはなっていませんね。」と、ごもっともなツッコミをして和ませつつ、じっくりとした展開に。
佐藤が△2五桂とはねたのに対して、羽生は左辺から動いていき、角を切って金と交換して後手の穴熊を弱体化させたが、佐藤も△8七歩のたたきをいれつつ4四角のにらみを利かせて攻めを見せる。羽生も端攻めから露骨な金の打ちこみと実戦的な迫り方をしたが、素人目にも振り飛車がよさそうに見えた。
しかし、羽生の▲7五歩を手抜いて佐藤も△7六歩、さらに▲7四歩△7七歩成▲7三歩成と何回お互いに手抜けば気が済むのだという加藤先生もビックリ?の過激な順で局面が一気に緊迫。
しかし、結局お互いに手を戻して、羽生が▲9八玉と詰めろを解消しながら逃げて佐藤が△9四香と打ったところでは佐藤勝ちになったように見えた。そして問題は▲9五歩△同香となった局面。普通に▲9六歩だと△7九龍で困る。羽生絶体絶命か?
以下文字で再現してみよう。
羽生▲9六金!!!!!!!!!
加藤 ああぁ!うわぁーーっと!驚きました。いやぁーーー!ひやぁーーー!もう、大変な驚きの一着で。うーーーん、こんな手がありましたか。
さて、この驚きの一着がでまして▲9六金。ひやぁーー、いやぁーーー。これは、うわぁーー、にわかに、うわぁーー。これ、うなりれましたね。うわぁーーー。
加藤先生、あなたは擬音語のデパートですか。加藤先生、あなたはかつての長嶋茂雄ですか。うわぁーー(私までつられた)。
録画を何度も巻き戻してみたら、佐藤も指された後に一瞬間があって、目を見開いて驚いていたようにも見えた。
金をただ捨てすることで、先手玉の上部脱出が可能になり、風前の灯だった先手玉が一瞬にして全然簡単にはつかまらなくなってしまったのだ。
以下も、佐藤も粘りに出て長い戦いが続き、佐藤がもしかしたら再度逆転かというところまで追い込んだが、羽生が逃げ切って勝ち。
但し、感想戦がなっかたので対局者二人の対局中の形勢判断はよく分からない。
とにかく、▲9六金は目の覚めるような一着だった。
今年はNHK杯の60回記念大会。そして、羽生の伝説の▲5二銀をくらったのが加藤一二三。羽生の新たな伝説の▲9六金を解説したのが加藤で、何か因縁めいたものを感じずにはいられなかった。
また、羽生が中川に大逆転勝ちした将棋を解説していたのも加藤。加藤が羽生の将棋を解説すると何かが起こるのだ。


王将戦第四局第二日 久保vs豊島、B級2組 9回戦

王将戦中継サイト

今終わった。豊島挑戦者の鬼気迫る追い上げに控え室も盛り上がっていた。△2五銀とかドキっとする。久保がなんとか残していたようだ。終盤力が並外れた久保をこれだけ苦しめる豊島の終盤力はやはり大したものである。
ただ、我々人間の興奮をよそにGPSは冷静だった。△2五銀にも全然驚いてくれず、それどころか悪手だとおっしゃっていた。たとえギリギリの終盤であっても、勝ちが見えていればコンピューターは驚いてくれない。というか△2五銀が鬼手という感覚自体そもそもないのだ。
素晴らしい豊島の追い上げに興奮しながら、同時に横目でGPSに冷や水を浴びせかけられるような変な観戦をしてしまった。GPSは終わってからゆっくり見たほうがいいのかもしれない(笑)。
豊島の終盤は迫力があったが、全体的にはやはり久保が押していたように感じる。またしても相手に馬を作らせて、それを押さえ込みにいき、相手の動きに応じて機を捉えて踏み込む。さらに、良いと判断したら、大胆に思いきり良く決めに出で、そういう判断が全てうまくいっていた。
もともと久保は強いが、特に最近ますます独特な大局観に磨きがかかり、自由自在に押し引きして将棋を自分のペースにひきこんでしまっている。円熟の境地に達しつつあるといえるのではないだろうか。
深い読みや終盤力ではひけを取らない豊島も、久保の独特の感覚に翻弄されて自分のペースで将棋を指させてもらえていないという印象である。
終盤力は本局でも証明した通りなので、豊島としては互角な状態で終盤に持ち込みたいところだろう。
一方、久保は豊島の終盤力を発揮させないように、今まで通りに自分のペースの将棋にしたいだろう。
今までの感じだと、どうしても久保ペースになってしまいそうな気もする。豊島としては、渡辺が羽生相手の竜王戦でみせたような研究の秘策が欲しいところだ。

名人戦棋譜速報


B級2組 9回戦

▲橋本(7-1)−△先崎(3-5)
橋本先手で3手目▲6六歩から相振り飛車に。双方とも金無双になったのが今では珍しい。橋本が角切から相手の歩切れをついた機敏な攻めを決めて、先崎があっさり投了。橋本が一敗を堅持して昇級争い二番手の自力をキープ。

▲中川(7-1)−△佐藤秀(2-6)
先手中川で相掛かりに。中原流▲3七銀から飛車をひねり飛車に転換し後手に角を打たせたのに満足して飛車を右辺に戻し、以下順調に攻めて快勝。中川も一敗堅持で昇級争いのトップキープ。

▲阿久津(6-2)−△泉(4-4)
千日手指し直しで泉が先手に。後手の阿久津が角交換四間飛車。泉が9筋に駒を集中して端を突破したが、阿久津の△6四角からの反撃が厳しく勝ちきった。阿久津も二敗堅持で昇級争い三番手キープ。

△北浜(6-2)−▲飯塚(4-4)
後手北浜のゴキゲンで相穴熊に。北浜が角切から厳しく攻めて押切った。北浜は四番手キープで最終戦の相手が橋本なので昇級の希望がある。

△島(6-2)−▲野月(4-4)
後手の島の一手損角換わり。先手に9筋の突きこしを許して△7二金△9二香△9一飛から端を逆襲するユニークな構想。山崎が指したことがあるとのこと。端攻めが見事に決まって島快勝。


▲戸辺(6-2)−△窪田(4-4)
相三間飛車から窪田が快調に攻めて勝ち。振り飛車党対決を制した。

△畠山成(5-3)−▲南(4-4)
相矢倉から後手の畠山が急戦矢倉の渡辺新手△3三銀を採用。竜王防衛の原動力になったが、急戦矢倉をあまりみない。というかそれ以前に現在は後手で矢倉を指す棋士が限られている。

▲飯島(5-3)−△安用寺(3-5)
後手安用寺の4手目△3三角戦法から四間飛車。飯島がうまく指して攻め続け、安用寺も必死に粘ったが、なんとか飯島が勝ちきった。

△神谷(4-4)−▲堀口一(3-5)
後手の神谷の角交換振り飛車。神谷がと金をつくって小駒だけの攻めをゆっくり間に合わそうとしたが、自陣に引いた龍まで召し取られて、飛車角四枚全部を堀口が手する珍しいことになり、神谷投了。

△阿部隆(4-4)−▲田中寅(1-7)
先手田中の3手目▲6六歩に阿部は三間飛車。確かに3手目▲6六歩に振り飛車という将棋が最近多い。田中は居飛車から金銀を繰り出して思い切った仕掛け。激しい展開の将棋を田中が制した。

