2011年07月

2011王位戦第二局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

まぁ、ブログでタイトル戦を書く建前としては、なるべく個人的感情はおいて公平に書くことにしている。しかし、今回の負け方は、羽生ファンとしてはちょっとばっかり悔しかった。
最後、ニコ生の阿久津解説を聞きながらみていたけれど、かなり難解な終盤になっていた。ところが羽生が△6六龍以下詰ましにいったのがらしからぬミスで、広瀬はどうも▲6六桂合で詰まないことを見切っていたようである。あんまり羽生ファンとしては言いたくないが、終盤の絶対性を誇っていた羽生が、新生代の広瀬にあっさりはめられた感じである。第一局でもあったけれども、広瀬は詰む詰まないの読みがコンピューターソフト並に正確かつ迅速である。詰め将棋解答選手権でも常に安定して上位である。
なんとなく、今回の王位戦を観ていると、羽生が最強ソフトと戦う予行演習のようにも思えてしまう。というと広瀬に大変失礼なのだが。ただ、広瀬の終盤を見ていると今回は羽生の猛追を受けて流れ的にはかなり悪かったが、冷静に最善手を重ねてくるところが、「ソフトのように」冷静だと思った。
具体的に▲1五龍と手を渡して冷静に詰めろを消した手が素晴らしかった。ニコ生で阿久津が指摘していたが、この場面では何か攻めの手を指したくなるところである。しかし、自玉の不詰みをきっちり読みきって相手に手番を渡した。これは羽生が常に対戦相手にしてきたことではないか。
△6六龍では△5四銀としていれば、アヤがあったようである。但し多分厳密には先手勝ちなのだろうが。それについて広瀬が言っていることが結構すごい。
「時間がないので、こちらが間違えますね」(広瀬)。
羽生オタとしては結構これは腹が立つ(笑)。これではまるで上位者が下位者を上から視線でいう言葉ではないか(笑)。勿論、広瀬はそういう悪意をもって言うタイプではなく、彼なりに気を遣っての発言なのだろう。それは多分間違いない。昔の棋士とは違って腹に一物あるタイプでは多分ない。ただ、こういうことをさりげなく言う、いい意味での大らかさ、悪い意味での鈍感さが広瀬の強さだという気がする。そういうところは、ある意味すごく敏感な渡辺明ともまた違ったタイプでとても面白いと思う。
羽生は別に今回初めてピンチになったわけではない。森内に圧倒されて一冠になったこともある。しかし、純粋な終盤力において脅威になる存在に遭遇するのは今回が初めてなのではないだろうか。
羽生ファンとしては、大変ドキドキするが(笑)、新しいタイプの広瀬と今後どう戦ってくれるかが楽しみでもある。勿論、二連勝した広瀬がどのよように戦い続けるのかにも、大変興味がある。



豊川孝弘@週刊将棋ステーション

相変わらずサービス精神たっぷりのトークである。
先日のNHK杯、対小林裕士の感想戦でも、「戦前の矢内さんとのインタビューいやなんだよねー、つぶれます、って言ったらつぶれちゃったね」「あっ、今放送されているのかこれ、正体がバレたしまいましはたね」「ちょっとamだからねー、pmだったらこういう指し方しないんだけどねー。」「二人でつぶしていますからね、いや、よく丸山さんに言われるんですよ、豊川さん相手の攻め駒攻めちゃうからダメですよ。」、「もぅ、迷える将棋指しだ」、「解説者はつらいけれど敗者はもっとつらいよね。」
筋トレ仲間?の私生活で謎の多い丸山との関係が気になるところである?
阿部「最後(の小林さんの攻め)はシャープだったですね。」豊川「ペンシルだったよね。」矢内失笑。
こうして文字化するとくだらなすぎるが、あまりにくだらなすぎるのでつい笑ってしまうのである。
あと、「だいたい、これはこれはそうか、アラファト議長か。」とか言っていたけれど、どういうこと?
そんなことが気になるようじゃ、完全に豊川ワールドにハマっている証拠である。そもそも、これを書くためにNHK杯の録画を克明に見直している私も私だ。