▲青野(3-5)−△桐山(2-6)
先手青野で横歩取り。▲3六飛とひかずに▲5八玉とする佐藤康光も得意にしている形を採用。桐山が桂得を果たし、青野も細かい時間差の歩突きなど工夫したが、早めの投了。

△土佐(3-5)−▲森下(0-8)
後手の土佐の一手損角換わり。早繰り銀と腰掛け銀の対抗形から、土佐が角を6四に据えて居玉で伸び伸びとした陣形で戦ったが、森下が攻める形をつくり玉形も大差で土佐投了。森下はようやく一勝目をあげた。

昇級争いは以下の通り。1敗の二人が自力。二敗の二人がキャンセル待ち。
【8勝1敗】中川(8)、橋本(15)
【7勝2敗】阿久津(3)、北浜(6)

王将戦第四局第一日、銀河戦 福崎vs稲葉、NHK杯「もう一度見たい!伝説の名勝負」

王将戦中継サイト

先手久保の▲7五歩に後手豊島は△6二銀。なんとなく納得。佐藤康光や渡辺明なら△8四歩から△8五歩といきたくなるところだが、豊島は彼らよりも老成して大人なのだ(笑)。概して将棋界では、年の若いほど大人びた将棋を指して、年齢が上になるほじ若々しい将棋を指すという一般法則がある。久保流の乱戦石田流をみたかったが、豊島はそれは相手の土俵なので損と冷静に合理的に考えるタイプのようがする。勿論、基本的には自由な作戦選択の問題に過ぎないけれども。
かつて、米長が南相手に「横歩を取れないような男に負けたらご先祖様に申し訳ない」と挑発して、南も横歩をとったことがあったが、久保も「久保流石田流を受けることが出来ない男に負けては(以下略)」と挑発してみたらどうだろう(笑)。
この将棋も久保が積極的に動いたが、豊島も「若者らしく」強気に応戦している。久保の▲7九金が印象的。意外な驚く手を必ずみせてくれる。最近、久保将棋のファンになりつつある。

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)


福崎先手で▲7六歩△8四歩▲6六歩△3二飛の出だし。3手目▲6六歩には相振りがトレンドとか聞いたが、稲葉もそうしているので本当にそうなのかもしれない。いきなり3筋を交換する形。私も相振りは(昔)指したが、単純にこうやられのは結構イヤだ。あっさり▲3七歩と受ければ特に問題ないが、それも悔しいので相手の出方次第で矢倉に盛り上がろうとして受け間違ったりしていた。私の場合はすごくレベルの低い話だけれども、若手の稲葉もそう指してくるというのは、結構プロレベルでも有効と考えられているのだろうか。
福崎が仕掛けて▲6四角と打ち、△6三金としてくれれば▲5五銀として攻めがつながったが、稲葉が△4四角と一度打ってから冷静に受けて、ひと段落してから逆に猛攻してそのまま一気に寄せきってしまった。稲葉は鋭い攻め将棋で、現代風にジワジワいくのでなく、どんどん思い切りよく攻め込む将棋なので、見ていて楽しい。
感想戦では福崎節が炸裂していた。△7四歩にいきなり▲6五歩と仕掛けても十分だし、△8三銀に▲8七飛と引いておいて△8四歩▲6五歩△7七角成▲同桂△6五歩▲7五歩△7二金▲7四歩△同銀▲8四飛△8三金▲7四飛△同金▲4一銀△4二飛▲5二銀成△同飛▲4一角で先手よし、と随分違う将棋を先まで検討していた。▲6四角では▲8五歩もあったらしい。その辺りの攻め方がポイントだった。「研究すれけばするほど、こちらがええやん」と福崎先生、ボヤくことしきりなのであった。

別冊NHK将棋講座 NHK杯将棋トーナメント60周年記念 もう一度見たい!伝説の名勝負

60周年の記念番組もあったが、NHK出版が記念して出版した本。
平成編と昭和編の二本立て。
平成編は、羽生のロングインタビュー、佐藤&森内の合同インタビュー、山崎、久保、鈴木各インタビュー、長沼のNHK杯予選等の自戦記、粟生野による女流棋士参戦記、それに2ページ見開きの17局特選記、NHK特番の際のベスト10の解説。
昭和編は加藤、谷川、米長インタビュー。中原特集。河口俊彦による大山記事、蛸島によるNHK杯エピソード、ラジオ時代記事、特選譜解説17局。

以上のように1500円だけれども大変内容が濃い。将棋マニアなら資料としても買う価値はあると思った。
羽生だけ、インタビューが長めで、羽生のNHK杯の歴史を全て振り返っている。
他にも色々懐かしい対局が出でくる。佐藤が中井にほとんど負けかけた将棋を振り返っているが、棋譜(部分図)を今改めてみると、本当に中井必勝なんで驚く。
鈴木が加藤に金四枚を並べて打たれて負かされた将棋の伝説の図面もででくる。
長沼の予選苦闘の歴史も微笑ましい。なぜか、ハイライトの羽生戦を語ってないのが長沼らしい。
棋譜解説は2ページのポイントの指しての解説。読み物というより、棋譜資料という感じ。また、特選譜は誰がどういう基準で選んだのか、今ひとつ分からないところはある。
私のようなオールドファンには昭和編が垂涎物。貴重な写真が満載である。135ページの加藤先生が時代劇役者のようでかっこいいかと思えば、142ページには前歯なしで満面の笑みの加藤写真があったりする。
特番の際に話題になった、大山の加藤戦の電光石火の手つきについては蛸島の貴重な証言もある。さらに、蛸島の加藤の秒読みについての証言もかなり笑える。
NHKがかなり気合を入れてつくった本だと思う。

将棋日記 マイナビ女子オープン挑決 上田vs石橋

マイナビ女子オープン中継サイト

上田の先手で振り飛車模様に対して、後手の石橋が飯島流引き角を採用して、上田は向かい飛車にして▲8六歩を突く形に。今週の週刊将棋によると、石橋は里見戦でも引き角を採用していたとのこと。上田がうまく捌いて振り飛車ペースに。さらに、桂馬まで龍銀両取りをかけさせたかわりにと金をつくり、石橋の馬を詰ましてしまった。さすがにその時点でジ・エンド。後は指しただけになってしまった。
二人ともパワフルな終盤に定評があり、ねじりあいがみたかったところだが、一方的な将棋になってしまった。
上田は、日曜のネット最強戦で里見にひどい目にあわされたが、その悔しさをぶつけるかのような将棋で完勝。これで、マイナビは甲斐女王に上田が挑戦することになった。甲斐の振り飛車に対して、上田が居飛車にして穴熊を目指す感じになるのだろうか。里見も清水もいないタイトル戦になった。
石橋は序盤の仕掛けのあたりがよくなく形勢を損ねて全く力を出せずに終わった。やはり、序盤作戦がうまくいくかいかないかがハッキリしすぎているのが、石橋の弱点だという気がする。

2011女流名人戦第三局 里見女流名人vs清水挑戦者

女流名人戦中継サイト

先手の里見のノーマル三間飛車。石田流でも中飛車でもなかった。ノーマル三間といえば大山先生、そしてタイトル戦で余裕が出ると色々な戦形を試すのはかつての羽生の常套手段だった。まるで里見が大山と羽生の背中を見て、それを追って指しているような。
一方の清水は左美濃。最近少し指し出したが居飛車穴熊はやはり好きではないのだろうか。しかし、清水の意地を感じるのは、第一局で優勢な将棋を里見の▲2五歩からの玉頭攻め一発でやられたのに再度採用してきたこと。本局でも、玉頭攻めがありそうなところも、こわがらずに攻めていた。その指し方の善悪はよく分からなかったが、こういう気持の強さがあるから女流のトップで長年君臨できてきたのだろう。
清水が△5三玉から、逆に里見の銀冠の頭を攻める手をみせたのが機敏で清水ペースに。これまで二局同様、清水が序盤では優位に立った。里見としては今後さらに男性プロの世界を含めた上を目指す為には課題になってくるところだろう。その後も清水がうまく指していたが、そこから簡単に潰されたり差を広げられないのが里見の強さ。これまた、これまでの二局通りだ。
特に、8五のソッポで遊んでいた銀を、戦いの最中に8五→7六→6七とひきつけたのが印象的だった。こうして戦いながら、自玉に金銀を近づけるのは大山流。そして▲6七銀と忙しい最中に相手に手を渡すのは羽生流である。またしても、大山と羽生を目指しているかのような里見。
そして、今回は早めに逆転して里見よしになったが、その後がこれまでの二局とはちょっと違ってしまった。これまではよくなってからは流れるような手順で差を拡大して光速の寄せで相手玉をつかまえたが、今回は▲2五同桂として△3七歩を打たせてしまったために清水の厳しい攻めをくらって、多分あそこでは再逆転していたのだろう。その△3七歩の筋は、検討の菅井も西川もすぐに指摘していてたので、やはり男性プロ相手だとこういう隙をみせたらすぐやられてしまうだろう。
清水が鋭く攻め立てて決めに行ったのだが、▲4四馬が詰めろで再々逆転。ただ、▲4四馬が詰めろでは、もともとそんなに簡単に清水勝ちではなかったのかもしれない。これを書いている時点では詳しい感想コメントがないのでよく分からないが、清水が工夫して寄せれば何か勝ちがあったということなのだろうか。
というわけで、終局後の里見の表情は厳しかった。内容的には、序盤にも終盤にも問題があったので当然だろう。
とはいえ、結果的には清水を三タテでスウィープして内容的にも本局を除けば終盤力の差をみせつけて蹴散らしてしまった感じだった。日曜の女流ネット最強戦でも、上田を本当に強い将棋―あるいはもし大山が指していたら「残酷」ともいわれかねない将棋―で勝っていた。
本気で里見も早いこと完全に男性棋士の世界で戦うことを目指すべきなのかもしれない。もはや他の女流棋士たちが気の毒になってしまうくらいの強さなので。

将棋日記 女流最強戦 里見vs上田、銀河戦 日浦vs菅井、高崎vs横山、NHK杯 郷田vs糸谷、久保芭蕉

大和ネット将棋中継サイト

今終わった、里見vs上田。里見の指し方にちょっと衝撃を受けた。先手の里見が角道を止めるノーマル中飛車から、▲4七銀▲4八金のオールドファッションな形。解説の伊藤が「大山先生のようだ。」と言っていたが、これが今日のキーワードになる。
上田が居飛車穴熊をいかして(里見の囲いは美濃などと比べて相当弱い)、暴れようとしたのか敢えて△5四歩を受けずに指していたが、里見に逆に▲5四歩を打たれて苦しくなり、必死に暴れに行ったが里見に丁寧に受けられて完全に切らされてしまった。どんどん上田の攻めが細くなって、里見も切らした後も次々に玉の周りに金銀を打ち、上田は本当に何も出来なくなってしまった。「大山先生のようだ」である。
解説の伊藤も指摘していたが、女流棋士は基本的に猛烈な攻め将棋が多いが、相手に無理に攻めさせてきっちり受け止めるという男性棋士感覚の指しまわしである。
平手なのだけれども、まるで駒落ちの上手のように指しているようにも見えてしまった。薄い玉で、自由に居飛車に穴熊に囲わせて、徹底的に受け潰してしまうというのは、まさしく大山ではないか。
里見は現代風の石田流やゴキゲンを中心にしているが、こういう昔風の振り飛車も裏芸として指せるのだ。一体どこでこういう指し方を覚えるのだろうか。
そして局後の感想では「玉が薄いので自信のある局面はありませんでしたが、楽しく将棋が指せたと思います」と。「楽しく」ですか。おそるべし。

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)

日浦vs菅井。
菅井先手で中飛車。お互いの角道が通ったまま菅井が▲5五歩と仕掛け、さらに日浦が玉を囲おうとしたところから再度機敏に動いて攻め込んで、そのまま攻めきってしまった。完勝。
ここの所数局連続して菅井の先手中飛車を見たが、シンプルに動いてそれが必ずちゃんと攻めになっている。アマチュアもこのように指せれば真似したい。一時期私も定跡書などよんで気持のいい順が多いので試してみたが、やはり独特の感覚が必要でかなり指しこまないと難しいと感じた。一見分かりやすい指し方だが、そこには膨大な研究の裏づけと、実戦で鍛えぬいた感覚があるのだと思う。見た目はアマチュアでもわかり易そうだが実は難しいという現代将棋なのだろう。
これで、5連勝。破竹の快進撃である。まだ続きそうな勢いだ。

高崎vs横山。
先手高崎で、石田流の出だしから、後手が角交換して▲7六銀型の変則的な向かい飛車に。その形を生かして▲7七桂から後手の8五の歩をパクリと食べてしまった。当然後手の横山は右辺方面から反発するが、先手も激しく切り込んでペースを握る。高崎が攻め続けるが横山もしぶとく凌いで容易には崩れず、終盤は優劣不明の大熱戦になった。最後本当にきわどく高崎が勝ちきったが、若手実力者の二人が終盤の強さを見せつけた将棋だった。この辺の若手のレベルも相当高い。時間がなくて感想戦がなくてポイントが分からなかったのが残念。
聞き手の藤田綾さんによると、高崎五段は「レコーディング・ダイエット」で痩せたそうである。レコーディング・ダイエット?何か歌ったり踊ったりしてレコーディングするの?と思った私はアホで、食べ物を記録(レコード)することで食生活を管理する方法とのこと。なるほど。

NHK杯HP(棋譜閲覧可能)

郷田先手で、後手糸谷のもはや御馴染みの一手損角換わり。郷田の早繰り銀に糸谷も早繰り銀で対抗する、ちょっと珍しい相早繰り銀に。これも糸谷のことだから相当研究しているんだろうなぁ。先手の攻めを警戒して後手が四間に振ったが7筋に振りなおして動き、郷田も3筋2筋から動く。糸谷にも誤算があったようで郷田が普通に駒を捌いて指しやすくなった。感想戦によると▲3八銀を打たずに単に▲8二飛と打っておけばはっきり先手良しあるいは勝ちだったそうである。
しかし、それを逃して糸谷が△4三金から△4四飛としっかり受けて郷田の攻めをあせらせたのがうまかったとのこと。解説の井上が対局前に、糸谷の特徴は受けで、受けなら棋界でも5本の指に入ると言っていた通りの展開になった。そして一度攻めだしたらいつもの完全ノータイム指しであっという間に郷田玉を寄せてしまった。
感想戦でも郷田は「どうも読みがあわない」とボヤいていた。この二人は2008年の対局の感想戦でも郷田は「ちょっと感覚が破壊されるな。」と嘆いていたのである。いまだに糸谷に慣れることの出来ない郷田という感じか。
糸谷も△2六馬と指しかけて、王手馬取りをくらうところを寸前で気づいて駒を離さずに難なきをえていた。こういうあぶなっかしいところも糸谷の面白いところである。