週刊将棋ステーションでも、例によって「よろしくお願いしマンモス。」から入っていたが、ノリのいい恩田菜穂キャスターも「それでは最後までご覧くださいマンモス。」と返していたが、あの生真面目な山田史生氏までつい笑ってしまっていたのであった。
シリアスなトークでは、豊川さんは奨励会試験に一度落ちて、追試で入った苦労人だそうである。さらに二段の時に三段昇段の一番に郷田初段に長手数の詰みを逃して、しばらく三段にあがれなかったそうである。奨励会の世界は本当に厳しい・・。
しかし、結局は楽しいトークで、あの山田史生氏まで「今日はありがとうございマンモス」と言っていた。自分の目を疑わずにはいられなかったのである。豊川もこれには笑わずにはいられなかった。人徳である?

さて、豊川さんは面白いし大好きだけれども、ある意味オヤジギャグもむ冷静にいやらしく?計算している「常識人」である。ある意味将棋界では珍しいタイプだ。将棋界にはもっと「本物」がいる。豊川が奨励会幹事だったころの宮田敦史のエピソード。
ーー宮田さんは本当に凄い将棋指しだと当時から評判でした。確かに盤の前だとグレート。ところが、盤を離れると全く別人です。悪く言うと抜けちゃっているんですね。例えば、奨励会には一年に一回合宿があって地方に集団でバスで行きます。休憩しますよね。お土産屋さんにみんな行って。
宮田「先生!トイレどこですか?」
豊川「いや、オレも初めてだから分からないけれど、地元の人に聞きなよ。」
宮田「分かりましたっ。」
まぁ、それくらいは普通かもしれませんけけれど、たいていそんなこと聞きにこないですよね。その後、また別の休憩所の時にボクのところに来て、
宮田「先生!トイレどこですか?」

これじゃ、古典落語だよ。

2011王位戦第一局 広瀬王位vs羽生二冠

王位戦中継サイト

振り駒で羽生先手になり、▲7六歩△3四歩▲6六歩△3二飛の出だしで相振り飛車に。実は羽生は竜王戦の決勝トーナメントで、橋本相手に後手を持ってこの形を指しているが、終盤羽生らしくない失速をして負けている。まだ、それから日も経っていない。
常人なら、思い出したくないのでこの形を指すのを避けたくなりそうなものである。しかし、羽生は「あっ、この先手の指し方はあるし、この相振りは現在の興味深い研究テーマですね。」という感じで、アッサリ指してくる。自分を冷静に突き放して、もう一人の羽生が上空からリアル羽生を俯瞰しているかのような達観ぶりが羽生ならではと思う。
その一方で、負けた将棋をそのままでは済まそうとしないきわめて人間的な負けず嫌いの側面もチラリと垣間見えて、冷静かつアツいのが羽生の面白いところである。
相振りで、後手はすぐに3筋の歩を交換して先手は金無双に構えた。橋本戦もそうで、これかが最先端なのかもしれないが、実は少し前に流行したのが一周して戻ってきた感じである。特に、金無双は古典的な相振りではデフォルトの囲いだったが、現在は壁銀の悪形や発展性のなさや手がついたときの脆さから激減かしていた。それには相振りカリスマの杉本昌隆が相振りシリーズの著書で美濃の優秀性を指摘して変わってきたという歴史などもある。
ところが、またこのシンプルな金無双が見直されているようだ。具体的理由は専門家でないと分からないが、もう一人の相振りカリスマ藤井猛の相振り著書全四巻を実は私も読んだことがある。藤井らしく茫洋とした相振りの世界を整理してシステム化しようとする試みで面白かった。相振りの囲いには、金無双、美濃、矢倉、穴熊と四種類あって、各囲いの相性や組み合わせに敏感に反応して指さないといけないようである。例えば、金無双も穴熊相手に速攻をかけるにはコンパクトで優れているとか。角換わりの腰掛銀、棒銀、早繰り銀にジャンケンの法則があると言われるが、相振りの囲いは四種類でさらに攻撃体制も様々なので、まさに指す人間のセンスが問われるのである。
とにかく金無双は、発展性がなくて持久戦には向かないので、何か先に動きたいというのが原則らしい。控え室の指摘で後手△2四銀の瞬間に▲6五歩とする筋が指摘されていたのもそういう意味なのだろう。羽生がそれを見送った理由は不明だが、やはり封じ手直前に動いていったのもそういうことなのだろうか。「損して動かなければならないので作戦的に面白くなかったですね。」という感想もあったようだ。
それに対して、広瀬も反撃に出て銀交換して先手玉を薄くしたが、結果的には金無双の壁銀が捌けて楽になったと言う意味もある。この辺までは、先手後手共に相振りの指し方の難しさを感じさせる不思議な展開だった。
むしろ、攻める権利を得たあたりでは先手有望、あるいは優勢と控え室では言われていたが、広瀬の反撃の△4九銀以下が、ことの他厳しかったようである。ということは、そもそも先手がそんなに良くはなかったということなのだろうか。羽生自身は、どうもずっといいとは思っていなかったようである。
それにしても、決して簡単そうではない終盤を、羽生相手にきっちり勝ちきった広瀬の終盤力には、やはり瞠目せざるをえない。
というわけで、今回の王位戦も激戦が予想される。それにしても二日制のタイトル戦での羽生の出足の悪さは何とかならないのだろうかと、羽生ファンとしてはどうしても思ってしまうところである。