王将戦のスポニチさん、今度は久保さんを松尾芭蕉に仕立てあげてしまいました。でも、この帽子は芭蕉というよりは(以下各自ご自由に発言ください)。

スポニチannex第3局一夜明け…久保王将、芭蕉の宿を散策

久保芭蕉の写真

王将戦中継ブログ 芭蕉の愛した里で

木村朝日誕生!朝日杯準決勝決勝

朝日杯中継サイト

木村一基八段が、渡辺竜王と羽生名人を連破して優勝。朝日杯を獲得した。
朝日杯は二次予選以降全て生中継していたが、実は木村も危ない苦しい将棋もあった。以下簡単に優勝への軌跡(笑)。(棋譜リンクをはっておきます。)

二次予選
木村一基八段 対 遠山雄亮四段
遠山先手で石田流。難しい分かれから、木村が意表のソッポに桂を成ったのが好手で、以下木村が相手にあせらせて攻めさせる「らしい」展開になって結果的には快勝。

木村一基八段 対 飯島栄治七段
これは私も生で見ていたが、終盤色々飯島に勝ちがあって木村がすごく危なかった将棋。横歩取りで木村先手。終盤木村が決める手を逃し、さらに攻め間違えて飯島が的確に受けていればきれていた。その上、飯島が王手竜取りのやさしい筋を逃してしまう。木村もウッカリしていた。木村が急死に一生を得た感じの将棋。こういうのを勝たないとなかなか優勝は難しいということか。

本戦トーナメント
深浦康市九段 対 木村一基八段 asahi.com観戦記
先手深浦で後手木村の一手損角換わり。先手が早繰り銀から果敢に攻めたが、木村の△5五角が名手でほとんど決まってしまったらしい。とはいえ、終盤難しそうなところもあったが、木村が冷静に読みきって勝ち。快勝、会心譜である。

丸山忠久九段 対 木村一基八段
 asahi.com観戦記
丸山先手で、やはり後手木村の一手損角換わり。木村の構想が巧みで優位に立ち、丸山も辛抱して▲2八歩と▲8八歩と打つ珍形になったが、木村はおかまいなしに強襲して一気に寄せきってしまった。完勝。木村が攻めのきれ味をみせた将棋。

そして今日の準決勝と決勝。
羽生vs郷田は、先手羽生で後手の郷田が急戦矢倉。若き日の二人の戦いを髣髴させるような壮絶な斬りあいになったが、羽生が一手早く相手玉にたどり着いた。

渡辺明竜王 - 木村一基八段
先手渡辺で相矢倉から、渡辺が先行したが、途中からは渡辺が木村のお株を奪って受けて木村があせらされている感じになった。竜王戦でもそうだったが、渡辺の手厚い受けは強力だ。渡辺が自玉を堅くしてから満を持して反撃に移った時は勝負あったかにも思えたが、木村も決して諦めずに玉を早逃げして粘る。それが功を奏して、最後はきわどくなって渡辺が木村玉を詰ますことが出来ずに投了。くわしい感想コメントがまだないので分からないが、渡辺に勝ちがありそうな将棋を得意の受けで粘ってうっちゃった感じか。決勝の解説で、渡辺は最後詰むと思ってしまったことを、相変らず正直に告白していた。

羽生名人 - 木村八段
木村先手で通常角換わり。羽生は後手でも角換わりを指すが、最近は横歩取りが多かったのでちょっと新鮮だ。羽生が趣向をこらして9筋をつきこさせる間に攻撃態勢を築いて後手ながらも先攻。羽生の攻めが厳しくて強烈なように見えたが、そこから木村が「千駄ヶ谷の受け師」の本領を発揮。▲7七を銀でも角でもなく意表の金で取ったのも力強かった。それでも、あせらずに攻めれば羽生がよかったという感想があるところを、実際には普通に鋭く攻め込んだが、9筋を突きこした木村玉に予想以上に生命力があった。終盤は、解説の渡辺と行方も頭を悩ます難解で手に汗握る大熱戦に。木村らしく▲7六金打とがっちりり受けて、▲3六桂の捨て桂で自玉を緩和して、相手に詰めろをかけて自玉がきわどく詰みを逃れて勝ち。決勝戦にふさわしい将棋で優勝を決めた。

予選の飯島戦をなんとか切り抜け、深浦と丸山という実力者を一手損角換わりで切り捨てた。特に深浦には王位戦のプチ・リベンジを果たした。そしても今日は木村らしい受けと粘りの将棋で、竜王と名人を連破。文句のない優勝といえるだろう。

というわけで、木村先生はああいういいキャラクターをされているので、ここはスポニチさんに管轄外でも勝者罰ゲーム写真を執り行っていただきたいものである。ダメっすか?

2011王将戦第三局 久保王将vs豊島六段

王将戦中継サイト

予想通り後手の久保のゴキゲンに。早くから豊島が馬をつくり、その馬を久保が消し、再度豊島が馬をつくる展開に。久保の将棋では、居飛車に馬を平気でつくらせることが本当に多い。棋王戦第一局のの▲7六飛も馬をつくらせめことを覚悟している変化である。
女流名人戦第二局で後手の里見が清水のゴキゲン封じに対して馬をつくらせてもいいという指し方をした。そもそも、それも久保が指し始めたのだ。その将棋について書いたブログ記事に興味深いコメントをいただいた。
Posted by たんご屋
後手が馬を作らせる作戦とは意味合いが違うかもしれませんが、先手が3手目56歩で馬を作らせて向かい飛車にする作戦は大内九段も得意にしていらっしゃいました。王位に挑戦した第1局で大山王位に勝ったのもその将棋です。
大内九段はテレビの将棋講座の講師をなさっていたときに「自分は馬と持ち角の価値を同等だと考えている」とおっしゃっていました。
馬をつくらせる指し方は、いかにも現代風で久保などが始めたのかと思っていたのだが、実は大内九段もそういう考え方をされていたそうである。「自分は馬と持ち角の価値を同等だと考えている」と発言されているそうだが、久保もそう考えているのではないかという節がある。
現代の振り飛車は、従来の伝統的な振り飛車とはすっかり様変わりして、過去との断絶面ばかりに目が行きがちだけれども、大内先生の例ひとつとっても、過去の先駆者の発想を受け継いでいる面がある。そもそも、久保も今や現代的な振り飛車の代表格だが、原点は子供のときに読んだ大野源一九段の振り飛車本である。それが体にしみついていて、そういう伝統的な振り飛車がベースにあって、それを現代振り飛車にいかしているのだろう。
今月の将棋世界でも、勝又の講座で横歩取りをとりあげていたが、内藤九段の先駆性を述べていた。さらに、現代風の松尾流△5二玉も最初に指したのは内藤先生だそうで、やはり現代将棋も過去の伝統や先駆者の上に成立しているのだろう。

久保は最新研究も関西若手と精力的に行っている。但し、振り飛車党の研究と居飛車党の研究では性質を異にするところがあるようだ。週刊将棋で片上が次のようなことを述べていた。
居飛車の研究は、とにかく手を狭めていくという印象がある。一方振り飛車の研究は、どうすれば手広いか、そしてどうすれば「良いパターン」の終盤戦に入っていけるかを競うようなところがある。
本局も第一局と同じ豊島の超速▲3七銀に対して、久保がわりと早い段階で変化した。久保の序盤を見ていると、同じ形を突き詰めるというよりは、次から次へと多彩な変化球を繰り出してくるというイメージだ。居飛車の角換わりのように、直線的に場合によっては詰む詰まないまで研究するのではなく、ある程度の局面まで感覚的に振り飛車が指しやすい模様を確保するための自由度の高い研究という気がする。「こうやってみたらどうやろ、まあまあこんな感じになればまずまずちゃうの?」とでもいうような。(私は東京人なので関西弁の使い方がおかしかったらごめんなさい。バカにしているわけじゃないです。振り飛車独特の自由な感じの研究を表現したかっただけです。)
本局も、それなりに難しかったようだけれども、基本的に久保のほうが勝ちやすそうな局面に持ち込むことに成功したように思える。

もっとも、将棋は多少指しやすくなっても、その後勝ちきるのが大変だ。そこで登場するのが、久保の「捌きのアーティスト」ぶりである。本局でも、▲8六に馬をつくられても、△4四銀から△4六歩をみせて十分させるという大局観。自身の捌きについて、久保はNHK杯の解説をした際に次のように述べている。
駒の損得で将棋を捉える棋士もいるが、自分は仮に駒を先に損したとしても駒の効率がよければ局面が成り立つのではないかという考え方から「捌く」という言葉を意識するようになった。先に駒損するので、数十手先まで読まないと「捌く」というのは、やりにくい。従って、どうすれば捌けるのかと聞かれても答えるのが難しい。駒損よりも駒の効率を重視するのが、とにかくポイント。居飛車党は駒の損得を重視する傾向が強い。居飛車党で駒を「捌く」という表現を使うことは少ない。「捌き」は振り飛車党の専売特許のようなところがある。居飛車同士の戦いで捌こうとすると軽くなるので、やはり駒得重視で手厚く指した方がよいことも多い。
馬をつくらせるというのも駒の損得の話ではないが、先に馬という強力な駒わつくらせるという点では「損」だが、持ち角を自分は自由に使えて、その後の展開で捌ければいいという発想なのかもしれない。
さらに、じっと△1八馬引きするなど、久保の中盤の緩急自在の意表をつく自由度の高い指しまわしは見ていて楽しい。「アーティスト」というのが、大袈裟でなく本当にピッタリくる。
そして一度よくなったら逃さない終盤力。感想コメントを見ると、玉が右辺に逃げ込んで△2四歩とついてあるので詰まない変化まで読みきっていたらしい。恐ろしい。純粋な終盤力でも、羽生や渡辺とも互角にわたりあっているのが納得できる。

まとめると、序盤の現代的な研究に裏打ちされていながら、局面の捉え方に振り飛車特有の大局観があり、狭く局面を突き詰めるというよりは自由に捌く将棋で、なおかつ関西伝統の力の強さがあって終盤力も圧倒的、ということである。
ゴキゲンや石田流は、力戦になりやすく、同じ研究でも例えば藤井システムのような居飛車的につきつめる研究とは恐らく質が違って、実は関西の従来の力戦振り飛車と通じるところもあるのかもしれない。そして、中終盤は結局力で勝負と。将棋世界のインタビューによると、久保は純粋な振り飛車党が絶滅するのではないかと危惧しているそうである。そして、自身を「魂から振り飛車党なんです。」とも。
従来の振り飛車の感覚、関西特有の力将棋をうまく現代に融合させながら、久保は骨の髄まで振り飛車党なのである。

今回は、久保のいいところばかり出た将棋になったので、「久保論」のような記事になってしまった。次は「豊島論」を書けるような将棋に期待しよう。

こういう会心譜だったので、久保はスポニチさんの要求にも気持ちよく応えて「ゴキゲン」だったことは言うまでもない。

将棋日記 C級1組 9回戦、将棋世界3月号

名人戦棋譜速報

△小林裕(7-1)−▲宮田敦(6-2)
先手宮田で相掛かり。小林がやや攻めさせられた感じになって宮田がうまく凌いで勝ち。小林は条件次第で今回昇級の目もあったが痛い後退。

△田村(7-1)−▲大平(5-3)
後手の田村の陽動振り飛車。大平が右辺を押さえ込んだが、田村が振り飛車らしく左辺から反撃して勝ち。田村は一敗堅持で昇級自力に。何よりこの二人で夕休までもったことを褒めてあげたい。

▲広瀬(7-1)−△中田功(4-4)
後手の中田のゴキゲン。乱戦模様だが前例があって先手が勝っている
形になった。後手が5七にと金をつくるが▲4二歩の反撃が激痛で後手があっさり勝ち。敢えて負けた経験がある形に飛び込んだ中田に何か誤算があったのか。広瀬は一敗堅持でトップキープ。

▲村山(7-1)−△千葉(4-4)
横歩取りで後手の千葉が△8四飛から△2四飛と転換する形。後手が工夫の手をみせたが村山勝ち。村山も一敗堅持で昇級争いの3番手に浮上。

▲佐々木(7-1)−△近藤(2-6)
先手佐々木で初手▲6六歩の変則的な相振り。お互い穴熊に囲いあい、棋譜コメントを見ると形勢が揺れ動いたようだが最後は佐々木勝ち。やはり一敗堅持。これで14連勝だそうである。

△真田(5-3)−▲高崎(5-3)
先手の高崎の中飛車に後手の真田の飯島流引き角。それに対して高崎がどんどん軽く動いていった対策が面白かった。高崎が快勝。若手がすごく深く研究しているのを感じさせる将棋。本家の飯島はどう見たのだろう。

▲片上(4-4)−△塚田(1ー7)
横歩取りで△8四飛。最近△8五飛より多いような気がする。終盤が難解な横歩取りらしい好局になったが、片上が勝ちきった。きっと棋譜コメだけでは全然分からない色々な難しい変化があるのだろう。

▲北島(3-5)−△森けい二(2-6)
後手の森のゴキゲン。途中まで隣の広瀬vs中田功と全く同じ手順に進んだのが珍しい。単なる偶然なのか、それとも誰かが真似していたのか。途中で森が変化したが、結果はこの形は両方先手が勝ち。

△加藤(4-4)−▲福崎(1-7)
先手の福崎の中飛車。▲8五桂ポンから動いていったが、加藤が力強く応接して駒得をはたし、端から重厚に攻めて押しきった。こういう展開になると加藤先生は強いです。相変らず、すごい手つきだった模様。>「加藤は腰を浮かせ、覆いかぶせるように全身を使いながら香車を成った。」そうである。これで5勝4敗。大豪健在。
食事は大阪レギュラーの「鍋焼きうどんプラスおにぎりセット」昼夜連投。おにぎりは1セットと今回は「小食」だった模様である。そして、昼食休憩中に盤の前で読書される加藤先生のお写真も素晴らしい。やっばり読まれているのは・・?