2011 棋聖戦第三局 羽生棋聖ストレート防衛

棋聖戦中継サイト

今年の名人戦で残った疑問がある。先手羽生の▲7六歩に対して森内は三度までも△8四歩と応じた。先手は矢倉、中飛車、(通常)角換わりのどれも選択できる。特に、詰みレベルまで研究可能な角換わりは後手にとっては覚悟のいる形だし後手で指す棋士も限られている。当然、完全主義者で準備をおこたらない森内には何らかの成算のある具体的対策があった筈だ。
しかし、先手の羽生が三局とも矢倉にした。対局内容から推測すると、羽生は現時点で先手の矢倉にかなり自信をもっているようで、特に第四局、六局の内容は素晴らしかった。だから、羽生は角換わりを避けたというよりは、矢倉がベターと考えただけなのかもしれない。
しかし、その為に森内が用意していた対策が分からないまま終わった。それと、羽生が現時点で角換わりについてどう考えているかも不明なまま残った。
その意味で今回の棋聖戦第三局は興味深かった。深浦先手で▲2六歩△8四歩の相掛かりの出だし。しかし、深浦が3手目を▲2五歩ではなく▲7六歩としたために、羽生は横歩取りにも一手損角換わりにも本譜の通常の手損のない角換わりにも出来ることになった。深浦の仕掛けたちょっとした序盤の駆け引きである。最近の羽生は後手なら横歩取りにするところだが、なんと意表を突いて通常角換わりを選択した。
つまり羽生は角換わりの後手でも指せる形があると考えているということである。その点興味深いのは、最近の羽生は先手が▲7六歩とした場合には△8四歩とすることが多くないということだ。△3四歩として横歩取りかゴキゲン中飛車にする。しかし、本局のように角換わりの後手でも指せると考えているのに△8四歩としないのは、むしろ先手が矢倉にした場合の後手に課題があると考えているのかもしれない。それは実際に名人戦での先手での羽生の矢倉の凄みからも想像できるところだ。だから、後手羽生は▲7六歩△8四歩の進行の角換わりにはしないが、本局のようなオープニングで戦形を角換わりに限定できるなら指すということなのかもしれない。勿論、色々微妙な問題がありそうで、あくまで仮説に過ぎないけれども。
それと、今回の棋聖戦第二局、第三局を観ていて感じたのは、そういう技術的な問題ではなく、羽生がもっと本質的なレベルで指し方をまた変えようとしているのかもしれないということだ。第二局は千日手の大激戦になったが、千日手局で羽生は先手で十分指せそうなのにサッサと千日手にしてしまった。そして後手で選択したのが誰しもの意表を突く藤井流角交換四間飛車穴熊だった。名人戦後数日での対局だったわけだが、なんと言うか、羽生さん怒っているの?と思わせる自由奔放な指し方だった。
羽生のことだから、名人失冠を機に劇的に意識的に指し方を変えようとしていても不思議ではない。羽生は各種のインタビューで、アクセルとブレーキを踏み分けることが大切だと述べている。冒険しないで勝ちにこだわっているだけではダメで、時には思い切った大胆な指し方をする事が必要だと。それが長期的にトップランナーであり続けるためには大切だと。
だから、今回の後手の角換わり採用も、はっきり指せる勝てるというのではなく、この形だとどうなるのかと「冒険」してみただけなのかもしれない。そもそも、そういうのが羽生の流儀である。角換わりというのは、先手だけでで指す棋士と後手だけで指す棋士に分かれる特異な形だが、羽生は先手後手のどちらももつタイプだった。藤井システムでもそうで、居飛車側を持てば藤井にとって最大の脅威になる一方で、羽生が藤井システムを指すと藤井に「自分の次に藤井システムをうまく指すのは羽生さんかもしれない」と言わしめたのである。絶対的な勝ち負けの真理を追究するのでなく、あらゆる役割を自由に変幻自在に指しこなして将棋の小宇宙で自由に遊んで戯れる天使。
もともと、羽生の将棋にはそういういい意味の自由とテキトーさがあったのだが、最近の羽生の将棋は見ていて息苦しくなる様な生真面目さがあった。竜王戦や名人戦では、作戦を緻密に絞り限定してギリギリとした将棋を指していたが、羽生本来の余裕が欠けていたようにも思える。
しかし、今回の特に名人戦が終わった後の二局は久々に羽生らしい将棋を見たような気がする。戦形の選択からして気ままで自由自在で実験的、指し手もいわゆる「伸びて」いる状態で最近の将棋に見られるような不必要な堅さがなかったように思えた。
勿論、具体的に今回は星が先行したこと、また二日制と一日制の違い―竜王戦と名人戦が二日制という事実は本当に重要な要素だ―といった様々な要因が関係しているだろう。しかし、今回の羽生を見ていて、これが本来の羽生だと嬉しくなった羽生ファンも多いのではないだろうか。
「序論」の部分でもはや力尽きた。この興味深い角換わりの形については、例によって勝又先生の分かりやすい解説をご覧ください。