昇級争いは、広瀬と田村が自力で、それ以外にも次のメンバーに可能性が残されている。カッコ内は順位。
【8勝1敗】広瀬(5)、田村(12)、村山(19)、佐々木(29)
【7勝2敗】宮田敦(6)、小林裕(10)

将棋世界3月号

ざっと読んだ。
勝又六段の講座で横歩取りの将棋を取り上げている。横歩取りは難しい戦法で、また多岐にわたる形があって定跡だけ説明されても分かりにくいところがある。それを勝又六段は横歩取りの基本コンセプトや各形の基本的な狙いで分類するなど体系化して説明している。私は、初めて横歩取りの将棋が理解できたような気がした。気がしただけかもしれないけれど、ありがたいことである。
また、最近急増しつつある松尾流△5二玉についても一手損との関わりも指摘しつつ、そのコンセプトを分かりやすく解説している。横歩取りが分からないというアマチュアにとっては大変貴重な講座だと思う。ちなみに、この形を最初に指したのは松尾七段ではなく、内藤先生とのこと。さすが。

王将戦特集の豊島と久保のインタビュー。豊島の将棋には今のところ明確な個性があまり感じられないが、本人が意識的に形を決めずにバランスよく自分を伸ばそうとしているのがわかった。一方も久保は将棋も個性的そのものだが、主張も明確で、自身の振り飛車党としてのこだわりや自負をはっきり言葉にしている。人間も将棋も対照的な二人の対戦なので面白いと思う。

「感想戦後の感想」は中田功七段。師匠の大山との、ただ一度の師弟対局が紹介されていて興味深い。こーやん先生は師匠に勝っているんですね。



将棋日記 LPSA天河戦 中井vs松尾、ネット女流最強戦 清水vs矢内、銀河戦 中田功vs阿部健、NHK杯 渡辺vs深浦

NTTル・パルク杯天河戦中継サイト

石橋天河への挑戦者決定戦。後手松尾のゴキゲンに先手中井の超速▲3七銀。後手の松尾が最近のゴキゲンでは、もはやよく見る馬をつくらせる指し方から、力強いねじりあいが続き、松尾が押し気味で指しやすそうに。
しかし流石に中井も粘り強く指して難解な終盤に突入し、そこからも玉頭戦が繰り広げられる熱戦に。最後はやっと松尾が勝ちになったところで、寄せを誤ったり詰みを逃して中井が逆転勝ち。
挑戦者決定戦にふさわしい素晴らしい将棋だった。中井は準決勝の船戸戦に続いて九死に一生を得た感じである。松尾は地力を存分に発揮した将棋だっただけに、最後が悔やんでも悔やみきれないだろう。

大和証券杯ネット将棋公式ホームページ

先手の矢内で「当然」中飛車に。解説の近藤がすっかり「ゴキゲン」なおじさんになってしまった。矢内が近藤の指摘の通りにすまく指し続けていた。ゴキゲン師範の近藤が、若葉マークの弟子矢内を心配しながら見守るような心暖まる?妙な解説になっていた。
矢内は終盤ちょっとつまづいたが、打ち歩詰めで逃れるラッキーもあって、なんとか逃げ切り。矢内に近藤のゴキゲン免許皆伝は出たのだろうか。それにしても、清水は里見だけでなくゴキゲンビギナーの矢内にまで、こううまくやられてしまってはつらいところだろう。

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)

先手中田のコーヤン流三間飛車に、後手阿部の居飛車穴熊。コーヤン流の▲4六銀型というのは、将棋のもっとも美しい形の一つだと思う。この形で勝てるものなら指したいと思う。中田がうまく捌いて振り飛車優勢になったのだが、終盤に阿部がなんだかんだと勝負手を放って、中田も間違って逆転勝ち。阿部は、研究家として評価が高いようだが、終盤も相当強いように感じる。勿論、そうでなければあれだけの高勝率をあげられるわけがない。

NHK杯HP(棋譜閲覧可能)

深浦先手で相矢倉。深浦が早めに▲3五歩と動く現代では少しマイナーな形を採用。当然研究家深浦の工夫なのだろうが、渡辺が端桂から攻撃態勢を築いて攻めかかり、渡辺らしく攻めをうのくつないでほぼ完勝。深浦は珍しく作戦が冴えなかったが、渡辺の対応がうまかったのか。
とにかく、渡辺は迷いなく素早く決断して自信に満ち溢れている感じ。竜王を若くして獲得した際もこんな感じだったのだが、それが最近また戻ってきたようだ。
しかし、深浦は苦しくなっても折れない心(野月流の表現だと「諦めが悪い」ということになる)でくらいつく。最後は渡辺は詰みを読みきっていたが、解説の森下と聞き手の矢内はアタフタしていた。


2011棋王戦第一局 久保棋王vs渡辺挑戦者

棋王戦中継サイト

今回はニコニコ生放送があった。超時代遅れの私は実は今日までニコ動を登録してなかったんですが、ついにしましたよ。でも、バタバタしてあんまり見られず、午前中に戸辺の解説をちょこっと、午後に佐藤、中川、島が登場した辺りを断片的な見られただけ。本格的に夕方から見ようと思ったら定員オーバーでガックシ。というか終局していた。さらに、今見たら「タイムシフト機能」なるものがあって、事前予約して事後視聴もできるらしい。ビギナーなので知らずに後の祭り。次から試してみます。
というわけで、今終局直後にブログを書いたりしています。

石田流▲7六飛菅井新手に。中継ブログにも書かれていたが、将棋世界3月号の「イメージと読みの将棋観」にとりあげられている。対局者の二人もメンバーだ。
渡辺の発言要旨。
居飛車党は研究課題が多すぎてこの形まで手がまわらない、久保と戦うので研究するしかないが悩む。基本的には、先手が若干無理気味でリスキーではないか。それを先手が研究で補う感じ。△4五角は相手の研究だから打たない。△8八角成▲同銀△2二銀で一局ではないか。
久保の発言要旨。
菅井と話していて同じこの形のことを考えていて驚いた。菅井に実戦では先を越された。△4五角は菅井vs谷川の順で振り飛車が指せそう。△2二銀については、それでも急戦が成立するかをこれから研究する。
この将棋世界が、棋王戦開幕前に発売されている。なんという情報公開だろうか。二人とも、棋王戦でどう戦うかを、正直に話しているのだ。言っている通りの展開になったのだから。現代将棋ならではのエピソードだと思う。
発売のタイミングが直前だったけれども、少なくとも、久保は渡辺がそんなに深くは研究してないこと、なおかつ本譜の△2二銀を考えていることを知ることができただけでも大収穫ではないだろうか。今まで、渡辺のこういう正直なところが、相手のペースを乱したりもしていたが、今回はちょっと「正直者が損をする」ような形になったような気もする。
それにしても、なんというわけのわからない将棋だろう。今期の順位戦で二人が戦った際にも、「これはなんですか。初心者のメチャクチャな棋譜ですか」という将棋になったのだが、今回もそれ以上だ。
久保がこういう大胆不敵な戦い方をするのは最近ではお馴染みだが、問題は居飛車側がどう出るかだ。一番の過激派は佐藤康光で、絶対△4五角を打つ派だろう。慎重派なら、これを警戒して△8四歩から△8五歩を保留するのかもしれない。渡辺は中間派で、ある程度は正々堂々と受けて立つということなのだろう。渡辺はこの形は先手がリスキーで無理気味という感覚を持っていて、それならばある程度堂々ととがめたいという立場のような気がするが、どうだろう。
久保の嵐のような猛攻で、午前中は先手が相当いいように言われていたが、それを難しいと思わせるところまだ持ち直した渡辺の乱戦に対する距離感覚も大したものだ。それこそ、並みの棋士なら一気につぶされていたのではないだろうか。
しかし、久保が▲4六馬として、△5七にと金を平気でつくらせた「異常感覚」が秀逸だったようだ。検討によると、もうそれで後手が困っていたようだ。その後は完全に検討通りに進んでしまった。さらに、▲6三歩と、検討以上に厳しい勝ち方を久保はみせた。
久保ガ石田流の独特な感覚と研究の深さでペースを握り、さらに中盤でも驚異の大局観で一気に勝ちにもっていった会心局だった。羽生とはまた違う大局観だ。居飛車党でなく振り飛車党だという、当り前の事実も勿論重要である。
渡辺サイドからすると、振り飛車とどう戦うかというテーマと共に、一日制のタイトル戦ではどうかというのも注目点である。本局でも、竜王戦でもみせていた決断の早さがめだった。竜王戦では、それがことごとくうまくいっていたが、今回はそれが裏目に出ていたような気もする。
渡辺に限らず、例えば羽生vs深浦も、二日制と一日制では全然違う感じになっていた。二日制と一日制は、我々素人が考える以上に違いがあるのかもしれない。
第二局は後手の久保のゴキゲンが予想されて、先手が好きな対策を選べるので、渡辺も落ち着いて作戦を練れるかもしれない。ただ、それでも久保がまた奔放な指し方をしてくるだろうから、それにどう渡辺が対応するかに注目である。
居飛車対振り飛車の戦いというのは、昔と違って現代では随分様変わりしたけれども、やはり楽しい。




将棋日記 B級1組 12回戦

名人戦棋譜速報

佐藤康光vs豊川
二人とも昇級、降級が決まっている。佐藤は石田流を試した。石田流を倒す立場で本を書いているが、自分でも持って指してみたかったのだろうか。持久戦になって穴熊の佐藤が勝ちやすそうにも見えたが、豊川が工夫の△7一歩など力を見せて最後は一手勝ち。豊川が力強い中終盤で佐藤に競り勝ち意地をみせた。

井上vs屋敷
横歩取り△8五飛。形勢が井上→屋敷→井上と入れ替わった熱戦。井上が粘り強く指して9筋からつくった遅そうなと金を活用して間に合わせたのが印象的だった。屋敷は痛い一敗だが最終局で松尾との直接対決で自力昇級の状況が残ったのはラッキーともいえるか。

松尾vs中村
相掛かりから、ものすごい将棋になった。棋譜コメントが面白い。松尾の▲6三銀の強襲に「なんという狼藉ぶり!」「これで寄ったら神業だ」さらに「その局面で先手玉を攻略するには秘孔を突く必要があります」「でた!受ける青春」等等。松尾の鋭さはもともと定評があるが、それに一歩もひかない激闘を繰り広げた中村も見事だった。今回随一の好局だったと思う。

深浦vs山崎
山崎先手で相掛かり。深浦ペースで、終盤も鋭く襲いかかり、以下順当に寄せきって快勝。深浦は後半では流石に地力をみせたが、前半のつまずきが響いて昇級には届かず。逆に山崎は後半に失速してしまった。

鈴木vs中田宏
先手鈴木の中飛車から角交換型で▲8五桂ポン。難しかったようだが、鈴木が次々に自陣に駒を投入して鉄壁にして、悠々とと金攻め。中田が戦意喪失で投了。鈴木らしい勝ち方だった。最近居飛車を指しているが、やはりこういう振り飛車らしい指し方がよく似合う。コメントの「鈴木は祈るような手つきで▲9五飛を指したという。」が面白い。心をこめて指したという感じだったのだろうか。

杉本vs畠山鎮
後手の杉本の△3二飛戦法。杉本が突き越された端から逆襲する意欲的な指し方。棋譜コメント>「この局面をモニターでみた奨励会員同士のやりとり。A「何これ?端取り込まれてるやん」B「いえ、振り飛車側から突いたんです」A「ぐえー、まじかー」」なんだか今回は控え室の面白コメントが多かった。本当はもっと面白いのだろう。特に関西は。残留争いで大切な将棋だったが、畠山勝ち。

C級1組の豊島vs金井は横歩取りの将棋で、豊島が快勝。

昇級争いは、松尾vs屋敷の勝者が昇級という分かりやすい形に。
残留争いは、既に陥落が決まっている豊川以外にもう一人で次の四人に可能性がある。
【5勝6敗】畠山鎮(11)、中村修(12)、中田宏(13)
【4勝7敗】杉本(10)

今やっていた囲碁将棋ジャーナルの解説はハッシーこと橋本七段。冒頭トークで「今日はちょっとヘアスタイルが決まってないっす」とか、まぁいつもの調子だったんですけど、それよりちょっとハッシー貫禄がつきました?バーやっているんで、酒太り?髪型ウンヌンよりも、少しばかりナントカ親方みたいでした。そういえば相撲界も大変ですね。いや関係ないです。失礼なこといったんで誤魔化そうとしただけです。
女流名人戦第二局の解説だったのだが、里見さんの中終盤のリードの拡大の仕方について、ハッシーも「全盛時の大山名人みたいです。」と絶賛しておりました。
自身の昇級争いについて
ラスト二局も強敵でして。先崎八段はA級経験者ですし、北浜七段は私に勝ってキャンセル待ちで、あわよくば昇級しようと思っているんですね。こういう相手をひいてしまったことに、なんていうんですかね、自分の不運を感じているんですが・・。
3番手が順位上位の阿久津クンなんですね。ちょっと阿久津クンを昇級させるわけにはいかないので。まぁ業界用語でいうイヤガラセをしてやろうかなと。そういう男同士のプライドをかけた部分があるので頑張ろうかなと。
まぁ、アックンとは仲いいんで何言っても大丈夫なんでしょうが、こういう場合は黙って何も言わないのがセオリーだと思うんですが、色々サービス精神で喋ってしまうのがハッシーなんですね。見ていてちょっとヒヤヒヤしするんで、頑張って欲しいと思いました。



将棋日記 銀河戦 小林健vs石川

囲碁将棋チャンネルHP(棋譜閲覧可能)

小林の先手で初手▲5六歩。この指し方は相振りにされた場合が課題とされていて、石川も三間に振った。それに対して小林の対策が独創的。銀を4七に持っていって、左金を5六に繰り出して中央をきっちり押さえ込む形。小林は公式戦でも三局指していて、研究会でも試しているそうである。玉も右でなく左に持っていくこともあるとのこと。後手もどう指すかが難しそうである。先手中飛車で相振りにされた場合の対策に苦心している方は、試してみたら面白いのではないだろうか。
将棋は、小林が端から激しく攻め込んだが、石川も強引に角交換して反撃してよくなったようにみえたが、その後誤算があったのか、小林が寄せきって勝ち。ベテランの自在な指し回しが印象に残った一局。

将棋日記 A級8回戦ラス前

名人戦棋譜速報

森内vs郷田

後手の森内がゴキゲン。先手の郷田の対策は超速▲3七銀。後手の森内の少し珍しい△3二銀型に郷田が▲3五歩から速攻したのだが、その後に出た▲3八金が好手で、森内は感想で将棋が終わってしまったと嘆いたそうである。奨励会員が指したことがある手だそうで、やはり定跡の最前線はトップではなく、奨励会や若手がつくっているのかもしれない。但し、郷田のことだから多分自分で考えたのだろう。
その後のコメントをみると、どのプロも早い時点でほとんど先手が相当いいか勝勢だというコメントをしていた。正直、私は並べながらそんなに離れているとは思えず、先手が勝ちだと分かったのは相当進んでからだったので悲しかった。さすがにプロは形勢判断にとても敏感なものだ。しかし、それにしても▲3八金で一本取ったにしても、本当に後手にも何か指し方はないのだろうか。