突き抜けないブログ 定跡を創った棋士

最後に挑戦者の深浦について。今回は羽生の「怒り」を真っ向から受けてしまう損な役まわりになってしまったようである。深浦は、ある雑誌の企画で「恋愛流」と評されて色々好き勝手な事をいわれているが―いや人事に言うのはよそう。私も去年にかなりのワルノリ記事を書いてしまっている―、ご本人はそういうのも受け入れてユーモアにしてしまう余裕がある。
・以前読んだ本で、深浦九段が対局相手と対局することはその相手と恋愛することだという内容のことをおっしゃっていたと記憶しています。そういう意味での恋愛相手としての羽生棋聖はどんな相手ですか?
「隣にいらっしゃるので言いにくいですが、羽生さんの恋愛相手はたくさんいらっしゃいますが、私は棋聖戦にかけています」
 棋聖戦中継ブログ 対局棋士とファンの集い 5 より

深浦の羽生に対する純愛宣言である。しかし、今回は「恋愛相手が多すぎる」羽生にアッサリ振られてしまった。しかし、そんな深浦をみて応援しているファンも増えているようである。深浦流のユーモアを下手な形で真似してみると、「何度冷たく袖にされてもアタックし続けて純愛を貫いて欲しい」ものである。今回は羽生が凄すぎたが、第二局などはいかにも羽生&深浦にしか出せない純愛世界の名局であった。





コメントを承認制にさせていただいています。反映まで時間がかかりますが、お気軽にどうぞ。
Recent Comments
「最新トラックバック」は提供を終了しました。
  • ライブドアブログ