渡辺vs谷川
後手の谷川がゴキゲン。先手の渡辺の対策は超速▲3七銀。・・というところまでは、前局と同じだ。別に他の対策がダメになったわけではないので、まさしく流行だ。
大変力のこもった好局になった。難解な終盤だが、渡辺がじっと▲8六歩と突いたのが印象的。手の具体的な意味は理解できないでも、素人にもなんとなく良さそうだと分かる手がある。竜王戦第五局でもそうだったが、渡辺は終盤でもあわてずにピッタリした感じの手を指す。最近ますますそういう傾向が強くなってきたような気がする。こういう終盤での落ち着いた指し手は羽生の専売特許だったのだが。今更だが、竜王戦第五局は、お互いが忙しいところをあせらずに手段を尽くした名局だったと思う。
結果は渡辺が少し残していたようで勝ち。最近ますます、ギリギリの終盤をせりあって勝つようになってきた。

三浦vs高橋。
後手高橋で、横歩取りから△8四飛と引く形。高橋が単騎の△6五桂から△7七歩と攻め込んでのに対して三浦は▲7七玉と形にとらわれずに対応したのだが、結果的に高橋が玉形が不安定なのをうまくついて攻めをつないで完勝。高橋の作戦の巧妙さ、その後の完璧な指し回しを褒めるべきだろう。
これで、高橋は星が苦しいところから、前局の谷川戦に続いて完勝続きで連勝して残留を決めた。A級最年長の51歳。これだけの指し盛りのメンバーの中で本当にたいしたものだ。この高橋の集中力、ここ一番での勝負強さ、精神的な強さをほぼ同年代の谷川に見習ってもらいたいものだ。今期は本当に谷川の挑戦を楽しみにしていたので、つい余計なことが口をついて出てしまった・・。

久保vs木村
先手の久保の中飛車から持久戦に。特に木村は金銀四枚で玉をかためることが出来た。久保の方は、自身の感想の通りに左銀が使いづらくくなってしまった。結果的にそれが響いたようで、本当に単純な見方だけれども、遊び駒や働きの弱い駒が金銀一枚出来ると勝負に直結する。
とはいえ、大熱戦の将棋で、延々と粘り強い攻防が続いたのだが、木村がうまく脱けだした。木村は負けたら降級のケースもある厳しい状況での対局だったが、全然震えることなく力を存分に出しきっていたのが見事だった。
久保も、最後はボロボロになったが、刀折れ矢尽きるまで戦いぬいた。久保流である。
木村が対局後に、腕組みをして対戦表を見つめる後ろ姿をとらえた写真が何とも印象的。そう、次の三浦戦が鬼の大勝負だ。

丸山vs藤井
先手の藤井の角道オープン四間飛車。藤井矢倉にはしなかった。角交換系の将棋は常に手詰まりになりかねず、千日手模様にもなりやすいので、先手での採用は少し意外。
並べていても難しい将棋でポイントが分かりにくかったが、丸山が飛車で角を取って攻め込んだのは、いかにもやりたくなりそう順だが、それで藤井がよくなったらしい。以下、藤井がリードを広げて着実に勝ちきった。藤井も苦しい立場だが、震えなくしっかり指していた様に思える。
感想戦コメントの藤井の言葉が、例のボソボソ喋りが聞こえてくるようで人間味があって面白かった。文字だけなのに・・。

これで、とにもかくにも「将棋界の一番長い日」を、挑戦者も陥落者も決まらずに迎えることができた。NHKのBSの放送が楽しみである。NHKの将棋班さん、せいぜい張り切って頑張ってください(笑)。もっとも、NHKのBSはチャンネルが減るので、将棋放送が今後どうなるのか、大変気になるのだけれども・・。

挑戦権争いは、森内と渡辺が並んだ。流れからいうと、もう渡辺が完全に優位だろう。まして、森内は次の久保を現在苦手にしており、プレーオフになっても渡辺も最近は相当苦手にしている。逆に渡辺は竜王戦で羽生との頂上対決を制し、棋王戦にも挑戦、将棋の内容も安定感をましてきて、上り調子だ。ということで、逆にここで森内にはちょっと意地を見せてもらいたいところだ。

残留争いも木村と藤井が勝ち熾烈になった。半分の5人に陥落の可能性があり、全員がすっかりA級のイメージが定着している棋士ばかりである。誰が落ちても惜しい。


将棋日記 C級2組9回戦

名人戦棋譜速報

佐藤天vs長岡
横歩取り△8五飛。先手長岡が▲3八銀の研究から飛ばしたが、佐藤もその場の読みできちんと対応。難しいところもあったようだが、勝ちきって昇級を決めた。渡辺ファミリー?のライバル戸辺に遅れをとったが、これから巻き返していくのだろうか。

糸谷−村中
後手の糸谷の一手損角交換。早めに△7三歩をついて後手から先攻した。中盤、お互いに銀を何度も打ち合ったのが面白かった。糸谷世代は、なんとなくこういうゴツゴツした手を厭わないという印象。素早く寄せて糸谷も昇級を決めた。佐藤、糸谷二人の実力者の昇級は文句のないところだろう。糸谷が子供時代に持ち駒を相手の駒台に乗せて反則事件の相手が佐藤で、二人は運命の赤い糸でつながれているのだ(違。

澤田vs西川和
後手西川の矢倉式中飛車。西川自身がよく指している形で、A級で三浦が採用したばかり。若手の作戦や研究をトップが参考にしている好例だろう。

菅井vs牧野
先手菅井の中飛車で、牧野は角交換△6四銀形。菅井が銀河戦でも見せていた▲7五銀とすぐぶつける作戦。途中は、玉からはるかに離れた地帯での勢力争いをする昔ながらの居飛車振り飛車対抗形らしい展開になった。現代的な菅井だが、いかにも振り飛車らしい指し方で勝ち。

横山vs中村太
後手の横山のゴキゲンに先手の中村の超速▲3七銀から早い時点で新手。最新定跡を競い合うC2らしい。苦しそうな将棋を横山が勝って2敗堅守。自力昇級圏内だが最後が難敵の阿部。

阿部健vs佐藤慎
相矢倉から阿部が鋭い攻めで快勝。銀河戦でもそうだったが、阿部は終盤の切れ味もあるようだ。>「若者の攻めだねえ、明るい攻めだ」(控え室)というコメントがおもしろい。

遠山−村田顕
後手の遠山のゴキゲンに先手の村田の超速▲3七銀。なんでこんなに流行っているのというくらい流行っている。遠山が勝って二敗堅守。

西尾vs石川。
後手の石川がノーマル四間飛車で、先手の西尾が居飛車穴熊。櫛田もよく指している定跡形から熱戦に。最後は石川が勝ちきった。ノーマル振り飛車でも居飛車穴熊にちゃんと勝てるのだ。ベテランの石川はノーマル振り飛車で若手相手に奮戦し結果も残している。

中座vs大石
先週の週刊将棋の「プロの妙技よもやの珍局」で、関西編の池田将之氏が紹介している山崎が大石にくらって正月ボケと言った順を、なんと先手の中座がそのまま指してしまった。純粋な飛車銀両取りが受からない。大石にとっては夢のような順だったことだろう。中座は週刊将棋を読んでいなかったことが敗因か。相当の珍プレーの部類に入るのではないだろうか。

増田vs淡路
200手越えの死闘をベテラン淡路が制した。お見事。これぞ順位戦。そして「不倒流」の真髄のような将棋であった。今回の一番のハイライト将棋かもしれない。





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